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[一度事情を知った後は、擦れ違う人と挨拶だけは交わしながら。
特に宛があるわけでもなく、何処か上の空で歩く。
時折無意識に手が首筋に触れては、はっとなって離した。
そんな道中。
不意に脇の道から出て駆けて行く背と、その先で手を振る姿。
二つに気付いて、びくりと立ち竦んだ]
[その道中、こちらに手を振っている存在に気づき足を止めると、]
ああ、エルザ。
えっと……事件のことはもう聞いたん?
じっちゃんが……絵に封じられたって。
[視界の端、立ち止まる影に気がついて
ユリアンの振った手を、そちらにも振ってみた。]
ごきげんよぅ!
[何時もの笑顔で
何時もの挨拶で
ミハエルの心中も知らず、手を振る。]
―自宅―
ただいまー……なっ!
[ドアを開けて家に入りドアを閉めた…ところで急に開かれたドアに身体をぶつけて、倒れる]
いっつっ!なんだよ!って親父。どした?
「長…ギュンターが倒れた…」
へ?いやだって、昨日親父あったんだよな…調子悪そうだったのか?
「…違う。…絵だ。絵が…」
絵…って?もうちょっとわかるように言ってくれよ…
[父の友人のギュンターに何かあったのか冷静でない父を、母が落ち着かせようとしているが、妙に胸がざわつく。昨日から重要だっていっていたのと、絵と。]
ちょっと俺、いってくる。外に行けばわかんだろうし
[頷く母を見て、家を出た]
[ユリアンの言葉に、こくり、大きく頷いた。]
絵にふうじられる…のかな?
こまかいことは、よくわからないんだけれど、
絵がえふででかかれて、長さまがたおれたって。
食堂にいけば、「うわさ」がいっぱい聞けるの。
[表情は、何時もの緊張感の無い笑みのままだ。]
[逃げるか、声を掛けるか。
逡巡する間もなく、一方は封じられてしまった]
あ、ああ。
…こんにちは。
[小さく頭を下げて、無理に笑む。
その下で、握った拳は小さく震えていたけれど]
[二つ筆があるなら絵もかけるだろう
長が倒れて、絵が…というとギュンターが急死したのか?などと暗い思考が浮かんでは消していれば、昔から知ってる幼馴染たちの姿が見えて]
おーーい。
[声をかけ、手を振って近づいて]
ギュンターのおっちゃんに何かあったみたいだが知ってるか?
[ミハエルの笑みが強張っているように見えて
きょとり、不思議そうに見た時に
アーベルの姿が見えて嬉しそうに笑んだ。]
ごきげんよぅ。
知ってるわ、知ってるの。
絵をかかれて、こころのちからを…どこかにって。
[声にはやはりあまり、緊張感は無い。
アーベルに答えてから視線はまた、ミハエルへと向く。]
おなかいたいの?
[エルザの手を振る先にミハエルの姿を見つけ、よっと挨拶。
そしてエルザに向き直ると、]
あっと……多分、な。原因は盗まれた筆で描かれた所為だと思う。
しかし、噂……ね。あれも尾鰭が付きやすいもんだからな。
[理系脳に加えて、同志であるリディがそういう尾鰭を付けたがる性格なのは把握してるので、噂の類は基本参考程度のスタンス。]
おひれ。
おさかな?
[ユリアンの言葉に首を傾げる。
噂がお魚だなんて聞いたことがない、と。
首を傾げて考えるけれどわからなかったので、
アーベルを振り返って、疑問顔を向けた。]
[近付く足が、新たな声を捉えて、一度止まる。
声のほうを振り返り]
…ええ。
さっき、聞きました。
[それだけをアーベルに答えて]
…いえ。
[エルザの問いには首を振った。
目は合わせられずに]
[そうしてさらに掛けられる声に気付くと、]
ん。アーベルか。
……ああ、聞いてる。多分、筆を盗んだ奴に絵に魂を封じられたんだと思う。
[そして、、こちらへ歩いてくるミハエルの様子に気付くと、]
うわ、おまっ。えらく思い詰めた顔してんな。
…………何かあったんか?
