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―昨晩・キャロルの部屋―
……なら俺のほうからも一つ話しておこうか。
ラッセルも、占い師と呼ばれる力を持っているかもしれない。
[詳細はあえて伏せておいた。切り札にもジョーカーにもなるかもしれない。
だがラッセルの態度を見ていたのなら、彼が何を占ったかどうか勘付くことも出来るだろうか。
そしてあえて論点をすり返た。もっともそっちの方が重要な事には違いないのだが。]
問題は、占い師と呼ばれる奴らはそうそういないってことだ。
踊り子の君、そんな稀有な者が二人もこの場にいると思うかい?
[じっと彼女の目を見て、告げた。]
可能性はないとは言わない。
だが……狼が能力者の事を知っていれば、嘘をついている可能性もある。
それからもうひとつ。人間だが、狼に与するという狂ってしまった者というのもいる。
もし彼らがこの場に居て、狼と何らかの方法で意思の疎通があり、指示をうけて動いているとなると……。
─自室前廊下─
[どれだけ喪失状態で居たか。
次にラッセルが動いたのはトビーに声をかけられてだった。
怯えるように身を竦ませ、視線を向ける]
…ぅ……ぁ…。
[壊れていないなら。
どう言う意味か理解出来なかった。
けれど起きてすぐだったこと、叫んだことで喉が枯れているのは確かで。
震える手を伸ばしてグラスを受け取った。
手の震えに合わせ、水面が何度も跳ねる]
―昨晩・キャロルの部屋―
[ラッセルが、ヘンリエッタが、どうという判断は口にしなかった。彼女の意見が気にかかった故に。]
……俺が君に話せるのはこれくらいだな。
[椅子から立ち上がると、退出しようと扉へと向かった。キャロルは何か口にしただろうか。
扉に手をかける前に、一度振り向いてから。]
キャロル、君は誰を信じる?
[そう笑みもせず告げて、部屋を出て*自室に戻った。*]
よかった。
ラッセルさんは壊れてなかった。
[笑って、水を手渡す。
ちょっと零れそうに見えて、手をまた伸ばす。
グラスに添えようと。]
ええと、埋める?んだっけ?
ラッセルさんは、水飲むだけじゃなくて、あびる?それとも、お湯?
ええと、ふろ?
……あ、動ける?怪我してない?
[腕は平気だろうと、足元を見下ろす。血の色と、ラッセルの足が見えた。]
─自室前廊下─
[トビーが笑う中、水を飲もうと手を動かすも、震えのせいで上手く飲めない。
難儀していると、横から小さな手が伸びて来た]
──ダメっ!!
[自分の手に触れそうになり、声を上げ、腕で弾く]
ぼ、僕に触っちゃ、ダメ…!
触っちゃ……!
[腕で弾いた時に触れてしまったかも知れないなんてことまでは考えることが出来なかった。
とにかく触れさせまいと、トビーの手を拒絶する。
怪我については首を横に振って否定した]
なんで?
[ラッセルの腕に払われて、弱い手ははじかれる。
きょとんと、不思議な顔をして、一言で尋ねた。
それから、ラッセルの顔を見る。]
まだ、僕、きたない?
うーん、洗った?んだけどなぁ。
[垢とかは落とされたはずなんだけど、と、呟くのはズレた言葉。
ギルバートには触っていたような覚えがあったので、首を捻る。]
僕は、血とかは気にしないけど。
[怪我がないと首を振るのに、良かったねと笑う。]
動けるし、立てるし、歩けるし、逃げられる。
血をつけてたらだめだよ、ラッセルさん。こわれちゃうし、くさくなっちゃうよ。
ちゃんと流しにいこうよ。埋葬?も、するんでしょう?
