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次の日の朝、 ヘイハチ が無残な姿で発見された。
……そして、その日、村には新たなルールが付け加えられた。
見分けの付かない人狼を排するため、1日1人ずつ疑わしい者を処刑する。誰を処刑するかは全員の投票によって決める……
無辜の者も犠牲になるが、やむを得ない……
そして、人間と人狼の暗く静かな戦いが始まった。
現在の生存者は、 マイコ、 マコト、 アズマ、 ヒサタカ、 ウミ、 ヨウコ、 フユ、 ヨウスケ、 サヤカ、 ショウの10名。
早朝の校庭にリン……と鈴が鳴り響く。
ゆらり、現れる桜色の影。
「きめるはこころ。
おもいのままに。
えらぶことなど。
たしゃにはできぬ。
ゆくもかえるも。
しるべはこころ。
やみにしずむや、ひかりにまうや。
そのゆくすえはだれもしらぬよ」
無邪気さすら感じる声がゆるりと響き、そして、鈴の音と共にその姿は消えうせた。
―寮・自室―
[朝の日差しに目を開ける。昨夜は夢も見なかった。ベッドを離れて着替えると、それが習い性のように窓の外の桜を見遣る。早朝に響いた鈴の音と少女の声は、眠りの中にも届いていたか…ただ、じっと咲き誇る花を見つめて]
―寮・自室―
[窓を開けてベランダに出る。
正面の男子棟を見れば、大きな身体が部屋に戻っていくところで]
あの人は違う。
間違いないのは、あそこ。
[そう言うとマコトの部屋の方を見て目を細めて]
昨日会えなかった人は一人。
つまりはそういうことなのかな?
[記憶を辿りながら、指折り数えてゆき。
動いた視線はアズマの部屋へ]
邪魔しないでね。
今は我慢してるんだから。
−寮・自室−
[夜が明け、朝が来て、陽が昇る。
切り取られた世界でもそれだけは変わらない。
けれども、蝉の歌も、人のざわめきも、なかった。
まだ睡眠を求める瞼を、ゆっくりと持ち上げる]
『…起きないと、練習の付き合い、』
[行けないし、行く必要はない。付き合うべき相手がいないから]
『あー、バイトのシフト………』
[無断欠勤をしてしまったと気づく。それを謝りたくともできはしないが]
『昨日は、…そう、みんなで食事して、』
[たとえ仮初めの日常であっても、料理を皆が食べてくれるのは嬉しかった]
『………あ、アイツ、水泳部のヤツか』
[霧生小夜花、その名前をふと思い出す。
フユの口にしていた名がまた1つ一致した]
『少ない、なぁ。』
[指折り数えかけて、止めた。
目を覚ました仔犬が、見上げて、鳴いた]
ん、はよ、リュウ。
[顔を向けて、ショウは、笑う。]
『ああ、―――18になったんだっけ』
[実感はちっとも湧かなかった。
時が止まってしまったかの如く。
酷い誕生日だった、と今更ながらに思う。
寝床から抜け出して伸びをすると、カーテンを開けた。
季節外れの桜は今日も、風に枝を揺らして咲っている。
ショウが身支度を始めようとすると仔犬は傍から離れて、
ベッドの傍に置かれたバスケットボールを前脚で突つく]
いつまでも、こうしてらんねぇよなぁ。
[何とか、しないと。
小さく零れた呟き。]
―――でも。
[仔犬が動きを止めて、首を傾げた。
薄手のパーカーを羽織り、フロントジッパーを閉める。
ベルトポーチを腰に巻いて、息を吐き出すと、
ぱしん、と軽く、自らの頬を叩く。]
んし、行くぞ、リュウ。
[きゃんっ、と元気のいい声があがる。
仔犬と連れ立って、ショウは、*部屋を出た*]
―体育館―
[ぎゅうとボールを抱いて、準備室に積み上げられたマットのうえに座っている。
どこか遠い目をしているか。]
……どこにいるのかな
部屋に戻ってるかなぁ
[呟いて、立ち上がる。
だけれどあまり行きたいと思えなかった。
苦しい。
なんでかもわからずに、ボールを手放して]
―寮・自室/早朝―
[目覚めを呼び込んだのは、遠くから響く鈴野の音。
そして、無邪気と言えば無邪気な声]
あの子……桜花……か。
[小さく呟いて、起き出す。
静かな部屋。
ため息を一つついて起き出して。
身支度を整え、部屋を出る。
その手には、竹刀]
[寮を出る前にふと思い立ち、給湯室へ。
忘れていた和菓子を一つ、麦茶と一緒に摘まんで。
ふと、家族の事を思う。
連絡がつかなくなって、皆心配しているだろうか。
過るのは、そんな思い]
[女子寮、各階に備え付けられた洗面所の三階。
掌に掬った温い水に顔を浸す。水音。
顎の先から滴る雫を手の甲で拭い、タオルを一枚、たっぷり水を染み込ませてから絞った。
同居人の額にそれを乗せる為に、自室へ*戻る*。]
自分の欲しい物は。
ちゃんと言うべきだったんだね。
欲しい物にはちゃんと手を伸ばすべきだったんだ。
だって、そうすれば。
一人にならないですんだのに。
寂しいだなんて思わずに済んだんだから。
もっと力が欲しいよ。
そうすればもっと手を伸ばせる。
ねえ。
壊れちゃうくらいなら。
その前にちょうだい?
甘くておいしいの。
力の、源。
それをくれれば。
もっと音色に近づける。
[ぼんやりとそんなことを考えていれば。
いつのまにか日も高い位置まで来ていて]
まあ、とりあえずは。
様子を見に行ってみようかな。
[クルリと身を翻して部屋に戻る。
動きやすそうな服装に着替えると、特に目的を定めるでもなく*外に出た*]
―寮・自室→…―
[彼の少女の声は此処まで届いたか、夢現の中に聞いていたかも知れない。
のろのろと顔を洗い、最低限の支度を済ませて部屋を出る。
ほんの少し前、最愛の妹と久しぶりに会話した場所を、]
……ああ。
今日って、何日だっけ。
[彼女が二度と動かなくなった場所を見つめた。その正確な位置はもう既に思い出せなくなっていた。
ただ、彼女がもう家に帰ることは二度とないのだと、それだけを。]
…母さん、大丈夫かな。
[もしかしたら恋人でもできたのかも知れないと、最期の会話を思い出す。夫を亡くした傷がやっと癒えたのに、娘までも亡くしたと知ったら。]
―寮・自室―
[ごろ、と床の上へ腕を投げ打って、身体を仰向けた。
本当はベッドで寝ようとしていたのだけれど
二段ベッドの骨組みが金属で出来ている為か、
少し動くだけで静電気が走って、痛くて仕方ない。
冬場でもこんな事なかったっつーの、と小さく舌打ちを零して。
妙に冴え渡る感覚へ意識を向けながら、
白い天井を見詰めたままの視線をゆるりと瞬いた。]
……寝れねー。
[がば、と軽く勢いをつけて身体を起こす。
原因は色々思い辺りが多すぎる気がするけども]
―…→桜―
[其処から寮を出て数分の後。あの桜の下に洋亮は居た。うたいわらっていた少女の姿は、今は見えない。
根元に座り、幹に背中を預け、瞳に未だ宿らない感情の代わりに薄紅色を映した。]
『うつわはだいちに、たましいはそらに』
[少女がうたった言葉を思う。大柄な先輩が、お経を上げてくれたと聞いたことを。]
……ちゃんと、いけたか?
[想うのは彼女。
そして、もう一人。]
[人気の無い弓道場…弓道衣姿で座禅を組んでいる]
…………
[小一時間もそうしていただろうか、やがて、ゆるりと瞼を開いて、傍らに置いた弓を取った]
っあー、面倒くせ…。
[ドアノブの金具に数分間四苦八苦しながら、漸く部屋のドアを開ける。
(結局苦労したにも関わらず静電気を食らうハメになったが)
小さな痛みの走る指先を軽く振りながら、廊下へと踏み出そうとして。]
……お供え物?
[ちょこんと3つ並んでいるおにぎりを、思わず凝視する。
確かに、ドアの前に誰かが来た気配はあった気がする。
まじまじと3つのおにぎりをみつめながら、差出人の正体を考えてみて
…考えた処で、思い浮かぶ人物なんて1人ぐらいしか居ないのだけれど。]
…えーと、ありがたくいただきます?
[空腹なんて、色々有りすぎて忘れていた。
自分はあまりにも食に拘りが無さ過ぎる、とちらり考えながら
有りがたくラップに包まれたそれを拾い上げる。
…アルミホイルに包まれていなくて良かった、とか少し思った。
おにぎりの一つのラップを剥がしながら、階下へと降りる。
歩き食いが行儀悪いのは知っているけれど、知ったこっちゃ無い。]
[ポケットの携帯を片手に。圏外という左上の表示は一昨日からずっとそのまま。
アドレス帳を開いて、マ行の一番上に表示された名前。夏休みに入る前、少し唐突にも思えるタイミングでアドレスを聞いて来た少女。彼女が恐らくは。そして彼女も、]
……
[小さく口唇が動き。
はらはらと降る桜の花片が一枚、画面の上に*落ちた。*]
[射場に立ち、無心に弓を引く。離れた矢は、過たず的の中心に立つ。続けざまに次の矢を番え、弓を引く…競技では有り得ない連射だが、流れるような動作に迷いは無い]
…ん、おかか。
[一口、二口と食べ進めて、出てきた具材の名前をぽつりと零す。
…塩握りかと思っていた。意外に豪華。
むぐ、と更に一口含んで。顎を動かしながら給湯室へと入った。
冷蔵庫にペットボトルの緑茶を引っつかんで、
ボトルの蓋を外しながら給湯室を早々に後にする。
…流石に腕が足りないので、2つのおにぎりはポケットの中。]
[ただ立ち食いするのも味気ないな、と
ぼんやりと思考を巡らせて、思い出したのは一つの場所。
正しく言えば、そこ以外で昼食を取ることは久しくなかっただけだが。]
あー…久しぶりに、行くか。
[其処まで口に出して久しぶりと言うのも語弊が有るな、と少し思う。
夏休みに入ってから、まだ、数日しか立っていない。
──随分と、昔の事のように思えてしまったけれど。
玄関まですたすたと歩を進めて、靴へと履き替える。
再び、ドアノブで暫くの苦労を要してから、外へと踏み出した]
[ゆっくりとした歩みは、通いなれた校舎に向かう。
塩っ気で乾いた口の中を、緑茶を一口仰ぐ事で潤した]
…っと、と。……佐久間センパイ?
[校舎へと向う途中、
ぼんやりと桜の木の下で佇む姿に、僅か眉を寄せる。
一瞬、声を掛けようか考えて、やめる。
気軽に、声を掛けるような雰囲気でも無かったし
何より現状、繚乱の桜に足を運ぶ心境なんて、
そう心軽いものでもないと、容易く想像できた。
少し離れた場所から暫しその様子を眺めて、小さく溜息を零す]
……ん。
[微かな声が聞こえたか、気配に気付いたのか。ゆると目を向けた。
少し離れた場所に人影を見つけ、何度か瞬く。]
…加納、君?
[少しの間があって、数日前に寮の共用スペースで会話した少年の名を紡ぐ。]
[少し離れた剣道場に、人の気配があった。思わず近付いて覗き込むと、一心に竹刀を振るマコトの姿]
…………
[数刻、その姿を見つめ、黙って離れる。]
[むぐ、とおにぎりを一口頬張って、ふと視線を向けられる。
声に出した癖に、声を掛けられるとは考えなかったらしい思わずゆるりと目を瞬いた。
しかし、そのまま軽い言葉を掛けるのも憚られてて
肯定の言葉の変わりに、ぺこ、と軽く頭を下げる。]
…ういス。…邪魔しました?
