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―二階・階段―
がんばらなくていいさ。
[投げられたそれを左の手で止めて、
横に流れた刃を左の腕でうけながら舌打ち]
ちっ…いてぇんだよ…イラつく…。
[オトフリートの体を掴み後ろに下がる。
オトフリートの体を掴んだまま階段を転げ落ちることになるだろうか。
掴む右腕は獣のように毛が生えて、鋭い爪がのびていた]
半端すぎて嫌になる…
[さて、どうしようか。
頼まれた存在。今人数は何人だったか。明日には多分6人になっているか?人狼と人間が同じ数になったときも確か崩れたはずだけど…]
狂い人。しっかりしろや。
[文句を言うようにぼやき、派手な音が廊下から響き、起き上がる]
─二階・階段─
頑張らないと、追いつかないんですよっ!
[今動けているのは、身の内のざわめきに拠る部分も、少なからずある。
ただ、その衝動に身を任せたくはなかった。
終わりにしたい、というのは、自らの意思、それだけ]
……って、わっ……。
[身体が掴まれる感触と、浮遊感。
抗う余地などはなく、猫の声を聞きながら共に転げ落ちる。
それでも、刃を離す事だけはしなかった]
─広間─
[少しうとうとしたのか、縹色が細まる。けれど隣で身動ぐ気配と声に気付き、緩く首を巡らせた]
……起きた?
[フォルカーの顔は自分の頭の上であるため、見上げることは出来なかったけれど]
―西・崖付近―
[エーリッヒはいつの間にかいなくなっていた。あれと思いながら辺りを見回していたら、そういえばと話題を切り替えた団員から、もう一人死人が出たことを聞いた。]
へ、ヘルミーネさんまで!?
[そちらはどうやら人狼にらしいと聞けば、そうかと落胆したように俯いて小さなため息をついた。
また犠牲者が出た。人狼を見つけるまで惨劇はきっと止まらない。]
……きっつ……。
なぁ、皆殺しを宣告され、怨み事言いながら死んでくのと、疑い合い殺し合いながら生き残りを選ぶこの状況、どっちがマシだと思う?
[問いかけに応えられる団員は居なかった。]
[階段を転げ落ちながら、左腕に刺さった刃を抜き。
下におりきる前に体を離し、受身を取る。
向こうの様子はどうかとそちらを見て、痛む左腕をさすりながら。]
手放さないのはさすがだな。
[騒ぎに人が集まるかもしれない、階下にはウェンデルの姿もあっただろうか?
もう隠すつもりもなにもない、あげるのは低くうなるような声]
俺は死ぬつもりはない、お前達を殺してでもなっ!
―一階:広間―
[顔をゆっくりと上げ、二度、三度と瞬いた後、蘇芳色のまなこがしっかと開いた。
どれだけ眠っていたのかは定かではないが、体は多少、楽になったように感じた]
……………、
うん。起きた。
ごめん、重かった……?
[緩慢に身を起こそう、としたそのとき。
階段の方角から、何かの落ちる物音が響いた]
─広間─
ううん、大丈夫。
[平気、と返し首を横に振ろうとして。何かが落ちる大きな音。音の方へと縹色が向く]
…なに…?
[不安になり、隣のフォルカーの顔を見上げた]
……っつぅ……。
[元々、さして鍛えていない病持ち、こんな時の動きは鈍い。
突き放され、とにかく本能的に身を庇いながら、落ちた。
それでも、どうにか身体を起こせば、階段を飛び降りてきた猫が傍らで鳴く]
……けほ……死にたくないのは、誰だって、同じ、でしょっ……。
俺みたいに、先が長くないのだって。
人の都合で殺されるのは、ごめん、なんです、から……!
[呼吸を整える。通り過ぎる呼気には、微かな血の味がした。
あまり、派手には動けないのが、嫌でもわかった]
―廊下―
[二人が転げ落ちたのを確認してからそっと起き上がり廊下へと出る]
弱き戦士はその内に潜む衝動に抗いながらも人狼を討たん。か
[そして猛る人狼もまた理不尽な宿命のために戦う…か。と小声で呟きながら置き去りにされたユエを可能ならば拾い上げ。階段付近まで向かう]
[扉越しでは唸り声までは届かない。
しかし何かに呼応したよう、胸の奥が熱くなる感覚があった]
……………っ、
[今すぐにでも駆け出して行きたくなる衝動を抑え、イレーネに触れる手を引き、拳を握った]
人、狼……?
