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……運んでやれるなら、その方がいいんだろうが。
自衛団の連中次第、かね。
[エーリッヒの疑問の声>>102に、軽く肩を竦め。
それから、がじ、と頭を掻いて息を吐く。
向かうのは、立ち尽くす赤い髪>>110の所]
……座れるとこ、いくか?
[泣くなとも落ち着けともしっかりしろ、とも言わない。
投げるのは、ただ、休む事を促す言葉だけ]
― 朝/宿屋個室 ―
[ウェンデルの朝は遅い。
遅いが、流石に同じ屋内、近い部屋の前の叫び声は
深い眠りも覚ましていた。
ただ外の足音を聞きながら
ぼうとする頭を振って、
眠気眼で廊下へと出る。
人の姿を捉え、其方の方向――ロミの居た部屋の方へ]
なに、
[問いは言葉を続けなかった。
血の匂いに、琥珀が瞬き、
目を伏せて手を握り締めた]
[借りている部屋へと戻り、荷物をとって
アーベルか女将かを探し、湯を使わせて欲しいと願う。
用意がまだなら、水でも良かった。
身をきれいにして着替えを済ませ、息を吐く。
手を見下ろして―――きゅ、と、握り。
洗面所の鏡の前に立ち、自分を見詰める。
上目で見る卑屈そうで地味な、冴えない女がいる。
暫くの時間そうしてにらめっこを続けたあと―――
不意にえづき、俯いて背を丸めて胃液を吐いた]
― 前日/宿屋 ―
自分と同じだと思ってしまって。
お引止めしなければ良かったですわ。
[俯いた顔を上げると見えるのは深い哀しみの表情。
思うところはあっても、その死を悼む心に嘘偽りはなかった。
食事はほんの少しだけ。どうにか、というように口にして部屋に戻り休んだ]
[こくこく、と何度も頷く様子>>115に、僅か、苦笑を滲ませて。
それから、宥めるように、頭を撫でた]
ん、ああ。
そっちは、頼むぜ。
……こっちは、何とかなる。
[白に包まれた亡骸を抱えたエーリッヒ>>117にはこう言って頷いて]
ブリジットも。行こう?
[ミリィに続くように、少女にも声をかけた]
― 宿屋 ―
[暫くの後、手には爪の跡が微かに残る程度だけれど
手を開いて、部屋の前へと近付く。
去ってゆくゲルダ、エーリッヒの二人は、ただ見送るだけだった]
――おい。
お前ら、一旦どけ。
顔洗って来い。
[泣いている女性には、ぶっきらぼうにも聞こえる言葉を伝える]
此処、他の女が近付かないようにしておく。
[半ば眠気が覚めきっていないからか、
琥珀の目は半眼になっていた。
ライヒアルトに二人は任せる気満々だ]
― 翌朝 ―
[今日もまた、眠りを引き裂くのは誰かの悲鳴。
獣の咆哮のようにも聞こえる声に急かされて、重い頭を抱えながら覚醒する]
頭、痛い。
[顔をしかめながら髪を括って服に袖を通す。
新しく出した替えの服は、喪を示すような黒い服だった。
仕度を終えると足取りも重く部屋を出る]
―宿屋個室前廊下―
[泣きじゃくる僕には、周りの音は殆ど聞こえていませんでした。
それでも自分の髪に触れる感触>>99が切欠で、少しだけ顔を上げます]
……。泊まろうなんて、言わなきゃ良かった……
無理にでも、家に帰れって、そう言ってたら……っ
[彼に対して言った訳ではありませんが、言葉はぽろぽろと零れます]
……。
[次に名前を呼ぶ声は耳に届いて、僕は彼女>>115の方に首を向けました]
[友達の身体はいつの間にか、シーツに包まれて見えなくなっていました。
自衛団に掛け合うという言葉>>117が聞こえます]
……帰して、あげて。
[迷ったけれど、着いて行く事は止めました。
さっきと同じ言葉を、掠れかかった声で呟きます]
……。
……うん。
[拭っても拭っても、涙は簡単に止まりそうにありません。
細工師さんからの声には頷きましたが、何とか立ち上がることはできても、足許はおぼつかないのでした]
─ 宿屋外 ─
[宿屋を出ると、案の定自衛団員が数名宿屋を張るようにして立っていた。
彼らは白い包みを抱えて出て来たエーリッヒを警戒する]
───……ロミが、襲われたわ。人狼に。
この子は人狼じゃないわ。
親御さんのところに返してあげても良いかしら?
