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村は数十年来の大事件に騒然としていた。
夜な夜な人を襲うという人狼が、人間の振りをしてこの村にも潜んでいるという噂が流れ始めたからだ。
そして今日、村にいた全ての人々が集会場に集められた……。
村の設定が変更されました。
1.村の掛け持ちは国の規則として禁じられています。
ただし、以下の場合を除きます。
a)雑談村
b)ランダ村(RP重視の村を除く)
c)検証村
(abcの何れでも重視されるのはこの村であることを前提とする)
2.どなたでも参加できます。
ただし、必ずwikiを見て下さい。
参加報告、COは必要ありません。
参加COをされている方で入り損ねた方は、連絡ください。
3.コミットアンカーは出来る人がメモで言って下さい。
誰も出来ないなら時間を遅れさせても構いません。
4.リアル大事に。
体調を崩すまで頑張ることは、村建て人の望むところではありません。
村に入るにあたって注意する点は以上です。
何か疑問点がございましたら、メモで聞いて下さい。
なお、天声は使わずに進行します。
それではどうぞ、お入りください。
書生 ハーヴェイ が参加しました。
……ここ……は?
[零れたのは、かすれた声。
ここは何処か、何故、自分はここにいるのか。
霞がかる記憶は、それをはっきりとは知らせず。
ただ、紅を滲ませる包帯の巻かれた左腕の微かな疼きが、これが現実と示していて]
…………。
[氷を思わせる蒼の瞳を、一つ瞬かせ、ぐるりと周囲を見回す。
一面の紅、その先に見えるのは、何かの建物らしき影]
……人が……いる、のか?
[小さく呟き、それから、ゆっくりとそちらへ向けて*歩き出す*]
村長の娘 シャーロット が参加しました。
[森の中、獣道が走る傍らに聳える樹。その根元に、少女は眠るように瞳を閉じて座っていた。否、眠るようにではなく、実際に眠っているのだろう。少なくとも今は瞳を開けることは無い。周囲には紅い花が咲き乱れ、その中で風に靡く青い髪が良く映えていた]
[少女が目覚め、見知らぬ場所に居ると言うことに気付くのはもう少し先のこと。今はただ、夢の中でしばしの刻を*過ごす*]
冒険家 ナサニエル が参加しました。
[紅く緋い花の咲き乱れる森の道を、男は独り歩いてゆく。
遠く続くこの道の果てに、男の目指す場所があると、おぼろげな記憶が教えてくれる。
だが、そこが何処(いずこ)であるのか、また如何なる場所であるのかは、男はまだ、知らない。]
お尋ね者 クインジー が参加しました。
ここは、何処(どこ)だ
[片手で頭を押さえ、男――クインジーは、泉から視線を引き剥がした]
[あたりを見回す目は右のみで、左は傷付けられ、閉ざされたままだ]
[この事態に対してか、クインジーは舌打ちした]
[乾く唇を湿らせて、華を踏み潰し向かうは城へ]
[古城の周りは、木に視界を遮られてはいなかった]
[黒い――錆びたような門の前、人影があった]
[緋は散らされ、男の通った小路を作る]
おい
お前はここに住む人間か?
[一面のあか、その中では異質とも見える黒の門。
呼び掛けは、それを潜るか否かの思案を遮り、響く]
……そう聞いてくる所からして、あんたも御同輩という所かね。
生憎と。
俺も今来たばかりの異邦人さ。
お前もか
ここを何処かと尋ねても、答えは無さそうだな
目立つ場所ではあったから、他にもご同胞が居るかもしれないか……
[肩を竦めるのを見て、黒装束の男は溜息を吐いた]
[足元で緋が潰れ、道が築かれる]
[鉄の錆びたような臭いはハーヴェイからか、それとも門からか]
[軋んだ音を立てて開かれた門から*手を離す*]
何にせよ手がかりがここならば、入るしかないだろうな
ついてこい
血の臭いがしたぞ
[どれほどの時を歩いただろうか。
男が自らの行路に惑いを感じ始めた頃、空を覆い隠して繁れる森が唐突に途切れ、視界が一挙に開けた。
見いだしたのは限涯(きりはて)無く広がる緋の一色(ひといろ)。
見渡す限りに咲き誇る、赤い花に覆い尽くされた大地とそして、そこに不吉な棘のように突き刺さる、黒い古城の影だった。]
あれは……
[黒紅の右目が眇められ、見据える]
[この地の者か、同じ境遇の者か、男にはわからない]
[戸は僅か風に揺れ、再び軋む*音がした*]
[その瞬間、男を襲ったのは、]
この景色を見たことがある…
[という強い既視感だった。
それは、過たずこの場所へと道を辿らせた朧な記憶と相まって、そこはかとない畏れを男にもたらした。]
[畏れはだが、瞬く間に渇望へと変わった。
何としてもその定かならぬ親和の、湧きいずる源を知りたいという欲望に突き動かされて、男は前へと足を踏み出した。
そして、魅入られたように城に近づいて行った。]
[どれだけ刻が流れたか。眠っている少女にはその流れを知る術は無く。流れた刻とは関係なく、目覚めの時はやってくる]
……ぅん……。
[小さな声が漏れ、閉じられていた双眸が開かれる。瞼から覗いた紅紫の瞳が目の前の緋色を捉えた。しばし見つめた後、周囲を見回す]
…何よ、ここ。
[見知らぬ場所に眉根が寄せられる。眠っていたのだから覚えがないのも当然だろうか。そうでなくとも頭の中はもやとしており、記憶が曖昧な状態に右手を側頭部へと当てた]
一面緋色だらけ…。
全部、花?
[絨毯のように敷き詰められた緋色のそれは、曲線を重ねたような形の花を成していて。その緋色の中に、誘うように道が出来上がっていた]
……ここに居てもどうしようもないわね。
この先に何かあるかもしれないし…。
[意を決すると、凭れていた樹から身を離し、立ち上がり緋色の道へと足を踏み入れる。薄翠色の立て襟フレアロングワンピースの裾を払い、蒼色の薄手のケープの位置を直し、緋色に似た朱色のリボンを揺らしながら、緋色の中に出来た道に誘われるように歩を進めて行った]
学生 ラッセル が参加しました。
[止まった時計は刻を告げない。
火の消えた蝋燭は闇を照らさない。
小さな城の人気のない広間に
かつての栄華は見る影もなく、
食卓の空席や煤けた暖炉が無情を語る。
今はひとり、窓辺に寄せた椅子に座り、絵を描くものが在るばかり。
纏う衣服は寒さに耐えられるとは思えず、膝を立て壁に引っかけた足の先は素のままだった。
硝子の向こうに広がる世界を眼に映し、
無地の紙の上に線を重ね、写し取っていく。
光を採る窓は、風に震えていた。]
――…あれ。
[青年というには高い声が零れ手が止まる。
二の句を次ぐ前に、室内の影の形が変わった。
振り向いた先には、灯りを手にした男の姿があった]
アーヴ。
ねえ、お客さんみたいだよ。
[燭台に移されていく焔。
一つ、また一つと点る度に、陰影が深くなる]
お仲間さん、なのかな?
[問いに答えは返らない。
扉の先に消え行く背を見送り、
彼方へと視線を向けた。]
……血の臭い?
[向けられた言葉に返すのは、薄い笑み。
左の腕には、未だにその色彩を違えようとはせぬ、紅。
その存在など知らぬとでも言いたげな]
もっとも、ここに突っ立っていても意味がなさそうなのは確かだしな。
中に入るという案には賛成だね。
[薄く笑んだまま、言って。
自身を通り過ぎる視線を追うように、背後を振り返る。
目に入るのは、駆ける姿。蒼氷は細まり]
……は。
あちらも御同輩か、それとも……。
[近付いて明らかになったのは、赤と黒の領域を隔てるように立つ黒い門であった。
更には、その手前に佇むふたつの人影。]
[男はハッと立ち止まった。]
よぅ。
あんたは、ここの住人さんかい?
それとも……いつの間にかここにいた、御同輩……かな?
[右手の親指を、肩越しに黒の門へと向け。
立ち止まる男に投げるのは、飄々とした口調の問いかけ]
[額を押さえる様子に、僅かに眉を顰め。
右手を下ろし、左腕、紅の滲む辺りを緩く押さえつつ]
俺は……ハーヴェイ、と。
そう、呼ばれていた。
気がついたら花の中に居て、人がいるかとここまで来た。
……こっちの旦那も、御同輩らしい。
[緋色が造り出す道。それは真っ直ぐ森の外へと繋がっていた。徐々に緋色が疎らになり、頭上を覆っていた深い緑も途切れて行く]
[開けたその先に見えて来たのは森では見かけることの無かった黒。遠目から古びた黒き門を紅紫の瞳で捉え、しばらくその場に立ち尽くしていたが、その前に人が居るのに気付き、身を強張らせる。見知らぬ地で人を見つけたなら安堵しそうなものであるが、警戒の色を見せたのはそれらが全て異性であると見て取れたことにあろう]
[咄嗟に傍の樹の影へと隠れ、門前に居る人物達の様子を探る]
[端的に、自身の事を告げた後。
何気なく、視線を周囲の緋へとめぐらせる。
濃き色に過ぎる思いは、どこか、冥く。
それが何故か……と、思い巡らす内]
……ん。
[遠くない樹の陰。感じるのは、人の気配]
誰か、いるのかよ?
[─誰か、いるのかよ?─]
[再びビクリと身を強張らせた。隠れていると言う負い目がその反応を引き起こす]
………。
[姿を現すかどうか逡巡。その後に樹の影からゆっくり、顔だけを覗かせた]
……女?
[木陰から覗いた顔に、小さく呟く]
その様子だと……どうやら、御同輩の一人……って所かね。
[続いた言葉は、顔を出した少女に向けて、というよりは独り言のよう]
[人影に声をかけるのを、クインジーはただ聞いた]
[藍の男の問いには答えず、次いで視線は樹へと向かう]
[顔を覗かせた女を見た後、扉へと目を戻す]
先に行くぞ
[炎の揺らめきは窓から僅かに零れていた]
[入り口へと近付くと、揺らめく炎の灯りが強くなる]
――邪魔するぜ
[重い戸を引くと、燭台を持つ男の顔が*闇に浮かんでいた*]
……三人居る……。
本当に、何なのよ、ここは。
[茶の男の言葉は聞こえていない。ぽつりと呟いたこちらの言葉も、果たして向こうに聞こえたかどうか]
[こちらのことが知られても、直ぐに彼らの傍へと向かう気は起きず。警戒の色は消えない]
ん……ああ。
[先に行く、という声に返すのは、気のない声。
黒の門を潜る黒を見送り、蒼氷は再び、樹の陰へと向いた]
[少女の呟きは風に散らされたか、少なくともこちらには届かず。
向けられる警戒の色に、軽く肩を竦める]
やれ、やれ。
ここで突っ立ってても埒は開かんかねぇ。
この中に事情通がいる事を期待して行った方が、時間は無駄にならんか。
あ。
[黒の門の奥、扉が開くのが見え思わず声が漏れた。その奥に揺らめく小さな焔。それを持つ者の顔までは見えなかったが、焔の位置的に誰か居るのは見て取れた]
他にも、居るってこと?
あの人達皆、ここの人達なのかしら。
……ここが何なのか、分かるかしら。
[自分が何故この地に居るのか。誰かが連れて来たのだとしたら、何故城があるのに森に置き去りにされていたのか。もしここに連れて来た張本人が居るのだとしたら、問い詰めることが出来るかも知れない]
…よしっ。
[意を決すると、樹の蔭から出て人が居る方へと駆け出した]
ああ。
ここで、突っ立ってるよりはマシだろうよ。
[尋ねる男に頷き、門の内へと踏み込む]
[先に進めば、焔揺れる入り口。
そこに立つのは、先に行った赤髪の男と、燭台を手にした男]
[先に行った赤髪と、燭台の男は何か言葉を交わしていたか。
そちらには特別の興味はなかった。
恐らく、彼が問いを投げていたとしてもそれは自分の問いたい事と、さして変わらぬだろうと思っていたから]
……あんたが、ここの主……か?