[…何だか、佐久間センパイとは逢う度に何か食ってる、と
頭の端で考えながら、佇んだまま短く声を掛けて]
[昨日も一昨日も、そして今日も
吹奏楽部の練習室にはフユ一人である。
窓と扉を閉めきり、自然光だけが照らす空間に空調の作り出した風が涼やかに吹く。]
[夢。夢を見た。それは5年前にいなくなったコトネちゃんの夢
マコトの家の分家の一人娘だという彼女は休みにやって来るたびに私たちと一緒に遊ぼうと、マコトの後についてきていた
マコトは彼女のことを持て余していたようだけど、マコトが彼女に冷たく当たるたびに彼女が悲しそうな目をしていたのを何となく感じていた
私が口出しをして、彼女を輪に入れることも何度かあったが、それでもマコトの彼女に対する態度は素っ気無く、彼女は悲しそうな目をしたままだった
だからあの日。夏祭りを明日に控えた5年前のあの日。お節介にも私はそんな彼女の気持ちを伝えるためのひとつの作戦を立てた
……だが。まさか、あんなことが起きるとは思ってもいなかった]
[作戦といっても何てことはない。コトネちゃんに、黙ってマコトの家から出てくるように言い聞かせ、彼女が待っている場所へマコトが行くように仕向けるといった子供らしいアイデアだった
彼女にそこに居るように言った場所は祭りを控えた地元の神社の境内
その日口実をつけてマコトの家に居た私は、マコトが遠回りに神社へ来るように仕向けると、すぐに神社に向かい彼女に合流しようとした
だが、辿り着いた神社で目にしたのは、季節外れに満開の花を咲かせた境内の桜の木とそれを見上げるコトネちゃんの姿。私は呆然とその光景を見ていた
どれだけその光景に目を奪われていたのか。ハッと気がつくと石段を駆け上がってくる足音
結局私は彼女に声をかけることが出来ずに、そばの手水舎の後ろに隠れた]
[マコトとコトネちゃんが言葉を交わしているが、声は遠く断片的にしか聞こえない。
「どうして……」「だって…………から」「私は…………」「でも……」「…………一緒に居たいだけ、なのに」「………………」
そんな遠目からでも分かるマコトの煮え切らない態度に業を煮やし、私はマコトを叱責しようと飛び出そうとして
目の前の光景にその場で動けなくなった
突如コトネちゃんの胸から緋色の華が咲き、その場に崩れ落ちる。そして見えないけど何か得体の知れないものが這い出してきて。そいつはマコトを襲おうとして。でもマコトが叫び声を上げると、突然あたりを突風が吹き荒れて。私は思わずその場にしゃがみ込んだ
狂風が吹き荒れる中ガタガタと手水舎の陰で震えていたが、どれほどの時間が経ったのか、風が止むと私は恐る恐る顔を覗かせる
そこは辺り一面爪のようなものでズタズタに切り裂かれており、しかし倒れ伏せているマコトとコトネちゃんの周りだけはぽっかりと何事もなかったかのような状態で残っていた]
いや。
[短く否定の言葉を次いだ。手にしたおにぎりとそれを頬張る姿を見てか、口許だけが少し笑う。]
もう、飯時かな。
[そんな時間だったかと、携帯の表面に目を落とした。]
[私はその後神主さんの家に駆け込み救急車を呼んだ
マコトの方は、気を失っていただけで体に異常はなかったらしいが、コトネちゃんは即死。しかも、遺体に心臓がなかったということを通夜の時に大人が話しているのを聞いた
私は何も出来なかった。私があんなことを言わなければ、彼女が死ぬことは無かったのかもしれない。なのに、私はあの時ただ神社の片隅で震えていることしか出来なかった
そして、両親に連れられて彼女の通夜に行った時見たマコトの表情。そしてあの後暫くは私たちにさえ心を閉ざしていたマコトを見て
その時、私は一つの決意を固めた]
[ゆっくりと目を開く。額には少し温くなった濡れタオル。おそらく先輩が載せてくれていたのだろう]
…………結局、その半分は守れなかったな
[そう呟き、右手を天井に翳す。体のダルさはもう*無くなっていた*]
…そっすか。
飯時っつーか、…昨日、炭酸飲料オンリーで食いっぱぐれてたのを
何処かのセンパイが気付いたみたいで。
3つほど、部屋の前に供えてありました。
[返る否定の言葉に、良かった、とも謝罪も言えずに、言葉と共に頷いて。
続く言葉には、あぁ、と手元へ視線を落とし
小さく苦笑を零しながら、パーカーのポケットに突っ込んでいた
ラップにくるまれたおにぎりの一つを取り出す]
…あんま食欲旺盛って気分じゃないんで、折角なら1個どっすか。
[美味いっすよ。そういいながら相手の返事も待たずに、
手にとったおにぎりを相手へと放り投げて]
………やっぱ、駄目かぁ。
[門以外からの脱出も不可能なのかと、
外と内とを隔てる壁を片っ端から、
子犬の侵入ルートまで当たってみたが
成果は得られず、溜息を吐き出した]
漫画とかゲームであるよな、こういうの。
んで、……………
[解決方法は、生み出した元凶を叩く事。
単純だけれど、困難だ。
叢から抜け出て、纏わりつく草を払う。
足下で、子犬も同じように身震いをした]
[時が過ぎ往くを厭いもせずフユはただ、佇んでいた。
どれだけの間かは分からない。]
[フルートを、床と水平に構えた。
はじめの一音は静かに。
長く、深々と空気を震わせてから
はらはらと舞い落ちる。]
[再び、静かに長く。
一つ目よりも高い位置から伸び、再び散って落ちた。
落花が何枚かあとに続いては、憂いを滲ませる。
水面に落ちた花弁は、幾つもの波紋を作り
さざなみが静かに混ざり合ってゆく。
花弁は、水面の陰影を見つめながら沈んで行った。]
[ト短調のパヴァーヌは寂々と続く。
淡々と展開してゆくイメージ。]
[寮の方へ戻ろうとして、桜の木の近くにいる二つの人影に気付く。そういえば二人とも昨夜、食堂では見なかった、と思い当たった]
………
[声をかけようかとも思ったが、一人はまだ名前も聞いていなかった事に気付いて逡巡]
……オンリーか。
[随分壮絶な食生活だと思った。そういう自分も、昨日から殆ど食事は摂っていないのだが。]
何処かの、っつーと……っと。
[1人、その人物に思い当たったところで、小さな塊が飛んでくる。片手を伸ばすとその中にすっぽりと納まった。
目の前まで引き寄せて、]
イチ君か。ありがと。
……無事、だったんだ。
[先程の言葉を続けてお礼を述べた後で、ぽつり。]
[おにぎりを投げた直後、桜の木の向こう側から
近付く人影を見つけ其方へと意識を向ける。
最近見知った顔だと気付いて、ゆるく瞬いた。]
…えーと、天野だ。…部活?
[弓道衣のままの格好に、思わず語尾が疑問系に変わる。
ふと、そういえば前見た時に、弓持ってたな、と思い当たって納得して
ひらりと軽く手を上げながら、緩く頭を傾げ]
……いや、弓道場を借りただけだ。
[先に声をかけられて、ゆっくりとアズマに近付く]
天野久鷹、だ。君は…二年なのか?
[確か、ショウを先輩と呼んでいた気がすると思い出して、尋ねる]
…なんか、ないかな。
[コンクリートの敷き詰められた道に戻る。
日光を照り返す地面は、熱を抱いていた。
木陰から出た子犬の尻尾がびくりと跳ねて、後ろに跳び退る。
遅れて、ひゃんっ、と情けない声があがった]
あー。熱いもんなあ。
[尾を垂れる子犬を抱き上げ、タオルで脚を拭くと、頭に乗せる。
急に視界が変わって、黒い眼が幾度も瞬かれた]
[声につられて振り向き、漸くその存在に気付いた。]
…天野先輩。
[頭を下げた。
目の前の後輩が呼び捨てにしているのを聞きつつ、やはり少し変な感じだと思ったかも知れない。]
…炭酸で、腹膨らんだら食う気なくしちゃって。
[本当に、まともなモン食ってないな、と思いながら
言い訳にもならない言葉を返して苦笑を零す。]
ビンゴ、一ノ瀬センパイ。
差出人の名前が書いてあった訳じゃないッスけど
…まぁ、多分そーだと思うんで。
中の具は食べてからのお楽しみって事で。
[ちょっぴりロシアン気分でどーぞ。
最後の一口を口へ押し込んで、おかかにぎりを完食する。
続く呟きに一瞬無言で瞬くものの、深く問う事もせずに]
センパイも無事で良かったッスね。
……まぁ、何より、とは言えないっぽいですけど。
なる。弓出来るんだ。
あ、えーと…うん、2年。 加納東。
[問いに、短い自己紹介をつけて返す。
そう言えば、こっちは教師から聞いていても
相手は自分の名前を知らないんだったな、と今更ながらに思い出して]
……年上なんだっけ。
2年て聞いたから、苗字呼び捨てにしてたけど。
[やっぱ敬語の方がいッスかね、と首を傾げ]
[ヨウスケに頭を下げられると、会釈を返す。そして、手にしたおにぎりに気付くと、軽く首を傾げた]
……食事の邪魔だったか?
[桜におむすびとくれば、花見だな、とちらりと思ったかもしれないが、さすがに口にはしなかった]
オマエ、結構重くなったなー。
[頭上の犬にけらけら笑って、歩み出す。]
ゲンバヒャッペン、だっけ。
[何処かのドラマで聞いた台詞を思い出しつつ、
足を向ける先は、体育館。
構内の何処もかしこもが現場ではあるのだから、
それは単なる理由付けだったかもしれない。
桜の大樹の方を見やれば、人が集っているのが見えたろう]
あー…なるほど。
[納得したような言葉で、だが苦笑めいた響きも持つか。]
イチ君ならやりそうだ。
……て、変なもん入ってねーだろうな。
[ロシアン発言を聞けば冗談のように言葉を零すも、同時に彼ならそんな食べ物で遊ぶことはしないかとも思う。
ラップを開きながら、]
……ああ。
[最後の言葉には一瞬手を止め、短く返した。]
今更って感じだけど、改めてこっちこそヨロシク。
[天野の言葉に、ひらと手を上げた。
続く言葉に、りょーかい、と短い言葉と共に頷きを返す。]
…あんま敬語得意じゃねーから、そっちの方が俺も助かるし。
そっちがタメ口でいーんなら、そーする。
[視線を向ければ、その向こうに生徒が歩いているのが見える。
僅かに遠いのもあるだろうが、犬を頭に乗せている為か、
この位置からは身長を見誤って、それが誰なのかまでは判らない。
いつものサイズなら、何となく影で判断が付いたのだろうが]
遊び心はともかく、センパイの作った物だから
食えないモノは入ってないとは思うんスけどねー。
あと、多分一応日持ちする具材だとは思うんスけど。
[一つ目はおかかでした、と一応参考ついでに報告。
続く短い言葉には、無言でペットボトルの中身を仰いで
パーカーのポケットから、3つ目のおにぎりを取り出す。]
…あ、天野も折角だし、腹減ってたら食う?
