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―工房『Horai』―
そう思ってくださっているのなら、嬉しいわ。
[とは女も村の住人だというライヒアルトに。
人差し指を立てる仕種に頷くが早いか、ゼルギウスには聞こえていたようで、その応えにまた笑いが洩れた。
その間も響く雷鳴や稲光に調子を崩すようなことはなく、紅茶をのんびりと啜っていた、が]
……今のは?
[今までとは種の違う、振動を伴うような音には流石に手も止まり、窓の外を伺った。
この場所から原因が見える筈もなかったが]
何処か崩れたのかしら。
いやぁね。
[それでも推測はできて、困り顔で片頬に手を当てる]
お帰りになるの?
ええ、わたしはそのつもりだけど、あなたこそ危険では……
[そんな中帰るというライヒアルトを、言葉で引き止めることは叶わず。
半ば立ち上がりかけた体勢で、そのまま見送る形となった]
ええ、どうぞお気遣いなく。
[工房へ向かうイレーネはそう言って見送る。
すぐには止む気配のない風雨吹き荒れる外を、もう一度見遣る。
それからテーブルの上に目を戻して、空になったカップを一所に集める]
水場を少しお借りするわね。
お世話になりっぱなしも悪いから。
[ゼルギウスに言って、それらと共に台所に向かう。
軽い引き止め程度ならやんわりと断って、食器を洗い、乾かしておく心算]
[その後で空き部屋の話をされたなら]
ごめんなさいね、長居するつもりはなかったのだけど……
よかったら、お借りするわ。
[申し訳なさそうな表情と共に、世話になる旨を*告げた*]
―宿屋―
大丈夫大丈夫。
[去り際心配するアーベルの言葉にはひらひらと手を振り、
ゆったりと何かを考えるような様子は気にはなっていたが、必要以上の言葉をかけないようにしておいた。
調理場にてスープを温める手が一度止まり]
今のは結構しゃれにならない音だったな……
[アーベルの心配が現実になったかもしれないなと思いながら]
最悪、親父の帰りも遅くなりそうだな。
[それでもどこか、少しばかりそれが本当ならばと、嬉しさを感じるのは不謹慎だなと、心の中で自分を*諌めたりしていた*]
夜半まで続いた嵐は朝方になってようやく去り
現場に向かった自衛団はそれを発見した
人目のつきにくい場所に放置された
心臓周辺をごっそりと食い破られた遺体を
昨夜の話が怖気と共に浸透してゆく
団長が名前を挙げたのは12人
宿屋であれば集まれよう
雨上がりの村の中
硬い顔つきの団員達は呼び出しに向かった
―昨夜・詰所―
良い。放っておけ。
[一時的に詰所に保護した男>>89の叫びには頭痛を堪える仕草。
疑っている一人ではあったが、突然の話に困惑している団員達の目の前でいきなり殺すわけにもいかない]
ワシも審問の場を離れて久しい。
かといって知らされたものを放置するわけにもいかんのじゃ。
[表立って働くのではなく様子を見るのが役割だった。
けれど動くとなれば自分が先に立たなければいけない。
説明を続けていると轟音が響き足元が大きく揺れた]
「橋が!」
[確認するために飛び出した団員の叫び声に全員が動く。
崩れたのは村の入口。吊り橋も一緒に壊されてしまった]
―昨夜・詰所―
こちら側はまだ平気かと思っておったんだが。
村を回って巻き込まれた者がおらぬかを確認じゃ。
雨が上がったら現場を調べよう。
あの話は後で良い。
だが居場所は確認しておくようにの。
[そして翌朝。
眉間に皺を寄せながら呼び出しを命じることになった**]
─宿屋/昨夜─
[止まぬ雨に、雨宿りの人々の幾人かは帰宅を諦め、宿へと止泊まる。
その準備やら何やら、ついでに飲みすぎた酔っ払いの世話やらをしている内に時は過ぎ。
部屋に戻れたのは、夜半過ぎだった]
……あの音からして、かなりの規模で崩れてそう、だよな。
さてさて。
[口調だけは軽く呟きながら。
取り出し、投げ上げるのは瑠璃のダイス]
― 雑貨屋 ―
子供の、背伸び用アイテムの一つだね
勿論本当に大人久向けのチョコ風味煙草もあるのだよ
[>>98ユリアンに渡したのは果たしてどれか。娘は箱が青年の手の中に収まるのを見詰め、静かに笑うのみで。]
馬は行商に欠かせないものだしね
ユリアンと苦節を共にした相棒も同然みたいだし、
嵐が収まりそうなら一度様子を見に行くと好いよ
[等と話しながら本日二回目となるお茶を淹れてユリアンと祖母にティーカップを差し出す。飲み口はすっきりとしたもので香りと同じく暑い季節に丁度好いと娘は感じた。嵐の不安を掻き消すように優しく湯気を立てる茶に、ほと一息を付く。]
―――ン、また凄いのが来ているね
雨漏りしないと好いけど
[店はそこそこの歳を重ねていたから、長く使うに色々な弊害を伴う。この間直したばかりの雨樋が風に煽られていないか娘は心配する様子。]
―――ンン、子供じゃないよ…
[頭を撫ぜられ、娘はくちびるを尖らせる。嫌がりこそしなかったのは、案じる青年の物言いを想っての事で。何処かむず痒さを感じながら青年を上目遣いでじぃと見詰め。語尾が小声になるのも其のせい。]
…有難う、でも此処に閉じ込められっぱなしなのも厭だな
おばあちゃんも居るし…
[荷物については落ち着いたらで好いとだけ伝えて。もし彼が外へ行くのなら気をつけてと背中に声を掛けた*]
おやま。
今日の女神さんは、8がお好き?
