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[庭の片隅にある枝振りの良い大樹の下、そこから何か重量のある長い物が風を切る音が幾度も聞こえる。雨の当たらない(さらに屋敷の者に迷惑が掛からない)場所を選んで素振りをしていたのだ]
…はて。
何やら屋敷の方が騒がしゅうござるな。
[ふと聞こえてきたかすかな騒ぎ声に一旦振り上げた刀をそのまま降ろし、手拭いで汗を拭いて戻り支度をする。]
童っぱが何か悪戯でもしたのであろうかな?
[何かただならぬことが起こったような、そんな不安が胸の内に広がるのを感じつつ、あえてそれを打ち消すようにひとりごちる。だが口を出た言葉とは裏腹に、いつの間にか彼は屋敷に向かって走り出していた]
―庭→玄関前―
[屋敷に戻ろうと玄関に向かえば、そこには目を疑うべき光景が広がっていた。この屋敷と外の世界を結ぶ、たった一つの吊り橋が燃えている…!]
井戸はっ…!?
[手後れなのは一目でわかった。暗い景色の中に一際鮮やかに踊る豪火は、明らかに失火などではない。]
童っぱ!これは一体どうしたことでござる!?
[玄関の扉の前にいるトビーに気付き、叫ぶように問い掛ける。彼が指さした方を見れば何人かの使用人が燃え尽きんとする吊り橋の対岸にいるのに気付く。]
彼らが…火を?
しかし、何ゆえに?
[彼らが吊り橋を燃やしたのは明らかだ。この燃えようでは、燃えるのに気付いてから渡るのは不可能だろうから。だがそれが分かったところで何になろう。自分達はこの屋敷に閉じ込められてしまったのだ。
彼が呆然と見ている前で、吊り橋が*焼け落ちた*]
なんでかは、わかんないけど…。
あ、アーヴァインさんが死んだって、さっき言われたよ。
何人か、見に行ったんじゃないかなぁ。
ラッセルさんが叫んでたんだ。
[名前なんだっけ、というような顔をして。
人狼と聞いていたなら、その言葉も伝えられたかもしれない。
ただ、周りに人が集まってきたなら、そちらの人に説明は任せることになるだろう。]
それでなのかなぁ?って思うけど。
人が死ぬのって、そんなにないことなの?
[親しさとかそんなものはわからなくて、ただ、マンジローを見上げて*問いかけた*]
―アーヴァインの部屋の前―
[使用人が駆けて行くのは連絡を取るためなのだと思った。だからそれほど気には留めない。
少し騒がしくなったことに気付いたのか、ラッセルが動くのに気付いて。こちらを見るのに小さく声を掛ける]
大丈夫か?
[問いかけへの返事は返らずに、ラッセルが小さく呟く。
あぁ、また誰かと間違えているんだな。そう思うと呟きに自分の名が混じって、その表情が少しだけ変わるのに気付く]
ひつじ?俺が?
[問い返しては見るけれど、ラッセルはまだ苦しそうで。
縋るように服を掴むのに少し驚く。誰かと間違えているのだろうと思う。
だけど、それで少しでも落ち着くならと膝をついて、服を掴む手に触れる]
[そう長い時間ではないと思った。
ユージーンから声を掛けられて、手伝いを申し出ようとしてやめる。
それよりも、ラッセルをここから離した方がいいと思った]
ラッセル、立てるか?
下に行って水をもらおう…な?
[ラッセルが承諾したなら手を貸して、そうでなくても説得はして。
吊り橋の異変に気付くのはもう暫く*後のこと*]
―客間・回想―
[窓の外に人影は見えなかった。
其れでも不安は消えることが無い]
『監視下から外れられるのは困るのだよ』
『始末出来てしまえば早いのに』
[黒服の男達の声が甦る。
連れ込まれた時に捩られた腕が痛い]
『機を図ってお逃げなさい』
[母のこえに従って夜会から逃げ出した。
如何すれば好いのか分からぬまま衝動に突き動かされるまま飛び出したが斯うして捕まってしまった。
逃げなければ。逃げなければ。逃げなければ・・・・・・]
―回想―
[真逆二階の窓から抜け出したりするとは思わなかったらしい。
自分でも出来ると思ってなど居なかった。
其の後何処を如何辿ったのかも憶えていない]
『山のお屋敷』
『アーヴァイン様を尋ねて』
[隠れていた物陰から噂話を聞く。
運が良かったのだろうか聞いた名前だ。ならば其処に行けば好い。
暗くなるのも構わずに山へと踏み入って・・・・・・]
―客間―
[短くない時間寝具に包まって居れば震えも収まった。
深く息を吐いてゆっくりと寝台から出て部屋内を見回す]
呼び鈴は無いのね。
[綺麗に畳まれていた衣装を手に取る。
如何にか着替えた所で部屋の扉がノックされた]
キャロルさん。
お早う御座います。
[鍵を外すとそこには踊り子の姿があった。
曲がっているリボンを直してもらったりするだろうか。
他の客人は既に朝食を取っていると聞いて広間へ向かうことに]
―廊下―
ハーヴ様がそう。
ええ、本当はその通りです。逃げ出して迷った末に辿り着けた此方で保護して頂きましたの。
お招きを受けて船旅をして来たのですが、滞在先に他にもお客様方がいらっしゃって。どうも雰囲気がおかしいと母に勧められて…。
[二人でいる間にと尋ねられ肯定を返した。
その説明の途中で叫び声が響き渡る]
な、なに。
[咄嗟にキャロルにしがみ付き震えた]
―廊下―
[直ぐに何人かが悲鳴の元へ向かおうとやって来た。
震えて居るのが見えたからだろうか。広間へ行くのを勧められた]
…はい。
そうさせて頂きます。
[只事で無いのだろうとは叫びの凄まじさから容易に想像出来た。
邪魔にならないようにと其の場から離れてゆく。
キャロルが事態を気にしているようなら手を離して一人でも大丈夫だと*言っただろう*]
―>>107>>108>>110同刻・広間―
え……?何、言ってるの!それどころじゃないわ!!
