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―そうか。
お前さん、強いな。
[紅茶と食事ができたと告げる次期村長に、そんなふうに言葉を向ける。
特に警戒もせず、彼に向ける怒りもない。
消化不良の怒りは向ける先を完全に見失い、ある種の空虚さと変わりかけていた]
落ち着いたみたいだな。
もういいさ、気にするな。
[謝る様子に煙をふわと吐き出して苦笑した。
いつまでもカリカリしている自分が大人気ないと思えた]
だが…次にまたやらかしたらぶん殴るぞ。
俺はお空のせんせいと違って、優しくはないからな。
[にやりと笑う。
―その耳に、風が誰かの言葉を乗せてきた―気がした。
「血の宴はまだ終わらず、くだした結論は、終焉は―」と。
聞こえたか?とフォルカーを見下ろし、誰の姿もない集会場の方を見た]
─二階・自室─
死ななきゃ進まないなら、殺すしかない。死ぬしかない。
その先にボクの望むものがある。
ユリさんは、敵じゃないって言われた。
でも敵じゃないことは、味方とは限らない。
ユリさんは、手伝って、くれるの?
[振り向いた先、ユリアンを視界に捉える。僅かに金を帯びた縹色がユリアンを見つめた。その顔に既に笑みは無い]
その認識は正しい…敵でも味方でもないんだろう
エリ兄から力を貸してほしいといわれて、こうしてきたのも気まぐれだ
[人狼を前にしてもあっさりそんなことをいう]
でも…そうだな。手伝うならせめて覚悟を聞きたい。
…フォルカーを殺せるか?それとも…フォルカーの変わりに死ねるか?
─二階・自室─
エーリッヒに言われてたんだ。
[今まで呼ぶことのなかった名を呼び捨てる。続いた問いには、歳不相応な艶のある深い笑みを浮かべた]
殺さなきゃ、死ななきゃ進まないんでしょ?
[融合ではなくちぐはぐに繋がれた二種の意識。歪んだ心は拒む部分を切り捨てていた]
―(前)1階・廊下―
…あなた以外の誰が変態だと。
いえ。他の方も変態かもしれませんが…オトフリートさんとか。
[死んだ人の名を言った。少しばかり、悩んだ後に]
ユリアンさんにも蹴れって言われましたから、遠慮なく蹴らせていただきますね。
……神学は。いえ、なんでもないです。
[とりあえず、最初は手で起こしていたが、実際蹴ったかどうかは心の底に沈めておこう]
――ありがとうございます。
後で、掘るお手伝いにいきますね。イレーネさんに紅茶をお届けしてから。
フォルカーさんは……、わかりました。
拭いておきますから、安心してください。
[フォルカーと一緒というのに、少し、悩んだ。
が、なんでもないというように、首を横に振り、そして拭き終わったころにやってきたフォルカーと、台所へ行ったのだった]
ユリにいは、何を、知っているの……?
[すれ違いざまに、小さく問いかける。
彼の顔は見なかったし、引き止めることもなかった。
答えを得ることを、厭うかのように]
―外:墓標前―
[強い、と評された少年は、緩く首を、左右に振る]
強くなんて、……ぜんぜん。
変わりたいと思った、でも、僕は弱いままだ。
[吐き出される煙が空へと昇っていくのを追って、顔を上げた]
……せんせい。
[殴ると言われたことに怯えるでもなく、ぽつ、と繰り返した。
地面に水平の高さになった視線を、墓標へと向ける]
せんせい――…………… オトせんせい、いなく、なっちゃった。
[今更に実感したように、噛み締めるように、声を紡ぐ。
しかし感傷に浸る間もなく、まるで知らない者のように聞こえる声が、届いた]
……………ルディン、さん。
僕、
……“人狼”が死んで、終わったと、思った。
でも。
胸の奥底に燻る、何かが、消えないんだ。
[言葉に呼応するよう、首元の赤石が煌めく]
もし、――……もし、僕が“やらかし”そうになったら、止めて、くれますか。
そうだよ。
にしても。こんなガキンチョがそんな笑み浮かべちゃって
[イレーネに近づいて、払われなければぼふっとなでる。]
んじゃま、人間でやれることでもやりますかね。
…どうせ…ま、いいか。
外に、フォルカーとハイン兄さんがいるのは知ってるが、後は知らん。既にしってるかもしれんが、神に選ばれたとかなのは、フォルカーとダーヴ。
俺も含めて後人間を三人殺せば確か場が壊れるんじゃなかったかね?