[開いた手の中の出目を見て、小さく呟く。
ダイスはまた、ポケットに戻し、入れ代わりに出すのは煙草の小箱]
……朝になったら、様子見に行くか……。
キーファーも、探しにいかねぇとな。
─宿屋/翌朝─
[一服の後、いつ眠りに落ちたのかはわからぬまま。
柔らかな光と、微かに聞こえるざわめきに目を覚ました]
……ん……ああ。
雨、止んだか……。
[小さく呟いて起き出す。
宿の一階では、昨夜の雨宿り客が帰る準備をしている頃合か。
いずれにせよ、そちらの対応はベッティに任せて、自分は外へ。
まずは昨夜の音の事を確かめたかったのだが]
─宿屋前/翌朝─
……っと、あれ。自衛団の。
ああ、昨夜、家に帰らなかった連中の調査してんの。
何人かは泊まってるぜ、今、帰り支度してるところ。
[宿を出てすぐ、出くわしたのは自衛団員。
先に問われた事に答え、それから]
それより、昨夜すっげー音したけど……どっか崩れたのか?
[ずっと気になっていた問いを投げかける。
団員は複雑な面持ちで頷き、崖崩れの状況を伝えてくれた]
うっわ、そこまでかよ……きっついな、それ。
[外との行き来が最も多い時期の分断。
それが何を意味するかは容易に悟れるから、表情は自然、険しくなる]
─昨夜・洗濯小屋─
[雷鳴は鳴り止まないがいつまでも耳を閉じているわけにも行かず。
雨風が中に吹き込む心配はなさそうということを確認してから日中に畳めなかった分の洗濯物を籠から出して畳み始めた。
無論蒼鷹には傍に寄り添ってもらったまま。
手は止めぬまま、恐怖心を抑える為に他愛の無い話を蒼鷹に向けてぽつぽつとした。]
でね、ゲルダもベッティも口調は男の子みたいなんだけど、二人ともすごく女の子らしくて可愛いんだよ。
あ…そういえば、さっき君にあげた燻製くれた小父さん。
ベッティのお父さんなんだけど、今日から外に出かけるって言ってたんだよ。
…大丈夫かな。大丈夫だよね…良く出かけてるし、旅慣れて…
きゃあああ!?
[そう心配そうに窓の外に視線を向けた刹那、地と空気を揺るわせる音と振動が響いて。
思わず目を閉じたが、ふと雷鳴の音との違和感を感じてそっと目を開け、思い至ったのは。]
どこか、崩れたのかな…誰も怪我とか、してないと良いけど…ギュン爺ちゃん、無理してないかな…。
[村人はこんな天気に好き好んで出るわけもないだろうが、自衛団はそうはいかないから、その長である老人を思い眉を下げた。]
─昨夜/工房『Horai』・客室─
[ライヒアルトの心遣いのお陰か、雷鳴は必要以上に気にすることなく過ごすことが出来た。
しかし響いた地崩れの音は揺れもあって気にするなと言う方が難しい。
そんな中でライヒアルトが帰ると言うのを聞き>>97、怪訝な表情を浮かべる]
自分が怪我をする可能性は考えないのか。
今度から物好きと呼ぶぞ。
[ミハエル自身は嵐が収まるまで動くつもりは無く。
向けられた忠告に対し非難めいた口調で返す。
引き止める意味を込めていたが、伝わりにくかったかもしれない。
告げた言葉は効果を生まず、ライヒアルトは風雨の中を駆け出して行ってしまった]
─翌朝/工房『Horai』─
[部屋を借りて休み、一夜明け。
早朝に起き出し帰り支度をする。
ゼルギウスかイレーネが既に起きていたなら再度の礼を言い、未だ起きていなかった場合は丁寧な字で礼と戻る旨を書いた書き置きを残し、工房を出た。
その手にイレーネの作品をしっかりと持って]
─ →自宅─
[水気を含んだ地面を歩き、自宅である湖畔の別荘へと急ぐ。
自宅へと着く直前、自分を呼ぶ声を聞いた]
ロジフ。
ああ、この通り何事も無い。
心配をかけたな。
[声の主である執事がミハエルの姿を見て安堵の息を漏らした。
心配で主の姿を探し回っていたようだ]
昨夜のどこかが崩れる音は聞いたか?