[告げた言葉と問いかけに自衛団員達は見るからに動揺していた。
ひそひそと、団員達の間で小さな相談が始まる。
ややあって告げられたのは、一旦自衛団で預かると言うことだった]
…そう、分かったわ。
ああ、それじゃあ、もし親御さんのところへ運んでくれるなら───。
[そう言って、紙とペンを借りて、短く文章を連ねる。
二つに折りたたんでロミを包んだシーツに挟めると、ペンを団員へと返した]
[紙には無記名で”護れなくてごめんなさい”と記されている。
出来るならば護りたいと思った少女。
何も出来ず、死なせる羽目になってしまったことは、エーリッヒにも大きく圧し掛かっていた]
……お前、な。
[ある意味では厄介な方を押し付けてくるウェンデル>>119に、すごく、いい笑顔が浮かんだ。
もっとも、一瞬だけだが]
……ん。
じゃ、行こう。
[頷くブリジット>>124に向ける表情は穏やかなもの。
足許覚束ない様子に気づくと、ほら、と片手を差し出した]
慌てなくていいから。ゆっくり、な。
― 宿屋廊下 ―
[身支度している間に騒ぎは収束したようで。
額に手を置きながら、誰かの部屋の前に立つウェンデルを見た]
何が。
[あったのかは聞くまでもないだろう。
泣いたままのブリジットやミリィ、二人を促して移動しようとしているライヒアルトも見えれば特に]
誰が、とお聞きするべきなのかしら。
[ウェンデルの方に近づこうとしながら問いかける]
……。
[折角立ち上がっても足が震えて、すぐに膝を折ってしまいそうになります。
躓きかけた所に差し出される手>>127を、縋るように両手で握りました]
…… ごめん、なさい。
[小さく謝罪を紡いで、でも手を離せば倒れてしまいそうでした。
曇る視界は定まらず、導かれるのに従って、ただひたすら足を進めました]
[ミリィの内心>>129は気づく事ない。
以前、色々と無理をしていると感じた時、とっさに手を出して頭を撫でた事は、一応覚えてはいるのだが。
『撫でてあげると、気持ちがおちつくのよ』
そう、笑っていたのは、幼い頃に死んだ母。
それを、実践しただけ──とは、当時の言い分である]
……あー、はい、はい、と。
んじゃ、そっちは任すぜ。
俺らは、食堂行くから。
[新たにやって来たノーラに一時、翠を向けて。
不機嫌そうな物言いをするウェンデル>>130に投げやりとも取れる口調でこう返し、食堂への移動を促す]
ごめん、なさい。
[「邪魔だ」と不機嫌そうに口にするウェンデルに
視線を向けられぬまま答えた。
自分では、何があっても毅然としていられると思っていたのにこの有様だ。非常事態に泣くことしか出来ないのなら、罵られても仕方がない]
……謝ることじゃないから。
[差し出した手を両手で握る様子。>>131
先の泣き崩れていた姿や、自分を責めるような言葉も合わせたなら、ロミの死から受けた衝撃は想像に難くない。
だから、かける声はできる限り穏やかなものにしようと努めていた。
内心には、荒れる部分もある。
さまざまなものへと向かう憤りが渦を巻いている。
けれど、それは表に出すまい、と押し込めていた]
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