――……………レーネは、ここに。
[呟きを漏らして、ソファから身を起こす]
─広間─
っ、フォル…?
[離れたフォルカーの手が拳を握る。呟かれた単語に身を強張らせた]
ぇ、フォル、待って。ボクも…。
[音の下へ向かおうとするフォルカーを追うよに立ち上がるも、ここに、と言われて足は止まる]
―玄関―
[体は冷えていた。
風邪をひくかもしれないと、どこか遠いところで思って、
集会所に戻る。
と、階段から落ちてきた姿に、扉をあけたまま固まった]
え?
[きょとん、と二人を見る。声を聞く]
何、やってるんです?
まるで、……
[声も聞こえたけれど、思わず、問いかけた。
人狼みたいに。言いかけた言葉はとまったけれど]
はははは、人の都合か…、
残念だが、俺は人である事は許されない運命らしい。
[苦しむ様子のオトフリートを、余裕の笑みを浮かべながら見下ろし]
生まれたときを呪ったことがあった、
人でありながら、人として扱われる事を許されない。
解放された時、俺はのし上がってやった。
俺は人になれたと…思ってた。
ここの村にきて、村の人たちと接して…、それを強く実感できていた。
普通の人じゃないことを知らされた時も、皆と接することで気にはならなかった。
[僅かに息苦しく痛む胸は、いまだある迷いのためか。
自分の言っている事、はじめの事は、ウェンデルには伝わったかもしれない]
だけど、俺は化け物だ、人を殺して食らう獣だ。
所詮俺は、人間であることなんて許されなかったんだよ。
[吐き捨てる言葉、それは自分に言い聞かせるようでもあったかもしれない。]
人が人を食い物にして生きてくことだってあるんだ。
別に俺が人を食う事も、仕方のない事だろう…。
[二つの食うの意味する事は違う事だけど。
鋭い爪の生えた右腕、ゆっくりとオトフリートに歩みよっていく]
オトフ、とりあえずお前からだ…。
[低くうなるような声、冷たく鋭利な言葉でそう告げる]
[フォルカーは広間の入り口で足を止めて振り返り、イレーネを見やる。
自分も、という彼女に言葉を重ねることはなく、されど、手を伸ばすわけでもない。数秒の間の後に、顔を背け階段の方へと向かった]
力になる…この場で…力になるって…なんだ?
[ぼやくように呟いて...はイレーネの部屋へと入り、『唯一とする望みはなんだ?』とだけのシンプルな、自分の名さえ書いてない紙を裏返し隠すように机の上に置いた。
生き延びるならば助かるのならばもっと人が死なねばならない。仕組みはなんとなく把握している。すぐに大勢は殺せない。明日、自分が死ねばまだ残れるだろうけれど。]
…冗長だ…
[それでもそれが…全てを淘汰してまで生き延びるのが彼女の望むものか?
あれもこれもなんてできない。一つだけ…否。むしろ何一つ届かないのがこの世界。
そんな世界誰が望む?それは直接関わらないものたちが望んだ世界。酷い冗談だ。残酷な演劇だ]
[語られる過去。それが如何ほどに凄惨であったかは知る由もなく]
……あなたの過去に何があったか。
あなたが、ここで、何を思っていたか。
生憎、俺には、わかりません、よ。
[けほ、とまた咳き込む。口元を拭った手には、淡い紅]
……そもそも。
そんな理屈は、どうでも、いいんです、よ。
俺は、ただ。
……喪われた事が。
赦せない、だけ。
[何が、とは、言わずとも伝わるか。
歩み寄る姿を睨むよに見つつ、右手に力を込める。
与えられるのは、多分、一撃。
それに、全てをかけるべく。
ただ、距離を測る]
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