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─2階・廊下─
……エッタ様!?
[信じられない、という短い叫び。
少女の手に握られた銀の短剣に碧を見開く]
黒い星……白は、信じられる、と仰っていた……。
[それが意味するところは。
昨夜、ハーヴェイから聞いた話が意識を掠める。
女の位置からは、少女の唇が描く弧は見えない]
[水を汲むのは、今度は一人で出来た。
少し下に誰かいたら話したかもしれない。
それでも、降りてきそうにないなあとすぐに言って、また上に行く。]
水、持ってきたよー……?
[語尾が延びて、きょとん。と。
あがって、近づいたところで立ち止まった。
ヘンリエッタがラッセルに向かっていくところ。]
???
―廊下―
来ないでっ!
[伸びてくるラッセルの両手に向け握った短剣を突き出す。
傷付ける事は出来るだろう。けれど成人男性の本能からの力に敵う訳が無く弾き飛ばされた。
短剣は転がり身体は壁に叩き付けられ滑り落ち蹲る]
何を仰っているのですか。
[令嬢の手に、銀色の短剣が光る]
ヘンリエッタ様。
[短剣が青年を狙う為のものであることは明白。
ならば墓守のすることは決まっている。
更に距離を詰めようとした時、青年が令嬢を突き飛ばそうとするのが見え、動きを止めた]
―廊下―
[黒い星との単語を耳に届けたのはラッセルの声。
瞬時の意味は分からず。少し瞬くように周囲の状況を見ていたが。
ヘンリエッタがラッセルに飛び掛る状況に息を呑んだ。]
なっ!?
[咄嗟の事で動けない。
背にいたシャーロットの存在も、足を重くしていた。]
[ラッセルとヘンリエッタの声が聞こえハーヴェイの後ろから恐る恐るとそちらを見るとラッセルにヘンリエッタが突き飛ばされて短剣が床に転がるのが見えた]
……っ
[ハーヴェイの服をきゅっとつまむ。
今ここにいる誰かが死ぬのだろうとおぼろげに思った。
トビーが近くにきて皆に何があったかと尋ねている。
他の誰かがそれに答えるだろうか?]
─自室前廊下─
ぅあ…!
[突き飛ばした拍子に短剣が突き出され、左腕を深く傷付ける。
袖が切れ、下に溜まる紅よりも鮮やかな色が飛び散った]
っ……は、ぁ……。
───ひっ!
[ヘンリエッタが視界から外れた時だった。
その先に見える、青年の陰に隠れながらやって来るカーディガンを羽織る女性の姿。
彼女の背後に視えるのは───牙を剥いた「おおかみ」。
恐怖で引き攣った短い悲鳴が漏れる]
ひ、ぁ……シャ、シャロ……!
[恐ろしいものを見るような眼、表情で彼女の名を紡ぐ]
や、ぁ…シャロが、おおかみ…!
アーヴと、ギル、は、ひつじ……。
ひ、ひつじ、たべるの、おおか、み…!
─2階・廊下─
……っ!
[刃と手の交差の後、突き飛ばされるヘンリエッタ。
その身体が壁に叩きつけられると、女は迷う事無くその傍らに駆け寄っていた]
エッタ様、エッタ様!
お怪我はっ!?
[ラッセルと視線があう、彼はこちらにおびえながらおおかみだと言っている。]
……
[その様子におびえる仕草でハーヴェイの後ろに隠れて彼の方を見上げた。
首を横に振る。]
…(ふるふる
[私知らないといった感じで。]
……なん、ですって?
[怯えたようなラッセルの声。
視線は、彼が「おおかみ」と呼んだシャーロットの方へ]
シャーロット嬢、が?
……けれど……。
[ヘンリエッタは、彼を『黒い星』と呼んだ。
そして、女の選択肢は、少女を信じる事。
困惑は、短かった]
[トビーの声が聞こえるものの、こちらも状況が読めていない。
返す言葉に窮していると、ラッセルからの声が届く。]
なんだと…?
[届いた言葉に、身を硬くする。
咄嗟にシャーロットを見るも、当然というべきか、彼女はいつもと変わらず怯えた様子で、こちらの服を掴み首を降る。
ラッセルと、シャーロットとを交互に見て、ヘンリエッタも見やった。
嘘をついているのは一体誰だ?]
シャーロットさんがおおかみ?
ええと。
じんろう?
[不思議そうに首を傾げる。
能力者とか知らない為に。
それから、ヘンリエッタとラッセルの方に近づいていく。
ヘンリエッタに人が殺せると、トビーは思っていなかった。]
???
ヘンリエッタさんは、どうして、あぶないの持ってるの?