―回想―
[促される侭に広間で椅子に座りカップを受け取った。
冷たい指先を温める様に両手で抱え俯きながら口へと運んだ。
激昂しているマンジローの声に何度か身を震わせる。時折僅かに顔を上げ相手をしているハーヴェイやジーンを見た]
キャロルさん…。
[何度目かで傍らの人を見上げると険しい表情をして居た。
不安の滲む声で名前を呼ぶと大丈夫という笑みが返って来る。
安堵に縮ませていた肩の力を抜いた]
―回想・昨夜広間―
狂気かは分かりませんが。
ヴォルフェ様が「全員を殺したら人狼を殺したことになる」と「殺せさえすればどうでもいい」と仰ったのは本当です…。
[一度確りとマンジローを見るとハーヴェイを支持するように告げる。
それきりまた俯いているとキャロルから退室を促された]
はい…。
失礼させて頂きます。
[頷いて立ち上がり広間に居る者達に頭を下げる。
部屋を出る直前にトビーの「捨てる」という言葉が聞こえて肩を震わせた。
如何しても少年の思考は異質な物と感じられて仕方が無かった]
―回想・自室―
有難う御座います。
あの侭居たら気分が悪くなりそうでした。
[連れ出してくれた事と送ってくれた事の両方に礼を言って頭を下げた。繋いで貰って居た手を一度強く握り締める]
キャロルさんが居て下さって良かった。
お休みなさい。
[心細さは隠す様にして微笑み手を離した。
其の侭寝台へと潜り込み目を閉じ深い呼吸を心掛けた]
─自室前廊下─
[紡ぐトビーの言葉に、そうじゃない、と言うように首だけ横に振る。
どうにかグラスを口へと運ぶと、半分くらいまで一気に飲み込んだ]
……まい、そう……。
[反応出来たのはそこだけだった。
トビーの笑みに笑みを返すことは出来ず。
血を流さなければいけないのは分かっていても、まだギルバートの傍を離れたくは無かった]
……あとで、行く……。
[小さく呟く]
―自室―
[布団の中で寝返りを打つ。
耳に前と同じ様な叫び声が飛び込んでくる。
聞きたくないと言う様に掛布を被り何度も深呼吸をした]
駄目。ちゃんとしないと。
殺されちゃう。
[何度も呟いて静寂が戻ってから動き出し昨日までと同じ服に少し躊躇いを示してから着替える。
着替え終わるとまた何度か深呼吸をして部屋の扉を静かに開いて廊下へと出た]
じゃあ、どうして?
触られると、痛いから、怖い?
[不思議に思って問いかける。
視線は以前見た、傷跡へと向かい。
呟きを返すのに、うん、と頷いた。]
そう、まいそう。だよね。埋める?
あとだと、落ちなくなっちゃうよ。
死んじゃったのにずっとそばにいたら、壊れちゃうし。
ええと……
[うーんと悩みながら、死体へと視線を向ける。
前に見たことのある光景を思い出して、その時に聞いた言葉を尋ねることにする。]
「一緒にいたい」の?
─自室前廊下─
[問われる言葉に再び首を横に振る。
上手く説明するための言葉が見つからない。
だから、ただ首を振って否定するだけになった]
…埋葬、するまでは。
……僕が、死なせちゃったから……。
[一緒に、と訊ねられると肯定と共に言葉を紡いだ。
汚れを取るのはその後にすると]
―ラッセルの部屋の前の廊下―
ちがうの?
ラッセルさん、よくわからない。
僕にはわからないことだらけだけど。
[心の機微などに理解が示せるはずもない。
首を傾げた。]
じゃあ早く埋葬しないとね。
死なせちゃった?
ラッセルさんが殺したの?ラッセルさんが人狼?っていうのなの??
[不思議そうな顔でラッセルを見る。
でも殺したようには見えなくて、余計に悩むよう。]
―自室→廊下―
[いつもより遅く起きたのは、眠るのが遅かったせいだ。
悲鳴には気づいていなかったのか、普段どおり身支度を整えてから部屋を出た。
出た瞬間、鼻に届いた匂いに、眉を潜めてからそちらに向かおうとして。]
シャロ?
[どこか怯えた様子で廊下を歩く彼女に近づき肩に手を当てる。]
どうした、大丈夫か?
