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―西殿・結界前―
子供には大人が着いていましょう、ってのが一番安全だし確実なんだがなぁ…。
[ブリジットには、同じくそちらにしか聞こえない声で返しながら。
エーリッヒの声には、一瞬視線を逸らしかけ。
だがすぐに、知識面に置いてだけは問題ないのかと思い直す。
気になるのは機械竜―ユルの瞳の点滅っぷりなのだが。
というか、これは普段エーリッヒのお守りもこいつがしてるのか?
と思わざるをえなかったり。]
[クレメンスのかけた声で、二人目の仔竜が陽光の仔であることを知る。膨らんだ頬も愛らしく見えて、それが自分への不興故とは気付かずに笑いかける]
こんにちは、俺はエーリッヒ。そっちはユルだよ。よろしく。
あぁ、こちらに居たんですか。
[氷竜に呼ばれて、傍へと。火気は必要以上に抑えられている様子。
他の竜たちにも軽く挨拶を。]
あぁ、ここにいたね。陽光の君。
[吸ってた煙草をもみ消すと、別な触媒の香草を。]
「――僭越ながら、私で良ければそのお役目賜りますが。
万が一があれば…人型に変じる事も、場合によっては可能です故。
余程の事が無ければ、仔らを大事に至らせぬと約束致せるかと。」
[黄の身体をくねらせながら、ゆるりと言葉を返す。
氷竜からの視線の意は承知している。我が王の御仔、陽光の仔と
――勿論の事「仔ら」の中には機竜どのも含むのだが
…さては本人に伝わるかは与り知らぬところ。
その傍ら、光竜の無意識なりとも――聊か不躾に凝視された仔竜は
居心地悪げに僅かに身を捩った。]
[機械竜は、自分を凝視する二人目の幼子にも挨拶するように、軽くカシャリと羽根を振る。どうやら子守りになることに異を唱えるつもりはないらしい]
あれ、ダーヴ?
[先刻の話では広間にいる筈の焔竜の姿をこちらからも見つけ、首を傾げた]
偽者には偽者の存在理由が在ろうよ。
偽者にしか無いものも、な。
[ 己とは異なった方向に不機嫌さを露にする水竜に一言告げ、幾らか言葉を交えた後、食事を摂ることはせずにその場を後にした。]
―西殿・結界前―
[氷竜、命竜だけの会話はこっそりと続けられて]
本当に。まあ、エーリッヒは年の割りに落ち着いて見えるから……
安心そうではあるんだけれど。
[そうまで言ったところで、ダーヴィットの挨拶が聞こえてきた]
結界と暫くにらめっこしてたのだけれどね。
やっぱり、こっちの方法だと時間が掛かるわ……情けないけれど。
[少しだけ苦笑めいたまま、微かに首を振るった。
熱気を抑えてくれたのには気付いている様で、微笑みを感謝の言葉に代えて、伝えた]
―西殿・結界前―
お?
なんだダーヴィットか。調べは終わったのか?
[そう言いながら、近づいてくる焔竜にひらり、手を振って迎える。]
ん、まぁ…ちょっと煙草吸いにナ。
[エリィの言葉に適当に誤魔化そうとするが、未だ機嫌の悪さは抜け切らぬまま。]
丁度いいし、少し調べてみっか。
[触媒に火をつけ、抑えていた力を研ぎ澄ます。
指先から生まれるは幾つもの灯火。
一際明るいのは、おひさまの光のような色。]
……。
夏玲、だ。
[苺の飴玉を口の中で転がしながら、むすっとした顔で機竜に答える。
なんだかもう一人の小さいのが不機嫌そうな顔をしたので、きょとんとして。
ちょっと考えて、動く金属をよく見てみたいこともあって。
もそもそと布と格闘しながらリーチェのほうへと近づく。
その途中で生え際の危なそうなひとに声をかけられ]
…なんだよ。
[むすっとした声で返事を一応してやった]
だから、そういう時は信用できないんだってば。
[誤摩化そうとするのが見え見えの焔竜の態度に、小さく呟いて溜め息。続いた調べるという言葉に瞳を細め、その成り行きを見つめる]
―西殿・結界前―
[ナギに言葉を掛けられると、申し訳なさそうな笑みで、呟く]
ごめんなさい、押し付けるような形になってしまうけれど。
その時には、お願いしますね、ナギさん。
[これもまた、仔竜たちを心配してのことだが。
任せきりにしてしまうかもしれないのを思い、謝罪の言葉が初めに出た。
その時だったろうか。陽光の仔の周りを、灯火が巡る様子が、目に入ったのは]]
―西殿・結界前―
知識だけは、どっかから…多分、王か?