……そうか、村の入り口の。
よし、伝達用の鳩を用意しろ。
父上に報告する。
[そう執事に指示を出し、自宅へと入ると真っ直ぐ自室へと向かった]
─自宅・自室─
[イレーネの作品を机の上に置くと、父上に対し報告の手紙を書く。
村と村の外を繋ぐ唯一の道が利用出来なくなってしまった事。
その復旧作業の助力を請う旨。
復旧が終わったら運び屋を一人向かわせて欲しい事。
それらを書き終わると筒状にして、小さな筒へと入れた]
ロジフ、鳩の用意は出来たか。
……よし、では頼んだぞ。
[鳩の足に筒を取りつけて、窓から空に向かって放つ。
羽ばたきに合わせて落として行った羽根を残し、鳩は空へと消えて行った]
どのくらいで復旧出来るものだろうな。
出来るだけ早く通じれば良いのだが。
[誰に言うでもなく呟いて。
執事を通常業務へと戻らせる。
ミハエルは持って来たイレーネの作品を壊さず運べるよう、丁寧に包み始めた]
んー……取りあえず、様子見てくっか。
さがさにゃならんヤツもいるし。
[は、と一つ息を吐き、村の出入り口の方へと視線を向け、それから]
……ん? なんよ?
[何やら、物言いたげな視線をこちらへと向ける団員に気づいてきょと、と瞬いた]
……え?
宿、集会に使いたいけど大丈夫かって?
あー……そーゆー事は、ベッティに聞いてくんない?
俺は、臨時従業員だから。
[軽い口調で言うと、団員はそうか、と言って中へと入ってゆく。
その背を見送ると、空を見上げて]
……あんまり、長居したくはねぇんだけど、な。
[小さく呟いて、村の入り口へと足を向けた**]
[そんな自分に、また蒼鷹は気遣うように擦り寄ってくれただろうか。
その仕草に緩く微笑めば、大丈夫だよ、と応え。]
とにかく、この雨が弱くならない内は外に出られないし。
早く止んでくれると良いね。
君の飼い主さんも心配してるだろうし。
[そう言って蒼鷹の頭をなでると、こきゅ?と首を傾げられるか。
その仕草にまた笑顔を見せ、そのまま嵐が過ぎるまで蒼鷹と共に居た。]
─翌朝・洗濯小屋─
[残していた洗濯物を畳み終えてもまだ空は荒れていて。
嵐が過ぎたのはもう空が白み始めた頃、結局一睡もしないまま朝を迎えることとなった。]
…朝になっちゃったなぁ…まぁ、しょうがないか。
君も一晩付き合ってくれてありがとね。さ、お帰…あ、待って。
[本当は眠くもあるし精神的にも肉体的にも疲れているのだが、かといって仕事を休むわけにもいかず。
小屋の外に出ると大きく伸びをしてから蒼鷹を見、いつものように送り出そうとして引き止めた。]
ごめん、もうちょっと付き合ってくれないかな?
君のご主人様にお礼のお手紙を届けて欲しいんだけど、ちょっと買ってこないといけないものがあるから。
[天涯孤独の身の上で村の外と交流が無い自分には便箋など無用だったので買っておらず。
幼馴染の顔を見て安心したいという気持ちもあり、買いに行こうかと思ったのだ。
それを聞いた蒼鷹は何を思ったか、空になっている洗濯籠の中に自分から入ってこちらを見上げた。
その様子はまるで運んでいけと言わんばかりなので、きょとんとした後、首を傾げて問いかけた。]
えっと…連れてけってこと、かな?
[そう聞くと、返事のように一声が返ってきて。
本当にこっちの言っていることが解ってるみたいだ、と思わず笑ってしまった。]
ふふ、君は本当に…変わってる子だね。
うん良いよ。
君は私の友達だし、ゲルダやベッティにも紹介したいから。
…君の飼い主さんが解れば挨拶しに行くんだけどなぁ。
君の飼い主さん、ミハエル君だったりする?
…って、聞いても仕方ないか。
[どの道今日はベッティのところにシーツを取りに行くつもりでもあったから、台車に乗せて引いていけば良いかと考え了承の意を示し。
籠をそっと抱きかかえるとそのまま台車に乗せ、蒼鷹の頭を撫でた。
この辺では珍しい鳥ではあるが、湖畔には別荘も何軒かあるのでその中の誰かに飼われているのだろうと思っていたので知っている名を試しに聞いてみたが返事はあったかどうか。
どちらにしても苦笑して、まだ朝早くではあるがまずは雑貨屋へと*向かった。*]
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