一ノ瀬センパイの手作りおにぎり。
[ふと、思い出したように手の中のおにぎりを相手に見せる。]
ああ、頼む。
[タメ口でというアズマの言葉には改めて頷いて]
……そういえば、二人とも、夕飯には来ていなかったみたいだな。
[おにぎりを齧るヨウスケを見ながら言った]
食事はちゃんとしないと体力が削られる。いざという時動けなくならないように、気をつけた方がいいぞ。
ん、わかった。じゃあ俺食うわ。
[ヒサタカの言葉に押し付ける事もせずに緩く頷いて、
ぺりぺりとラップを剥がす。]
昨日はね、ちょい色々と食う気も出歩く気も無くってさ。
まー…うん、確かにぶっ倒れないようには気をつける。
流石に、今すぐ食欲旺盛になれっつーのは難しいけど、
[重要な時に動けないのは勘弁だし、と
むき出しになったおにぎりを一口齧る。まだ具材は見えない]
ん。
むしろ食い物で遊んだら怒るもんな。
[今まさに噂の人物が通っていったとは気づかずに、齧ったおにぎりを見る。梅の赤茶けた色が見えた。
小さく息を吐いて、]
……ああ、そう…ですね。
[食事はちゃんとしないと、との言葉に顔を上げる。
それまで動かなかった瞳が、微かにだけ揺れた。]
遊んでも怒るし、遊ばなくっても
食わなかったらそれもちょっと怒る気がするッス。
[そりゃ、インスタントに炭酸飲料な食生活をしていたら
ショウにとってはきっと見過ごせないモノだろうが
そんな事は軽く棚に上げる。]
ん、またなー。
[寮に向かうヒサタカを見送りながら、更に一口頬張った。
白米とは違う味が混じって、手元に視線を落とす。]
……昆布。
[フラリフラリと。
寮の中を確かめるかのように歩き。
幾つかの部屋の前では僅かに長く立ち止まってもいたか]
いい子にしてれば褒めてくれた。
でも、本当はずっと寂しかった。
いい子にしてれば優しくしてもらえた。
でも、誰かの特別にはなれなかった。
仕方が無いって諦めてた。
諦めてたら、目の前で消えちゃった。
優しかった人も、もういないの。
そんなの、もう嫌。
[軋ませながら、体育館の扉を開く。
内に籠った空気が、外の大気と混ざり合った。
あの臭いもあの色ももうなくて、
打ち捨てられたビニール袋だけが目に入る。
1歩中に踏み入ろうとして土足な事に気付き、靴を脱いで、
下駄箱に置き去りのバッシュを勝手に拝借する事にした。
サイズは多少、大きかったが]
よーするに、やっぱりちゃんと食えってことか。
[先程言われた言葉を繰り返し、苦い笑いを口許に。
梅の酸味が広がれば少し顔を顰めたか。それでもまた齧り、]
…そいや、どっかに行く途中…とかじゃないん?
[おにぎりを見つめる彼を見上げた。]
皐月さんは間に合ったの。
手を伸ばせば、一緒にいられたの。
[寮を出る。
歩き出すと向こうからこちらへ戻ってくるヒサタカの姿。
会釈をしてすれ違う]
どこにいるのかな。
[呟き視線を向けた先。
桜の樹の傍には二人の先輩。
そちらを見た途端、チリリと何かが弾ける感触]
…やっぱり。
[足を止めて、その原因であろう人物を。
アズマの姿を静かに見つめる]
…って事ッスね。
[苦笑交じりに再び齧る。と、続く言葉にきょとんと一瞬瞬いて。
ふと思い出せば、あー…、と僅かに口篭った]
…や、何となく…友達と飯食ってた頃が懐かしくなって。
折角のおにぎりなら、いつも食ってた処で食おうかなとか
適当に考えてただけで。
[ガッコの屋上に、とひらり背後の校舎の上部を指差す。
懐かしいなんて言葉はおかしいだろうか。と思いながら
一番シックリ来る言葉がそれだったから、言い直すことはしない。
本来なら立ち入り禁止箇所に、堂々と行くと言ってしまった事に
口に出してから漸く気が付くが、言い直した処できっと意味なんて無いんだろう]
[広い体育館の中央に立って、ぐるりと周囲を見回す。
やはり、何も変わりはなかった。
ここで起こった事が、嘘だったかのように。]
―――…、っ
[視界の端で何かが動いた気がして、振り向く。
ボールが転がっていた。
その先を見る。
準備室の戸が開いているのが見えた]
[チリ、と何か爆ぜるにも似た感覚に、ゆるりと瞬いた。
目の前に居る先輩に悟られる事の無いように
ゆるりと視線を巡らせるも、大きく視界から外れた場所にまで
視線を向ける事は叶わずに]
……、
[意識を其方へと向けながら、視線を元へ戻す。
気配が動くようならば、
──そんな事をちらりと考えて]
[向こうも気が付いたようでありながら、視線はこちらに向かわず。
クスリと笑った。
これならばきっとまだ邪魔はされない]
力がついたら手を伸ばすよ。
それまで待っててね。
[囁くような声は、彼らの元には届くのかどうか。
微笑と共に視線を外し、ゆっくりと校舎に向かって歩き出す]
……そっか。
[同じように指差す先を見ながら、その友達がどうなったのかを考えて…止めた。もしかしたら帰省中なだけかも知れないから。]
て、…立ち入り禁止じゃ。
……まあ、良いか。
[恐らく、今は咎める人はいないのだろうし。其処は口にせずに、立ち上がって砂を払う。
目の前の人の意識も、その先にいるモノの気配にも勿論気づかないままで。]
―剣道場―
[途中、訪れた者がいた事に、果たして気付いていたのかいないのか。
一人、黙々と行っていた稽古を終え。
上座に向けて、礼をする]
……まだ……。
[ぽつり、呟く。
足りない。
圧倒的に。
力が足りていない。
感じるのは、微かな焦燥]
[ふるり、と頭を軽く振り。
それから、視線を壁へと向ける。
正確には、そこに掛けられている木刀に、だが]
……。
[短い沈黙の後、竹刀を置いて。
身に付けていた防具も外し、それを手に取る。
竹刀のそれを遥かに越える重みが、手にかかった]
ん。まぁ、もう食い終わっちゃうんで…
行くにしたって、景色眺めるだけになりますけど。
[と、続く言葉に、バレました?と小さく声を上げた。
立ち上がり、服を払う様子を眺めながら、
最後の一口を押し込むようにして片付ける。]
あそこ、鍵壊れてるんスよ。
サボり常習犯には常連の、打って付けの場所なんで。
[どーかセンセたちには御内密に、とケラリ笑う。
視線を外されたのか、チリリと走っていた感覚が消えた。
心の底で、何処か安堵しながら小さく溜息を零して。]
[練習室には、静かな音色が響き続けていた。]
[きらびやかな高音が浮かび上がっては消える。煌めきながらも微かな憂いをたたえてるのは、まるで過ぎ去った思い出だ。煌めきは次々に浮かび上がって、触れようとすると消えてゆく。
やがて曲は初めの主題に戻り、最後に、静かに高音を乗せて終わる。余韻が辺りに漂っていた。]
[僅かに屈んだ隙に、子犬が地に降り立った。
中へとゆっくり進んで、それが誰かを認める]
…マイコ?
[薄闇の中、滴の痕が微かに見えて、
声は自然と小さなものになり、
呼び方もいつもとは異なった]
……。
面白い特技を持っているな。
[閉じるとも開くともなく、半眼のままでいた目を開いた。
窓から差し込み、床に反射する翳りかけた陽の光を映しているのは片目だけである。]
あれ、そーなのか。
[3年間通っていながら、鍵が壊れていることは知らなかったらしい。一応真面目に授業は受けてきた。
如何しようかな、などと軽く口許で笑いながら、]
あー…そうだな。
折角だし、ご一緒しても?
[軽く首を傾け、*尋ねた。*]
[呼ばれ、ぴくりとからだが震える。
閉じられた目は、どこかぼんやりとゆっくり開かれて――しかし彼を、現を写していなかった。
ふわり。ほころぶような微笑み。
それは学園生活の彼女の印象とだいぶ違ったものだったろうか]
……ん。
[それは誰かを呼んで。
だけれど普段は名でよんでいたから、わからなかったかもしれない]
[音を紡ぐように動いた唇が呼んだのは上手く聞き取れず、
ショウの名ではないことだけを理解する。
普段とは異なる様子に、寝ぼけているのかと考える]
…起きたかー?
こんなところで寝てたら、
風邪引く…より、熱中症になるぞ。
[辺りの空気は熱を孕んでいる。
手を団扇代わりにして、払った]
実はそーなんデス。…まぁ、真面目に勉強励んでると
普通は知る機会なんて無さそうッスけどね。
残念ながら、真面目とは程遠く言えない人間なんで。
[ちょ、黙ってて下さいよ、と笑いながら告げられる言葉に狼狽えるも
と、続いた問いには一瞬驚いたように目を瞬いた。
しかし、直ぐにけらりとした笑みと共に校舎へと足を向ける。]
もっちろん、どーぞ?
景色の良さだけは保障出来るんで。
[手に残ったラップを握りつぶしながら、ポケットへと突っ込んで
そのまま、先導する様に一歩先に校舎へと*踏み入れた*]
[その手の動きに、夢も飛んだか。
はかないそれに惑わされたものの、焦点を結ぶ]
……あれ?
ショウちゃんせんぱい?
[ようやく名を当て、起き上がる。
だけれど口にするのは]
今、おにいちゃん来てませんでした?
なんか、いた気がしたんですけど
[首を傾げて]
やっぱり部屋にいるのかなぁ
そ、…はよーす。
[風を招く手を軽く左右に振って、挨拶代わり]
おにいちゃん?
………って、亘か?
マイマイ、名前で読んでなかったっけか。
[問いかけには、知らないと首を振る]
………いないのか?
[チリ、と。何処かで、違和感を覚えた]
うっわー、寝ちゃってました?内緒ですよ!
[あわあわとさた様子をかくすこともなく、ぴょこんとマットからおりて]
……?あれ、そうでしたっけ?
[名前で呼ばれるのが辛いと、こわいとまであった走書き。
生前にいわれた言葉とあいまって、そうよんでいたのだと頭は考えたく。
だけれど昨日、マコトに刺激された「しっている」彼女が動きはじめて、頭がいたんだ。
少し顔をしかめるも]
んー部屋からいなくなってたんです
バスケやってるのかなぁって思ってたのに。
あ、それともやってたのかなあ?
[視界の端にひとつ転がるボールを見て。]
内緒、ってか。
こんなトコで寝てたら、危ないだろー。
[マイコの内心の動きは、ショウには読み取れない。
飛び降りるのに合わせて、1歩後ろに下がった。]
そうだったと思う、ケド。
やってないだろ、
………こんな時だし。
いつから、いないんだ?
[2人を見上げて、子犬が鳴く。]
あはは、元気がとりえでーす!
[にこにこと笑って。
それから亘の呼び名に首をひねる]
ん……と。わた……
[だけれどそれは途中でとまる。呼びきれない]
……あれ?
[今の彼女はそれをしらず。ついだ言葉にも首をかしげた]
こんなときって?あ、あついとき?
いな……くないよいる!
[いつから。
昨日のどこにも姿を見付けられないと思うより先に、言葉が落ちた。
自分でわけがわからなくなって、片手で口をおさえる]
―アーチェリー場―
[彼女が手にしているのはいつも彼女が使っているものよりも強い弓
静かに弓を構え、矢を放つ。そうして着弾点からサイトの照準を微調整すると、再び矢をつがえ、先ほどよりも強く引き絞ると]
ひゅんっ……がすん
[矢は的の真ん中に命中し、さらに的の中程まで突き刺さる
構えを解くと、ジッと矢の突き刺さった的を見つめ]
…………仮に。あの化け物が今いる誰かに成り代わっているとして。これでも殺しきれるのかな
[昨日の夜、サヤカに言った言葉通り、最後まで足掻いてみせるつもりではある
しかし、それがどこまで通じるかは彼女にとっては未知の領域
不安が無い訳がない]
……っ
[犬の声は昨日も聞いた。
昨日、亘は食事を食べたか?
