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想像ついてた、って、なんでっ!
[元より直感と感性を重んじる質、裏を読むのは不得手。
更に、今は動転が落ち着いた思考を遮り、感情的な言葉を投げかける]
……狼かも、って。
[考えていなかった、けれど、考えられる可能性。
生じた揺らぎを諌めるように、頭痛が走り顔が歪んだ]
……そんなの、俺には、わかんねぇし。
大体、あんなの見たら、ほっとけねぇし……。
[上がる口角。続いた言葉に、す、と冷たいものが走る]
な、何だよ、その、妬けるとかって!?
何で、と言われても。
んー…昨日一昨日の流れからして、とか?
[曖昧な語尾を用いるも、告げる言の葉は事実]
ふゥん。ま、分かんない方が普通だろうしねぃ。
カミサマに特別扱いされてるよーなのでもなきゃさ。
ユーリは、それとは違う、か。
[確かめる響きで呟いて]
…うん?別に?
仲良きことは羨ましきかな、って、くらい?
ゲルダちゃんとエーリッヒとか。
[張り付いた笑みは取れぬまま]
流れ、から、って。
[真実の織り込まれた言葉は、虚偽の紅と絡まり混乱を生む。
紅の意を問いただせないのは、動揺故か、認める事への忌避故か]
カミサマの、特別、扱い。
[呟きが思い起こさせるのは、目覚めの夢。
蒼が困惑を強めて彷徨う]
……べ、別に、そういうんじゃねぇよっ!
けど……けど、ほっとけねぇ、し。
約束もあるから、護んなきゃ、って思ってるだけだっつの……!
そー言えば。ブリジットさんと旦那さんにも妬けたけど。
もう、ブリジットさん、いないしね。
遺った絆は、この子だけ、っと。
[指先で頬を突けば、柔らかな感触。
固まりかけの血液が、まるで傷口のようにその場所に残った。
漸くに足を動かして、寝台の側へ。そこに赤子を寝かせる]
…約束?
[膝を折れば、好み纏う紅の色彩が揺れる。
惑う蒼を愉しそうに覗き込み。
殊更に軽い口調で尋ねる]
ユーリには、護る力、あるの?
[クロエの遺体をどうしたものかと考えていると、気付いたらしい自衛団員がこちらを伺っていた]
[簡単にいきさつを話し、遺体の処遇について尋ねる]
[返るのは心無い言葉。全てが終わるまで関わる気はない、と。
疑われ、殺されたものに同情はしない、と。
遺体を埋葬したければ狼を探せ、と]
……お前らがこうなるように仕向けたんだろうが!
[吼えるような声。だけどそれは一言だけで]
[軽く舌打ちをして彼らに背を向けた]
[クロエの遺体を野晒しにしておくわけにはいかない。
一度そのまま抱えようとして、まだ血が乾いていないのに気付いて
集会場に戻って毛布を取ってくると、それでクロエを包んで彼女が使っていた部屋に運んで]
[戻ってくると今度は血で染まった筏を洗う。
ほとんどは既に筏の隙間から河へと落ちていたけれど]
[河から水を汲んで、流して]
[消えていく痕跡に何も言わず作業を続けて]
[気が付いた時にはだいぶ遅い時間になっていた]
―外→二階・自室―
[部屋に戻ってベッドに横になると気が抜けたように大きく息を吐いた]
…まったく、勘弁してくれ、って。
[濃い血の匂い。
昨日から何度も嗅いだ匂い。
それに耐えるのは少しばかり辛くて]
[それでもまだ「自制心」が働いている自分に、少しだけ*笑った*]
[赤子の頬に移る紅。
言葉にならない不安は過ぎるけれど、手を伸ばせない]
約束。
曲、教えるって。
だから……。
[覗き込む、紅。
何故か、見返せない。
疼くような痛みは、何を訴えるのか、定かでなく]
……もしも、ある、って、言ったら。
何だってんだ、よ。
[掠れた声で、小さく、呟いた]
あァ、なるほど。
[薄く細まった眼差しは、どうやら蒼と交わらぬよう]
…ユーリ。
そういうわかりやすいのは、肯定としか見えないよ?
