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人狼なんて話より、よっぽど信憑性があるわよ。
[そんな風に言葉も添えたりはした。
どちらにせよ、眉唾物の話だけれど。と。
少し後ろのレイスに微笑み、たまに少し振り返って話したりしつつ辿り着いた墓地。
声をかけられて、笑った]
そうよ、ユーリー。
なんて言っても、旅人さんより旦那と子供を優先するけどね。
あなたはお参り、終わったところ?
[笑って言うと、そんな風に問いかけて]
旅人さん、残念だったわね。
[レイスからの短い応えに男は目を細める]
そう。
[葡萄酒の瓶が置かれた新しい墓をつと指差し]
あそこがそうだ。
[目的の場所を示してみせた。
イライダの笑みに言葉に思わず苦笑を浮かべる]
嗚呼、僕は親不孝だね。
両親よりも旅人の御参りを優先させてしまった。
[大仰な口振りには軽口のような響きが混じる。
暗い空気を作りたくないという思いが表れたか。
残念という彼女の声に同意の頷きを向け]
――…本当に。
お供え持ってきてたのね。偉いわ。
私、手ぶらできちゃったもの。
[示された場所を見て、そこにある葡萄酒に思わずといった様子で言葉を重ねる。
墓地という場所には合わないけれど、笑って]
あなたは旅人さんと親しくしていたんでしょう。
なら当然だと思う。ご両親はわかっているんじゃないかしら。
私はあまりお話していなかったもの。
――マクシームが人狼の仕業なんじゃないかって言うのよ。
御伽噺も良いところだわ。
[困った、と言いたげに眉を寄せて。ね。なんてレイスにも同意を求めたりして]
でも、今は犯人探しより、しっかりと弔わなくてはね。無念だったことでしょうし。
お酒も生きて飲めたら、良かったのにね。
[鮮やかに彩られたイライダのくちびるが弧を描けば
彼女の華やかさを際立てるようだった。
偉いと言われればはたと瞬きをして]
子供の頃とは違って
少しは気が利くようになっただろう?
[首を傾げ尋ねる仕草をみせる]
……ああ、酒を飲みながら外の話を聞くのは
なかなか楽しくて、つい、ね。
[親しく接していた理由をぽつと呟き]
キミが来て呉れただけでも喜ぶんじゃないかな。
――…は、マクシームがそんな事を?
人狼なんてお伽噺だろうに。
[軽く肩を竦める。
犯人探しよりと続けられた言葉にはふと目を伏せ寂しげな色を過ぎらせた]
――…邪魔をしてしまったね。
僕はそろそろ行くよ。
[レイスとイライダの二人を足止めしてしまった事を詫び
男はゆると頭を下げる]
あんな事があったばかりだ。
余り遅くならないように、……
……と、騎士がついてるなら大丈夫か。
けれど、用心するに越した事はない。
[レイスへと視線向けるが揶揄ゆるような響きはなく
ただ案じるように言葉を残し男は再び歩みだす**]
子供の頃と比べているようじゃまだまだ、なんてね。
嘘よ。良い男になったじゃない。
町に行ったら、きっと若い女の子にナンパされるわ。
[からかい含む調子で言って。つぶやく言葉に、そう、と頷き]
そういう相手が、亡くなるのは辛いわね。
[元気を出せとかそういう言葉はない。変わりに手を伸ばして、ふと止まり]
――本当、大きく育っちゃったわよねぇ。
[呟くようにいう。もちろんレイスも見た。
そんなぼやきの後に、ぽんぽん、と二回、軽く腕を慰めるように叩こうと]
今度皆で一緒に飲みましょうか。ここで、少しでも。
なぁに、うまいことを言うわねえ。喜んでくれるなら良いけれど。
[手が届くにせよ、届かないにせよ、笑ってそう告げる。
御伽噺というのには、そうよねぇ、なんてしっかりと頷いた]
[寂しげな様子には、言葉を続けることはなかった。
死の壁は大きいと知るからこそ]
――邪魔なんかじゃないわよ、ユーリー。
こちらこそ、帰る邪魔をしてごめんね。
あなたも気をつけて帰るのよ。
大丈夫、遅くならないし、レイスは頼りになるわ。
でも、ありがとう。
[墓地を去るのを見送って、それからレイスと墓参りを済ませるのだろう。
来た時は最初に慣れた墓を見るつもりだったのだが、順序は逆になった**]
[歩みだす少し前。
イライダのからかうような言葉に微かに苦い顔]
意地悪だね。
その言葉が本心なら僕は嬉しいけど。
町に行くのは止めておこうかな。
[異性に興味がないわけではないが
揶揄る響きに気付き軽く肩を竦める。
大きくなった、との言葉の後、彼女の手が軽く腕に触れる。
慰めようという彼女の気持ちには気付いたようで]
僕らも、もう大人だからね。
――……
[時を重ねる毎に艶を増す彼女を見詰め
僅か困ったように目を細め何も言わぬまま
ふ、と笑みにも似た表情を過ぎらせた]
嗚呼、皆で一緒に。
此処でなくとも…、いつか近いうちに。
[イライダの提案に頷いて]
邪魔なんかじゃないよ。
[彼女と同じ言葉を返し表情を緩めた]
そうだね。
僕も気をつけるよ。
こちらこそ、ありがとう。
[声掛けた時と同じように軽く手を掲げ
すれ違い様にひら、と振る。
暫し歩んだ先で、一度振り向き墓地にいる二人を見遣るが