いや気分が悪いと部屋にいたのだっけ?
頭の中で、そうであってもおかしくないものを探す。
……それが意味することなんてわかっていたけれど、そうだとしってしまうことは則ち自分が彼を苦しめたという事実]
い、ない?
[触発されたのか。唇がそう動いて……]
ない、よ……
[頭を押さえて、扉の方へいこうとする。
とまったはずの涙がまたあふれていた]
[吹奏楽部の倉庫として使われている隣部屋へ、練習室から直接繋がる扉を開けた。
壁際には大勢のためのパイプ椅子が、畳んで立てかけられていた。自分で楽器を所持していない部員へ貸し出す為の楽器や、全員が使用する譜面台、コピーして部員へ配る前のスコア譜が、所々で列を乱しながら棚に並んでいる。
棚から、黒い革製の鞄を引き出した。それは榎本芙由が、通学に使用するのとは別に使っていた物で、中にはかなりの枚数の楽譜が整然と、一定の法則性をもってファイルに収めて分類されて詰まっていた。
その隙間に、何冊かの本もある。幾冊かは、文芸部から拝借したもので、印が捺してあった。鞄はかなり重い。持ち歩く事を想定していなかったようだ。]
[ふらふらとした体は軽く捕まれて。]
いるとちいさく呟いて]
…でも、いない?
[思い出せない、思い出したくない。すこしうえの顔を見上げる。
迷子のような顔で]
[自分とそう変わらない背丈の、
けれど、ずっと細い肩を捕える]
………。
[答えは知らない。
何を言うべきか、迷う。
しかし、]
なあ。
いたけど、
いないんじゃないか。
いるのは、
[―――舞子の中だけで。
終わる言葉は、消えそうな程小さかった]
[追いかける時にとめられて浮かんだのとは違う感情。
それは――恐怖だ
呟きを耳にいれたくはなかった。だけれどそれは、届いてしまう]
いたよ、部屋に
[気配を感じてもおかしくないだってそこで彼は暮らしていた]
…いた、のに
いないの
あ、きえて…
[滲む視界がまるで花嵐のようで]
…。
それ。
他に誰かが、見たのか?
[今までの違和感と、
彼女の反応とが、
雄弁に答えを物語る]
………還らねぇんだよ。
記憶の中には、在る。
でも。
それだけだ。
[目の前の相手に対してでなく
自分に言い聞かせるように]
…っ
[誰も一緒にはいなかった。視界の中に赤が散る。はなが、さくらが、赤くそまる]
や、だぁ
[本当に幼い子のように、ふるふると首を振って。
記憶の残像]
さく、らが
とった……の
だれ、が……
舞子、
[真っ直ぐに、相手を見つめる。
彼女への答えは持たないけれど]
…誰がか、なんてわかんねぇ。
でも、これは、夢じゃなくて。
[奪ったヤツが、いる事。
それだけは確かで。
繋ぎ止めようとするように、
目を覚まさせるように、
肩を掴む手に、僅か、力が籠った]
[強い力。
それは一瞬、その感触を――義兄の命が失われた瞬間を思い出す。
だけれど自分を見るその顔は、違う。
その声は、違う。
だって、もう、 し ん で し ま っ た 。]
ゆめって、ハカナイって。
[小さく零れた声は、少し落ち着いているようにも感じられたか]
そっか、ショウちゃんせんぱいにも、わからないんですね。
あの、さくらなら、わかるかなぁ
[クスクスと口唇が笑みを描いて]
ゆめじゃないなら、はかなくないなら……なんて。
[冗談ですよ、と笑って]
………桜?
お化けみたいな女の子、ってヤツ?
[フユの言葉を思い出しながらも、
一転したマイコの様子に、眉が顰められる。
笑っているのに笑っていないような、
奇妙な感覚が胸を過ぎった]
人の夢で儚い、だっけか。
儚くないなら―――?
[傍らで大人しくしていた子犬が、尻尾を揺らす。
円い眼が、2人を映していた]
うん、そうですよ。
あの桜が知ってるなら、おしえてもらえるかなぁ。
[教えてもらえて、そしてどうするなんて。
口にするわけもなく。
子犬にも伝わるだろうか。
一度壊れたものは、再び組み立てたとて、部品をなくせば戻らない。]
そうそう、それですそれ。人のゆめだからハカナイ。
ハカナクないなら
[にこっと笑って]
―――なんだよ、ソレ。
[意味が、取れなかった。
狭い準備室の中にずっといたせいか、
頬から顎へと伝った汗が、地に落ちた]
はかなくなればいい?
わけ、わかんねぇ。
[手から力が抜けかける。
子犬が後退った。]
なんでもないですよ。
[にこっと笑って。
そう、本当になんでもないような顔。]
だって、ユメははかないものって言うでしょう?
はかないものは、ユメなんじゃないかなって
思うんですよ
[抜けた力。体が動く。扉に向かって。
子犬を見て、かわいいなぁと笑って]
ありがとうございました、ショウ、せんぱい
[間が抜けたのは、なぜなのか。彼女にもわからない]
[礼を言われる理由がわからない。
それでも、唇は自然、どういたしまして、と返答を紡いでいた。
音は掠れていただろうか。]
だから、はかなくするのか?
[はかなくする。
どういう事だろうか。
頭の隅で、考える]
[かすれた声は、何の感情か。
そんなこと、彼女にはもうどうでもよかった。
そう――まずはあの桜に聞くことだ。
心の中が、歓喜に踊る。]
うん、そうですよ
現実だっていうなら、ユメにかえちゃえばいいんですもん
だいじょうぶですよ。
みぃんな、ユメになっちゃいますもん
[それじゃあ、いってきます。なんて笑う]
―食堂・昨夜―
前提……?
逃げて…る?
[ウミの言葉を繰り返し呟けば途方にくれたような表情が浮かんだ。本当はとっくに気づいている。早乙女の消失を受け入れたくないだけだと。御堂もおそらく消失したのだろう。そして、他にも消失した人間がいるのだろうと。]
[再びの溜息の後、まっすぐにウミを見つめ。]
……足掻く、か。
確かにおとなしく殺されるのは嫌だし、そもそも死ぬなんてごめんだわ。
["後少しで、ここからも、開放されるってのに……。"その呟きは言葉にならぬまま。]
………っ、
そんなの、意味ねぇじゃんか!
[声は届いているのに、届いていなくて。
こんなにも近くにいるのに、彼女は遠くて]
夢にしたって、
[―――仕方ないのに。
声が出ない。
止めようと思うのに身体は動かず、
代わりに震える拳を握る。
子犬は身動ぎもせずに、それを眺めていた]
[元凶をはかなく――なくしてしまえば
ここがうたかたのユメになると、本当に彼女は思っているのか。
それとも。
思っていないけれど――ただそうしたいだけなのか]
どっちだっていいじゃない
[ちいさなちいさな言葉は、彼の声に掻き消えるか]
……ほんとうに?
[泣きはらしていた目元はまだ赤く、熱を持っているようだけれど。
彼を覗き見るように、わらった]
[赤みを帯びた目元に、わらう眼。
何故だか、あの桜のようだと思った]
―――…、
[目を逸らせない。
沈黙は、答えとなるか。
否、真の答えなど、持っていない。
生じる迷いに、止まって。
彼女を無言のままに*見送るだろう*]
―自室・昨夜―
[一ノ瀬に食事の礼を述べた後、自室へと戻り、暗がりの中消耗した身体を横たえたものの目は冴えたまま。]
……現実、なのかな……本当に……。
もし、これが現実だったとして……。
[天井に手を伸ばせば、自分の輪郭すら薄闇に溶けていきそうで。存在を確かめるように彼女は言葉を紡ぎはじめる。]
……現実と非現実のラインなんて誰が決めたの?
そもそも、私が生きていたと思っていた世界だって、確実に現実と言い切れるのか?
私の肉体というオブジェクトは、現実に存在しているのか?
私の存在理由は何か?
――あぁ、私は何者?
そして、私にとっての現実とは何?
[動きを止めてしまったショウに、また笑いかけて]
それじゃ、今度こそ桜のところいってきますね!
あ、今夜もおいしいご飯、期待してます!
[子犬は少しおびえた声をあげただろうか。
だけれど気にせず、身を翻して外へ]
─剣道場─
[ヴン、と。重たい音を立てて、大気が断ち割られる。
竹刀よりも重たいそれを振るい続けるのは、さすがに体力の消耗が大きいようで、竹刀を振るっていた時以上の汗が滲んでいた]
……あっつ……。
[思わず、呟けば。風がその熱を冷まそうとするかのように、ふわりと周囲に吹き抜けた]
……こんなとこは、便利なんだけど、ね。
[冗談めかしていうものの、瞳には微か、暗い陰り]
[体育館を出て、一つ息を吸う。
体はすっきりとしていた。
くす、とこぼれた笑い。
それは壊れていないようで壊れているようで。]
さぁて、さくらさくら。
散るまえに、はかなくしちゃわないとねぇ
[そちらへ向かおうとするか]
あ、ヨウコちゃんこんばんは
[にこっと笑う。
昨日と同じようで違う
一昨日とも同じようで違う]
桜のところにいこうかって思ったんだけどねー
ヨウコちゃんはどこにいこうとしてたのー?
[昨日の彼女なら、決して桜の話などしなかっただろう。
だってあるとは思って居ないのだから。
一昨日の彼女なら、どこか一本引いたような、今の様子はなかっただろう。
だけれどそれは巧妙に隠されて。]
私にとっての現実は……。
[真っ先に浮かぶのは、同じ日に生まれ同じ顔をした兄、大輝。]
[誰よりも近く、だからこそ誰よりも憎くなってしまった存在。]
こんばんは。
[ニコリと返す笑みは。
いつものように穏やかで。
いつもよりもどこか無邪気に]
桜に何かご用事だったの?
わたしは、みんながどうしているのかなって。
[答えになっているようでなっていない返事。
どこか印象の違うマイコに小さく首を傾げながら]
みんな?
中に、ショウせんぱいはいるよー
[体育館を振り返って笑う]
うん、桜にね。
ちょっとだけ用事があったんだー
[くすっと笑って]
一応、だけどー
[まだ幼かった頃は、いつも一緒だった。スカートを履かせられそうになっても"大輝とおんなじ格好がいい"なんて我侭も言った。誕生日プレゼントだって、人形ではなく大輝と同じグローブセットを望んだ。そんな私を見て"男の子同士の双子みたいね"と母は困った笑みを見せた。]
[そんな二人の関係が変わってしまったのは、彼が何かをした訳ではない。ただ、いつもセットとして考えられ、そして何かにつけて男だから、女だからと区別されてしまうのが、少しずつ大人に近づくにつれたまらなく疎ましく感じるようになった。父や母ですら。いや、父や母は既に二人が現実に生れ落ちた瞬間から区別していただろうに。そうでなければこんな名前など付けないだろう。"小さな夜の花"と、"大きな輝き"と。]
[彼は変わっていない。何時だって大輝は大輝だった。]
リュウ?
ああ、さっきの子のことかなぁ。
かわいいわんちゃん?
[首をかしげて]
うん。いいよー?