[問いに返るのは、自分は『番人』である、との答え]
『番人』……?
ここは、一体何処……いや、なんなんだ?
[微か、苛立ちを交えた問い。
それへの答えはなく、ただ、休息が必要ならば部屋が使える、との説明がなされたのみ]
[二人の背中ごし、揺れる蝋燭の炎に照らし出された男性の顔がぼんやりと、薄闇のなか浮かび上がっているのが見えた。
既に若くもなく、まだ年老いてもいないその顔に、彼は確かに見覚えがあった。]
わ、ちょっと、待って。
[門をくぐって行く者達を追うようにして自分も門の内側へと入る。赤と、青と、茶の髪をした青年達。その先の扉の内側に居るのは燭台を持つ壮年の男性。駆けたことで少し息を上げながら、先に居た青年達の後に並ぶようにし、交わされる言葉を聞く]
[幾つかの問いと答えの応酬。
しかし、得られたのはこの城の設備を使いたければ使えばいい、という事実のみ]
……やれ、やれ。
肝心の事にはだんまり、か……。
[吐き捨てるよな呟き。
苛立ちを帯びた蒼氷が、いつの間にか後ろに続いていた者たちに向けられる]
どうやら、衣食住の心配はないようだぜ。
……それ以外は、話す気がないのか、本当に知らんのか、見当もつかんがね。
[なされる会話は自分が訊ねたかったことと同義で。それはつまり彼らが自分と同じ境遇であることを意味する]
[自らを『番人』と名乗る男性に視線を向ける。聞きたかった問いの答えは貰えないらしく、眉根に皺が寄った]
…何よそれ。
だったら、誰がここに連れて来たって言うのよ。
[茶の青年が言葉を紡ぐ。番人より聞いた、この城の部屋を使っても良いと言う話。それ以外に関してはほぼ分からないと言うこと]
………そのうち分かるって、ことかしら。
[漏れた言葉はまるで独り言のよう]
[何故か今はもう一つの問いは口に出さない方が良いように感じた。
――あなたは私をご存知ですか。私はここに来たことがあるのですか。]
さて、それこそ俺が聞きたい所だ。
[眉根に皺寄せる少女の言葉に肩を竦め、おどけたような口調で言う]
……ならない、というより、他にどうしようもないんじゃないか?
俺としては、あまり、嬉しくはないんだが。
[男の発した問いには、嘆息を交えてこんな呟きを漏らす]
……そうですか。
[「嬉しくはない」という青年の言葉を少し考えるように頭を傾けた。]
では、しばらくはここで共に過ごすことになりそうですね。
[茶の青年の様子に出るのは溜息]
…皆が疑問に思うことは答えてくれない、と。
ここに居れば教えてもらえる時が来るのかしら。
森で野宿とかじゃないだけ、マシかも知れないけど。
この状況で嬉しいと思う人が居たら、頭のネジがどっか飛んでるわ。
[言い放ってから、青の青年の言葉を聞く]
……そう言うことになるわね。
名前くらいは知ってた方が良いかしら。
私はシャーロットよ、長ければ好きに呼べば良いわ。
[自ら名乗ってから、促すように周囲の青年達を見る]
[男の声はもの柔らかく、淡々としていた。
微かに声音に惑いが含まれていたにせよ、それはこの場では当たり前のことであっただろう。]
そういうことであれば、私も名乗っておきます。
私の名は、ナサニエル。
[――そう、今は。]
ま、そうなるんだろうな。
[共に過ごす、という言葉。
嘆息と共にそれへの肯定の言葉を零し]
ああ……俺は、ハーヴェイ。
[確かな、と。
その言葉は果たして名を問うた少女に届いたか]
……とりあえず、休めるんなら、俺はそうさせてもらう。
妙な疲れが、身体に残ってるんで、ね……。
[左腕を右手で緩く押さえつつ、言って。
燭台を持つ男に寝室の場所を問い、そちらへと*足を向けた*]
ナサニエルと、ハーヴェイね。
[告げられた各人の名を確認するように反芻して。残る赤の青年の名が紡がれるのを待つ]
部屋は後で空いてる場所を借りることにするわ。
[部屋へと向かう茶の青年──ハーヴェイを見やり、意思表示するかの如く言葉を紡ぐ。押さえる左腕に首を傾げたが、呟かれた言葉までは耳に*届かなかった*]
教師 イザベラ が参加しました。
ん、客人ですか?
[奥の方から『番人』に声だけをかける。
彼の肯定の返事を聞くも、皆が集う場所に向かおうともせず。]
そうですか。一体、幾人がここに集うのでしょうね。
いや、これは問いではないですよ。
答えがもらえないのは、承知しておりますから。
[ギギと床板を踏みならしつつ、城のあちらこちらに
目をやっては手帳に何やら記す。さらに、見ては記す。
ルーティンが如く、その女性は動いている。]
私だって、自分のことすらよくわからないのですから。
貴方……えーと…。
[手帳をぱらぱらとめくり、ああ、と一声あげる。]
『番人』のアーヴァインさんでしたね。
仮に、貴方が最も知っている方だとしても、
そのような貴方ですら、それがすべてなのかれもしれません。
[再び手帳を、先ほど記していた頁まで戻し、
見ては記し、見ては記しの作業に戻る。]
だったら、ここを見て回る方が今は建設的でしょう。
何故だか関心をひかれるのです。この建築物は。
[そう言って、別の場所へ*行ってしまう*。]
クインジーだ
[三者の名乗りに続け、男も口を開いた]
[番人――アーヴァインを見る目は闇]
[離れる者へと投げたのは、眉を顰めた言葉]
怪我の治療くらいしろ
[それ以上は重ねず、男は場を離れる]
[緋が炎に照らされ、燃えるように灯を吸った]
[古い廊下は軋みながらも、男の移動を妨げはしない]
[やがて、かつては立派であっただろうことが見て取れる広間にたどりつく]
[緋の髪をそこに認め、男は僅かな時間、その場に*立ち尽くした*]
私は……
[と一瞬逡巡した後、]
少し、この城の中を見て回ろうと思います。
後ほどまたお会いしましょう。
[丁寧に礼をし、残る者に背を向けた。
表情こそ心許無さを漂わせていたが、エントランスから奥へと進む足取りには迷いはなかった。*]
[白い紙は次第に黒に彩られていく。
広がる空も錆びた門も這う蔦も
透明な泉も深き森も咲き乱れる花も、
全てはモノクロームの世界に埋没していた。]
[手を止め、目と目の間を押さえる。
親指の付け根付近には黒鉛の粉末がこびりついていた。
背を反らせ、頭を背凭れの上部に乗せた。
開いた眼に映る世界は逆さまに変わる。]
あ。
[室内に一つ増えた影に瞬き、
爪先に力を込めて頭を後ろへと乗り出した。
加わった重みに椅子が不安定に揺れて悲鳴をあげる]
今、来た人?
よ、と。
[裾の余るズボンは素足を半ば覆い隠していた。
立て直した椅子の上に画材を置くと、
長髪の男に向き直り、視線を下から上へと動かす]
オレ、はラッセル。
よろしくね?
[傷痕に覆われた左の眼と、闇を宿した右の眼。
両方を見詰め、緊張感の抜けた*挨拶を投げた*]
クインジー、ね。
[赤の青年──クインジーの名を聞き、先と同じように反芻する。紅紫の瞳はつい、目立つ大きな傷へと注がれてしまっていた。その様子に相手がどう思ったかは知らないが、共にこの城に入った者達はそれぞれ思い思いの行動を取り始める。自然、その場には自分だけが取り残された]
……まぁ、しばらく過ごすことになるんだから、見て回るのは当たり前よね。
[けれど彼らの後を追う気は無くて。ほいほいついて行くものでも無いために。けれどその場に立ち尽くしているわけにも行かず。周囲を見回しながら城の中を彷徨うことになる]
随分と古いのね。
いきなり崩れたりとかしないと良いのだけど。
[あちこち歩き回り辿り着いたのはキッチンらしき場所。今は誰も居ないようで、そこはがらんとした雰囲気を漂わせていた]
……食べるものは自分で、ってこと?
小さいとは言え城なのにシェフの一人も居ないのかしら。
材料は…あるわね。
[保存庫を覗き込んでしばし思案。よし、と声を漏らすと、小麦粉やバターを引っ張り出して来て何やら作り始めた。材料を混ぜ、オーブンで焼き始めると、漂い始めるのはクッキーの*良い匂い*]
[シャーロットの目が向く左の傷痕の事を、男は理解していた]
[それは現在、ラッセルの視線にも晒される]
[部屋に入った時、男が何を思ったのか、態度に出る事はなかった]
[大人のものではない声によって、動きを取り戻す]
[椅子が軋み、揺れ、止めようと足を踏み出した時にラッセルは立ち上がる]
危ないぞ
[一歩進んだその位置で、男は止まった]
[椅子は止まり、画材が小さな音を立てて置かれる]
己はクインジーだ
……ああ
[よろしくという挨拶に、男はただ*頷くだけだった*]
何か、かいていたのか?
クインジー、
クーだね。
[薄くなった絨毯を踏んで歩み寄り、
一歩の距離を置いて止まった。
年頃の少女とそう変わらない身長。
問いに肯定の頷きを返し、
上半身を捻り背後の窓を指し示す]
うん、そこからの景色。
クー達が来るのも見えた。
少し目が疲れたから、今は休憩中。
……あ、そうだ。
他の人達は、どうしたの?
たくさんいたようだけれど。
[忙しなく、男を仰ぎ見る。
視線は左右共に等しく*注がれていた*]
[かわいらしい愛称に、男はまじまじとラッセルを見た]
……女か?
[疑問が零れたが、口を挟ます前に、答えを与える]
沢山ではない
己の他に、三人だ
一人は休みに行った
二人もこの中にはいるだろう
お前はここに住んでいるのか?
あの番人と名乗った男と共に
[左だけでない視線の向き方は、男にとって慣れるものではない]
[右の黒紅が、窓へと*逃げた*]
料理できるのですか?
[すっとキッチンに入ってきて、きょろきょろしては、
メモを取り、を繰り返している。
そこらにある調理設備をいじり、その機能を見ては
驚嘆したように、さらさらとメモをする。]
私、どうやら食べれたもの作れないようだから、
ずっとどうしようと思っていたのよ。
いいわね、そういうの。
[青髪の女性が、クッキーを作る様子をただ見ている。
特に何かちょっかいを出すわけでもなく、
女性の様子を見ては、何やらメモを*書く*。]
踊り子 キャロル が参加しました。
[一面の花の緋に埋まるよう、女は在った]
[身に纏う一切の色彩は、花と等しき緋の色]
[髪結いの紐も、丈の長いドレスも、足元の靴も、爪先のネイルも]
[咲き誇る花々と空を仰いで伏せる女の境目は、ゆえに曖昧で]
[リィン]
[唯一異なる色彩は、手首に]
[高く結った豊かな金色と同じ光を宿し、小さな鈴が鳴った]
[持ち上げた腕、その爪先で細い花びらを千切る]
[幾枚かを掌に集め、空へと放った]
ああ、うつくしい。
[満ちた声で、墜ちる緋の色を見る]
[碧眼を閉じて残像を愉しむと、緩やかな動作で立った]
あのなかでも、うつくしいものは見られますかしら。
[獣道の先、辿れば必然の様、古く錆びた門へと導かれる]
[黒の門を軋む音を立てながら、押し開く]
[城そのものに興味は無く、また怖じける態も無く、中に踏み入った]
ごめんくださいませ。
[燭台の緋に照らされた「番人」の姿を見つけ、女は口を開く]
[問う言の葉も、返される言の葉も、僅かなもの]
[それでも女は此処が自由に使えると聞き、口唇の紅を横に引いた]
[礼を告げると共に、高所へ上ろうと階段を*探す*]
ひゃう!?