[そう顔を覗き込む。彼女はどんな表情を浮かべていただろうか。]
─自室前廊下─
…………そうじゃない。
[またふるりと首を横に振る]
……ギルは、ひつじだったの。
ひつじは、おおかみに食べられちゃうの。
僕、ギルがおおかみじゃないって分かったから、信じられると思ったの。
信じたら、ギルも護ってくれるって言ってくれた。
……そしたら、食べられちゃった……。
…僕、前にも、おんなじことしたのに……また……!
[カタカタと震えて、グラスを両手で持つ。
グラスの中間くらいで水面が踊るように弾けた。
ラッセルの表情は歪み、枯れるを知らぬ川のように眼から涙が零れる]
―廊下―
[最初に見えたのは赤髪の青年と少年だった。
其方を見ながら後ろ手に扉を閉める。思ったより大きな音が響いた]
ラッセル様、トビー様。
[意を決して近づいて行く]
─2階・客間/昨夜─
[渡された白い花とその理由。
戸惑いは束の間、返したのは、お上手ですこと、という軽口]
[その後に語られる、能力者についての話。
碧は、険しさを帯びる]
……能力者、か。
それについては、人伝で聞いた程度の事しか知らないわね。
深く調べるような時間も、必要もなかったから。
……できれば、深くは関わりたくなかったけれど。
[呟いて。
深く息を吐いた後の長い沈黙に、僅かに眉を寄せる]
ハーヴ殿?
[どうしたのか、と問うより先に語られた事。
ラッセルも力持つという可能性。
そして、偽り言う者の存在の示唆。
碧の瞳が、やや、細められた]
……そう。
ありがとう、色々と教えてくれて。
[立ち上がるハーヴェイに向けるのは、短い言葉。
そして、立ち去り際に向けられた問い]
……誰を?
あら、わざわざ聞かなければわからないかしら?
[はきと言葉にはせず、はぐらかすよに、笑む。
碧の瞳には、笑みの気配は見えぬやも知れないが]
―ラッセルの部屋の前―
[首を振るのも、続く言葉も、表情も。見て、聞いて、不思議そうな顔をする。
ひつじ、というものが何か、トビーは知らない。おおかみ、というものも、トビーは知らない。
ただ、強いものがおおかみで、弱いものがひつじだというのはわかった。]
ギルバートさん、強い人だと思ってたけど、違ったのかなぁ。
それとも、殺した人が、すごく強かったのかな。
でも、信じたら死ぬって、おかしいよ。死ぬのにそんなことは必要ないよ。
信じなくたって、信じたって、死ぬよ。嘘ついたって、死んじゃうし。
生きるのってとてもむずかしいよ。
綺麗な人は、ちがうのかもしれないけど。
[少し首を傾げて、ラッセルのふるえに、またグラスへと手を伸ばす。持っていたほうが安全かなと思って。]
誰のせいで死ぬなんてないんだよ、ラッセルさん。
あにきが言ったんだから本当だよ。
死んだら、それは自分の責任。ギルバートさんがラッセルさんを護るって言ったなら、ギルバートさんはそうしたかったんだから、ラッセルさんがラッセルさんのせいだって言ってたら、きっと悔しいと思うよ。
[ハーヴェイが出て行き、ひとりになった女はひとつ、息を吐く]
……何が真実で何が偽りか。
それは、人のものの見方、考え方と同じ。
あるものの真実は、あるものの偽り。
全てが重なり、同じになるなど、稀有なこと。
[歌うよな呟きの後、手にした白の花弁に唇を軽く、触れる]
……私は、私の思うままに。
[呟きを聞くものは室内にはなく。
やがて舞い降りる眠りという紗に包まれた女を呼び起こしたのは、叫び声]
……何が?
[訝るように呟いて。
身支度を整えると、廊下へと出る。
白の花は、小さなコップに生けられ、窓辺にひっそりと置かれていた]
―廊下―
[ふらふらと歩いているとハーヴェイから声をかけられる。
声より先に肩に手を触れられていれば驚いていたかもしれない。
けれどもかけられた声はよく知った、慕う相手のものだったから驚かない。
振り向いて向けた表情は不安げで、けれども体の微かな震えはとまっていた]
……こわい……
[小さい声で応えて、きゅっとハーヴェイに抱きついた]
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