あの辺から仕入れてきてるんだろうけどよ。
まー。ただ見張ってる分には問題ないんだろうけどよ。
万一何かが起こった時、パニくるのは必至だからなぁ。
[思い出すのは血の動揺っぷり。
小声でひそひそ。大人の会話はこっそり続いていたが。
聞こえたナギの声にひょいと顔をあげ巡らせて。]
おっと、ええと確か、ナギ、だっけ?
頼めるなら有難いんだが。負担はないか?
[ブリジットがほんの少し渋ったのを見て取って、一応もう一度確認するが。肯定の意が返れば、任せる気は満々だったり。]
― 西殿・結界傍 ―
[ 集団よりは距離を置いて、影は己が掌を見詰める。
調和を齎すは得手でも崩すは不得手。矢張りというべきか、結界を均すは出来ても、解くは難しいと思われた。
序に、今は声は聞えない。近くに寄れば届くかというのは浅はかだったらしい。
離れた手が黒布を掴もうとして、宙を彷徨った。今は無いと悟るのは少し遅い。
少し首を傾げると漆黒に染まりし瞳が移ろわせ、歩みをざわめきに向ける。
それとほぼ同時、陽の如き光の巡りが遠く映った。]
[幾度かじゃれるように陽光の幼子の周りを巡った灯火は、差し出した若焔の手のひらへと戻って消え、]
…ん、リンクして無いね。
[確認するように、頷く。]
「私めに、其処な御気になさらずとも――氷竜殿、命竜殿。
元を辿れば、此度私に下されたは仔の守を兼ねた随行の任故。
役に立つなれば、喜びこそすれ苦とも思いませぬ。負担など。」
[氷竜殿の謝罪の言葉に、否定を示すかの如くゆるりと身を揺らす。
ふと、布の塊――…失礼した、陽光の仔が近付くにつれ、
仔が一寸怯えた様に見えたは、気のせいではなかろう。]
…! ノーラ。
[かと思えば、ぱ、と顔をあげて陽光の仔が焔竜に声掛けらると同時。
点々と草木の成長の跡を残しながら仔が駆け寄るのは少し離れた影の元。
よくも見つけたものだ――随分懐いたかに見える。影竜殿の迷惑になかろうかと僅かに不安すら過ぎらせながら、邪魔になるようであれば咎める心算ではあった。
仔を嗜める心得を持ち合わせておらねば、努々この地位についてはおらぬ。
…我が王が仔の頃は、此れに輪を掛けて*酷かったものだから*]
[焔竜の言葉を聞くと、その意味を知って、いつの間にか詰めていた息を吐いた]
……良かった。
[見つけられなかったことは残念がるべきなのだろうが、零れ落ちたのはそんな言葉]
えぇ、こっちとは繋がってない。
面倒だけど、こうやってしらみつぶしにやるしかないさね。
[ノーラの問いに答えると同時に、触媒の香草は燃え尽きる。
吐息には、僅かに御しきれぬ熱。]
?
[ちらちらと、頭上を舞う陽の蛍。
よくわからないのだけれど、とりあえず自分にもう用はないらしい。
動く金属を見たかったのだけれど、ベアトリーチェはちょっと蛍に気を取られて目を離したすきにノーラの後ろに隠れてしまった。
当然、生え際の危ない竜を見る視線が非っ常にご機嫌斜めになったことは想像に難くないわけで*ある*]
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