[突然かけられた声。先に会った三人の青年と、ここに居た番人と言う男とはまた違う声。驚き思わず背をピッと伸ばし、ゆっくりと振り返った]
え、ええ、まぁ、一応。
……貴女、は?
[誰?と言外に訊ね、声をかけて来た女性に紅紫の瞳を向ける。直後にクッキーの焼き上がりに気付き、焦げる前に取り出して皿へと盛った。次に用意するのはティータイムのための*紅茶作り*]
へぇ。そんな反応するんですね。
[青髪の女性の驚く様子を興味深そうに見て、
微笑を浮かべながらメモを取る。]
私のことは、イザベラって呼んで頂戴。
気にしないで。ただ、貴女の様子が興味深いな、
そう思っただけだから。邪魔する気はないんです。
[右目は女性を見つめているが、左目は明後日の方向。
ぎょろり、ぎょろりと外側を向いている左目。]
気にしないで、続けてていいのよ。本当に。
[静かな微笑を*浮かべている*。]
[城の廊下は侵入者を拒むかのごとく長く暗く、冷たく淀んだ空気は埃の臭いがした。
しかし、針が磁石に引き寄せられるように、蛾が灯火に誘われるように、男の歩みは脳裏に描かれた映像をなぞって進んだ。
そのすべてが、かつてこの場所を同じように歩いたことがあると告げていた。]
[唐突な言葉に、目が丸くなる。
しかし重ねられた答えと問いに意識は移り、
一、二、三と指折り数える自身の手と男とを交互に見た]
そっか。
それでも、クーを含めたら四人だから十分だよ。
オレは、住んではいないよ。住むかもしれないけれど。
ほかにも、そういう人はいるみたい。
クーも、そうなんじゃない?
[逸れる視線を追えば、
硝子越しに映る、絵画の如き光景。
枠に区切られた世界の中、
緩やかに移ろう空と雲ばかりが現実味を感じさせる]
住んでいるって言えるのは、アーヴくらいかな。
無口で無愛想だけれど、悪い人じゃないと思うよ。
勝手に使っていいって言ちてくれたし。
こんなところにひとりでいて、さみしいのかも。
[ちいさな旅はひとつの扉の前で終わった。
青玉の瞳は怖れの黒を滲ませていたが、それでも答えを求める光の方が勝った。
緑青の浮いた銅(あかがね)の取っ手を掴み、男は夜のように密やかに中へと滑り込んだ。*]
[女性──イザベラの話を聞きながらお湯を沸かし、茶葉を用意してポットへと入れる]
はぁ……。
あ、と。私はシャーロットよ。
興味深いと言われても…。
[大したことしてないのになぁ、と呟き。ふと、イザベラの顔を見ると、左右の目が異なる動きをする。悲鳴こそ上げなかったが、半ば息を飲む形になってしまった。瞳を逸らすように沸かしたお湯へと意識を向け、茶葉を蒸らすくらいのお湯を入れて、クッキーを盛った皿とティーセット他をトレイに乗せた]
あの。
ここに居る人だったら、広間かどこか、落ち付ける場所は知らない?
折角だし、お茶でもどうかしら。
[眼を異なる動きをさせながら微笑む様子は少し異様にも思えて。やや引き気味になりながらもお茶の誘いと場所の案内について訊ねてみた]
クーも好きにするといいんじゃないかな。
オレは結構、ここ、気に入ってるよ。
[長机に手をついて寄りかかり、足を擦り合わせる。暖炉に火の焚かれた形跡はなく、室内の温度は低かった]
ここ以外に、いく場所も知らないしね。
[蝋燭の小さな焔は心許なく影を*揺らめかす*]
[片目が緋を、ガラスの向こうに見ていた]
[ラッセルの中で愛称は決定したのだろうか]
[男は止める言葉を、タイミングを失った]
番人だけならばお前に聞いても答えは無いな
ここは何なのか、お前も同じ情報しかないだろう?
……寂しいか
[外れた視線は、再度、緋の髪をとらえる]
己はここに住むつもりはない
だが、そうだな
わかるまでは、ここに居ざるを得ないか
シャーロット…ね。
[名前を聞くと、メモ帳に名前と特徴を記す。]
ごめんなさいね。私、名前と顔覚えるの苦手なの。
手帳は覗かないでね。覚えやすいように特徴書いてて。
見たら、貴女怒るかもしれないから。フフフ。
[外側を向いた左目が、ぐるんと。]
広間ならあっちよ。大体の見取り図を作ったんです。
行きましょう?
[手帳は覗かないで、と言われると、ただ頷きを返して。左目の動きにまた少しだけビクリとする]
え、ええ。
……あの、見取り図だけ、見せてもらっても良い?
私まだこの城の中、全部は見てないの。
[広間へはイザベラの後をついて行く形となる。その移動がてら、見取り図を見せてもらえないかと頼んだ]
[広間に着くと、先程共にこの城へと入ったクインジーと、もう一人誰かが居るのが見えた。年の頃は自分と同じくらいだろうか。その姿にぺこりとまずは会釈。歳が近そうと見て取れたせいか、最初の時ほどの警戒は無い]
うん、知らない。
知らないんじゃなくて、忘れたのかな。
全く知らない場所に来るなんて、
おかしな話だろうし。
[視線の位置を探すように、頭に手を翳す。
頭上を見ても、天井までの間には何もない]
オレ、寒くないよ。
クーが寒いなら火をつけるといいよ。
アーヴは灯りは点しはしても、
そういうのには無頓着みたいだ。
[顔を水平に戻し、
目にかかる前髪を首を振って払う。
眼のみが、掬うように男を見上げた]
[話をするうちに入って来たのは、知る者と知らぬ者。
机から手を離して薄い絨毯に足をつけて立つ。]
ベル――と、
さっき来た人だよね。
オレ、ラッセル。よろしく。
[頭を下げるより先に出る挨拶。
少女の手にするトレイに、首を傾がせた]
あれ。それ、どうしたの?
見せてもいいけど、自分で探る楽しみもあるわよ。
それでも見たいなら、見せてあげます。はい。
[藪睨みの眼で、シャーロットを見つめて、手帳を渡す。]
ラッセルくん、遊んでもらってたんですか?
[少年は隣の女性をベルと呼んだ。一度イザベラへと視線を向けてから、再び少年へ紅紫の瞳を向ける。先にここに居た者であれば、知っていても当然か、と思い直したようだ]
え、ええ。
私はシャーロット、よ。
[よろしく、まで出て来なかったのは、あまりにも少年──ラッセルが気さく過ぎて面食らったせいであろうか。トレイについて訊ねられると、テーブルへとそのトレイを置いて]
キッチンで作って来たの。
材料があったから、折角だし作っちゃおうと思って。
お腹も空いてきたしね。
[クッキーだけど、と言いながら良い具合に蒸れた茶葉に更にお湯を注ぐ。少し待ってポットを一回し、カップに紅茶を注ぎ、ミルクと砂糖を追加した]
貴方達も飲む?
[問いかけはラッセルとクインジーへと]
[赤髪の男──クインジーから向けられた言葉。
それに対し浮かべた笑みは、誰の目にも留まることなく。
『番人』に教えられた廊下に並ぶ寝室の一つを適当に選び、長く使われた様子のない寝台に倒れ込むとす、と目を閉じた]
探る楽しみ…。
……ううん、それは良いわ。
先に頭に叩き込んでおいた方が、無駄に迷うことも無いもの。
[ゆるりと首を横に振ってから、イザベラの手帳を借りる。しばらくの間見取り図を眺め、小さく呟きながら見取り図を記憶した。それが終わると手帳を閉じ、イザベラへと返す]
ありがとう。
外観は小さめのお城かと思ったけど、やっぱり結構広そうね。
ううん。
絵を描いていたらクーが来たから、話してただけだよ。
[彼女に対しても、等しく眼差しは向けられる]
他に二人いるんだって、ベルは会った?
[静寂の時はさほど長くはなく。
閉じた蒼氷は、ゆっくりと開かれる。
静寂の間の変化は、床に落ちた鈍い色彩の浮き出る包帯。
先ほどまでそれに包まれていた腕は、鮮やかな紅に染まって]
……落ち着かんな……。
[そんな呟きと共に、身体を起こして。
新しい包帯を一つ、懐から取り出して左の腕に巻きつける。
紅を包んだそれはすぐに新たな色彩に染まるが、さして気にした様子もなく。
ふらり、部屋を出て宛もなく廊下を*彷徨い歩く*]
シャーロット、
ロッティだね。
[一度舌の上で名を転がして噛み砕く。
一歩横へ退き、トレイを運ぶ少女を、
動きにつれて流れる髪を眺めた。]
そうなんだ、えらいな。
オレは作れないから、パンや果物ばっかり。
確か、ベルもなんだよね。
[漂う湯気に目を細め、口許を綻ばす。
幼さすら残す口調とは裏腹に、
それまでの表情に変化は乏しかった。]
いいの?
[抑揚の薄い声も、僅かに跳ねる]
あら。まだ会ってないですねえ。
[返してもらった手帳を開き、人数に関する記述を書き変える。]
興味深いですね。面白い方だといいんですが。
そちらの方は、クーさんと仰るのですか?
ラッセルくんのことですから、本名ではないのでしょうが。
面白い通称でしね。クク…ごめんなさいね。
[笑みを漏らす。]
[ロッティと呼ばれると僅かにきょとんとした表情に。そのような呼ばれ方はされたことが無いのだろう。その新鮮味に小さく笑いが漏れた。今までの強張った表情ではなく、少女特有の柔らかみを帯びた微笑み]
なぁに、ラッセルも作れないの?
今までよくそれで過ごしてられたわね。
ここに持って来て独り占めってわけにも行かないでしょ。
皆で食べれば良いわ。
[返答前にも手が伸びて来る様子に手早く紅茶をもう一つ淹れて。クッキーも添えてラッセルへと勧めた。他にも欲しいと言う者が居れば、同じように用意する*ことだろう*]
……面白い、のかな?
クク、じゃなくて、クーだよ。
[笑う声を違えて捉え手が止まる。
本名を伝える気はないようで、訂正はそこまで。]
[その部屋は誰かの私室のようであった。
闌(すが)れたカーテンの隙間から光の束が零れ落ち、闇に沈んだ室内でかすかに物の形を浮かび上がらせている。
調度の類はすべてうっすらと埃の膜を被っており、それなりに長い間人の手が触れていないのは確かなようだった。
そのなかで男の眼は、中央やや窓側に置かれた一脚の卓子(テーブル)に惹きつけられた。]
わ。
[止まっている間に注がれる紅茶。
短く感嘆の声をあげ、
イザベラとは異なる笑いを漏らす少女を見た]
今までって言っても、
ここに来てから、そんなに経ってないし。
特に困ることはなかったけれど、
こういうのは、なんだか、心が満ちる感じがする。
[椅子の一つに腰を下ろして、
添えられた菓子ごと紅茶を受け取る]
ありがとう。
[正しくは男の目を惹いたのは、机の上にある物。
黒白の石片でつくられた市松模様の、それはチェス盤であり、その上に配置された黒白の駒であった。
それらの配置から、勝負は半ばで中断されたように見受けられた。
机を挟んで置かれた繻子張りの椅子が、あたかも急な用事でちょっと席を立った、というように少しずれていた。]
[持ち手に指をかけ、底面に手を添えて持ち上げる。
頬を撫でていく湯気にますます目を細めつつ、
カップの縁に口をつけて傾けた。
微かに上下する咽喉。
間を置いて離すと、熱を残す息を細く吐き出す]
ん。
[落ちる声には満足げな響きが混じる。
一度カップを下ろすと、
壊れ物を扱うようにクッキーを摘んで齧りつく。
それを繰り返して、*ひとときを楽しんだ*]
[夢の中を漂う男の指がナイトの駒を摘み、違う升目へと置く。
コト、と石の盤を打つちいさな音が、静寂に包まれた室内で思いがけず大きく響いた。*]
見習いメイド ネリー が参加しました。
あ、か。
[ぼんやりと翠は緋の風景を映す]
きれい…?
