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[近付いた大樹は、けれど普段と変わらぬままそこに佇み。
やがて降り出した雨にも青々とした葉を揺らすばかりで]
やっぱり、気のせいよ。
[そう言いながらもぼんやりと大樹を見上げていた。
やがて大分濡れてしまったことに気が付くと、慌てて寮へと戻った]
—女子寮・自室—
[浴場へ行き、そのついでに、雨を被ってしまった洗濯物を
タオルと一緒に共用の洗濯機へ放り込んで来た。
洗濯が終わるまではまだ時間がある。
フユは窓を開け、網戸越しに雨を眺めている。
雨音以外は*聞こえない*。]
……ずっと、降ってれば良いのに。
…天野先輩。
[走りこんだ玄関先にはヒサタカが立っていて。
無言のままの視線に怯む。
下手に水を払うと巻き添えにもしてしまうだろうと考え、そのまま動きが止まってしまった]
─図書館─
そろそろ、移動しないとまずいか……。
[雨の勢いが衰えてきたのを見て取り、小さく呟く。
傘を貸しますよ、という司書の言葉に、大丈夫ですから、と答えて外へ。
テキストやノートを濡れないようにとしっかり抱え込み、寮へ向けて走り出す。
雨が冷やした大気と、跳ねる水の感触は、どこか心地よく思えて。
昔から、雨の中を走り抜けるのは嫌いではなかった……幼馴染たちには、おかしい、と突っ込まれ続けてはいたが]
─寮・玄関前─
[水を弾きつつ寮まで駆けて行けば、そこには複数の人影があり]
あれ……?
どうしたんですか、こんな所で?
[僅かに濡れて額に張り付いた髪を避けつつ、場にいる二人に問いかける]
は、はい。
[言われて端の方に寄ると、ハンカチを取り出して拭き始める。
緊張と冷えたのとで、その動きは少し鈍い]
あ、各務先輩。
…雨に降られちゃって。
[暫く雨に打たれていたため、服の端からもまだ水滴が垂れていた。
困ったなと思いつつ、とりあえず裾を絞って水を切る]
[ヨウコの様子を、再び見ると、踵を返して寮に入り、乾いたタオルを二枚持って戻ってくる]
………二人とも、早く着替えた方がいいぞ。
[タオルを差し出して言った]
……三人目って、何がです?
[ヒサタカの言葉に、不思議そうに首を傾げて見せる]
ああ、突然降ってきたからね。
早めに、身体、温めた方がいいよ? そのままだと風邪ひくからね。
[雨に降られて、というヨウコには、ずぶ濡れの様子に眉を寄せつつこう言って]
[差し出されたタオルと簡潔な言葉に『三人目』の意味を理解して]
榎本先輩も、ですか……。
あ……タオル、ありがとうございます。
でも、このくらいは慣れてますから。
[にこり、と笑いつつタオルを受け取る。
慣れですむ問題ではない、という自覚は多分ない]
ありがとうございます。
そうですね、着替えないと…
[クシュン、と小さくクシャミが出た。
タオルを受け取りながら、バツ悪そうに身を竦めて]
榎本先輩も、ですか。
大丈夫だったのかしら。
[寮内に水を持ち込まないように、その場である程度までを拭いてしまおうと、タオルを使う]
―屋内プール―
[夏休み、ほとんどが帰省したはずの寮は、返って残った者たちの騒々しさを強調するようで。人を避け、昼過ぎ頃独りプールへと向かった。]
[昨日泳げなかった憂さを晴らすかのように、ただひたすらに泳ぎ続ける。身体を包む水のやわらかさが、退屈も憂鬱も溶かしていく様に感じた。]
『私の居場所はここしかない……か。』
[背泳ぎの手を止め、天井を見やれば遠くから雨音が聞こえた。]
[そういう問題じゃないだろう、とか、人の心配ばかりしてないで、とか、言いたかったかもしれないが、やはり言葉にすることはなく、明るくなり始めた空に視線を戻す]
もう、上がるな。
[雷鳴は、すでに遠く消えかかっていた]
[校舎の隅でぼおっと空を見上げていたが、突如稲光が奔り遅れて雷鳴。そして雨が激しく降り出す]
…………雨、か。頭冷やすにはちょうどいいかも、な
雨に喜ぶあいつの気はやっぱり分からないけど
[そう呟くと雨の中フラフラとした足取りで寮へと向かう。もちろん辿り着く頃にはずぶ濡れだろうか]
もう止むんですか。
間が悪かったのかしら。
[そこで再びクシャミ。
流石にまずいと思い、急いで重たくなったタオルも軽く絞る]
お先に失礼します。
[そのまま部屋に戻れば着替えを取り出して浴室に向かう]
[ヒサタカの言葉に、空を見やる]
あ……ほんとですね。
もう少しのんびりしてても、よかったかな?
[別に構わなかったけど、と呟いて。
部屋へと戻るヨウコには、ちゃんと温まるんだよー、と声をかける]
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