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単に小賢しいというのだよ、
わざと謎なぞのように言うている。
そうさね、
神巫殿が鳴らしていたようだよ。
昨晩と言うかはわからぬけれど、
白銀の鈴をお持ちになっていらした。
其方はそれに応えたからここに来たのだと。
[ひょう、と。
空へと鞠を投げ上げ、受け止める。
そのまま、川辺に座り込み、確りと鞠を抱きかかえ]
…………。
[何事か呟き、紅緋を伏せる。
白の中。
僅かに色を違えるのみの白花色は飲み込まれ。
濃色のみが、居場所を知らすか]
わざと……なしてじゃぁ?
[ようわからん、と呟いて]
[次いだ神巫についての言葉に、わらいがお]
神巫さまはとてもお綺麗け?
鈴もとても綺麗じゃけ。
あやめねえさまのおうたも、とても綺麗じゃけ。
[伸ばされた手に、しっかと捕まる小さな手]
こわかったのじゃよ、ゆめは。
こわいのじゃよ。
……忘れたの、ゆるさんのじゃよ
[小さな声は聞こえたか聞こえぬか]
[次には既に笑って]
うん、ゆくんじゃ。
誰じゃろ?
〔そう言ったきり後には何もなく、
深紫と臙脂とは並びて歩を進め、
導かれるやうに白に沈む濃色目指す。
川の流れにつられて眼差し移せば、
紫苑が風に揺られるのが見ゆるか。〕
[夕暮れはとうに過ぎていた。
時折干果を口に運び、昼食も夕食もない時間をすごす。
その間やはり遠巻きにしている雅詠にかすかに視線を何度かやったところでその位置は変わらず]
…。
[さぁさぁと、風が葉を鳴かせていた]
あやめねえさま、すなおじゃなか?
[驚いたような顔をして]
やっぱり綺麗なんじゃぁ。
おらも、拝見させて、いただきたかったのぅ
[その一言にはにこにこと]
[ただ、笑うだけ]
――うん。
あたたかくて、大好きじゃぁ
[白の中、埋もれるように。
抱えた朱と金を見つめていた紅緋が、ゆる、とまばたく]
……ねいろ?
[小さく呟きつ、顔を上げ。
声の響きし方を見やり]
[川の辺に足を投げ出し、戯れに摘んだ草の葉を、くるりと輪にして、繋ぎ止め、小枝に留めれば、かざぐるま、さやけき風にくるくると、薄いみどりの輪を巻いて]
あやめねえさまは、おずるいのじゃぁ
[先ほどよりも元気なのは、小兄の姿を認めたからか]
[小兄が見上げてくるのに、もっと笑顔になって]
[だけれどその先、大兄の姿]
[にこにこ笑顔は変わらずに]
[されど考えれば、すぐに小兄のそばに向かう]
いってくるんじゃぁ
ふうれんにいさま。
どうしたんじゃ?
[どうした、と問われ、ひとつまばたき]
どうも……しないよ?
[僅か、首を傾げつ返す様は。
眠る前と大差なきようにも、どこか違うようにも見えようか]
……どうも、してん?
[ちょこんと、自分も座り込んで。]
…………ふうれんにいさま。
元気ないように見えるけ。
悲しいけん。
[顔をじぃっと見つめる]
[だけれどそれは、はっとして]
[風の音にか、水の音にか]
[どこか焦って、視線を反らす]
うん、どうもしない。
風漣は、風漣。
[それは、言い聞かせるような響きを帯びるか]
元気なく、ないよ?
……悲しいの?
[音彩の言葉に、ゆる、とまばたき。
視線を逸らす様に、僅か、首を傾げ]
ふうれんにいさま……
[問いの言葉に、再び見るか]
[しかしそれはやっぱり離れ]
むりも、しとらん?
……ふうれんにいさまが、むりしとったり、元気のうなったら、おらは悲しいと思うんよ
[そっと手を地に]
[触れた小石を、くるくるくる]
[手の中に、握る]
うん、無理もしてない……よ?
[視線を逸らす様子。
その意は悟れず。
また数度、まばたくか]
……どして、悲しい、の?
[小石を掴む様を見やりつつ。
浮かんだ疑問を、そのままに。
霞の向こうでも。
そんな言葉を投げられた事はない、と。
ふと、過ぎらせつ]
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