[肩を抱き小さく震える。
流れた視線の中、緋の途切れた筋が一つ]
……みち?
[花が倒され出来た道は、何処かへと伸びている。
つい、と前に出た足は何にも覆われていない。
爪先には鮮やかさを失った黒がこびり付いている]
ん。
[最初の一歩で足を止め、小さく眉を寄せる。
だがゆるりと首を振ると再び足を踏み出した。
筋は道へ。道は門へと娘を導く。
ゆっくりと、だが確実に。娘は城へ向かい歩いていった]
[重い音を響かせて扉は開かれる。中に入った娘は人の気配に顔を上げ、スカートを摘んで頭を下げた]
ごきげんよう。
[けれど言葉は続かない。ここは何処であるかは勿論、何故自分がここに居るのかも娘は知らなかったから。
ただ身についたままの仕草で礼を送る。
どこかぎこちない動きに合わせ、お仕着せが衣擦れの音を立てた]
[螺旋の階段を、一段一段上って行く]
[古の城に反響するのは、足音と鈴の音と]
[石造りの壁が其れらを吸い、消した]
[沈黙が続くのは、女が足を止め、窓の外を眺めたから]
うつくしい景色。
[碧眼を細め、口許のくれないは笑みを模る]
[黒の門が開く様子に瞬いて、緑の髪を眼差しが追った]
またひとり、いらっしゃいましたのかしら?
ごあいさつをいたしましょうか。
[かつん][チリン]
[こつん][リィン]
[音を城の中に響かせて、ゆったりと女は階下へ下っていく]
[鈴の声が耳に届き、再び顔を上げる。
花のように鮮やかな緋と、金の色彩が翠に映る]
ごきげんよう。
お邪魔をさせていただいております。
[最前と同じように頭を下げる。
ふと己の足元が視線に入り、裸足のそれを恥じるかのように一歩後ろへと下がった]
[リィン]
[鈴を鳴らしながら歩み、女は緑の髪の少女の下へ]
ごきげんよう。
それとも、はじめましてですかしら。
[花に良く似た緋のドレスを摘み、首を傾げて一礼を]
私も客の身にすぎませぬゆえ。
ご挨拶は番人殿に。
[笑みを模した表情で頭を振る]
[後退る様を見、くれないの口唇は不思議そうに開かれた]
……どうか、なさいましたの?
はじめまして、でしょうか。
番人なる方には今しがた。
[小首を傾げて女性を見上げる。
小柄なのも相まってか、どこか幼さすら感じさせるように]
…靴を、失ってしまって。
お見苦しい姿で、申し訳ありません。
[何時、何処で失ったのかは記憶の霧の向こう側。
ただそれを恥ずかしいとは思った。
スカートの丈は踝まで。赤黒い痕を隠すことも叶わない]
ああ。貴女も記憶をお持ちではないのですね。
[さして問題はないとでも言うように、口ぶりは軽い]
私はキャロルと。貴女は?
[気まずさの漂う口調を気に留める事もなく、女はその赤黒い痕を見た]
…きたない。
これはあの花を踏んだのでしょうか。
[口許を指先で覆う]
[小さく鈴の音が響いた]
ええ、気が付いたら此処に。
私は…。
[唇に軽く指を触れる。僅かな間を開けて]
ネリー。そう、ネリーとお呼び下さい。
キャロル様。
[きたない、と言われれば顔を俯ける]
はい。途中、花の中を抜けて参りました。
あんなに奇麗な花なのに、踏んでしまったからなのでしょうか。
[困惑を交えた声で答えた。
割れた爪を、少しでも隠そうと足先を丸める]
番人の方。
何処か洗えるような場所はありますでしょうか。
[男に場所を聞くと、小さく感謝を述べ]
キャロル様、一度失礼を致します。
せめても汚れだけは落としてまいりますので。
[キャロルに頭を下げて聞いた場所へと*向かう*]
ええ。では貴女のおっしゃるとおり、ネリーと。
[女は、踝の位置に有る色を、唯見つめるのみ]
[手を差し出そうとはせず、くれないを開いた]
水か湯で洗い落としては如何です。
水場は、分かりますか?
[靴のヒールも相俟って、女は少女を見下ろし、首を傾げた]
ふふふ、うつくしい花でございますものね。
それゆえにあれには毒がありますから。
お気をつけになられないと。
[少女が番人に尋ねる様を、女は見る]
[一礼の後、立ち去る背に向け緩やかに手を振った]
いってらっしゃいませ。
[リィン]
[そうして女はまた、城の中を*歩む*]
見習い看護婦 ニーナ が参加しました。
[わたしは眼を開けました。]
――?
[見えたのはただ、赤。
わたしはびっくりして、何度もぱちぱちと瞬きます。
こんなに赤い色が広がる場所を、わたしは知りません。
そうと手を伸ばして、その形に触れました。]
花…?
[広がる花弁、その下に細い茎。
そうして漸く、それが何かを知りました。
わたしの眼は色を知ることはできても、形を捉えることはできないのです。]
[それにしたって、不思議なことです。]
どうしてわたしは、此処に?
[理由は、そして移動手段は。
記憶が何か薄いベールに阻まれたかのように、思い出せそうで思い出せません。
この眼では独りで知らない場所になど、来れる筈もないのに。]
――様…
[少しだけ怖くなって、両腕を抱きます。
無意識に呟いた名の主を、しかし一瞬後にはどんな顔だったか、そもそも誰だったかすら覚えていませんでした。
わたしは途方に暮れて、ただ上を見上げます。
重く軋む音が、遠く耳に届きました。**]
わかっている奴の方が少なそうだった
ここではそれが、"普通"なんだろう
[上を見る様子>>77に、火のない暖炉へと方向を変えた]
[実際の寒さより、この場は空気を冷えさせて見える]
[ここには、人の気配が無い――]
靴は?
[視線を感じてか、男は再びラッセルを見た]
[それから、広間にやってきた二人と、クッキーの香りにそちらを向く]
[ベルと呼ばれた女と共にやってきたのは、先程挨拶をしたシャーロット]
……紅茶か
もらえるか?
[クッキーには手を出さず、男は注がれる紅茶に*目を細めた*]
[カップを手に取り口元へと運ぶ。紅茶を淹れる手つきもそうだったが、カップやクッキーを口元へと運ぶ手つきはどこか優雅さを帯びていた。冷えた部屋に漂う湯気は温かみを示し、飲み下した紅茶は冷えかけた心と身体を温める。落ち付いたように息を吐くと、クインジーからも紅茶を頼まれ、笑み返した]
ええ、もちろん。
[もう一つティーセットを用意し、一度カップを温めてから淹れた紅茶を注ぐ。ミルクと砂糖はお好きに、と付け加えて、カップをクインジーへと*差し出した*]
靴? ないよー。
なんだろう、好きじゃない気がするんだ。
[軽く答え最後の一滴を飲み下す]
ごちそうさま。
[器を受け止めるソーサーが、高く音を鳴らした。
大きく伸びをした拍子、
また椅子を倒しかけつつ立ち上がり]
他の人にも会いたいし、ちょっとうろついてくるね。
[置いていた画材を拾い上げると、
手を振り広間を出ていく]
[廊下の寒さは一層増す。
屋外とは異なる冷えた大気が満ちていた。
ゆったりとした足取りに惑いはなく、
小さな焔が照らす路を歩む。
静寂に沁み渡る鈴の音が、微か耳に*届いた*]
[宛てなく歩く城の中。
ふと、耳に届いたのは澄んだ音]
……鈴?
[小さく呟き、ふと足を止める。
耳をすませど、音色がどこから響くのかは定まらない]
御同輩は、増えている……ってとこか。
[小さく呟き、それから、何気なく近くの窓から外を見る。
一面の緋。
それに何を思うか、それは冷たい蒼氷からは読み取れず]
[ぱしゃりと水の音。
汚れた黒を落とせば、あるべき硬い部分が幾つか失われた爪先。
けれど踝周囲を巡る赤褐色の痕は洗っても落ちることなく]
いたい。
[感情篭らぬ声で呟きながら落とせる色を落として。
乾いた布を借りて冷え切った足先を拭き]
…きたない。
[更に布を借りて足先を包み縛る。
美しいとは言いがたかったが、鮮やかならざる紅は隠せた。安堵の息を吐き、ゆるりとその場を後にする]
[男が見る前で、シャーロットは手馴れた様子で紅茶を淹れた]
[その作法など男に理解はなく、そのまま受け取り、礼を言う]
悪いな
……うまい
[熱い紅茶を飲み、口から吐いた息は白い]
[無骨な指は華奢な陶磁器に似合わない]
[本音か世辞か、飲み終えて言うのはそんな事]
[シャーロットへと目を向けてから、席を立つラッセルを見送った]
まるで統一感が無い
ここに居るので、共通するものは何だ
それとも、単に偶然か――
[黒紅の片目が、再びシャーロットへと戻り、*もう一人へと向く*]
クインジーだ
お前も己より前に来ているのなら、特別に何かあるか検討はつかないか?
[何をすれば良いか分からず、再び番人を探して戻った。
聞けば空いている部屋を自由に使って良いのだという]
それであれば少し休ませていただきます。
他にも客人たる方々がいらっしゃるのでしたら、そちらへのご挨拶はまた後程に。
[番人は寡黙に小さく頷きを返すのみ。
リィンと響く鈴の声を遠くに聞きながら、教えられた部屋の方へと静かに*歩いていった*]
[手探りで見つけた木の棒を杖代わりに、聞こえた音を頼りに歩き。
わたしの赤一色だった視界に、異なる色が飛び込んで来ました。
黒く高く、行く手を阻む壁のようなそれに手を触れると、ひんやりとした硬さが伝わります。]
門…、かしら。
[上へ下へ、その正体を探るように触れて、わたしはやがてそんな結論を出します。
それから思い切って、力を込めて押してみました。
先程聞いたばかりの、重い音が*響きます。*]
[窓辺に立ち、ぼんやりと緋を眺めていた所に響く、重たい音]
また、誰か来た……と。
一体、どれだけ集まるのやら。
[呟きの後、蒼氷を緋から離す。
ここに集まる他者に興味は余りなかったが、全く知らぬというのもいささか不便だろうか、と。
そんな事を考えつつ、また、ゆっくりと歩き出す]
[門から手をずらし探ってみると、人1人が潜れる程度の隙間ができているのが分かりました。
わたしは少し悩んで、中に踏み入りました。
内には高い壁――門の中にあるのですから、きっと何かの建物なのでしょう。
じっとその色を見ていると、物音が聞こえました。]
…あ。
[誰かの住家だったのだろうかと、少し後退りました。]
[城の玄関先までやって来て、目に入ったのは『番人』の姿]
また、誰か来たってのか?
[問いに返るのは、肯定。
特に強い興味があった訳ではないが、『番人』が扉を開ける様子を一歩引いた位置で眺める。
開いた扉の向こうに見えたのは、まだ若い女の姿]
……これで、何人目だ?
[問いは『番人』へ。
蒼氷の瞳は、そこに立つ女へと向けられた]
[声が2つ聞こえて、また音がしました。
建物の中に見えた2つの色。
先程の低い声から察するに、多分男の人なのでしょう。]
…あの、勝手に入ってごめんなさい。
道に、迷ってしまって。
[言葉は2人に向けていましたが、鈍色の眼はどちらとも合っていなかったかも知れません。]
[問いに、『番人』は答えず。
それは自分で確かめろ、という意味合いなのかそうでないかは定かではなかったが。
何れにせよ、この男と話していても埒が開かないのは感じていたので、大げさな息を一つ吐き出すに留め]
道に迷った……か。
どうやら、そちらも御同輩で間違いなし、と。
勝手に入るのは、構わんだろ。
この『番人』とやらも、来る者は拒まず、といった所らしいしな。
[女の言葉に答えつつ。
焦点の定まらぬよな視線に、微かに眉を寄せた]
[緋色の裾を靡かせ、女は軋む床を進み、階段を上った]
[適当な部屋の扉を開け、白の繊手はその窓を開ける]
[リィン]
[また小さく鈴の音が零れた]
絵画のようにも見えますのね。
[碧眼は門の向こうを捉え]
[また、小さな話し声をも捉えた]
[扉も窓も開け放しのまま、緋色の靴は階下の玄関へと向く]
[溜息が聞こえました。
わたしに対してなのかと思いましたが、どうやら違うようです。]
ご同輩?
