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…ベッティ、ありがと
えっと、冷やすものがあったら持ってきて欲しいんだ
其れからでも部屋戻るか決めていい位だし
[この場にライヒアルトが居なければベッティにそう頼んで。
よろりと立ち上がり、一歩二歩歩み出して。]
貫けって簡単に言うが……
俺は得物を持ってねぇぞ?
[アーベルに軽く肩を竦める。
人間を殺す為に得物は必要ではないけれど。
気付かなければ良いと思いながら
彼ならばわかっているんだろうなとも思う]
お前さんが靡けば止まるかも知れねぇぜ。
なんて、な……。
イレーネを危険に晒すなんて、出来ねぇか。
ゼルギウスに怒られちまう。
何だってこんなに頑固なのかねぇ。
賭博師だった、なんて、知らなかったぞ。
ほんとに、薄情な奴め………。
[込み上げるこの苦い感情は何なのか。
初めて感じるモノだから漆黒にはそれが何か分からない]
─宿屋・食堂─
[途方に暮れていると、ベッティから背中をぽんと叩かれ。
ライヒアルトを探して来るよう言われる]
分かった、探して来る。
[ベッティに頷くと二階へと上がり、各部屋の扉を開けてライヒアルトの姿を探した。
そこで見つからなければ浴場や宿屋内で居そうなところを探してみるも、見つけることは出来ず。
少し息を切らして食堂へと戻って来た]
ダメだ、宿屋内には居ないようだ。
外に出たのかも知れない。
[食堂に居る者に報告して、ゲルダの傍へと寄る]
わかった、冷やすものだな。
あんまり無理すんなよその足で。
[ゲルダの言葉に頷いて、冷やした水を汲んだ桶とタオルを手にして、
それを用意して持ってくるのと、ミハエルが戻ってくるのは同じ頃か]
そっか、アーベルの姿も見えないし、また…男の会話中ってやつか…?
イレーネのことほっぽりだして…幼馴染なんだろうがよ…。
[そう口にしながら、水で冷やしたタオルをゲルダの足の、ひねったらしいところあたりへ]
……別に、得物なんて、いらないんじゃね?
[肩を竦めるライヒアルトに、けらりと笑う。
人狼にとって、最も慣れた得物がなんであるかは、知っている。
その後は文字通り、身体に刻み込まれているから]
……わかってんなら、こだわんなよ。
俺は、俺の道を行く。
お前は、お前の道を行く。
……その道がかち合うなら、ぶつかるだけさ。
[返す口調は淡々と。薄情、との評には肩を竦めて]
元々、戻ってくるつもりなんてなかったからな。
……十九の時に、これと同じ騒動に巻き込まれて。
そこで、一度死んだようなもんだから。
[人と獣の狭間のもの。
生来の異能と合わせて、それが大切なものたちに害を及ぼすなら、故郷を捨てると。
そんな決意は、誰も知らぬこと]
─宿屋 食堂─
[ミハエルが見つけきらなかった二人の場所を、
知ってはいるが口にはしなかった。取り込み中なのは知っていた為。
暫くの間様子を見ていたが、ゲルダへ手は足りているのを知ると。
少しほっとした表情を見せた。]
……私、詰め所の方へ行って来るわね。
……やっぱり、もう一度見ておきたいの。ゼルの顔を。
[そういい残し宿を出ようと。]
――…いいのか、そんな事言って。
人でなくなっちまうかもしれねぇぜ?
ま、同じになりゃ……俺の手、拒めなくなるかね。
[深緑が金へと変わる。
殺して、喰らって、いつもはそれで終わりだから試した事など一度もないが。
その『感染』させる可能性を知らぬわけがない。
リヒトは純血の人狼なのだから]
道が違うというなら、同じにすりゃいいだけだったんだ。
は……、ほんと、莫迦だな。
[馬鹿げた考えだと思う。
幼馴染がそのようなこと望むわけがないのに]
――…災難だな。
こんなことに二度も巻き込まれるなんてよ。
[十九の時、その言葉にピクと片眉が跳ねるけれど
何がひっかかったのかはその時には分からない]
─宿屋 食堂→─
……大丈夫。
[向ける笑みは、小さい。
転ばないようにと言われれば、
よく夫と連れ立っては転びかけ、
毎回のように手を借りていた事を思い出した。
その手は、もうないから。]
転ばないように気をつけるわ。
いつもよりずっと。
[そうミハエルに告げて、宿を出た。]
[ベッティから貰った水とタオルで脚を冷やしつつ。
暫くそのまま休めば、それなりに動きもマシになるか。
唯、余り長い時間は走れそうにはないけれど。]
…そっか、御免ね
―――…でも二人とも何話ししてたんだろう
[昨夜から何処か様子が可笑しいのは解っていた。
募る焦りに、そわりと落ちつかなくなり。]
…二人とも、何か知らないかい?