桜が、知ってるかってきこうとしたんだー
タイセツなオニイチャンをころしちゃったのだぁれって
[口唇が弧を描いた。]
そう、一ノ瀬先輩がずっと面倒見てたの。
本当はいけないんだけど、見捨てるのは可哀想だし。
秘密だったけど、こうなっちゃったらみんなしっちゃうもんね。
かわいいし、とてもかしこいんだよ。
[時折口調に幼さが混じる]
殺しちゃった?
ああ、そうか。
力を分けてもらったから。
[小さく頷いて]
桜花なら知っているかもね。
[何時しか思考の回転速度は落ち、ゆっくりと眠りの世界へと向かう。]
[幼い彼女と大輝の二人が笑いあいながらキャッチボールしていた。大輝の後ろには父が、彼女の後ろには早乙女が立ち、そして傍らでは母が笑っている。ただ、それだけのささやかな夢。]
[なのに、遥か遠く感じる夢。]
[いや、夢だから遠く感じるのは当たり前なのだろうか?]
へぇー、ショウせんぱいって優しいんだー
[体育館の扉を見て、にこっと笑って]
じゃあお座りもお手もできるのかなー
すっごいなぁ。
教えるのも大変だっただろーね
[それから向き直って]
知ってるのかなぁ
まあ知ってても言いそうにないけどね。
[くすくすと笑って、ふと思い至る]
あ。バトン。
どこおいてきちゃったっけー
うん、優しいよね。
一生懸命お世話してたもの。
どっちもやってるところを見たことあるよ。
それだけじゃなくて、いつもお行儀良くしてるの。
だからこそ見逃せたんだけどね。
先輩の努力もあったけど、リュウも偉いんだよ。
[嬉しそうに、楽しそうに]
知ってるんじゃないかな。
桜花はどっちのこともしっているみたいだったから。
でもそうだね、素直には教えてくれなさそう。
ねえ、もう一つ聞いていい?
それを聞いてどうするの?
[バトンの所在には、さぁ、と首を傾げながら]
―自室・昼過ぎ―
[目覚めた時、頬がぬれている感覚に気づき苦笑しながらそっと掌で拭う。]
……現実が何かわからなくても。
今ここにある真実を確かめていくしかない、かな……?
[ガラスを隔てた向こうには、相変わらず薄紅が夏の日差しの中鮮やかに存在を主張していた。]
へー
えっらいなぁ
[子犬と先輩とがすごいなぁと、素直に感想を抱いたのか]
へー
そういえばあの桜って、桜花っていうんだー?
あんまり覚えてなかったけど
……どうすると思う?
[くすっと笑って]
ま、とりあえずバトンバトン。喋らないなら喋らせるまででしょー!
[笑って部屋の方を*探そうとするだろうか*]
[寮に戻ってシャワーを使い、着替えてから、ふと気付いた]
………食料は……
[今、認識している生存者(すでにそう呼ぶしかなくなっている)は10名。外との連絡が不可能な以上、食事の確保は大問題だ。寮内に買い置きはあるだろうと思ったが、確かめておく必要がありそうだった]
―校舎・屋上―
[ゆるりと、瞼を開ける。紺碧の空に星が浮ぶのが見える。
僅かにも腹が満たされた事で、寝不足だった身体は睡眠を欲したらしい。
いつの間にかコンクリートの上で横になっていた。]
……、あー。
[むくりと、腹筋を使って身体を起こして。
僅かに残る眠気を飛ばすように頭を振って、目を瞬く。
少しだけ、身体が軽くなった気がした。]
五日分…節約して一週間というところか…
[週末ごとに業者に注文するか買い出しに出ていたのだろうと、思い至って…寮生の栄養状態に気を配っていた寮母の顔が一瞬浮かんで消えた]
[しばし、吹き抜ける風の感触に目を細めていたものの]
……いつまでも、ここにはいられない、か……。
[小さく呟いて。
しばし、ためらったものの、木刀を着替えに包み、自身は剣道着のままで、剣道場を出る。
……体育館の方から、微かに気配を感じるものの、そちらに足を向ける気にはまだなれなくて。
気配を避けるようなルートで、遠回りしつつ、寮へと向かおうと歩き始める]
[吹奏楽部倉庫に置いておいた鞄の中から楽譜のファイルを引き出した時、一冊の本が落ちた。
古今和歌集と書いてある。女子高生が読むには些か変わったと言わざるを得ない代物だが、榎本芙由は結構こういったものが好きだった。
無造作にページを開く。
そこに書かれた短歌を眺めた。]
心の闇に惑ひにき
夢うつつとは
世人さだめよ……か。
[ゆっくり、ゆっくり、歩いて行く。
夜空には、星。
……それは、今までと変わらぬようで]
……こんな時でも……いや……あの時も、普通に星、見えてたっけ。
[ふと、思い返すのは、いつかの神社で見た夜空。
ほんの一瞬、瞳は陰るが、すぐにその色彩は失せて。
風を引き連れるようにしつつ、グラウンドを抜けて寮へと向かう]
[顔を洗い、食堂にて適当にチャーハンを作り、ついでに何かをサランラップに包んだものをポケットに入れた。]
人ならざるものにこんなのが効くなんて思わないけどね…。
[そして軽い食事を済ませた後、一人校舎へと向かう。]
[気配の感じられない廊下。職員室の扉をがらりと開ければ、本来なら誰か先生が一人はいるはずの職員室すら誰もおらず。早乙女の席には鞄が置かれたままなのを確認し小さく溜息を吐く。]
[次いで門へと向かう。マコトから聞いた"学園から出られない"のが真実かどうかを確かめるために。]
―→門―
うん、桜花。
本人がそう名乗っていたから。
[口調が少しずつ元に戻ってゆく。
どうすると思う、という言葉には困ったように首を傾げて]
分からないから聞いたのに。
でも、何かするつもりなのね。
うん、舞ちゃんのしたいようにするのがいいわ。
その勢いなら、桜花も何か答えてくれるかもしれないね。
[小さく笑って頷いて。
バトンバトンー、と言いながら寮へ戻ってゆくマイコを見送った]
…じゃあ、やめとく。
[それは誰に向かって囁かれたのか]
……、晩飯食わな。
[いざと言うときに動けなければ、意味が無いんだっけな。
昼間の会話を思い出したのか、ぽつりと呟く。
キチンと…、とは言えないが、食事と睡眠を取ったら、
多少なりとも食欲が出てきたらしい。
よ、っと僅かに弾みをつけて背伸びをすれば
ぐき、と背中が小さく鈍い音を立てた。
校舎内へと繋がるドアに触れようとして…少し躊躇った。
少し考え込んだ後に、軽く蹴りを入れて無理矢理開けると
素早く飛び降りる勢いで、軽快に怪談を下っていく]
―校舎→外―
─寮─
[寮に戻れば、近くから人の気配が感じられ]
食堂……誰か、いるのかな。
[また、一ノ瀬先輩かな、などと呟きつつ、ごく何気なくそちらへ足を向ける。
……何となく、急ぎ足になったのは、何か危機感でも感じたから、だろうか]
[マコトの声に厨房から顔を出す]
………ああ、今、飯を炊いてる。
[片手に、オタマ、もう一方の手には味噌の袋…恐らく味噌汁にチャレンジ中]
あれ、ヒサタカさんでしたか。
……ご飯炊いてる……って……。
[ふと、過ぎったのは、昨夜の騒動。
追憶に囚われながらも、惨状は認識していたらしい]
……ええと。
俺、やりましょうか?
[問いかける声は、かなり真剣かもしれない]
―屋上・夕方―
[その場所に来るのは初めてだった。保証されただけあって、三階の仕切られた窓から眺めるのとはまた違う。もっと広く、ずっと遠くが見えた。
暫く感心したように眺めて、]
じゃ、俺は――
[戻るけど如何する、と聞きかけて振り向く。返事の代わりに小さな寝息が聞こえた。
僅か、口許が笑うように動いた。風邪を引かないかと少し思ったが、何時もこうなら多分大丈夫だろう。
寝ている少年を起こさないように、そっとその場を後にした。]
―→現在―
…………
[なんで、こんなに真剣なんだろう?とか、少しだけ思ったかもしれないが、自分の才能の限界は知っていた]
ああ…それじゃ、頼む。
[あっさりと、マコトにオタマと味噌を手渡した]
[校舎を抜けて、すてすてと寮へ向かう。
その通り掛かり様に、ちらりと桜を見上げて。
──闇の中の薄紅は、明るく浮かび上がって。
何処か、不気味に思わせるその佇まいに僅かに眉を寄せた。
…こんな状況じゃなきゃ、生温い温度にひらりと舞う薄紅を
神秘的だと賞賛する人も居たのかも知れないが。
はぁ、と短く溜息を零しながら、やはり意図的に視線を外した。
そのまま、真直ぐにその足取りは寮へと向かう。]
ただいま、と。…?
[…もう何度目か、四苦八苦しながら寮の扉を開けて、
食堂の明かりに気付いて緩く瞬いた。]
[重い門に手をかけるもびくともせず。格子の隙間から手を伸ばしたが、それは何かに弾かれ反射的に手をひっこめた。
それでも、今度は格子に足をかけ、門に登り再び手を伸ばすもやはり同じで。おそらく先に格子から手を出してなければ、門から転がり落ちていただろうが、なんとか堪え。そしてひょいと飛び降りた。]
[今度は裏庭へと向かい、足元の石ころをひろいあげ、塀の向こうへと軽く放り投げるが、やはり何かに弾き返され校舎の壁に当たった。]
――これは、人間が作ったと考えるほうがより非現実的かな?
[まさに飛電が如く、校内を駆け抜けていった気配があった。
既にすっかり暗くなった室内。月明かりだけが照らしている。その中でも澱みなく、慣れた動作で楽器の手入れをし、黒いケースに収め小脇に抱えた。]
[とりあえず、抱えていた荷物を隅に置く。
Tシャツにくるまれた木刀が重たい音を立てるか。
それから、適当に探し出した紐でたすきをかけ、胴着の袖が邪魔になるのを抑える。
そんな手際がいいのも、きっと過去のせい]
はい、任されました。
……一ノ瀬先輩ほどには、できませんけどね?
[冗談めかして言いつつ、状態確認からスタート]
………この寮には、料理上手の男が多いのかな?
[マコトの手際の良さに妙な具合に感心しつつ、隅に置かれた防具と、竹刀とは思えない長物に視線を走らせる]
[靴を下駄箱に放り込んで、明かりのついた食堂へ歩み寄る。
顔だけで中の様子見、とばかりに覗き込んで。
中に揃う人物の組み合わせに、再び瞬いた。]
……各務に、天野じゃん。
[各務に至っては胴着のまま何してんの、と
パーカーのポケットに手を突っ込んで、食堂へ踏み入れる。
ポケットの中に突っ込んだラップゴミに気付いて、
取り出し、投げ遊ぶように上へと放り投げながら]
[階段を上る。
屋上の扉の鍵は壊れていた。
屋上に出る。月が照らしていた。
端まで歩き、手すりに肘を乗せ上半身を預けて笑顔を作った。]
……ちゃんと見ててあげる。
さて、どうしよう。
[軽く首を傾げて呟いて]
寮には……
[何となく歩き出したその視線の先で寮に向かっている姿。
それは桜の樹の下で見かけたもう一人の司]
……他に、いないかな。
[寮とは逆の方へと踵を返す]
……なんというか……すごい。
[ぽつり、感想を漏らしつつ、てきぱき動き回る。
炊飯器は一度切って、探し出した蒸し器を使って蒸し上げる方向で米の起死回生?をはかり。
人参、牛蒡、油揚げをごま油で炒め、砂糖と醤油で甘辛く味付けしたものと合わせて即興混ぜご飯に。
汁物の方は、備蓄と相談して澄まし汁に仕上げておいた。
あとは、見つけた青菜が傷む前に、とお浸しにして]
……とりあえず、こんなとこ、か。
さて、と……。
出られないことは確定。
じゃぁ、出る方法はあるのかしらね?