あの、それはどういう…?
[続いた声は、今度こそわたしに向けられたものでした。
わたしは僅かに首を傾げて、言葉を発したらしき茶色のひとへ眼を向けます。
相手の表情は見えるはずもありません。]
どういうも何も……。
お前も、気がついたらここの……花の中にいて。
道を辿って、ここに来たんだろ?
俺もそうだし、他にもそんな連中が集まってるんだよ、この場所は。
[首を傾げる女に答え。
近づく気配と、微かな音に振り返る。
微かな音は、先にも聞いた、鈴の音色]
[近付いた先には三人の人影]
[向いた視線に気付いてか、くれないは薄い笑みを模る]
ごきげんよう。
番人殿以外のお二方は、はじめましてですかしら?
[優美にドレスを摘み、一礼を]
[薄闇から現れたのは、鮮やかな金と緋と。
その色彩は、この場に似つかわしいよな、異なるよな。
そんな事を考えつつ、一礼と共に投げられた問いに、頷く]
ああ。
恐らく、初対面だろうな。
貴方も、他にも?
…では、此処が何処なのかは分かりませんか。
[わたしの言葉には困惑と落胆が混じっていたでしょう。
問う最中、別の音が聞こえました。]
鈴?
[男のひとが振り向いたような気配に、わたしも眼を凝らしました。
金と、花のような赤い色でした。
女のひとらしき声質に、わたしはただ頭を下げました。
挨拶と肯定、二つを含めて。]
ふふふ。
[転がる音は笑みの形]
確信が無いのは、記憶が無いからですかしら?
きっとそちらの彼女もなのでございましょう。
[僅か影を帯びた声は、そう思わせた]
ええ。鈴は私のもの。
その音の傍らには、私が居るとお思い下さいませ。
ああ。
そして、知ってそうなのはだんまり決め込み、って訳だ。
[困惑と落胆。それを滲ませる声に、蒼氷は鋭く『番人』の方へと向けられ、すぐに逸らされる]
……そんな所、かも知れんな。
[逸らされた蒼氷は、金へと向けられ。
問いに返すのは、曖昧な言葉]
[記憶。
女のひとの声は聞こえていましたから、眉を寄せて、杖代わりにしてきた棒を、両手できゅっと握りました。]
貴女の音、だったんですね。
[鈴に関しての言葉には、一つ頷きました。]
知ってそうな…?
[この場にいるもう1つの色に、眼を向けました。
そのひとがこちらを見ていたかどうかは分かりませんけれど。
わたしはそれから暫く黙って、話している2つの色の間で視線を*彷徨わせていました。*]
記憶が無いのは、幸か不幸か。
番人殿がご存知であるならば、それはどちらに傾いておられましょうか。
[小さく鈴を鳴らし、呟きは歌のように紡がれる]
[曖昧な答えを気にする風でもなく、女は薄く笑んだ]
そう。あれは私の音。
そしてこれが私の声。覚えていただけると嬉しいですわ。
[滑らかに、女は言の葉を紡ぐ]
さあね。
どちらともつかず、揺れて振れて、って所か。
[鈴の音と共に紡がれる呟きに、軽く、肩を竦め]
ともあれ、ここで立ち話をしていてもなんだろ。
どこか、落ち着ける場所……広間にでも、移動した方が良くないか?
[二人の女を交互に見て、問う]
ああ。
必要なら、手くらいは、貸せる。
[思い出したよに付け加えたのは、外から来た女の縋る棒を見たが故。
もっとも、仮に要とされても包帯に紅を滲ませる左の腕は*使われはしないのだが*]
共通項に関する見当ですか……。
[とろんとした右眼が、クインジーを見つめる。
明後日の方を向く、左眼の鋭利さとは対照的。]
それについて言及するには、まだ情報が足りませんね。
だって、まだ顔も見てないgood fellowsが大半だし
私、貴方のことすら知らないですもの。クインジーさんね?
[手帳を開き、名前と特徴を書き留める。]
ごめんなさいね。顔と名前を覚えるのが苦手で。
馬鹿にしているわけではないんです。
私はイザベラ。好きなように呼んでくださいまし。
[ぐっぐっ、と詰まったような微笑。]
そうね。カードさえ集まれば何かわかるかも。
生年月日、血液型、職業、趣味や食べ物の好き嫌い。
最近、イイコトしたか…とか。ウフフフ。
[シャーロットを左眼が一瞬捉えた。]
まぁ、そんなこと誰も忘れてしまっているでしょう。
揺れて振れて、行きて戻りて。
停滞は無く、無為な繰り返しが番人殿には?
[答えを求める態でも無く、問うて]
[沈黙を以って、質疑は終わる]
[男の勧めに、豊かな金色を揺らし女は城の奥を見る]
案内をしていただけませんこと?
まだ、此処には不慣れなままですゆえ。
[首を傾げ、胸に手を置く]
[*リィン*]
村の設定が変更されました。
村の設定が変更されました。
気にするな
髪の色で覚えるわけにもいかないしな
わかった、好きによばせてもらおう
[男の髪はラッセルの髪よりも暗い赤であったが、赤に変わりは無い]
[イザベラの片目を捉える男の目は、彼女の左より険はない]
[その鋭い左目を追い、言葉を聞きながらシャーロットを見た男は、低く笑った]
ククッ
あんた、それはまずいんじゃないか
初心そうな女に言う台詞じゃないだろ
[シャーロットの反応がどうであろうと、男が笑わぬ訳も無い]
[暫しの後にそれは潜み、重い声が*吐き捨てられた*]
だが、忘れているという事には同意だ
己もどうやってここに居るのかが、わからないからな――
[うろついてくると言うラッセルには頷きを返し、その後姿を見送った。紅茶を口にする間はどこか穏やかな時間が流れているように感じ、自然表情も和らいでくる。クインジーから賛辞の言葉が漏れれば、嬉しげに微笑んだ]
[しばらくの間はクインジーとイザベラの会話に耳を傾け。ふと、クッキーに意識を向けた時に二人から視線を向けられた気がした。交互に見やるが、二人は笑うのみ。イイコトと言われても分からず、ただ小首を傾げた]
[その行動は言葉の意味することを知らないのか、はたまた覚えていないだけなのか。その仕草からは判別がつかなかったことだろう]
流れ者 ギルバート が参加しました。
[赤、朱、紅――
森を抜けると、男の視界に鮮やかな色が飛び込んできた。]
[つま先をギュッと絞り、踵を上げる。
ふくらはぎの筋肉が締まるのを、いつものように感じる。]
[一歩踏み出せば、そこは緋色の舞台。
泉、古城――夢幻の中で咲く花々。
眼前に広がる景色は、彼にとって初めてのものだった。]
[彼の右目には、闇に浮かぶ赤い花が映る――]
[そして、彼の左目には、薄汚れた眼帯が巻き付いていた――*]
―とある部屋―
[稲妻のようにひとひらの映像が閃く。
緋く赫い色。
伸ばされた白い手。
そして、
男は少し離れた場所にあった長椅子に飛びつき、掛けられていた布を剥ぎ取った。]
『……何故俺はそんなふうに思うんだ?』
[この椅子の上で誰かが怪我をしただけかも知れない。
閃いた映像は必ずしも死を示してはいない。]
『いや、そもそもどうしてこの染みが血だと分かるんだ?』
[これは本当に血なのだろうか。]
[それよりもこの記憶?――は真実なのだろうか?]
[蒼白の面を押さえ、男は夢遊病者の足取りで部屋を出た。
ぐらぐらと視界が揺れる。
隧道のような回廊の、壁が急に迫ったかと思えば遠ざかり、床もまた波打って定まらず。
男は壁に手をつき、蹌踉いて延々と続く闇の中を彷徨った。*]
のんだくれ ケネス が参加しました。
ケッ、もう空っぽかよ
あ゛ー…
[無精髭に囲まれた口の真上で瓶を振って最後の一滴を落とす。木立の隙間から見える緋色の原と古城の影を眺め、やがて透明な硝子を二本の指でひっかけ*立ち上がる*]
[宛てもなく歩み行き着く果てには鈴の音。]
あ、アーヴ――に、
[空の光と地の焔。
二者の浮かび上がらせる姿。
眼に映る、知るものと知らぬもの]
いち、にぃ、さん……
クーに聞いた数と違うね、今来た人?
賑やかになってきたね、さみしくなくなる?
この調子だと、まだ来るのかな。
[相次ぐ問いに対して、
番人たる男の頷きはただ一度きり。
寡黙な答えを受け取り、来訪者を見た]
はじめまして、オレはラッセル。
あなたたちは?
案内できるほど、中に詳しくはないんだがな。
[鈴の音と共に向けられた言葉に、こう返す。
広間の場所は先にも聞いていたから、行けなくはなかろうが。
などと考えた所に近づく気配と、声。
振り返った先には、鮮やかな色彩の髪]
御同輩の一人、か。
……俺は、ハーヴェイ。
[名乗りと、問いと。
それに返すのは、短い名乗り]
[チリン]
[微かな鈴の音は存在を主張して、新たな人影を招く]
[矢継ぎ早の問いの主に、女は碧の双眼を向けた]
はじめまして。ごきげんよう。
[緋のドレスを摘み、首を傾げ、優雅な一礼]
私は、キャロルと。
――うつくしい名前をしていらっしゃるのね。
それに、その髪の色も。
[問いに応じて、女は二人を振り返った]
そう言えば、私もまだ御二方のお名前をお伺いしておりませんでしたわね。
[伏せていた長椅子から身を起こす。
ヒヤリとした空気は意識を夢から現へと引き戻した]
ここ、は。
[記憶を辿る。
冷たい水。隠れた赤紅。
鈴の音。金の女。
黒い門。寡黙な番人。
細い道。鮮明な緋色――]
それから…。
[沈黙が流れる。
その先は霧に包まれたように何も引き寄せることが出来なかった]
…ごあいさつを。
[ホゥと息を吐いて諦める。
ほつれた常盤を結い直し、部屋の外へと出た]
それでも私や彼女よりはお詳しいかと。
[来たばかりの様に見える少女に眼差しを向けたあと]
[女は青年の言の葉にくれないを横に引いた]
広間が有ることすら、私は存じ上げませんでしたもの。
来た時に、色々と聞いたからな。
[軽く、肩を竦める。
誰に、とは、言わずとも伝わるだろうが]
どっちにしろ、しばらくはここに居なきゃならんのだろうし、どこに何があるか程度は覚えておいて損はない。
ごきげんよう。
[返された挨拶を口真似、歩を寄せた。
焔の生む人々の影が混ざり合う]
ヴィーに、キャロだね。
名前を褒められたのは、多分、初めてかな。
……髪? 何かついている?
[女の視線が背後へと逸れた合間に、
頬に落ちた髪を耳の上へと掬い取る]
広間に行きたいの?
今なら、ロッティの紅茶が飲めるかも。
……ああ、でも、足りるかな。
[顔の傍から手を下ろし、再び指折り数える]
ヴィーは、もう覚えたんだ。
ここって色々あるから、覚えきれてないや。
[されどここは記憶に詳しい場所ではない。
思いついたままに声の聞こえる方へと歩けば、そこは何度目かに足を踏み入れる玄関ホール]
キャロル様と番人の方。それから…。
[見知らぬ、と思う人々の影も見える。
布に包まれた足は大きな音を立てないが、特に気配を隠すでもなくそちらに近付いていった]
はじめまし、て?