[そう告げて。外に出るらしきイレーヌへと視線をよこし。
小さく行ってらっしゃいと告げて。]
……本当に、大丈夫なら、良いけど…
[人でなくなる、同じにする、という言葉。
思わず、苦笑が滲んだ。
自分の中には、既に人狼の因子がある。
再度、傷を受けたならどうなるかは──わからない、けれど]
……さぁて、どうだかねぇ?
俺が筋金入りに頑固なのは、お前が一番良く知ってると思ってたけどー?
[深緑が金色に変わるのを見ても、蒼は動じた様子を見せない。
代わりに、というわけではなかろうが、ただならぬものを感じた周囲の動物たちがざわめきたった]
……ほんっと、災難な上にいい迷惑だよ。
じいさまが、それを知ってて俺を隔離組に入れたかどうかまでは、わからんけどね。
[軽く、肩を竦める。瑠璃を握っていた右手がポケットに戻り、ダイスを放した]
[イレーネの言葉に、ゲルダとイレーネ二人を見比べながら]
一人じゃあぶねぇだろ?
あれなら一緒に行くぞ?
[ミハエルから共にとの言葉がなければそう自分が申し出た。
状況を考えるならば、あまり二人きりという状況はよろしくないのだろうが、イレーネから断わられると]
本当に…気をつけろよ?
[気遣う言葉を立ち去る背にかけた]
お前さんが頑固なのは知ってるさ。
お前さんが煙に巻くのが得意なのも
大事な事言わずはぐらかして……
いつも俺らを置いてくんだよな。
[泣きはしない。
けれどライヒアルトの表情が歪む]
アーベル
[幼馴染の名を紡ぐそのくちびるからは鋭い牙が覗く]
俺さ、家族が欲しかったんだよな。
[ぽつと零した言葉。
誰にも言わずにいたはずの本心。
距離を詰め誘うように誘われるように
アーベルへと手を伸ばした]
─詰め所→村の入り口付近─
[詰め所では、予想していた通り中へ通される事はなかった。
必要以上に食い下がらなかった為、手荒な真似はなかったが、
彼らが見る目は酷く冷たい。
身重だろうが、腹の子が人狼の可能性もあるのだからそれも当然かもしれない、とはぼんやりと思っていた。
そしてそれは事実なのだから。
けれど、本当の目的はここではないから、それでいい。
………会いたい気持ちは多分にあるが、それは堪えて。
詰め所を離れ、その先にある村の入り口、切り立った崖まで歩いた。
崖はだいぶ通れるよう作業が進んでいたが、吊橋はまだ半端なところで作業が止まっていた。
また一歩、そこへと近づく。
見極めようと目を凝らして。]
っ………。
[近づきすぎたか、作業をしていた者に見咎められれて追い払われた。]
私も、何の話かは教えてもらってないな。
あいついつも、なんも言ってくれないからよ…
そんで一人でふらっと、どっかにいなくなりやがるからな。
[ゲルダの疑問にはそう半ばあきらめたような様子で、きっと自分の入り込む余地は1ミリもないんだろうなと、そんなことを思っていたりした]
その足でゲルルン一人で、行くとか言わないよな?
[探しにとのゲルダの言葉にはそう釘をさすように]
[置いて行く、という言葉。
ほんの僅か、蒼が翳った。
幼い頃に、一族の異能を教えられて。
その時から、周囲との距離を一定にしていたのは、事実]
……お前、このタイミングで、そーゆー事、言うのかよ……っ!
[歪む表情と覗く牙に、蒼鷹が警戒の声を上げるが。
告げられた言葉に、一瞬、動きが鈍る。
右手は懐に潜ませたままの銀へと伸びる、けれど。
それよりは、距離を詰められる方が僅かに、早い]
―宿までの道―
……飛べるかどうか。
……どうだろう。
[大人しく宿へと戻る最中に、ぽつと呟いた。
人の足では先ず無理だが、
獣の足でなら―――それでもわからない程度の距離が空いている。
確実を考えるなら、もう少し待つべきだが、急ぐのなら
……だが失敗した時の対価は命だ。
それも二人分の。
眉根が寄った。]
…早くは走れないかもしれないけど
でも、転んでも構わない―――…後悔するよりは、ずっといい
[ミハエルとベッティにそう告げて。
ミハエルから身体を支えられ、其れに甘んじる形となるか。]
…有難う、僕は本当に幸せ者だね
なんだかいつの間にか僕ばかり心配されてる
[手を取り、ぎゅうと握り占め。
温かさに涙ぐみそうになるが、ゆるゆる頸を振って。]
…皆で探しに行こうか
三人で探せばきっと早いよ
[ベッティにくぎを刺されるとそう応え。]
――…ずっと、欲しかったんだ。
[アーベルの首筋へと顔を寄せ牙を剥く。
銀が抜かれるのとどちらが早いか。
それは人狼ではなく吸血鬼のように――
殺す為ではなく『感染』を促す為の行為。
殺す程の力は込めない。
家族を知らぬ純血の獣は
ずっと、何処かで家族というものに憧れていた]
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