―二階廊下―
ケホ、コホッ。
[何度か咳をして空気を求める。
駆け寄って来たキャロルに助けられると大丈夫と首を横に振る。痛い所は在るが血の流れている感覚は無い]
違うわ!
貴方がそうなのでしょう!!
[其処にラッセルの「おおかみ」発言が聞こえた。
打ち消すように再び叫ぶ]
[トビーのこっちを見る視線を感じる、他のものはどうだったか。
怖い、その思いでいっぱいだった。
ハーヴェイの服を握る手が微かに震えている。]
……
[かつて自分にあった幼い記憶が、以前にそのようなことがあったときどうなったか思い出す。
お前が人狼だろと殺しあった村人達。]
……(ふるふる
[首を横に振る、声は出ない違う自分は違うと。
なんでラッセルはそんなことをいうのと。
ハーヴェイは自分をかばってくれるだろうか?]
クラフ様。
[青年の手に流れる血を見、触れまではせずとも、その近くに寄るが。
狼という言葉と、紡がれる名前に、ぴくりと指が動く]
今、何と。
シャロがっ、おおかみ…!
あの人と、同じ、おおかみ、視える…!!
そんな、なんで、シャロが…!
[シャーロットの姿を見て後退ろうともがく足に、カランと何かが当たる。
ギルバートの手に握られていたナイフ。
それが足に当たり紅い溜まりの中に落ちていた]
……───!
[怯えを示す眼がナイフを凝視する]
[ユージーンがラッセルに近寄り、ラッセルが何かを見ているナイフ。
ヘンリエッタがラッセルこそが狼だとそう告げる。]
……(こくり
[その言葉に頷く、だから自分を殺そうとしてるのだと。
だから自分に罪を着せようとしてるのだと同意するように。
ラッセルとユージーンの動きに注意を向けた。]
[シャーロットは首を降り続ける。
以前と変わらない仕草、怯えたような目。
瞳の色は、彼女を拾ったときと変わらない。]
やめろ、シャロが人狼だなんて信じられるか…!
[信じる事など出来るはずもない。信じてはいけない。
彼女を庇うように、背に庇い前に立った。]
[咳き込みながらも大丈夫、と返すヘンリエッタの背を摩る。
血は流れてはいないようだが、痣になっているかも知れない、という思いが過ぎる]
黒い星……彼が、人狼だと言うならば。
[紅の紗の奥。
潜めた護身用の刃の位置を確かめる。
ラッセルへと向けられる碧の瞳は、氷の冷たさを宿していた]
[直後のラッセルの動きは早かった。
落ちているナイフを拾い、駆け出す。
もうヘンリエッタは眼に入って居なかった]
君が……シャロが、ギルを!!
うああああああああああああ!!
[傍にハーヴェイが居ようとも、その軌道は真っ直ぐシャーロットへと向かって行く]
何で……何で君が……!
何でアーヴを、何でギルを……!
何で君がおおかみなんだ──!
[叫びながらナイフを振りかぶる。
共に過ごしてきた者が「おおかみ」であると、人狼であると。
自分の力は訴え、殺せと命じる。
瞳からはまた涙が零れた]
―二階廊下―
殺されたくないのです。
私も。キャロルさんも。
[切迫した状況の中でもトビーの声を拾う。
暗く歪んだ表情で振り仰ぎ問いに答える]
ラッセル様が。
其の人が狼ですわ!
[真直ぐに青年を指差した]
[自分をかばうハーヴェイの姿、今はそれが何よりも頼もしい。]
……
[ハーヴェイの後ろにいながらもその動きに注意を向けて、
いつ何がおきてもいいように、最悪の場合には……。]
[歪んだ表情の唇は確かに弧を描いていた。
ラッセルが向かう先にはハーヴェイに庇われるシャーロットの姿。
指差した侭悲鳴は上げない]
[直後にそれをかき消す様な声。
更にそれに被さる叫び]
一体何が。
[墓守の表情が僅かに変化した。
人狼と呼ばれた者たちは、どちらも護らねばならない二人。
こめかみを押さえた。
黒灰の目が微か、揺らぐ]
ラッセルさんが人狼?
シャーロットさんが人狼?
[ヘンリエッタの声を聞き、ラッセルの言葉を聞き。
ハーヴェイを見て、
自分は、首を傾げた。]
ラッセルさんが人狼?だったら、
どうしてギルバートさんが殺されたんだろう。
信じてる人が殺されるとか、一番うたがわしいのに。
その場所にいたし。
[といってる間に、シャーロットの方へと走っていくのを見て、
どうしよう、とちょっと悩んで。]
ヘンリエッタさんは、
どうしてころせないの?
[困った視線を、向けた。
ヘンリエッタを信じることは、トビーにとって難しい。]
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