そうでしたの。
[顔の横に垂らした金を指先に絡め、下に引く]
[繰り返された音が、また一つ鳴った]
がんばってくださいませね。
[女は必要を感じないのか、淡く短な響きを返す]
[ラッセル、と名乗った少年の口にした名。
慣れぬ呼ばれ方にか、それが自分の事と気づくのは一瞬遅れた。
それでも、その呼び名に特に何か言う事もなく、軽く肩を竦める]
必要そうな所だけは押さえたが、細かい所はこれから確かめる、と言う所かね……。
[先にふらついた時にも感じていたが、城の規模は外観から想像していた以上で。
どこに何があるか、程度は抑えておくべきか、と思っていた]
[新たに向けられる、呼びかけの声。
蒼氷を向けた先には、常磐色]
……初めまして、と言っておけば恐らく間違いないんじゃないか?
実際にはどうだか、わからんが。
[返すのは、端的な言葉。
キャロルの淡白な言葉には、頑張るもんかね、と呟いて]
[燭台のあかが、距離が短くなった少年の髪を照らす]
[少年へと女は眼差しを戻し、掬われる色を見る]
ふふふ。
[ひっそりと、女は笑う]
ただ、貴方の名の由来と、髪の色が等しかったものですから。
触れてみても、かまいませんこと?
[伸ばした繊手は、掬われた一房のすぐ傍らへ]
[新たな声に振り返り、姿を収めるように瞬いた]
はじめまして、だね。
オレはラッセルだよ。
[また一本、指を折る。
膝を曲げ、晒されたままで冷えた足先で、
もう一方の足に纏う布を掻いた]
本当に、たくさん来るね。
先に貰っておいて、よかったかもしれない。
そっか。オレは後でいっかな。
一気に行っても後の楽しみなくなりそうだし、
それより、人に会いたいし。
[竦められる肩に対して、軽く首を傾いだ]
はい、では改めてはじめまして。
ラッセル様と…ヴィー様?
[名乗られた名と聞えた名を呼び返す。
もう一人の少女の名前は分からず、僅か困惑の顔。
それからハタと口元に手を当て]
ネリーと申します。
どうぞよしなに。
[スカートを摘み、フワと頭を下げた]
人に、ね。
[ラッセルの言葉に、瞬間、口元を掠めるのは冷たさを帯びた笑み。
だが、それはすぐに掻き消えて]
そういう意味では、真逆なようだ。
[飄々とした口調で、こう続ける]
……ハーヴェイ、だ。
[ネリーと名乗った少女の呼び方には、短く名乗る事で訂正を入れた]
ネリー。
[この場に於いては珍しく、聞き覚えのある声]
[水場へと向かう際に分かれた少女を思い出して]
[穏やかな響きで、唯、名を呼んだ]
きたないものは、落とせましたか?
ふぅん?
[眼は静かに密やかな笑みを映す]
そう言えば、聞いた事あるな。
「あか」だって。
そうなんだ。
[呟きとなった声は、微かな余韻を残した。
女の手の動きが大気を揺らめかすような感覚。
身体も視線も動きはせず、燭台の火は明暗を変えるばかり]
うん、いいよ?
あなたがそうしたいんなら。
らっせるさま。
……長いよ?
[ハーヴェイの訂正とは別に、
何処かずれた感想を漏らした]
ネリー、リィだね。
よろしく。よしなに。
[横合いからのキャロルの問いかけに、
少女に移した視線を上から下までゆっくり動かした]
きたなくは見えないけれど。
[青年の呟きを拾い、女は首を横に振った]
どうにも頑張らねば、今の私たちの記憶の様に、零れ落ちてはいきませんこと?
私には、覚える自信がありませんゆえ。
[青年が名を訂正する態に、眼差しを伏せて微笑する]
ハーヴェイ、様。
[言い直し、謝罪或いは了解を示してもう一度小さく頭を下げる。
穏やかな声に顔を上げて]
はい…。
お目に触れさせることは、なきように。
[けれど肯定する言葉の語尾は濁り、視線は床へと落ちた]
うん。人に。
だって、こんなにたくさんの人に会う機会、ないもの。
[眼差しは一瞬のうちに失せた青年の表情を捉えない]
真逆なら、それはそれで。
お互いに足りないものを補えるんだよ。
そんな大層な話でもないけれどね。
[伸ばした繊手は避けられることもなく]
[熱を持たぬ焔の色の髪へと触れた]
ああ。
[秘めやかな吐息が零れ落ちる]
御心に感謝いたします。
[掬い、落とす、その動きの度、鈴の音が城の壁に響く]
フフフ…そういう反応を見せるのですね。
[シャーロットの様子に微笑むと、メモを取る。
彼女の名前を書いた下に、簡潔に一行。]
興味深いですね。私を含め、記憶あることが
期待できないのが残念でならないですよ、本当。
手札でやるしかないの。だから、今から後で
もしかしたら、得るかもしれない札を
考えるのはやめましょうよ。今を楽しみましょう。
[左眼が、広間の扉を捉えた。]
何やら、賑やかな感じがするのですね。
長い、ですか?
…ではどのようにお呼び致しましょう。
[己の呼ばれ方には頓着を示さず、少年に向けて小首を傾げ。
注がれる視線には僅か身じろいだ]
お見苦しいことはないように。
お借りしましたので。
[もどかしそうにしながらそれだけを答える。
布に包まれた足は何度か小さく踏みかえられていた]
零れても、必要な事なら、また拾うだけだろ。
頑張る、というもんじゃないと思うがね、俺は。
……覚える覚えないは、それぞれの自由だろうさ。
[首を振るキャロルに素っ気無く返し。
言い直された呼び名に、一つ、息を吐いた]
……様、はつけなくてもいいんだが。
どうにも、性に合わん。
[だからと言って、強く押し留めるつもりはないのだが]
[心は満たされたか、緋色のネイルを塗った爪先があかから離れる]
きたないあかが、そこにあったのですよ。
[その爪先は、少女の足を包む布を指す]
[見定める様に碧眼もまたそこへと落ちた]
――良いことです。
きたないあかが見えなくなることは。
[濁る語尾に頓着することなく、くれないから声を零す]
[はたり、と眼を瞬かせた。
丸い瞳が女の様相を映し、
耳は吐息と共に落ちる声を拾う]
……キャロは、好きなんだね?
[鈴の音の鳴るさまは儀式めいていた]
……機会が、ない?
[少年から返る言葉は、自身にはやや意外に響く。
故に口をついたのは、素の疑問]
足りないものを補い合う……ね。
[続けられた言葉に、蒼氷はふい、と虚空を彷徨い。
右の手が軽く、紅を滲ませる左腕を撫でた]
[イザベラの言葉にカップを両手に持ち、口に運んだ状態で、むー、と小さく唸った]
何だか観察されてるような気分だわ。
楽しめるか分からないけれど、考えても無駄だと言うのは同意ね。
考えるための情報が少なすぎるもの。
[カップから口を離しながらそう呟き。イザベラの左眼が扉を捉えるのにつられそちらへと視線を向ける]
…そう言えば。
また誰か増えたのかしら。
私達が来た時みたいに。
あら、気を悪くしないでください。
実際、観察しているんです。ようなじゃなくて。
[静かな微笑。アシンメトリの眼光。]
玄関先同然の場所で話すのが好きな人たちでしょうか。
落ち着くのですかね。面白い人たちならいいですね。
とても。
ん。呼びにくくないかなって思ったの。
リィの呼びやすいのなら、それでも構わないよ。
[艶やかな爪先を追って視線を落とすと共に、
少女に対しての答えを返す]
きたないあか?
怪我でもしたのかな。
へいき?
それなら、座っていたほうがいいかも。
あ。
そう言えば、広間に行きたいんだっけ。
移動、しよっか。
他のみんなも、いるから。
[言葉は次から次へと流れ出て、一つの提案をした]
[長い睫毛が一度開閉し、青年の言葉を反芻する様]
記憶が貴方にとって必要で有るならば。
そうであるのかもしれませんね。
[爪先の緋色を、口許のくれないへと当て小さく呟いた]
ああ、そう言えば。
広間へと行くのでしたか?
[はっきりと観察していると言われると、あまり気分が良くないのか眉根が寄る。非対称な微笑みにも少々気遅れしているようにも見えるか]
立ち話が好きな人達なのかもしれないわね。
他人の趣味をとやかく言うつもりはないけれど。
面白い、ねぇ…。
まぁ、暇潰しにはなるかしら。
つけなくてもいい。
ハーヴェイ……さん。
[鸚鵡返しに呟いて。敬称を外し呼んでみたものの、結局一段変わっただけに終わった]
[鈴の音と共に降りてきた碧眼には小さく震え。
ただ頷きだけを返し]
呼びにくい、とは思いませんでした。
構わなければこのままに。
怪我…いいえ。いいえ。
大丈夫ですので。
[少年の言葉にそれまでより大きく頭を振った。
口元が僅かに引き締められる。娘自身は気付かぬままに]
まだ他にもいらっしゃるのですか。
はい、どうぞご一緒させて下さい。
[言うなり一歩先へと踏み出し、
表情の薄い顔だけをハーヴェイへ向けた]
うん。
こうやって、話をするのも、久しぶり。
よく覚えてはいないんだけれどね。そんな感じがする。
[己の発した台詞を繰り返し、腕を撫でる様子を注視する]
それも相手がいないと出来ないことだから、
人と会えるのは、やっぱりうれしいことだよ。
[キャロルの呟きに、そういう事、と頷き。
彼女と、それから、ラッセルの言葉にそうだったな、と呟いた]
ここで突っ立って立ち話しててもなんだしな。
座れる所に落ち着いた方が良さそうなのも、いるんだし。
[言いつつ、蒼氷は青の髪の女に向けられる]
[リィン]
[指が、手が、腕が動く度、響く澄んだ鈴の音]
[少年の確認するかの様な問いかけに、緩く重く女は頷いた]
はい。
きれいなあかは、うつくしいものですから。
[陶然とした眼差しは、またそのあかの髪へと向いた]
……まあ。いいか。
[さん、という呼び方に一瞬眉は顰められるものの。
様よりはまし、という結論に至ったのか、それ以上は言わずにおいた]
人と話すのが久しぶり……なのは、俺もかも知れんが。
[そんなに嬉しい事か、と、口の中で呟く。
左腕が注視されているのには気づけど、それには触れようとせずに]
フフフ…。貴女、かわいらしいですね。とても。
[笑い声とともに、喉の奥からぐっぐっ、と音。]
来るんじゃないかしら。そろそろ。
うん、構わないよー。
[かぶりを振るネリーの肩上で、揺れる三つ編み。
ハーヴェイの腕から其方へと視線は逸れた]
そう?
大丈夫なら、いいけれど。
大丈夫に、見えない感じもするなあ。
[皆の同意を受け取り前に向き直ろうとして、
キャロルの台詞に一時、動きを緩める]
うつくしいもの。
そっか。
オレには、よくわからないけれど。
キャロルが好きなら、オレのでいいなら、好きにしていいよ。
[画材を持ち直すと、広間へと先んじて*歩み出す*]
怪我。
或いは、
[何でもない事の様、女は淡々と口に出す]
花の毒が抜け落ちていないのやもしれませんね。
[広間へと向かう人の背を、靴を鳴らし追う]
ねェ。
[相手の膨れ面に気付いていないか、
或いは気付いた上で、反応を見ているのか。]
そういえば、私城の中ある程度見て回ったんです。
鏡……まだ、見つけていないんですよね。
[ガマの鳴くような音が、言葉と共に漏れる。]
鏡、必要ない?女の子なら必要じゃないかしら。
見つけたら教えてね。鏡。見たいのよ。すごく。
[むすっとした状態で紅茶を飲み続けていたが、訊ねられて視線はイザベラへと向く]
鏡?
…そう言えばここにも無いわね…。
流石にキッチンにも無かったし。
でも個室にはあったりしないのかしら?
