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[史人と孝博を見て、懐に手を入れる。
役に立たないというのが高い。こんなときでもちゃんと下せる辺りなんともいえない気持ちが浮かびながら、ぼうっとしている涼を見る。この子が一体何をするのか。わからないが]
そうですね…いい子にして、生きていたら。
…利吉さんの願いが叶うんじゃないでしょうか
んなもん、お前に決まってんだろっ!
[返す言葉は、軽いもの。
伸ばされる手の動きとその意図を察して。
とっさに、腰を落として蹴りで足を払おうとする。
右手の経緯は知らずとも、何か異変がある事は、いつかのやり取りから気取られているかも知れない、と。
ふと、そんな事を考えつつ、右手に力を入れなおした]
終わらせることだけを、考える。
[兄の右へとずれた位置から、孝博の脇を狙って。
更に前に一歩、踏み込んでその尖った先を突き出した]
そうですね
[なんとも最もな意見である…が、それでも一度手に力をこめる]
私が、いい子に、生きていて欲しいと思うのではダメですかね?
ッち、
[手が届くかという直前、足の動きが見えた。
舌打ちをして、後ろに下がる。
身体は思うように動かず、蹴りは僅かに足を掠めるか。]
あァ、そーいや、
そッちの手、どーかしたッスか?
[体勢を立て直しながら、
口調だけは余裕を装い、力の篭る右手に視線を投げた。]
[問うた直後、視界の隅に入るもの。
其方に意識は向けていなかった。]
ッく、
[胴を庇うべく動いた片手に、痛みが走る。
横目で玲を睨む視線は鋭く。
力を篭めて振り払おうとすれば、細かな赤が舞った。]
[軽い舌打ちは、蹴りが避けられたからか、それとも唐突な問いのためか]
……別に、大した事はやってねぇよっ!
ネコ一匹の生命と引き換えに、壊し専門になってるだけだ!
[微か苛立ちを交えて返した所に、目に入ったのは、玲の動きと、紅。
そこに生じるであろう隙は逃せぬと、低い姿勢から弾みをつけて距離を詰める]
こんななかかどうかは関係ありませんが
そうなのかもしれません。私は偽善者ですから
ですが、みなを明るくしてくれる涼さんにいてほしいとも思っています
…この後色々大変ですからねぇ…
[掠めるような、でも確かな手ごたえ。
しかしそれは狙った場所へは届かずに]
ぁ!
[差し込めたわけでもない刃はたやすく押し返されて。
赤を散らしながら弾き飛ばされ、床に転がった]
…まだ。
[何箇所かに覚える痛み。
だがどこか遠いそれは無視して再び立ち上がろうとした]
[弾き飛ばされ、転がる刃物が視界に入る。
脇から掛かる声へ首を向ければ、]
ッ、そりゃ、難儀なコトでッ
[直ぐ其処へと迫る影。
身を引くが、その反応は明らかに遅れていた。]
そっか、じゃあ、
[赤い色。わたしたちの血でも、桜が咲くのかな。]
あかるくない、私はいらないね。
[玲ちゃんが立ち上がる。
私は手を取り戻す。
もう一瞬のことだ。]
――っ
[攻撃をしている先生に、走って、手を伸ばした。]
てめぇの選択だから、後悔はしてねぇけどなっ!
[言い放ちつつ、刃を繰り出す。
黒の上、桜花の舞い散る柄を持つ短刀は、生命の鼓動を刻む場所を目指すものの]
……っ!?
[不意に、後ろへ向けてかかる、力。
それ自体は大きなものではない、けれど。
それが与えた衝撃に体勢が崩れて狙いがそれ、突きの勢いも大きくそがれた]
[転がってしまった鑿を急いで拾う。
振り向いた時には涼が兄の背へと手を伸ばしていて]
駄目っ!
[もしそのまま掴まれれば兄の体勢が崩されてしまう。
その隙を狙ってくるだろう動きを妨害しなければと。
無論、実際はそんなこと考えている余裕などどこにも無かったが。立ち上がった勢いのままに孝博と史人の間に割り込もうとした]
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