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そう。 そうだったの。
[こんな恐ろしい事に二度も巻き込まれるなんて。
抑えきれずに、一度ぶるっと身体を震わせた]
最悪の結果を避ける……あの時と同じ?
[こんな事聞いてしまっていいのだろうか。
戸惑いながらも唇は質問を紡ぐ]
一体、三年前に何が?
貴方は、どうすればいいか知っているの?
[最後の一匹をみつけ、屠る為にはどうすれば]
[さて。
それで、残る1匹の憑魔を探すにはどうすればいいのか。
生憎と、自分にはそれを探る手段は持ち合わせてはいない。
最悪、自分以外の全員を殺すというのも手だが、それはまさに最終手段。現在考えうる手としては下の下だろう。
それは、人を殺すということを嫌がっているわけではなく、そのようなことをすることが現実的ではないということだ。
歴史を振り返ってみても、勝つのは一握りの能力があるものではない。大多数の能力も何も無いものだ。
それを考えるのならば、そんな行為は自殺行為と同等だと言うことはすぐに理解できる]
もし……そんな手段を取るのだとしても、これから先、もっと人が減ってからね。
[神楽が今まで持ち合わせていた甘さは、ほぼ無い。
それだけの変化が起きるほどの出来事だった。
だが、だとしてどうする?他の手段は?]
全面的な信頼はしない。
けど、それなりに信頼できるものを味方に、か。
司。後何人だったっけ?2人?
出来ることならば、それと手を組みたい。
けど……それの判別の手段も無いんだよね。
―自宅―
根拠ないのに。…そっか。
史兄さんは、史兄さんのままなんだね、本当に。
[溜息をつく史人を見る]
それならば、とってもらしい答えだと思う。
でもそれじゃ他の人の予想もつかないね。
─住宅街・地蔵堂─
……同じように、壁に取り込まれたものは。
俺を除いて、全員、死んだ。
[淡々と言い切る刹那、僅か、目を伏せる]
どうすればいいか、と言うなら、『憑魔』を全て浄化する、としかいえない。
……『憑魔』を探す術。なくはないが、何度も使えるほど、便利なものじゃないし、な。
[淡々とした口調のまま、小さく呟く。
物言いだけ聞けば、それをなせるのが自分か、他者かは曖昧なよに。
彼女にそう話す事が、どこにどう繋がるかはわからない。
だから、これはある意味では、賭け]
─繁華街・広場近く─
[オレは倒れた幼馴染の傍から逃げるようにして駆け出す。
時間の経った幼馴染の身体は、桜の花弁となり宙へと舞った]
(次の餌はどうするかな。
力あるものは早めに『処分』したいところだけど)
[もう一人、オレは司を知っている。
皆が憑魔であるオレを探す中、一人で生き抜くにはチカラが必要だ。
けれど憑魔と言えど、人の手でも殺される可能性があるのを先に見た。
人を侮ることも出来ない]
(ちっ、利用しようとした駒に痛手を負わされちまった。
けどまだ、オレの事には気付いてないはず。
やっぱ先に喰うとしたら──)
[考えながら、オレは先程喰った幼馴染の家へと駆け込んだ]
─繁華街・瑞穂の家─
[家へと戻ると従妹が丁度起きたところらしく、腹が減ったと言われてオレは冷蔵庫にあったものを出した。
料理なんて出来なかったから]
瑞穂は。
……いつの間にか、いなくなってた。
[そう答えると、従妹はしょんぼりしてしまった。
オレが喰ったと言えるわけもなく、言うつもりもない。
大人しく本を読み始めた従妹に気付くと、オレは窓辺へと行き窓を開けた。
何をするでもなく外を見遣る]
―瑶子宅―
どーいう意味だよ、それ。
[軽く睨むように見た後、苦笑に変わる]
ま、でもさ。
瑶とかあやみんがそんな風に……変になるとか、想像もつかねーし。
[本当はそうならないことを既に確かめてあるだけなのだけれど]
……だよな。
かと言って、他の人のこともよく知らねーしさ。
[コーヒーを一口、含んだ]
後は……疑わしきは罰せよ。
それぐらいなのかな。
それが、ひふみんでも、ちーちゃんでも、憑魔だと思ったのならば、迷わず、滅す。