無いと髪整えにくいじゃない。
個室にも無いって言うなら…探してみようかしら。
分かったわ、見つけたら教えてあげる。
[こくり、と小さく頷いた。相手が鏡を見たがっている理由は察することは出来なかったが、無いのは自分としても少々困る]
[先へ進む少年を追う形で広間へと向かう。
扉を抜けた先には、先に別れた二人の姿と、知らぬ一人の姿]
……全員いる……訳じゃないんだな。
[先に会った内の一人の姿は見えず、ぽつり、とこう呟いた]
手。
[茶の男のひとの言葉。
それが自分に向けられたと気付くまでには、そう掛かりませんでした。]
…あの。
お邪魔で、なければ。
[本当は知らない方に頼るのも恥ずかしくはありましたが、なにしろ慣れない場所ですから、不安のほうが大きかったのです。]
あ。
済みません、名乗りもせずに。
…ええと。
[幾つか増えた色と、交わされる声。
慌ててそうは言いましたが、思い出すのに、少し時間が掛かってしまいました。]
ニーナ。
ニーナと、言います。
歩けますから。
…毒も、大丈夫です。
[どこか頑迷にすら聞える調子で少年に答え。
歩き出す人々の後ろについて歩を進める。
チリと伝わってくる感覚は気付かぬ振りをして]
ありがとう。優しいのね。
[紅茶とクッキーを右眼で見つつも手を付けようとはしない。
まるで、あらゆるものが観察対象でしかないように。]
困るものね、鏡。ないとかなり困るでしょう。
鏡があれば、自分で自分を肯定できるもの。
自分がどんな顔かたちなのか。覚えてないの。
[扉の開く音。それに反応するように紅紫の瞳をそちらへと向ける。見知った二人と、その後についてくる三名の女性]
ナサニエルなら来てないわ。
まだ城の中をうろついてるんじゃない?
[ハーヴェイの呟きにそう返し、視線は後ろの女性達へと向けられる]
まだ私達と同じ境遇の人が居たのかしら?
[少年の許可に、女はくれないを震わせた]
…はい。
[碧眼だけでなく、再度指先を向け]
[あかの一筋に絡める]
今は、これだけで。
その御心に、感謝いたします。
[うろついてる、というシャーロットの言葉に、そうか、と気のない声を上げ]
ああ、どうやらそういう事らしい。
これで終わりか、はたまたまだ来るか。
……全く、読めんね。
私も必要だと思うから、ついでよ。
独り占めしたって何もならないでしょ?
[優しいと言われてもつんとした様相で言葉を紡ぎ。顔かたちを覚えていないと聞くと、紅紫の瞳を瞬かせて]
顔を、覚えていない?
何だか不思議な話ね…。
[言いながら小首を傾げた]
[誰よりも緩やかな足取り]
[人の背中越しに見えた幾人かの人影]
[けれど、燭台に照らされてなお暗いあかに、女の視線は一度留まった]
ああ…こちらにも。
[ひっそりとした声は、少女の声に掻き消される程]
[紅紫の眼差しに、緋のドレスを摘み、一礼を]
あらあら。これまた、素敵そうな殿方ですね。
[メモを開き、その青年のことを記そうと構える。]
気にしないでください。メモはどうやら癖のよう。
覚えるが苦手なんです。外部にあった方が有用で。
私はイザベラ。
……考えても無駄じゃない?
ここに来たのは、私達の意志ではないようだし。
望んで来た人も居るかも知れない。
けれど、それは誰も覚えていない。
考えるだけ、無駄。
[読めないと言うハーヴェイの言葉にそう切り返す。それから金の女性と緑の女性、そして自分とよく似た青の髪を持つ女性に軽く会釈を向けた]
[唐突にメモを開く女の姿にやや面食らうものの。
気にするな、といわれ、更に理由を説明されれば、そんなものか、と納得して]
……俺は、ハーヴェイ。
[幾度目かの名乗りを口にする]
考えるだけ無駄……か。
は、確かに。それが、真理かも知れんな。
[シャーロットの切り返しに、皮肉めいた笑みを口元に掠めさせた]
今の不安といえば、それくらいなんです。
名前で辛うじて認識しているけど、意味内容を
思い出せないのは、自分が自分でないような。
[シャーロットと金色の髪の女性を虚ろな右眼が。]
貴女たちのような顔を期待してはいないんです。
私が私を肯定できれば、私はそれで良いのです。
[今度は右眼とは非対称な左眼が鋭く。]
金髪の貴女。華やかね。本当に華やかですね。
私はイザベラですよ。
[周りの動きに従い、着いて行った先には、また新たな色が二つ三つ。
交わされる知らない名前の主は、今この場にはいないようです。]
皆さん、お客様なのですか。
随分と、多い…
[呟きながら、交わされる声が、どのひとから発されているのかを懸命に追いました。
誰と眼が合うことも、恐らくなかったでしょうが。]
はじめまして。
[先に進んだ者達の後ろから広間へと入り。
そこに居た男女に向けて深く頭を下げた]
どうぞ、ネリーとお呼びください。
[華やか、その評価を否定も肯定もせず]
[緋色を纏う女は、僅かに首を傾げた]
私も名を告げた方がよろしいのでしょうか。
――キャロル、と。
[自然な動きで歩を進め、一つの椅子を引き、座る]
[チリン]
ネリー。貴女も、御座りなさいな。
[淡々とした声が、告げる]
ハーヴェイさんね。ああ、手帳は見ないでください。
覚えやすいように、印象を書き込んであるんです。
見たら、気を悪くされるかもしれないから。
[そう言いながら、ペンを走らせる。]
まだ不完全だけど、私が書いた見取り図なら
見たければ見ますか?興味がないならいいです。
[どこか支離滅裂。]
無駄なことに労力を使うのも馬鹿らしいでしょ?
ああ、紅茶必要な人は言ってね。
また持ってくるわ。
クッキーも好きに食べて頂戴。
[ハーヴェイに言葉を返しながら、他の者達にも紅茶とクッキーを勧め。イザベラ告げる言葉には少し考え込む]
自分が自分では無いよう…か。
それは確かに不安かもね。
[その言葉を肯定するように頷く。向けられる非対称の視線には慣れることが無く、少し引き気味になってしまうのであるが。それから思い出したように初見の者達へと視線を向けて]
申し遅れたわね。
私はシャーロットよ、長ければ好きに呼んで頂戴。
しっかし夢にしても趣味悪いな、オイ。
どうせなら浴びるほど飲ませろってんだ。
[緋の原に出来た小道を無視して頑丈なブーツで踏み拉く。ぱきん、ぐしゃりと靴底で生まれる感触は夢より現実的。透明な泉を尻目に蔦の這う小さな古城へ進む]
…はい。
[立ったままの人々もいるのに逡巡を示しつつも。
掛けられた声に従って近くの椅子に席を求めた]
イザベラ様に、シャーロット様。
シャーロット様も他の皆様も。
何故此処に居るのかは、ご存じなく?
[問いかけて初めて違和感を覚えた。
此の館に居るのが自然だと、そう思っていたことに気付く]
客、ね。
客なら、迎える主がいると思うんだがな。
[ニーナの言葉に小さく呟いて。
ともあれ、空いていた椅子を寄せて、座っとけ、と呼びかける]
別に、それはかまやしないが。
人の見方なんざ、それぞれなものだし。
[ペンを走らせるイザベラに、最初は気のない声で返すものの。
続けられた言葉に、蒼氷はす、と細められ]
見取り図……?
見せてもらえるならば。
[男は壁に縋り――ずるずると座り込んだ。
記憶の扉が開いたのは僅かな間。
けれど、そこからもたらされた重みに、自らの身体を支えることすら難しかった。]
俺は――此処は――……
[目眩。]
[緑髪の女性──ネリーに様付けで呼ばれ、紅紫の瞳が瞬いた]
……なんだか懐かしいわね、その呼ばれ方。
[小さな呟きは果たして周囲にも届いただろうか。続く問いかけには頷きを返して]
全く分からないわ。
気付いたら森の中に居たの。
そこから獣道を通って来たら……この城に着いたわ。
紅茶。お願いいたします。
[シャーロットと名乗った少女に、そう声をかける]
[手伝うそぶりは見られない]
縮めて呼ぶ必要が有る時はロッテと。
ニーナ、です。
[周りの名を告げる声に合わせて、わたしもまた名乗りました。
何処を向いていいか分からなかったので、目線は中途半端な位置を彷徨っていました。]
えェ。興味がおありなら。どうぞどうぞ。
[ハーヴェイに、見取り図のページを開き渡す。]
くれぐれも、他のページは見ないでください。
至極至極、困りますから。とても。困るんです。
[右眼はハーヴェイを。左眼は検討違いの方向を
ぐるりぐるりと見て回っている。]
困るんです。本当に。ええ、本当にですとも。
[言葉遣いが妙。]
客じゃなかったら、なんだろうね。
でも、何かに呼ばれているみたいな感じはするよ。
みんながみんな、同じような状態で同じ場所に来るなんて。
そうじゃなかったら、夢でも見ているのかな?
[窓辺の椅子に器用に膝を立てて座り、
スケッチブックを乗せる。
紙は捲られ、真白の上に引かれる黒。
連ねられる線は形を作り眼に映る景色を写せど、
其処に人は居らず、*色は無い*]
[何故此処に居るのか。
ネリーの投げた問いに、ほんの一瞬、窓の向こうを見やり]
……気がついたら、花の中にいた。
そこから、この城が見えたんで、誰かいるかと思ってここまで来た。
どうやって来たのかは、さっぱりわからんね。
主?
あら、先程の方は…『番人』でしたね。
[ハーヴェイ、と名乗っていた声を聞いて初めて気付いたのですが、よく考えればおかしなことです。
宿泊の許可を出すのが、番人だなんて。
主がそう言付けていたのなら別ですけれど。]
あっ、済みません。
[椅子の引かれる音に、慌てて頭を下げて。
手で触り、座る位置を確かめてから、ゆっくりと腰を降ろしました。]
[キャロルに頷いて一度茶葉を取り換える。お湯を少量注ぎ蒸らしてから、更に注いで抽出。その間にカップを温め、頃合いになった紅茶を注いでキャロルへと差し出した]
どうぞ。
…ロッテ?
何だかラッセルの呼び方と似てるわね。
[変わった呼び方をする少年を思い出し、小さく笑いが漏れた]
[名乗る青髪の少女──ニーナの所作をじーっと見つめる]
…ニーナ、だったかしら。
貴女、もしかして目が…?
[ハーヴェイが手を引く様子。椅子を触ってから座る様子。それらをしばし見つめ、つい思ったことが口に出た]
……気持ちが悪い。
[乱れた呼吸の合間から声を絞り出し呟くと、横倒しに倒れ伏した。
ひんやりとした硬い床の感触を頬に感じたその直後、あっさりと意識を手放した。]
[シャーロットの呟きは聞えたのかどうか。
きょとり、と翠も瞬く。
ハーヴェイの声に同じく窓の方へと視線を投げ]
そうでしたか。
私も最初は花に囲まれておりました。
そして歩いているうちに此方へ。
何かに呼ばれて?
ああ…。
[ラッセルの声に視線を戻すと、小さく頷いた]
……そんなに、念を押さんでも。
他人の事には、さして興味などない。
余計な覗き見はしないさ。
[困る、と繰り返すイザベラに呆れたような声で言い、手帳を受け取る。
書き込まれた見取り図と、先にふらついた時の間取りと。
それらを重ね、朧気に構図を把握してゆく。
左右異なる動きをする眼にはやや、奇異なものを感じながらも、それを指摘はしなかった。
外見の指摘は、自身にもある種鬼門と言えるが故に]
ふ……ん。
わりと、広い……設備も、それなりにしっかりしてそうだな。
[小さな声で呟いた後、ありがとう、という短い言葉と共に手帳を返す]
[傍らの椅子に、少女が座る]
[そこにあった逡巡は、省みられることが無い]
ありがとうございます。
[チリン]
[差し出された紅茶を受け取り、手元に置く]
[告げられた名に、眼差しはあかの髪の少年へと向く]
彼は、何と?