[校舎に背を預け、腕組みをしたまま空を見やれば、茜から闇へと色を変えていく最中で。ふいに、何時だか図書館で借りた本に記されていた言葉を思い出す。]
"夕暮れの薄闇が下りてくる黄昏の頃には、災いや魔物がこの世に現れる"、だったっけ……。
……戻ろうか。
一人よりも、複数でいる方がまだ安全よね……きっと。
[とっさに思いついた範囲のものを仕上げた所で、聞こえた声にそちらを振り返る。
見やった先には、クラスメートの姿があり]
や、アズマくん……。
[声をかけた瞬間。
何か、感じた気がして一つ、瞬いた]
[ベランダの手すりに肘をつき、手すりの上に垂直に立てた腕、手のうえに細い顎を乗せ、たとえば牧原モモだとか日月マイコに対してごく稀に見せた事しかないような優しげな頬笑み。]
[落ちてきたラップを片手で受け止めようとして。
返って来る相手の声に、予期せぬ感覚。]
…、…わ。っと。
[僅かに驚いて、瞬いた瞬間に受け損ね。
掌に弾かれたラップの塊は床を転がった。
何時もなら難無く受け取れるはずだろう事と
さっき感じたソレに、緩く首を傾げながら拾い上げる]
…よーす。飯作ってるの?
だったらせめて、着替えてこりゃいーのに。
[まさか急を要する状況だったとは思わない。
何で胴着なの、と相手の格好へ視線を向けて問い]
[じっとりと纏わりつく粘性の空気の中で呟く。]
しかし、司どもは仕掛けて来もしない。
まあいきなり向かって来られないのは
こちらとしては
楽が出来るだけ有り難いところだが
全く
緩い奴らだ。
だが
一体いつまでそうしていられるものかなァ……?
それともまさか黙って喰われてくれる
つもりかい。
[暫くの間、そのまま立ち尽くしていたが
仔犬が吼える声で我に返り、頭に乗せると、
放置したままだったビニール袋を拾い上げ建物を出た。
わざと桜の見え辛い裏庭の方へと迂回して、寮を目指す。
たとえ他に向かう人影があったとしても、目にも留めずに。
辿り着くと、聊か乱暴に、玄関の扉を開ける。
風の影響もあったか、やけに大きな音がした。
以前なら、寮母に叱られていたことだろう。
それも気にせず、大股に歩いて給湯室にまで踏み入った]
−体育館→寮−
[それから適当に人気のない校舎内を回るうち、気付けば外は既に暗く。]
……戻るか…
飯は、食わないと。
[呟いた刹那、其処は1年生の教室の前。
友梨の亡骸を抱き抱え、かけた自分の言葉が思い出された。灰色に濁り、何も映さない瞳。
あれから心の何処かが凍り付いてしまったことに、洋亮は未だ気付いて居ない。昨日も今日も、笑顔だけは何時もと同じつもりだった。]
[今、感じた感覚はなんだったのかと。
戸惑いながらも、少なくとも、それは違和や不快を伴うものではなく。
逆に、それが戸惑いを呼んだ]
ああ、うん。
稽古して、そのまま来ちゃったからねー。
……や、なんかこう……虫の知らせ? みたいなものがあって。
急いだ方がいいかな……とか。
[大概酷い物言いかも知れない]
無謀はしない。
そうすればいつか司も食べられる。
そうしたら音色にも追いつけるかな。
音色といっしょになれるかな。
[そんなことを呟きながら。
人の気配を探して動く]
…………虫の知らせ?
[マコトの言葉が、自分の料理への危機感を差しているとは、まるで気付かず。眉を寄せる]
……今夜も何か起こる、とか?
……、まーいっか。
稽古って、剣道だっけ?
[数秒、相手をじぃ、と見眺めるものの考えても判りそうに無く。
気のせいかと、当人は早々に気にしないことに決めたらしい。
一言脈絡無く呟いて、早々に話題を切り替える。
ラップの塊を、壁際に置いてあるゴミ箱へシュートを真似て放り投げる。
淵に一回当たって、ゴミ箱へ収まるラップに、小さく握り拳を作って]
……虫の知らせって、飯に?
[初めて聞いた、と思わず眉を寄せながら首を傾げる。
つーか飯作れたんだな、とちらり思いながらそこは黙っておく。
全く作れない自分がいう事では無いし、作って貰えるだけでも有難い]
[ぐるり、校舎伝いを足早に歩いていけばやがて薄紅の下へと辿り着く。]
[ここからなら、寮からも見えるし、走ればすぐに戻れる。そんな安心感からだろうか、足を止め、幹に背を預けるように座り込んだ。]
あぁ……そういえば。
この桜が植えられた経緯とか調べられないのかな?
[図書館で調べれば何かヒントが見つかるかも知れない、明日行こう、なんて考えながら見上げれば、視界はすべて薄紅に覆われて]
あの子……おうかだったっけ。桜の花と書くのかな?
―→桜の樹の下―
[頭上の仔犬を床に下ろすと、戸棚から取り出したグラスに
麦茶を注ぎ氷を入れて、一気に呷った。
喉の奥にまで沁み渡る冷たさに目を瞑る。
吐き出す息すら、ほんの一時だが、冷えていた。
口元を拭って、また一息。今度は少し、温い]
……、……………。
[喉につかえているような奇妙な感覚は、苛立ちだろうか。
流しそうとするように、再び注いで、杯を傾ける。
仔犬はじっと、それを見つめている。
微動だにぜず、ただ、眼差しがゆらりと揺れた。]
あ、いや、その。
[虫の知らせ、の意味をそのまま言うのはさすがにためらわれるものがあり、言葉を濁す。
それでも、続いた問いには、ふと、窓の外へと視線を走らせて]
何か……。
……今、起きている事が、俺の知っている事と一致するなら……。
[実際には、一致していると、『認識』してはいるのだけれど]
何も、起こらない……と考えるのは……楽観かも、知れません。
[ととと、と走っていく。
どこにいるのかななんて思って、少し笑ってしまう。
と、視線を感じてくるっと振り返る。
人の視線には慣れている。]
……あ、さくませんぱい
[ぴたっと立ち止まる]
………………………
[マコトの姿をじっと見つめ、もう一度、木刀に目を向ける]
………………………その、知っている事…まだ、話せないか?
ああ、うん。
剣道、だよ。
[アズマの反応に、一つ、瞬く]
『……気づいて……ない?』
[でも、この感覚は。
自分の力と、よく似ているような気がして。
恐らくは、同種の力を持つ者、なのだろうに、と思いつつ。
後半の疑問はやはり答えようがないので、笑顔で流しておいた]
[ヒサタカの問いに、一つ、息を吐く。
しばし、言葉を探して目を伏せて]
……正直な所……これがどこまで現実なのか、認められない……いや、認めたくない、部分は、あるんです、けど。
[途切れ途切れ、言葉を綴る]
……でも……俺にとっては、これは。
真夏の桜も……心臓だけを奪われる、唐突な人の死に方も。
二度目の事だから……。
……だから、俺が話さないと、ならない事……に、なるのかな?
[くるりと振り返った少女の姿が、何故か楽しげに見えた気がした。]
今晩和。
…寮、行くの?
[やはり微笑みを浮かべたつもりで、目だけは笑えていない。]
んー。
大丈夫だよ、リュウ。
[麦茶ばかりで腹が膨れそうになった頃、止めて。
きゅぅん、と小さく鳴く仔犬を抱き上げると、
給湯室を後にして、廊下を歩んでいく]
………腹が減っては戦は出来ぬー、だよな。
[冗談めかした独り言。
静寂の中に、虚しく響いた。
食事を求めているのか、
人の気配を捜しているのかは定かでなく。
ただ、食堂の前に辿り着くと、また、吐息を零した]
そうー。
[にこっと笑って]
バトン、多分部屋に忘れてきちゃって。
とってきたら、桜のところにいこうかなーって。
誰がやったのかって聞きに。
………………………強制する気はない。
だが、このままだと、全員が「何だか判らないもの」が隣にいるのかもしれない、と怯え続けなければならないのは事実だな。
[淡々と言う]
変わったこと、ですか?
特に何もありませんね。
[サラリと答えれば、そのままサヤカに近付いて]
ねえ、キリュウせんぱい。
先輩には欲しいものがありますか?
[覗き込むようにその顔を見る]
[淡々と告げられる言葉に、また、一つ息を吐いて]
……そうなりますよね。
それに……それだと、俺はただ、逃げるだけになる。
[現実からも、コトネの事からも、と。
その呟きは心の奥深くに零れるのみ]
ただ……俺自身も、ちゃんと『理解』が追いついてないところもあるんです。
そも、自分がなんでこんな事知ってるのか……とか。
それが、わからない訳ですし……。
[それでも構いませんか、と。
確かめるような声は、微かに震えを帯びていたか]
ん…そっか……。
事態が動いてないのは良いことなのかしらね?
欲しい、もの……?
[唐突な問いに、幾度かの瞬きを繰り返し。]
とりあえず今は、ここから出る為の力が欲しいかな?
……貴女は?
バトン?
[それを何かに使うのだろうか。そう思ったけれど、]
桜に、誰が。
[幹を殴り付けていた少女の姿を思い出す。]
……誰かが。殺した。
…それを、聞きに?
[少女の姿をしたモノのうたを。]
出るためのちから。
うん、ほしいですね。
わたしもちからがほしいです。
――だから、せんぱいの、ください?
[ニッコリと笑って手を伸ばす]
………………………逃げるのも、一つの選択だ。
だが…俺自身、いつまで無事でいられるのか判らない状況だからな。
どんなことでも、聞いておきたい、というのが本音だ。
[マコトに告げる声にも表情にも、相変わらず動揺の色は無かった]
ふーん、剣道か。
[凄いな、と。
相手の言葉に、適当にも取れる返事を返して。
直後ヒサタカの問いと、マコトの返事に緩く瞬くと、
近くの机に、座るような形で凭れ掛った。
会話に口を出すこと無く、ぼんやりと会話を聞きながら
マコトの『理解』している物言いを統合して、漸く。
先ほど感じた感覚の正体を理解する。]
あー…。
[小さく、一人納得するように声を上げた。]
うん、バトンですよ。
[にこっと笑う。疑問には答えずに]
そうです。
ゆめってはかないものじゃないですか
だったら、はかなくなれば、ゆめになるかもしれませんし。
[それは普段の様子であるのに、
どこか壊れてはいて]
ううん、ただ……ゆるせないだけですね
だって、ぜんぶ壊したんですよ
[せんぱいは?と尋ねる]
私の、力……?
[にっこり微笑むその表情は、なぜか遠いモノに思えて。伸ばされた手を避けるように彼女は立ち上がる、ヨウコを見据えたままで。]
それは……どういう、意味?
