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[扉の音に振り向けば、そこには少女が一人]
涼、さ…。
[戻って来た。一人で。血のついたまま]
晴美、さんは……?
[けれど利吉に駆け寄る姿は、とても彼女らしくて。動揺していることだけが見て取れて。最後まで聞けずに]
[ライターをもてあそぶ史人が目に入ると、吸いたいのだろうと言うのが理解出来て。申し訳無さそうな表情になる。謝罪の言葉が出なかったのは、隣で琉璃が眠っているのと、謝ればまた言われるかな、と少し考えたため]
[玲からお茶を受け取ったところで、旅籠の扉が開き、涼が駆け込んできた]
涼ちゃ……その、格好。
[涼の服は紅く彩られていて。その姿に思わず息を飲んだ]
[広間に戻れば、孝博を椅子に座らせて。
自身も、その隣に座る]
そのお茶、もらっても良いか?
今は、温かいものが欲しい。
[説明を求められれば、孝博を視線で指してから首を振る程度。
てもちぶさたに、口を*湿らせる*]
あ、ぁ。ふーみん、せんせー…っ
[りきっちゃんのそばで膝をついて。
演技じゃなくて、今になって、怖くなった。
殺したあの瞬間が、まじまじとよみがえって、手が震える。
弱いから、怖くて。]
は、はるちぃちゃん、ど、しよ。
おばーちゃん、しん、で、
[苦しい理由は、]
包丁、落ちて、て……
[ポケットに、ライターを放り込む。
カチン、という金属音が微かに響いた]
それに、その格好……。
一体、何があったんだ?
[身を震わせる様子に、表情を険しくしつつ、更に、問いを重ね]
あか、かったの、
はるちぃちゃん、あかかった。
おばーちゃんの、血、みたいに…っ
こわくって、
こわくって…っ
わたし、はるちぃちゃんに、包丁…
涼、ちゃん、落ち着いて?
おばあさんの、ところには、行ったんだ?
…あか、い…。
おばあさん、の、血…みた、く?
え……晴美君、が?
[涼の言葉の断片を組み立てようと、彼女が発した言葉を反芻する。組み上がってくるのは、想像したくない、出来事]
[裕樹たちにお茶を出した体勢から振り向いたまま。
涼の告白の内容に息を飲む]
………。
[何を言うことも出来ず。ただ呆然と見ていた]
[はるなちゃんの言葉に、頷く。なんども、頷く。]
どうしたら、いいのか、わかんなくって…っ
どうしよう、
[それは、紛れもない本心だというのは、確か。]
[断片的に語られる言葉。
察しがつく部分と、予想される部分と。
その双方に、感じるのは苛立ち]
……ったな。
確かめに行くにも、この子のばーちゃん家ってのがどこか、わからんし……。
[孝博を強引に連れ出し椅子に座らせて。
自分は座る前に戻ってきた涼らの近くへと向かう。]
おかえり、涼ちゃんたち。
…ところで何で利吉は寝てるのかしら。
[何があったか分からない。
ただこちらはこちらで何かがあった、とは簡単に察せて。]
[涼からの肯定。想像してしまったことが、正しいと言うのだろうか]
晴美君、が、あかく…。
それ、を、涼ちゃん、が…?
[告げられた言葉から行くと、涼は晴美に包丁を向けたと取れる。まさか、と思いながら、更に確認するように訊ねかけた。そうであって欲しくないと言う願いを込めて]
小百合、ちゃん。
[戻って来た小百合に居なかった間のことを簡単に告げて。孝博の様子がおかしいと気付くと]
……そっちでも、何か、あった、の?
……っとに……なんだって、こんな……。
[榛名と涼のやり取り。
そこから導き出される結論に、酷い頭痛を感じた。
幼い頃から見知っている者を、自身の生徒が、というのはさすがに]
……冗談、きついぜ……。
[願いは儚くも打ち砕かれた。涼が、晴美に包丁を向けたのだと言う。紅く染まった晴美。それが何を意味するのか。答えは一つしかなかった]
そ、んな…。
どう、して、そんな、こと…。
[おそらく涼本人が一番混乱していることだろう。しかし、そう言わずには居られなかった]
わ、かんない…っ
わかんないよ…!
じゃあ、だれが、おばーちゃんを、殺したの!?
[本当に、どうして自分なのかもわからなくて、
どうしてあんな衝動が沸くのかもわからなくて、
ただ、悲鳴のように。]
どうしたら、死なないで、いてくれたの…
[私にも、わからない。そして、きっと、二人にもわからない。
ただ、望んだのは、――*]
……場所、わかるのか、玲?
なら、教えてくれ……さすがに、坊っちゃんほっとく訳にゃいかねぇ。
[後で、様子見に行く、と小さく呟いて。
また、*窓の外へと視線を向けた*]
…ご主人、寝室で亡くなってたわ。
[軽く目を伏せ、榛名の問いに端的に告げた。
場所を伝えたのは、うっかりそこに近づかない為である。]
…涼ちゃん。
[西行院さんが刃物を持って、というのには何事があったのかと思ったが。涼が震えている様子を見て、先にそっと頭を撫でた。
何でこういう肝心な時に利吉は寝てるのよこの馬鹿、とは内心でぼそり。]
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