[少女の笑う口許に眼を留め、女は問うた]
ああ。
ま、主がいるなら、何かしら言ってくるだろうさ。
[ニーナに返して。
シャーロットが彼女に向けた問いに、蒼氷を一つ、瞬かせる]
[黒ずみ錆びついて見える門が空けた隙間に口笛を吹く]
よっしゃ、乗り越えずにすんだぜ。
これで今夜の雨風は凌げるな。
さーて地下にでも酒の一本くらい転がってりゃいいが…ゲッ!
[にまりと髭面を歪めて扉を開く。予想より軽い錠の感触と開いた隙間から見えた陰気な顔に濁声が上がった。蝋燭の灯りに照らされた番人が扉に近寄り、大きく開けて中へと目線で促す]
あー…入れってか、なら邪魔すんぜ。
で、ちぃとばかし体温めんのに酒が欲しいんだが。
ああ、ああ、場所さえ言ってくれりゃ手を煩わせやしねえよ。
ええ、よく見えないんです。
でも、どうしてだったかは忘れてしまいました。
[青い色――シャーロット、と名乗ったひとに顔を向けました。
他者の目には、焦点のずれた鈍色の眼が映ったことでしょう。
どうしてわたしがその色を知っているのか、それもまた思い出せませんが。]
呼ばれて、ねぇ…。
だったら誰が呼んだの、って話にもなるんだけど。
夢なんだったらさっさと醒めて欲しいものだわ。
[ラッセルの仮定について出るのはどこか苛立ちにも似たもの。考えても答えは導き出せず、全て分からないことだらけ。気分が良いものでも無い]
[差し出した紅茶に伸びる手と連動するように鳴り響く鈴の音。紅紫の瞳がそちらへと向かう。続き訊ねられるキャロルの言葉には]
ロッティ、ですって。
そんな風に呼ぶ人なんて居なかったから、なんだかおかしくて。
それはそれは、私とは違うのですね。
[手帳を受け取りながら]
私は、他人に興味ありますよ。とても。
暇を潰すなら、他人見ているのが一番です。
どうです?面白いですよ。
[イザベラがメモを取る>>172内容を、男は知ることがない]
[前後の流れから判るようなものだが]
名前がわかるということは――
完全にないわけでもないがな
ああ、確かに外が騒がしい
あの中を誰か通ってきたのか
[向くは彼岸の花が見える窓]
[そばへと足を向け、窓枠にもたれる]
[聞こえる二人のやり取りに、クツクツと低く喉を震わせた]
[それからやってきた人々に、黒紅の片目を向ける]
[暫くの間、男はそこから動くことはなかったが、名乗りだけは軽く、先に済ませた]
…本当に、同じなんですね。
[周りの語られる境遇は、どれも同じ。
それはわたし自身にも言えることで、小さく呟きました。]
全く同じ者同士、なんているもんじゃないだろ。
[イザベラの言葉に軽く返して、肩を竦め]
俺は、他人に入れ込むのは遠慮したい方だからな。
だからって、あんたが他人を眺めるのを、どうこう言いはしないが。
[声がする方へと向けたためか、ニーナの視線はズレては居たがこちらへと向いて居て。覗く鈍色の瞳には光が宿っていないように見えた]
そう、なの…。
見えないとなると、移動もそうだし何をするにも大変そうね。
初めて来た場所でしばらく過ごすことになるけど、大丈夫かしら?
[右手は興味本位にニーナの目の前でぴらぴらと振られた]
ハイハイ地下ね、わかったわかった。
仕事の邪魔して悪かったな。
[この地の場所すら尋ねもせず、番人の気が変わらぬ内に急ぐ。角を一つ曲がったところで吐いた息は酒臭い]
さーって酒だ酒だ。
古臭いが城の地下ってんなら葡萄酒かなんかあるだろ。
――新しい客人のようだぜ
[言葉を落として、男は窓から離れ、広間の戸に手をかけた]
[迎えに行くわけではないが、他がどう捉えても男は気にしまい]
[戸の向こう、廊下は、冷たい空気が流れていた]
フフフ……。それは結構なことです。
[ニーナの前で手を振るシャーロットの様子を無言で
指し示し、押し殺したように笑う。]
クク……こういうのがですね…クク…。
面白いんですよ。とても。
[陶磁器の中、あかの色彩を揺らし、口に含む]
[ニーナと名乗った少女に注目は集まっていたが、気にする様は無く]
[女は唯、手の裡にあるものを愉しんでいる]
ロッティですか。
名を変えて呼ぶのが好きでいらっしゃるのでしょうか。
[首を傾げ、女はまたあかを一口*嚥下した*]
新しい客人?
[広間の扉へと向かうクインジーの言葉。その動きは視線で追うだけとなる]
まだ集まってるのね、ここに。
今度はどんな迷い子なのかしら。
[気にはなったがクインジーの後を追って広間の外へ出ることも無く。その背が扉の奥へと消えて行くのをただ見送った]
[ニーナの答えに軽く睫を伏せて。
シャーロットの言葉に小さな溜息を吐く]
分からないことばかりですね。
[一度座ってしまうと立ち上がるのに気力が足りず。
人の動きを目に入れ、交わされる会話を耳にしながら、鮮明にならない思考を*巡らせていた*]
さてな
[シャーロットの言葉に、男はそれだけを返した]
[部屋を出る前に向いた視線はハーヴェイへ]
治療はしたか?
[問いかけたが、それに答えは求めていない]
[誰とも言わぬ、視線を向けただけであり、男はすぐに外へ出た]
[足音がする]
[他の者との会話に集中していたためか、イザベラの様子には気付かない。気付けばまたむくれていただろうから、少女にとっては幸いだったかも知れない]
そうね、クインジーのことはクーって呼んでたし、イザベラのことはベルって呼んでたし。
そう言う風に呼ぶのが好きみたい。
[紅茶を愉しむキャロルにそう答え、自分もクッキーを一つ口へと運んだ]
ぐえっ!
[先へ先へと酒精の切れかけた男の気は急いて、足元に転がる何かに躓いた。濁声と硝子のぶつかり転がる音が響く]
…いってー、荷物何ざ廊下に転がしてんじゃねえよ。
ったく……あ゛?
[飛んでった蝋燭を取りにいく為に足元の何かに蹴りを入れ、その感触に顎を開ける。胡乱な目で足元を見、屈んで形を確かめる]
人…か? しかも生きてやがる。
[新しい客人、という言葉に一瞬、視線を広間の入り口へと向ける。
だからと言って後を追うでなく、窓辺へと寄りその向こうに広がる緋を見やる]
……関係、なかろうが。
[向けられた視線と、問いと。
それには素っ気無い呟きだけを漏らす。
右手は確りと、紅の滲む辺りを*掴んでいた*]
[ちらちらと視界を過ぎる肌色が何だか分からなくて、指先を伸ばしてみました。
触れることができたなら、それが手だと分かるのでしょう。]
色は、見えますから。
慣れれば、大丈夫だと思います。
[こくりと一つ*頷きました。*]
[完全に見えていないものだと思い込んでいたために、伸びて来たニーナの手が自分の手に触れたことに驚きの声を上げる]
わっ。
何だ、完全に見えないわけじゃないのね。
うーん、色だけ見えると言うのも不思議な話ね。
目が見えないと言うよりは、視力が弱いってことかしら。
[伸びて来たニーナの手を両手で包み、軽く握手をするようにしてから解放する]
番人
[すぐに見える灯りの元に居るアーヴァインに声をかける]
[新しい客人は地下へと男は聞いた]
――地下?
そこまであるのか
[足音が遠ざかっていった方向を見る]
[番人にはそれ以上言葉をかけなかった]
[男は手に灯りを持つことなく、そちらへと向かった]
[放置しかけたところで返る呻き声に舌打ちし、体を揺する]
おーい起きろー。
気付けはねーぞー。
[気の抜けた声を上げながら意識の有無と首筋の脈を診る。濃藍の青年と焦茶の男はどちらも闇に馴染んで見え難い]
あ゛ーどうすっかなー。
やっぱ気付けを取ってくるのが先だよな…おっと、
[薄灯りが見える]
[闇の中を動くのは慣れているのか、男の足取りに迷いはない]
[薄い燭台に導かれながら、隻眼の男は床を踏んだ]
[どこかへ向かうにしては、その灯りの場所は変わらない]
[相手が押さえた足音を捉えるだろう頃に、男は声を投げた]
――何をしている
手が必要ならば貸すが?
[泉に反射する緋色の群れを、足音ひとつ立てずに歩く。
周囲に響くのは、ざわりと揺れる花の音のみ。]
――……ああ。
[溜息をついた刹那、男は跳躍する。
彼はその動きの名を全く覚えていない。
しかし、其れは確かに「グラン・ジュテ」と呼ばれる跳躍ではあった。
――彼にその「理由」となるべく理由は無い。
しかし緋色に突き動かされたかのごとく、男は暗闇の中で一心不乱に踊っていた。まるで、祈りを捧げるように。]
んー、行き倒れを拾ったってところかね。
手は喜んで借りるぜ。
ここら辺に倒れてるから踏むなよ。
[動揺の欠片もない声に振り向かずに話し、四つん這いでナサニエルを超える。転がった蝋燭を拾うと高く掲げた]
うっわ、顔色悪いなー。
やばいんじゃねえの?
だいたいどこにいるかは、判る
[照らされた顔を見て、黒紅が細められた]
[歩を進め、二人へと近付く]
一人で運ぶのは無理だな
変に疲労を溜めるのは、望ましくない
どこかに運ぶか
お前は良さそうな場所を――知るわけがないか
[蝋燭を持つ男へと、倒れた男から視線を変えた]
[しばしの間、舞踊の動きを続けているうちに、男ははたと気づいて動きを止めた。左目に巻かれた眼帯の奥が、やけに疼く。男の肌には汗がうっすらと浮かび、花の緋(あか)と混じり合って消えた。]
なんだ、ここは。
違う。――…何故、俺はこんなことを。
[彼の眼前に、古い城が見える。
眼帯の奥の疼きが、その場所を見据えた。]
[男は、疼きに操られるかのごとく動きだし――…古城の中へと吸い寄せられた。]
[離れる前ナサニエルが呟いた名は欠片しか耳に留まらない。唇の動きも胡乱な目が闇の中見たかは定かでなく]
じゃ、俺は気付け取ってくっからよ。
アンタはコイツ運んで…あ゛?
[面倒ごとは押し付けて酒を取りにいこうとする前に言われた声に渋面になる。無視して行くか愛想を振っておくか考え、結論は強面の男に逆らわない方]
…わーったよ、手伝えばいいんだろ。
場所なんざ知るわけねえよ、今来たばかりだってのに。
運ぶだけ運んだら後は任せたからな。
[古城の中には、ひとりの男が居た。
彼は、「番人」と名乗って居た。
彼は、この地が何であるのかについては、特に何も語らなかった。
そしてこの舞踏家も、この地が何であるのかについて、特に問うことは無かった。]
[いくばくかの会話の後、彼は古城の奥に案内される。
蝋燭の光が静かに揺れるのが見えた。城の中に、人が居るのだろう――…静寂の中に、人の熱が揺らめき、踊るのを、彼は強く感じていた。]
気付けか?
お前はアルコール臭い
[ナサニエルに手を伸ばす]
[言葉は聞き取れず、仕方ないと二人がかりで広間に運ぶことにした]
己よりもこういうのを看病しそうな奴らなら居る
運んだら探しに行け
酒は逃げないんだからな
[手に触れた瞬間、声が上がりました。
わたしが何か悪いことをしたのでは、と不安も過ぎりましたが、ただ驚かれただけのようです。]
ええ、そういうことで――?
[答える最中、わたしの手は暖かくなりました。
相手の手に包まれたのだとは、すぐに感触で分かったのですけれど。
急なことにびっくりして、ぱちぱちと瞬きました。
そうして手を離された後に漸く気がついたのですが、暖かな紅茶と、クッキーの香りが部屋に*漂っていました。*]
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