[と知っている事柄をだらだらと挙げていく]
―台所―
前に、同じことがあったと言っていました。
[ユリアンが、という疑問に、頷いた]
力が、嬉しいって思ったら、おぼれちゃうんじゃないですかね。僕がそういうものを持ってるとしたら、と考えると。
力に頼りすぎるのは、きっと良くないことだと思います。
…フォルカー君は、つらい、でしょう。
でも、そう思っていられるなら、きっと、大丈夫だと思います。
たとえ……神がそれをお望みになっても。
[最後の言葉はちいさく。
そして、エーリッヒのことを気にするのに、少し、曖昧に笑った]
いろいろ、あったんだと思います。
僕はエーリッヒさんではないから、感情の全部がわかるわけじゃないけど。色々、重なってしまったんじゃないかなと。
─二階・自室─
[表情について言われても何も言わなかった。自分がどんな笑い方をしているかなんて分かっていなかったから。撫でられるのには抵抗せず、挙げられた内容を耳にする]
場については母さんが残した日記でしか読んでないの。
母さんは、自分が死ぬことで場を崩してたけど……そう、後、三人。
一人、誰かを……頼んで良い?
出来れば、力ある人を。
[殺して欲しい、と。そう言外に含んでユリアンを見上げた。その顔に先程まで浮かべていた艶のある笑みは無い]
誰かに吹き込んで別の人を殺すように仕向けても良い。
手段は、任せる。
―墓標前―
[オトフリートがいなくなってしまったと言うフォルカーの視線につられるように墓標を見た。
その後、不穏なことを言う誰かの声にはフォルカーも気づいたようで―]
あー、その、なんだ。
俺はチビがそんなしけたツラしてっとむしゃくしゃするんだ。
[フォルカーの頭をくしゃくしゃと撫でる代わりに自分の無精髭をごしごしと擦って]
お前さんのことはお空のせんせいにも頼まれてるしな。
妙な力があるんだろう?
心配するな。―言われなくても止めてやるよ。
それに俺も―さっきからどうも胸騒ぎがする。
[集会場の方を見やって息を一つ]
―台所―
僕が村を出てしまったから。それ以来、会ってないですね。手紙は何度も書いてるんですけど。
僕が休学してからは、僕からしか送ってないのか、それとも寮に溜まってるのか。怒られるのは確実でしょう。
[姉の事を話すときだけは、とても楽しげに。
フォルカーの様子を見ては、ほっとした息を、気付かれないように吐いた]
――あぁ、やっぱり、フォルカー君だったんですね。
エーファさん、っていうお名前なんですか。良い、お名前ですね。
[ブローチを見て、微笑む]
ずっと傍にいるのは、良いことです。喜んでいると思います。
…エーファさんは、きっと、フォルカーさんをずっと護っててくれるんですね。
そういえば、僕のことは、ウェンデルで良いですよ。何なら、ウィーでも。
[姉が呼ぶ愛称だと、問われれば説明しただろう。
他の人を見に行く、というのに頷いて、少年は蜂蜜を溶かした紅茶を持って、台所を出ていく。行ったところで、また部屋を知らないと思ったが――まぁなんとかなるか、と階段へ]
へぇ…そなんだ。ってか母親もか
いや、まあ俺もわかんねーよ。聞いただけの話で確信なんてないから
[血族なのね。とか思いながら、思わず普段のように抵抗のようなものをしないので調子にのって頭をぽふぽふした]
吹き込んでは無理だな。
もう人狼いないって思われてる感じだし。じゃあ場所がわかってるやつか目に付いたやつにするか
[軽く伸びをしてから、扉のほうへと向かう]
―外―
[森の適当な場所に穴を堀、エーリッヒを埋めた。
ほんとに適当なのか、開けた場所でもなく、樹が生い茂った間の狭い隙間だった。]
目印目印と…。
[標の代わりに、拾った石で傍の樹に格子模様を彫っておいた。
後でウェンデルに教えないとなぁと思いながら、その前に暫く立っていた。]
[部屋の扉を開けたところで止まった]
ぉ、ウェンデル。
紅茶なんてもってどうしたんだ?