ふふ……信じていた人が憑魔だったんだもんね。もう、誰が憑魔だったとしても驚かないよ。
[狂ってもいなければ、自棄にもなっていない。
それは単純に可能性の問題。
人としての情が、必要無いのであれば、そうするしかない]
───きっと。
これが終わっても、私は元に戻れないんだろうな。
こういう感情、欲しくなかったよ。
―稲田家・二階―
[きみゃく、もきになったが、その次に並ぶ言葉も気になった。
いのちのしるし。きざむ、きざめ、かえる、カエセ。
暫くながめてから、ぱたんと音をたててとじ、てててと歩いて伽矢の隣から窓の外を見た。
しんと静まった静寂の世界。
それはおとぎの国のようにもみえた。]
かやにいちゃ、ももおばちゃもいないね。
………ちえ、おそとに捜しに行きたいな。
[勝手にどこへも行かないと約束したので、下から伺うようにいとこを見上げた。
うさぎは好きにすれば?とでもいうように、くたりと首をかしげていた。]
─繁華街・瑞穂の家─
(あの巫女以外にもう一人司が居る。
それが誰なのかが分からねぇ。
判ってるやつより先にそっち探すのも手か。
当てずっぽうになっちまうが……。
…そうなると、あの辺喰っちまうかなぁ)
[思い浮かんだのは印象の悪い二人の男。
特に節穴の野郎には膨れ上がった憎悪にも似た感情がある]
(どこに居っかなぁ。
司かそいつか、二択だ)
さーて。
何処に行こうかな。
というか、此処は何処だ。
[これからの方針が固まると、神楽がゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡した]
適当に歩いてきたしなあ。
さっぱり地理が分かんないや。
ま。半径500m以内。そんなに変なところまでは行ってないでしょ。
同じく、適当に歩き回れば、知っているところに出るよね。
[軽い調子で語りながら、神楽が歩き出した]
─繁華街・瑞穂の家─
[遠くを探す様に窓の外を見ていると、従妹が隣へとやって来た]
ああ……落ち着いたら戻って来ると思ったんだが。
捜しに行くか、状況が状況だ。
[伺うように見上げられ、オレは承諾の頷きを返す。
窓を閉めると、従妹を促す様に右手を差し出した]
―自宅―
そのままの意味。
[睨まれても真顔で返す]
…礼斗さんは、信じていていいと思うよ。
でも、私は。確かに今は憑魔じゃないけれど。
[俯いてミルクの入った茶色の水面を見た]
桜花の力まで借りたけれど。
止めきれなかった。
ごめんね。
[最後の声は、いつもよりどこか幼いような]
全員……!
[私は言葉を継げなくなった。
礼斗君が目を落とすのを呆然と見つめる。
そうするうち、彼はぽつぽつと質問に答えをくれる]
見つける事、できるの?
そんな事、私に言っちゃっていいの?
[それは、経験しているから?
それとも、巫女さんの様に力がある人だから?
……それとも]
……貴方が憑魔で、私を謀っていたり。
なんて事、ないといいんだけど。
本当なら、こんなに、こんなに心強い事ない。
………………っっ!!
[しばしの間、痛みに耐えるようにうずくまっていたが、すぐに司の治癒能力が発現されて、その痛みは急速に薄まっていき、神楽が気を取り直すように立ち上がった]
結界傍じゃん!
ギリギリじゃん!
あぶねーな、クッソー!!
[愚痴を大声で掃き捨てて、逆を向き歩き出した。
さて、その足取りは何処に向かうのやら]
[聞き流すところだった]
……え?
[そこでその名が出るなど、思いも寄らない。
顔を上げた]
借りたって。
……なに、それ。
なんで、瑶が謝るの。
―自宅―
史兄さんを殺したりは、したくないな。
[最後に持てた思いにしがみつく。
自然と、微笑が浮かんだ]
だから。さようなら。
桜、力を貸して。大樹の下に。
[室内なのに風が吹く。
桜色の霞が身体を包み込み、その場から消え失せた。
テーブルの上に半分中身の残ったカップだけが残った]
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