ゆると首を振りそのまま広場の方へと歩み行く**]
[遠くから嫁いできた母は、花弁の色が変わるこの花を血吸い花と呼び嫌悪していた。代々の生活を誇る祖母や祖父とそんな彼女が合うはずもなく、幼少期からたった一人の跡取り息子はあちらへこちらへ綱引きのよう]
[やれお大臣になる勉強を。やれ家の手伝いを。
日々忙しく引っ張りまわされ、それでもぺしゃんとつぶれなかったのはマクシームやユーリーがそれらを抜け出し遊びに行くのを手伝ってくれたからだろう]
[結局盛大な嫁姑戦争は、祖父の死とドラ息子の落第による卒業不可が相次いだことで一応の終焉を見た]
[穏やかで平和な日々だった。
家族のトラウマでキリル以外の女性は得意でなかったが、一度村を離れたことでだいぶふっきれ、彼女とも懇意になれた。ここ最近は幸福の絶頂だった]
それじゃあ、今年の紅は濃くなるんだろうか
[手の中で根元が赤くなりはじめていた花を弄ぶ**]
[視線落とした後、名呼ぶ声にはっと顔を上げた。
その表情に既に笑みらしきはもう、欠片も無く]
…何。
[一度眉を寄せた後、ぽつりと呟きのような声。
女の子らしくない、と気にしている風な幼馴染を見上げ
きゅ、と、車椅子の車輪を握る手に力を籠める]
――変な顔。
[迷う様相の続かぬ言葉に、むすっとした侭に呟いた]
[はらりと視界の端を、黄色い花弁が風に舞う。
春の色映した花の色、常には心浮き立つはずの色にも、
今は目を向けずに幼馴染の前に立つ。
見上げる烏色の瞳の表情に、ボクは思わず唇の端を下げた。
少し力入るときの癖。昔からの癖だ]
さっきの態度。気になったから。
[車椅子を握る手に、何気なく視線を落とす。
地面を踏みしめるボクの足と、おんなじだ。
そう思って言葉を続けようと息を吸い込んだところへ、]
…っ、関係ないだろっ!
[意地悪な言葉が聞えて、ボクは思わず言い返した。
むっと、ますます口がへの字に曲がったのを自覚する。
悔しいから、両手を自分の頬に当てた。…これで大丈夫]
ロランが変だから、こういう顔になる。
[じとりと、幼馴染の黒い目を睨んだ]
[ミハイルから分けてもらった肉はとりあえず二人分だけだった。
全部を解体するには時間が短すぎて。
野菜を家に届けてくれるといったイヴァンの言葉もあってまずはそれだけもってかえる。
兄はほかのところもに話をしにいっていたようだった]
あ、お兄ちゃん。
ミハイルさんとロランが狼対策のこと話してたよ。
[家に帰る途中で見つけたマクシームに声をかけて、手伝うように言えば、それぐらいならと頷くのが見える]
うん、あたしはミハイルさんとロランに料理つくりにいってくるから、宜しく。
[手伝うために広場に向かう兄の背を見送って、一度家の中へと入った]
…俺の態度だって、関係ないだろ。
[キリルが言い返すのに、胡乱げな烏色向けて言い返す。
睨み来る彼女の顔、口端があがるのはほんの微かだが
村にいるもの達にはその変化も読み取れるのだろう]
俺が変なのはいつもの事。
知ってるだろ。
[自嘲めいた言葉を零すのは、いつもの事]
――…知ってるだろ。
どうせ何かあったらまず死ぬのは俺さ。
逃げられやしないだろ。
[続けた言葉は、人狼騒ぎの事について。
ふと向けた視線の先、広場の真ん中に篝火炊くため、
マクシームが台を組もうと丸太を運んでいるのが見えた。
逃げられやしない、手伝っても邪魔になる。
表情薄く意識はキリルに向けた侭、彼の動きを目で追った]
関係ないけど気になったから、ここにいる。
[ボクは負けじと言い返した。
幼馴染のこんな態度には慣れっこだ。
ほんの僅か、笑みの形に唇の端が上がるのを認めても、
ボクは両手を頬から外さなかった。
気を抜くと、また唇の両端が下がってへの字になる]
いつもより変だったからだよ。
いつもと同じくらい変なら、気にしていない。
…。ロランも噂信じてるの。
[烏色の瞳が広場へと向けられる。
その視線を追った見た光景に、ボクは軽く眉を顰めた。
篝火焚く広場の様子は活気があって、一見祭りの来るかのよう。
けれど決して、祭りのように明るいものではない]
それじゃ、騒ぎが収まるまでボクかカチューシャの家に来れば?
誰かいれば大丈夫だろ、狼なら。
逃げるのだって、手があればまるで違う。
[視線を広場から幼馴染へと戻す。
ボクよりもずっと濃い黒髪が、陽を弾いて綺麗に揺れた]
[更に言い返してくる気配に、肩を小さく竦める。
車輪握った手を、膝の上へと乗せて落ち着かせた]
信じてるというか…
――俺は楽観的な思考が欠如してるから。
[あの旅人のくれた本は、今でも家の机の上。
かの人が此処にいたのはどれくらいだっただろう、
それでも外の話を沢山聞くことが出来た事はとても最近に感じる]
キリルかカチューシャの所に?
[いくら幼馴染とは言え、車椅子とは言え。
視線を頬に手当てたままの幼馴染へと向け直し首を傾け]
…イヴァンとマクシームに怒られる。
[やんわりと頭を横に振った]
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