『…何の話、だろ』
[桜の少女の語る話を耳にしてはおらず、
フユの端的な説明しか聞いていないショウには、
(先程のマイコの話もまたそうではあったが)
中で交わされている話の内容は理解し難い。
今まで、漠然としかわかっていなかったのだ。
それがゆえに、考えるのを避けていたとも言えるが。
なんとなく扉を開くのが躊躇われて、
耳をそばだてたまま、息を殺す。]
[揺らいだ様子のないヒサタカの様子に、ふと、末姉の評価が頭の片隅を掠め、笑みが零れた]
……七恵姉さんが言ってたけど……ほんと、落ち着いてる人……ですね。
[その言葉は、どこか冗談めいて。
それでも、一度目を閉じ、開いた時には、瞳も表情も真剣なもの]
皆の……ケンや……他の人たちの命を奪ったのは……確かに、人であって人でない、もの、です。
……でも、その根源は……人の、感情。
何かをなしたい、何かを手にしたい……そんな思いが、高じて生じる……『憑魔』と、呼ばれるものたち。
だって、このままじゃ出ることもできないんです。
司が邪魔をするから。
それにわたしは音色にちかづきたいから。
そのためにも力がひつようなんです。
おなかがすいたら力もでないでしょう?
だから、ほしいの、あまいの。
[どこか幼い口調となって]
そこに、あるの!
[その手を心臓に向けて伸ばす]
[少女が何を言っているのかは多分半分も理解できていない。
ただ、]
…そっか。
そうだったね。
[瞳の奥で、何かが動いた。]
……あのさ、
[少女の問いには答えず。]
[アズマの小さな声に、ほんの一瞬そちらを見やり。
扉の向こうの気配には気づいても、何か言う事もなく]
『憑魔』は、人から生じて……そして、人に憑いて。
憑いた人間の、一番深い所にある願いを叶えるための力を人に与える……。
『憑魔』の力を得た者は、大きな力を振るえる、けれど。
……生きていくために…………他者を。喰らわなければ、ならなく、なる……。
そうして、人を喰らって、でも……。
そうする事で、願いからは遠ざかり、狂気に堕ちていくのだと……。
[訳のわからない言葉。]
……司?
……音色?
欲しい?
貴女……違うっ!!
[背筋に冷たい汗が流れるのを感じる。]
[じりじりと近づいてくるヨウコを見据えたまま、最小限の動きで伸ばされた手をとっさに払いのけようと右手を内から外へと振るった。]
うん、いいですよー
[にこっと笑って]
じゃあ、教えてもらえるようにセイシンセイイ努力しますねー
[その努力の中に何が含まれるかなど、言わずとも。]
……みつけたら、はんぶんつにします?
[首をかしげて、同じようにわらう]
今ここには司はいませんよ。
だからじゃまもされないの。
[振り払われた手、大きく弾かれたその爪は異様に伸びて]
違わないよ。
わたしはヨウコ。
[笑顔を浮かべたままそう答える]
食べたいの。
食べれば一緒にもなれるもの。
[一歩大きく踏み込む。
逆側、右の腕を伸ばし、その身体を捕えようと]
ありがとう。
[あっさりした承諾に礼を言う。言葉の中に含まれる意味を知ってか知らずか。]
…ん。
日月さんの好きにして良いよ。
一人じゃ大変そうだったら…
[愉しそうにわらう。]
そう、願い……。
願う事だからこそ、それに対しては、一途に突き進んでしまう。
でも、願えば願うだけ遠くなる悪循環を抱えてるから。
だから、それを……止めるための、存在も、あって……。
[呟きと共に、ぐ、と手を握り締める。
ゆらり。
揺らめく風が、そこに集うか]
[調整をした弓を背負い、寮へと向かう……が、桜の下に人物を見かけて物陰に隠れる。夜目の利く目を細めて見つめると]
あれって……九条と例の先輩?
[その時、ヨウコがサヤカの心臓目掛けて手を伸ばすのを目にする]
!? なにをしているのっ!!
[そう言って飛び出し、背負っていた弓に矢を番え、ヨウコに向ける]
うん。
それじゃあ大変そうだったら、お願いしますねー
[まったく何の気負いもないような顔で、笑って]
でも、わかったら先に教えますからー
あ、伝言とか残すっていうのも面白いかもしれないですね……っと
[はたと気付いて]
それじゃあ、桜のところにいかなきゃ。
でも、ちゃんとバトン持っていきますね。
それじゃあ、朗報をお知らせできるといいですっ
[ぺこっと頭を下げて*寮へかけてゆく*]
[異様に伸びた爪に思わず喉の奥がなり、あの警笛が再び鳴り響く。]
[それでも、弱さを見せれば奪われるだけと睨み付け。]
いいえ、貴女は……少なくとも私の知ってる九条さんじゃぁない。
今の貴女が何なのか知らないけど。
[背には桜の樹、後ろに逃げる事は適わず。なら……。]
私は私、誰かに上げる力なんてないっ!!
[右手をかわそうと横に飛ぶ。]
……俺自身……これが、なんなのか。
なんで、こんな事ができるのかとか……こんな事知ってるのかとか、全然わからない、けれど。
……魂、とか、そういう……物凄く、奥深い所に。
多分、生まれた頃から、なのかな……刻み込まれてるみたいで。
『憑魔』を浄化するもの……『司』。
自分が、そういうもの、なんだって。
[静かに、告げて。
視線は一瞬、アズマの方へと向かうだろうか]
[一瞬、逡巡。
フェンスに背を向けて駆け出す。
鍵の壊れた屋上の扉は開け放ったまま、
踊り場から、次の踊り場へ飛び降りる。
膝を大きく曲げ、片手を軽く床について衝撃を和らげ
即座に伸び上がり、機敏に身体の向きを変えて次の踊り場へ向けて跳ぶ。]
分かった。
…一人で無理はしないようにね。
[気遣うような言葉を紡ぎながらも、その声は何処か愉しそうな。
続く言葉に頷いて、]
行ってらっしゃい。気をつけて。
[少女の姿はやがて見えなくなり。
ゆっくり、後を追うように寮へと歩む。]
ありますよ。
せんぱいももってるの。
あまくておいしい、ちからのみなもと。
[踏み込んだ足でそのまま地面を蹴りつける。
横に飛んだサヤカをしっかりと追いかけて]
いっしょになればそとにでれるようにもなるのに。
ちからがないとそとにもでれないの。
だから、せんぱいのそれ、ください?
[普段ならばありえない跳躍。
左手が狙うのは変わらずその心臓。
と見せかけてその腕を掴もうと]
[マコトがヒサタカに説明を続ける間、ただ黙ったまま。
視線は自らの掌へ注がれる。左手をぐ、と握って、開く。
何かを確かめる様に数回、それを繰り返して。
マコトの口から、『司』の言葉が紡がれた瞬間。
相変わらず黙ったまま、
しかし、ピタリと、動かしていた手が止まったのが
向けられた視界から見えただろうか。]
[『憑魔』に『司』。
願い。叶える。
他者を、喰らう。
狂気に、堕ちる。
そして何より、
“人から生じて、人に憑く”。
―――ああ。
ようやっと、
彼女らの言っていた事が、
少しだけ、理解出来た気がした]
―寮―
[外から食堂の灯がついているのが見えた。靴を靴箱に入れ、其方へ歩む。
瞳は元通り、感情の見えないものに戻っていた。
暫く歩いて見えて来たのは入口と、その前に佇む、]
イチ君?
[何をしているのだろうかと、少し近付いた。]
……人から生じたものだから、人の手で還せ、と。
そういう事なのかも知れないです、ね。
[どこか、苦笑めいた面持ちで言いつつ。
アズマの手の動きが止まった事に、気づいて。
そのまま、物問いたげな視線を向ける。
『わかって』いた? と。込められているのは、そんな疑問]
………あ。
[仔犬を抱き締めようとして、
緩く手で持っていたビニール袋が、
かさりと地に落ちる。]
スケさん?
[友人を、いつものあだなで呼ぶ。
あの日以来、会っていない人物だった。
フユの口から、その名は聞いていたけれど。
以前と、同じように見えて、
どこかが、違うような気がした]
[なおもサヤカに襲い掛かろうというヨウコに目を細め狙いをつけると弓を引き絞り、放……とうとし]
!?
[フユの声に僅かに標準はズレ、矢は桜の木に突き刺さる
声の聞こえたほうに目をやり、]
…………フユ先輩。何で止めるんです?
[冷たい目でフユを見やる]
[注がれる視線に気付いているのか、小さく溜息を零して。
止めていた掌を、ぐ、と握る。
と、ヒサタカから再び投げられる問いに、
手元へ落としていた視線を、ちらりとマコトへ、
そして、そのままゆるりとヒサタカへと向けて。]
ん。
…そういえば、久しぶりかな。
[実際に顔を合わせるのは、と呟いて。
ビニール袋を拾い上げようと屈みながら、]
……何してんの?んなとこで。
それに…犬?
[抱えられた仔犬を見て、首を傾げた。洋亮は未だその存在を知らない。]
[すたりと着地しながら足元の小石をひとつ手の中に握り締め、ヨウコもそれにあわせて追いかけてくる。]
『嗚呼畜生……人間同士なら、こんな優等生になんて負ける気はしないのに。と言うか眼鏡かけられてちゃアレ使えないじゃない、ったく。』
[彼女らしくない言葉で心の中で毒づきながら、それでも頭の中は妙な冷静さも確かに存在していた。一対一では不利なのは明白。それでも、時間を稼げば、誰かが気づく。気づけば、彼女がそれだとはっきりわかる、と。]
私は、私のままで外に出たいの。
私じゃなきゃ意味がないの。
――化け物なんかと一緒になって出たいなんて思うもんですかっ!!!
[跳躍、そして相変わらず伸ばされた手。嫌悪感を露に叫びながら、更に横へと転がる。]
[その時、風を切る音が聞こえた気がした。]
[投げられた問いに、言葉が詰まる。
『知って』はいる。けれど。
それを口にする事には、微かなためらい]
……人に、憑く前の憑魔であれば……例えば、俺なら。
風の力を借りて、切り払う事もできます、けど。
[それでも、言わないわけにはいかないと。
……逃げないと、決めたからには]
人に、憑いた憑魔を浄化するには……その、拠り代……つまり、心臓を。
司の中に……取り込んで。
残った器は……自然に、還す……。
[それしかないんですよね、と。
呟く声は、小さく、低く]
………そうか。
[ある程度予想していたとはいえ、その言葉の意味するところには、さすがに眉を曇らせて、ため息をつく]
因果なこと、だな……すまなかった。
[言いたくないことを言わせた自覚もあり、静かに一礼する]
ばけもの。
…ひどい。
[傷ついたように顔を歪ませて。
直後、桜の樹に突き立つ矢。
一瞬そちらを振り返り、泣きそうな顔になる]
わたしだってわたしのままでいたかったのに。
たくさんがまんしてきたのに!
[キッと睨む]
わたしもそとにでたいもの。
みとめてほしいもの!!
[それは誰に対する言葉なのか。
横へと逃げるその退路を断とうとスピードを上げて迫る]
[一礼されれば、いいえ、と小さく言いつつ首を横に振り]
……あらかじめ、いっとかないと。
恐らく、そうなった時に、余計に混乱、します、から。
[それでも、返す言葉は、途切れがちになるか]
[フユの言葉に目を白黒させ]
……何、言ってるんです? 私が狙っていたのはヨウコで……!?
[さらにサヤカに襲い掛かろうとするヨウコを目にすると、再び矢を向ける]
……あ……そう、ですね。
[夕飯、と言われて。完全に忘れていたその存在を思い出す。
それからふと、窓の方を見やり。
……微かに、違和感めいたものを外から感じて一つ、瞬く]
[マコトの返答に、すぃ、と向けていた視線を逸らした。
意識はそちらへと向けたまま、再び手元へと視線を落とす。
──認識は、している。
ただ、余りにも実感が沸かないだけで。
緩く瞬いて、小さく溜息を零す。
ふと。 ピリとした感覚が、走った。
昼間にも感じた、あの]
……、外?