[取り乱す演技をしている自分が少し馬鹿らしくなってきた。
随分合理的で非情なことを言うこの子供はなんだろう]
まるで獣に食われたみたいな……人狼に、襲われたみたいに……!!
[人狼と聞けば少しくらい驚いてくれるだろうかという期待に反してトビーは落ち着いていた。>>110
流石に自分の演技に自信がなくなってきた。
もしかすると、そんなに怖いことではないのかもしれない。
死体を見た瞬間、確かに自分は恐怖を感じていた。だがそれがどんな感情だったか思い出せない。
自分はもう『恐怖』というものがわからないから間違えたか……]
[他の人でも試してみよう。使用人達にも伝えたほうが良いだろうし。
そう考えて、トビーを残し広間を飛び出した]
―アーヴァインの部屋―
[死体に素手で触れることはなるべくしない。血には病が隠れている時があり、手袋を置いてきた今、余計な危険を招くことはしたくなかった。
それでもなるべく近づいて、その惨状を目に焼き付ける。
肉片と死体と、足しても一人に足りない。千切り取られた部位は、内臓の柔らかな部分だろうか。
暫く後ユージーンから声をかけられ、邪魔にならないよう、アーヴァインの前からは離れた。]
悪い、任せる。
[顔色変えず肉片を拾う彼に後を任せて部屋からは出た。嫌に冷静な様は少し気にかかったが。
外にいたギルバートの声が耳に届くと頷いた。]
まず間違いないだろうな。
野良犬やただの獣にやられた、よりはよっぽど可能性が高い。
[ただの獣の仕業なら、わざわざ屋敷にまで入り込むはずがない。
逆に人狼に見せかけた人の仕業という可能性はあったが。ここまで遺体を切り刻める人間がいたら、それは人狼以上にたちが悪いものだと思う。]
…とにかく、ラッセルをここから離そうか。
[動けないでいるギルバートに、そう指針を出すのと、彼らが動き出すのは同じか先か。]
[最中で、ラッセルがギルバートをひつじと称するのを聞いた。]
……ひつじ。ギル、も?
[比喩のようにも思う。だがその前に呟いた言葉が気にかかった。]
狼じゃない……。
[ぽつり呟き反芻するも。
その場にいた者に意味を問われても、緩く首を振り返すだろう。
思い当たる事はある。だが、それが真か虚言なのか、未はまだ確信もてずに。
その場に居たものを促し、そこを去ろうと。**]
―玄関前―
[愕然とした。つり橋が燃えている。
トビーによると使用人達が逃げたという。
ならば火をつけたのも彼らか。]
そ、そんな……。
[演技ではない落胆の声。
もし逃げた使用人達の中に人狼がいたら、とり逃したことになるではないか!!]
[つり橋はほんの短い時間で燃え尽きていった]
─アーヴァインの部屋前─
[何度か苦しげに呼吸を繰り返す。
ギルバートの服を掴んで居た手に触れられると、一度だけピクリと反応したが、抗うことは無かった。
手は小刻みに震えている]
………。
[下へ、と促されると素直に頷き。
ギルバートに支えられ立ち上がる。
服を握る手はそのままに、反対の手は胃の辺りを抑えるようにして、階下へと向かって行った]
─ →広間─
[連れられて来たのはひとまずは休めそうな広間。
ソファーへと誘導され、座るとラッセルは膝を抱えて縮こまる。
現場から離れたお陰か、酷い吐き気はどうにか治まっていた]
……おおかみ、いる……。
…ひつじ、たべる…。
たべられちゃう……。
[膝を抱えたまま、ラッセルはぶつぶつと呟いた。
水を貰おうと使用人を探しても見当たらないことに、ギルバートが疑問に思い始めた頃のことだったろう]
―玄関前→廊下―
[とりあえず中へ戻ろう。
雨脚が弱まっているとはいえ、父の本――人狼に対する武器となるだろう本が濡れてしまう。
マンジローとトビーにも声をかけ館の中へ入る]
[マンジローとトビーがそばにいれば声に出さぬよう、どうしようかと考える。居なければ一人ごちていたかもしれない。
自分の能力はまだ失われていないだろう…以前の自分と思考が違うままなのだから。
ならもしかすると、まだ人狼はそばにいるのかもしれない]
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