普段のおまえなら、怪訝な顔して護る力が何か聞くだろ。
ま、別に…、
[唇から紅の舌が覗き、端から端へと]
聞いただけだから、どうだっていーんだけどね。
……うる、せぇ、な。
[肯定としか見えない、と言われ、軽く唇を噛む。
蒼はそれたまま、ダーヴィッドの仕種には気づけずに]
どうだって、いいなら、聞くなよ、な。
[吐き捨てるように言いつつ、壁に手を突くようにして立ち上がる]
……それ、より。
ここ、このままに、しとけない、だろ。
せめて、血、とらない、と。
…耳に痛いのなら、的を射た忠告ってことだよ。
そ、ね。
聞いてどうこうできるのなんてオオカミさんくらいだし。
[顔を伏せて笑い、立ち上がるのを見たなら、こちらも、ひょい、と]
ローザちゃんのために一肌脱ぐのはやぶやかでもないけどさー。
その前に二つ聞かせてよ。
具合大丈夫か、ってのと。
あと、オオカミさんは誰だと思う、ってさ。
[狼なら、という言葉に、震えが走ったのは傍目にも明らかだった。
ふる、と首を振り、扉に手をかけ]
……大丈夫、だ。
頭、痛いだけ、だし。
[一つ目の問いには、短く答え。
二つ目の問いに、また唇を噛む。蒼の瞳には、はっきりそれとわかる、揺らぎ]
わかん、ねぇ、よ。
……お前や、ハインさんじゃなきゃ、いい、とは思ってる、けど。
[途切れがちの言葉にこもるのは、願いと、疑念の交じり合ったもの。
心の揺らぎは、まるで隠せてはおらず]
……倉庫、行って来る。
[一つ、息を吐いた後。
何かから逃げるように、その場から*駆け出した*]
[与える言葉の一つ一つに返る反応が、どうしようもない程、わかりやすいもので。
微笑ましいとさえ、向ける表情は語る]
…そっか。ありがとな。
……あぁ、おまえの場合、身体動かしてた方が良さそうだしな。
行ってこい、行ってこい。
[逃げるようなその背中に、ひら、と手を振った]
カミサマってのは、ほーんと、よくやるよねぇ。
[ユリアンを見送り、室内には、赤子と二人きり。
つい、小さく声を零す]
ま、ヒトの方がカミサマよりオオカミさんよりアレだけど。
つかこの場を作ろうとしてた俺が何言えるのよ、って話でもあるけど。
[よいせ、と赤子を抱え上げ]
あぁ、もう早く。
――…全部、台なしにしたいな。
[口端の紅を舌で舐め取ったなら、部屋を出て。
各個室を周り、ローザのことを伝えようと*する*]
―2F廊下―
[ロミルダは目を覚ましてすぐに、部屋を出た。
ぱたぱたと廊下を駆ける途中、何処かの部屋で話す声が聞こえたけど、それもあまり気に止めずに。
だからダーヴィッドがローザの死を知らせに回っていたのを、ロミルダは知らない]
―広間―
[広間の椅子の下に座り込んで]
…えと。
確認、するですよ。
[スケッチブックを手に取ってから、ちょっとだけためらったのはどうしてだろう。
ロミルダはだれかに言い聞かせるように言ってから、それを開いた]
ふぇ?
[ロミルダは最初ぱちぱちとまたたいてから、目を丸くした。
髭を生やした青い髪の人の絵、その隙間に昨日の海鳥]
…これ、
[青い鳥が幸運を呼ぶと言ったのは、何のお話だったか。
けれど今そこにいるのは、不吉な黒い色の鳥]
[ロミルダは緩慢な動作で、虚空を見上げる]
…ハインおじさんが、
人狼…ですか?
[問う先は『あの子』か、他か。
見つけるつもりで選んだというのに、ロミルダはなんだかすごく困った表情で、そこに*座り込んでいた*]
――集会所2階・個室――
[目が覚めてから外には出ず、部屋で刺繍をしていた。
布の上には取り取りの糸で縫われた花々が咲こうとしていた。中には朱や蒼もある。花としては珍しくはなく、ここに来る前から手にかけていたものだから、偶然に過ぎないけれど。
窓辺に座り、射し込む陽のひかりに眼を細める]
lu... la la la...
[歌詞の無い歌。
旋律は明るいものではない。
小さな声は、扉をノックする音により、消えた]
はぁい。
[手を止め、椅子に布を置く。
警戒するようにほんの少し扉を開くと、そこにいたのは子を抱えた男。]
ダーヴさん。
朝から、しかも子連れで夜這いは、感心しませんよ。
……というか。一晩中面倒見てたんですか、もしかして。
[警戒を和らげたか、扉を大きく開く]
ああ、あれですか?
ちょっと、仕事の続きです。
……気を、落ち着けたくて。
[昨晩の出来事がなかったような、そんな暢気なやりとりも、告げられたローザの死の前に失せる。
言葉を失い、ターコイズグリーンの瞳を揺らした]
……本当に。
止まってなんて、いられないんですね。
[沈痛な面持ちになり、視線を落とした。
ゆるゆるて頭を振ると、顔を上げて]
私……、先に下、行ってきます。
何かと要りようになるでしょうから。
[見まいとする言い訳のように返す。
軽く支度してから行くから、その間に、他の皆に報せて欲しいと告げた。子を預かるべきなら、言って欲しい――とも]
……ああ、そうだ。
[彼の去る間際、思い出したように口を開く]
昨日の事だけど、私、ダーヴが人狼とは思わない。
だって、……そう、聞いたもの。
[問われても、それ以上は答えない。
室内に戻り、荷を漁る。
着替え、デッサン用の鉛筆や紙、布、分けた裁縫道具の中には、針や糸、大小の鋏などが雑多に入っている。
そのうち幾つかをベルト付のポーチに移し、腰に巻いた]
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