[盗まれた筆がどうとか。というユリアンの声を聞きつつ]
よう。そっか。エルザもミハエルも知ってんのか
絵で、心の力がどこかって…あれ?封じるとかじゃなかったっけか
[綿毛草の伝説のことを口にしつつ、エルザの疑問顔を見れば]
ああ、その尾ひれとかは喩え話のことだよ。
噂に尾鰭がつく。ってのは、最初の噂よりもっと話が大きくなってるようなこと…だったはず
[エルザに説明しつつ一応外れてないかとか、ミハエルやユリアンを見たり]
[エルザの天然ボケに突っ込み。]
いやいや、魚じゃねぇから。
んー、余計なもんが付くっていうか。
あれだ、尻尾とか鰭の付いてる魚って食いにくいだろ。あんな感じ。
[どんな感じだ。]
[そしてユリアンの言葉に、少し止まって]
…いや、ちょっとまて、盗んだ絵筆でって。
そんなことができるのって絵師だけじゃないのか?
[む。ということはやっぱり急死して絵を描いたのだろうかとか。
基本的な伝承しか知らないためいまいち把握してない]
それで合ってます。
[尾鰭の話には一つ頷き]
っ、
[血の気が引く。
ユリアンとはそこそこ古い付き合いであるとは言え、そこまで見透かされてしまうとは思わなかったために]
…別に、そんなことは。
[口では何とかそう答えたけれど。
何かがあったことはきっと明白だろう]
うん。確かになんかおかしいぞミハエル。
無理したのか?ちゃんと食事や睡眠とってるか?
[と、ユリアンに同意するようにミハエルを見つつ
尾鰭の話はそうか。よかった。とほっとする。…横でユリアンが違うこといっているけど]
たとえばなし。
おっきくなることなのね、覚えた。
うん、食べにくいわ、骨がささるし。
[アーベルとユリアンの言葉には頷いた。骨は関係ないが。]
ふうじる。
パパとママの行ったところにいった、のでしょう?
[息絶える人達の心の力を、集める絵師の話。
彼女の両親が事故で亡くなり絵を描かれるときに
そう聞いていた少女は無邪気に笑った。]
えっと、無くなったのはちからがある絵筆で、
だれでもつかえるって、聞いたの。
―工房ちかくの道端―
[とび出したものの、
あてがあるわけでもなく、歩んでいたら]
え――。
ギュンター様の姿絵がみつかった?
長様の家に運ばれたの、その絵?
[たまたま届いた話声]
[事件を、道行く人々に触れまわっている人がいた。
布作りの作業場にも報せに向かうところだろうか]
ギュンター様…。
先日おみかけした時はお元気そうだったのだ…。
生きながら封じられてしまったと、したら。
[怖いものに蓋をしたい心持ちで、アトリに触れた。
いちど瞼を閉じた後、双眸を開いて。聞き知った話を確かめようと、長のもとへ向かい**]
……。
[ミハエルの様子にジッと顔を見ていたが、]
……ん。まあ、いいや。わりぃな、変なこと聞いちまって。
…………ただ、そっちが話したくなったら、いつだって聞いてやんよ。
……一人で抱え込んだって、いいことなんて何もねぇしな。
[そう言って、ニカッと笑う。]
そうだなぁ。骨が多い魚は食い辛い
[ちゃんとしたことをエルザに教えれつつも話が関係ないところに逸れているとこに頷いたり]
そういうこと…なんかなぁ。いまいちわかんねーけど…て、力のある絵筆は誰でも使えるって…知らんかった
[そこで少し考える。絵筆がなくなったのは重要らしい。誰でも使えるから?でも死者の心を封じるだけならば、普通に扱えばただの絵筆?いや、でもギュンターのおっちゃん昨日元気だったらしいし…]
おなかいたいのじゃないの?
だいじょうぶ?
[なんだかユリアンと話す様子もおかしいミハエルを
心配げな表情で顔をじっと見た。
そして話の内容に、首をかたむけて]
しらなかった、のなら、
はんにんじゃないのね。
[アーベルに、にこりと笑った。]
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