もしかして、俺と同じでイレーネが心配できたってとこか?
[なんていって、入るか?というように扉を開けて…誘い込んでみる]
─二階・自室─
うん。
母さんは、死を選んで一緒に場に巻き込まれた父さんと心中した。
それを知ったのは、ここに来てからだけど。
───自分が人狼の仔であるのを知ったのも。
[調子に乗って何度も撫でる様子には、軽く睨み上げるよな視線を向けた。それは以前にも同じようなことをされた時に行ったものと同じ仕草]
それで構わない。
よろしくね。
[声は淡々としたもの。扉へ向かう様子には引き留めることなく、僅かに金を帯びている縹色を向けた]
―2階廊下―
あ、ユリアンさん。
[部屋から出てきた様子に、首を傾げる]
いえ、2階にいらっしゃったとは知りませんでした。
イレーネさんが、さっき辛そうに見えたので、あたたかいものでも、と。
ほっとしますから。
[それから、半眼になった]
もしかしてイレーネさんのお部屋に、二人っきりでいたとか、言います?
ダメですよ、年頃の子と入るときは、ドア開けておかないと。
[言いながらも、扉を開ける様子に、それじゃあお邪魔します。なんて答えてその傍へ]
ユリアンさんも飲みます?
持ってきましょうか。
ご、ごめんなさい。
[むしゃくしゃすると言われて、思わず、謝罪を口にした。眉が下がる]
せんせい、が?
……妙な――……じゃなくて、……護る、力。
本当は。
[自らの力を告げる声は、小さなものになる。
言うのは多少の躊躇いもあったが、情報源が自らの師というのもあり、伝えても良いかと思うに至っていた。
騒ぐように煌めく石を、手で押さえる]
ずっとむかし、村の鉱山で採れた石だそうです。
神の使いが訪れて、石を清め、力を宿したのだって。
……………父が、鉱脈を調べることに否定的なのは、そういう意味もあるんだと思います。村が発展するならばとは思うけれど、万が一、護り手の秘密が広まっては、って。
[集会所に目を向ける相手を見やり、戻りましょう、と声をかけて歩み出す]
[睨みあげるようイレーネの視線は視線は受け流しました。しっかりと]
そりゃそうだ。ウェンデルにばれるほど俺も落ちぶれちゃいないぞ
[何がだろうという冗談を口にして]
なるほど、そりゃ気が利く…って、あのな。
イレーネは俺にとっちゃ妹分みたいなもんだっての。
だから心配ご無用
[なんてあっさりとした様子で軽く否定して]
ん?ああ、気遣ってくれなくても俺はいらんよ。
それよりもイレーネに
バレるって嫌な言い方ですよ。僕は確かに鈍いですけど。
[小さく溜息を吐いて]
でもダメです。マナーです。
って聞きました。
[否定にも、しっかりと言った。
けっこう厳しいらしい]
ユリアンさんもお疲れじゃないですか。
…もちろんイレーネさんにもお渡ししますけど。
それなら、下に、じゃがいものちょっとした食べ物もありますから。食べられそうなら。
[階段の方を振り返ってから、室内をひょこりと覗く]
イレーネさん、大丈夫です?
…紅茶飲めそうでしたら、これ。
[手元へと視線を落として。許可がないので、まだ入らないらしい]
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