[感覚の辿る先に、ぽつりと]
[視界の端、幹に刺さった矢が目に入る。あぁ、誰かが気づいている。なら更に時間を稼げれば誰かが助けにくるはずと信じ、心を奮い立たせる。]
貴女が何を我慢してたかなんて、私の知ったことじゃないわよ。
そもそも、誰だって我慢なんてしてる。
貴女だけじゃない。
[せせら笑うかのように。]
――化け物に化け物といって何が悪いの。
人を食おうとする、それが化け物じゃなくてなんだって言うの。
[言いながら体勢を整え、すぐさま手の中の小石をヨウコの顔めがけて投げつけた。]
[サヤカが圧倒的な対抗手段を持っている様子は無いように見えた。
(嗚呼、ならば更に時間を稼げばきっと仕留められる)]
[フユはウミを制止しようと窓枠に足をかけ、外に身を乗り出しかかっていた。]
だって、……って
はあ?
何なの、それじゃ勘違
いっ……
[足を滑らせ、ウミのに向かって身を乗り出そうとしていたのでその方向へ、フユは窓の外に落ちた。]
[す、と何かが引くような感覚。
何かを越えた。
それが何かは分からなかったけれど]
そう。
それならわたしもしらない。
わたしはわたしのねがいをかなえるの。
[投げられた小石を造作も無く避ける。
そのままサヤカと位置を入れ替えるようにして。
すれ違いざまに桜の樹の方へと突き飛ばそうと腕を振るう]
なんでもいいよ。
それをもらえるなら。
[目を逸らすアズマの様子に、何となく、受け入れ切れていないのかな、とふとそんな事を思う]
『無理、ないか……俺だって、あの事がなかったら……』
[一度、憑魔と遭遇して。
司としての力を暴走させて。
……それでも、受け入れきれずにいるのだから、と。
そんな事を思いつつ。
零れたアズマの呟きに、僅か、表情を険しくして]
……外で……何か……。
[ヒサタカの疑問に答えつつ、感じた違和感の源を辿る]
……この感じ……まさか。
何、…って。
別に、
[意識をそちらに向けていたから、
肝心の、浄化方法を耳にする事は無く]
………こっちは、リョウ。
[返す言葉はいつもより、ずっと端的で、
どこか警戒しているようにも取れるだろうか。
無意識に、2、3歩下がると、扉に背がついた]
そっか。
[特に興味がある訳でもなかったのか、深い追及はせずに地面に目を向け、ビニール袋を拾った。
それを差し出そうと再び顔を上げて、]
……如何かした?
[問い掛ける言葉自体は恐らく何時もと変わらない。]
[いよいよ詰め寄ろうというヨウコに弓を放とうとするが、その斜線上にフユが飛び込んでくる
苛立たしげに弓を下ろすと]
……何で邪魔をするんです? 早くしないと。だからさっさとそこを退いて下さい!!
[再び弓を構え、そう言い放つ]
……恐らく……は。
[まさか、という言葉に、小さく呟いて]
……憑魔……動いた、のかっ……。
[低い呟きの後、駆け出したのは窓の方。
開け放てば、その気配はより一層強くなり。
唇を軽く、噛んだ後、*開いた窓から駆け出すか*]
[紡がれる言葉自体は変わらない、けれど。
何かが、違った。
それは、マイコに感じたのと似たようなもの。
また1歩下がろうとして、
扉が開いた。]
―――っ、わっ!?
[バランスを崩して、真後ろに倒れ込む]
[小石が避けられたのを見て舌打ちをした瞬間、すれ違いざまに振るわれた腕。避けようにもそれも適わず、とっさに腕で受け流そうと試みるも、そのまま跳ね飛ばされ桜の樹へと叩き付けられる。辛うじて身体を丸めるようにしたせいか頭を打ち付けなかったものの、背中に激しい衝撃が走り、一瞬息が止まる。]
[鳴り止まない警笛は、更に頭の中響き渡る。]
[それでも、視線はヨウコを見据えたまま。するり、右の手はポケットの中の其れを取り出し、握り締めながらゆっくりと息を吐き。]
貴女は……ただ、奪っているだけ……哀れね。
そんな、簡単な事すら…気づいていない、なんて。
貴女は、誰からも、何も、貰えないわ。
[斜線上を通り過ぎ、びたんと音を立てて地面に落ちた。]
……邪魔なんて、あ
[フユが上体を起こして見ると、サヤカは桜の樹に叩き付けられた所で、]
外さないように。
…──『憑魔』。
[窓の外へと意識を向け続ければ続けるほど、
チリ、と何処か焼け付く様な感覚が続く。
この感覚が導き出す「答え」をぽつりと零して。
途端、窓から飛び出して駆け出すマコトに、僅か目を見開く。
頭の何処かでは、行かなければならないのだと、判っているのに。
──ギリ、と僅かに奥歯を噛締めて。
と、突如扉を開け放つ音に、其方へと思わず視線を向ける]
……センパイ、
[ヒサタカに仰向けになって受け止められている人物に、
思わず目を見開いた。]
[勢い良く腕を叩きつけて桜の樹までサヤカを弾き飛ばし。
振り返ると同時に跳躍する]
ねがいを叶えるのには力がいるの。
手を伸ばさなければとどかないの。
[薄く微笑んだまま。
サヤカの言葉は届いているように思えない。
だが何故か一筋だけその目から何かが零れて]
ちから、ほしい。
それ、ちょうだい。
[目の前に降り立つと。
躊躇い無くその心臓へと腕を突き出した。
鋭い爪を具えた手を]
[仔犬を抱えていたためにぶつかるかと思われたが、
扉を開いた張本人より支えられて、床に着く事はなく。
伸ばされる手に、一瞬怯えが走ったが―――
それはすぐに消え、幾度か、目を瞬かせる。]
[サヤカが桜の木に叩き付けられ、ヨウコが爪を突き立てようとするのをフユの向こう側に見ると]
!! やめろぉぉっ!!
[そう言って、横に跳躍すると一か八か空中でヨウコに向かって弓を放つ]
…大丈夫?
[一瞬の怯えには気付かなかったか、隣で支える人と同じ問いを重ねた。
それからその大柄な先輩に向かって、小さく頭を下げる。]
[背後で、窓を開けて飛び出したマコトの気配は感じたが、支えたショウを放り出して追うわけにもいかず、振り向いて、アズマを見る]
……一人で行かせちゃ、危ない。
──…っ、
[ヒサタカの言葉に、一瞬、躊躇いに視線が泳ぐ。
僅かに息を呑んで、吐く。ぐ、と胸元を握り締めて]
…、判った。
[センパイの事ヨロシク、と短く告げると
そのまま、マコトの後を追う様に窓に手を掛け、外へと]
[冷たく言い放ちながら、左腕で伸ばされた腕を払いのけ掴もうとするも……払いのけることすらできず。深々と異形の爪が左腕に突き刺さる。]
―――――――――!!!
[声にならない叫び。]
[それでも、とっさに右の手に握り締めていたそれ―七味唐辛子と胡椒を混ぜ合わせたものを包み込んだラップ―を爪で引き裂き、ヨウコのおでこに向けて投げつけた。]
[既に、今の彼女を動かしているのは生への執着心のみだろう。]
……、大丈夫っ、
[一瞬力の緩んだ隙に、
仔犬が抜け出して地に降りた。
自由になった腕で、支える手を払って、
自らの力で起き上がろうとする。]
……ァッ!
[腕に刺さった爪を引き抜こうとすれば、何かが額に当たって。
そこから広がった粉は目に入り、視界を奪う]
―――ァァアアアッッ!!
[意味を成さない悲鳴。
それでも本能はまだソレを求めて。
否、ダメージを受けたからこそ、更に強く。
爪を振りぬき、即座に突き出す。
それは違えることなく左胸に吸い込まれて。
引き抜いた緋い果実を口に含む。
頭の後ろを掠めた矢すら気にならない様子で。
その味を堪能する]
[解放された事を知り、立ち上がる。
外の騒ぎに、ショウは気づいてはいなかった。
しかし風に乗って、微かに耳に届く咆哮―――
幻聴かとも思ったが、自然と、身体が震えた]
……、…サンキュ。
[小さな感謝の言葉は、
ヒサタカとヨウスケ、両方に向けてのもの。
ビニール袋を半ば引っ手繰るように受け取ると、
仔犬を促して、その場から逃げるように駆け出した]
[耳を覆いたくなるような悲鳴もお構いなしに。残る力を振り絞って、右足を蹴り上げようとした瞬間、其の時はやってきた。]
[痛みと言うよりも焼ける様な熱。]
[何が起きたのかも理解できぬまま、ごぼりと口から血を吐き出しながら、霞む目は自身の左胸に深々と突き刺さる腕を視認する。]
[追いかけて来る足音に、余計、速度は上がる。
けれどそれは焦りを呼び、
階段を駆け上がろうとして、バランスを崩す。
最後の一段を登ったところだったのは幸いか、
慌てて手を突いて激突を免れるも、痺れが走った]
………ってぇ。
『ああ…そうか……あはは……。』
[なぜかこみ上げてきた笑いを吐き出したいのに、吐き出されるのは溢れる血のみ。それでも、貫く腕の先に微かな笑みを向け、声にならない声を呟く。]
『さようなら哀れな子。貴女は何も手に入れてないわ。』
[二つの姿が見えなくなり、足音が遠ざかっても、視線は暫く通路の先に向けられていた。
やがてゆらり立ち上がり、無人になった部屋の中に入る。開け放された窓から呆とした目で外を*眺めた。*]
[止まった音に、掌の痛みを堪えながら振り向く。
普段とは違う、目線の合う位置に、ヒサタカの顔が見えた。
真っ直ぐに見つめて来る眼差しから、…ふい、と目を逸らす]
………ついて、来んな。
[はっきりとした、拒絶。
今までの低い声ともまた違う、疎んじるような]
大丈夫だから。
[後の言葉は、付足したに過ぎなかった。
最上段で大人しく待っていた仔犬を抱き上げ、
今度は駆けずに、けれど、*早足に部屋へと向かう*
後ろを振り返る事はなく]
[矢を放った姿勢のまま、地面に転がる。擦り傷にわずかに歯を噛み締めながら、矢の行く末を見る
だが、矢はヨウコの後頭部を掠めただけで、致命傷には程遠い
そして、目の前の光景は見ていられないほど痛ましい]
…………や、やめて……やめろぉ!!
[*絶叫*]
[フユは目を閉じる事も出来ずに、惨劇を、サヤカがこときれる最後の一瞬まで余さず見つめていた。]
(嗚呼拙い。)
[憑魔は酷い飢餓感に襲われて]
[瞼が落ち、フユの意識は*途切れた*。]
[届いたコエに、ピクリと顔を上げる。
そこでようやく背後に突き立った矢と。
先程までは無かった人の気配に気が付いて。
視界はまだ戻らない。
両の目から止まることの無い涙を流し]
や…ダメ……!
まだ、まだたりないのに!!
[悲鳴のような声を上げる。
見えないはずの目で、一度だけサヤカを見て。
何かを振り払うように頭を振って。
小さく頷くと、闇の中へ*駆けてゆく*]
―昨夜:寮―
[騒がしい声は聞かずに、上の階へとゆく。
自分の部屋にたどりつくと、ちいさく笑みを溢した]
みぃつけた
[置きっぱなしのバトンを掴む。少しひんやりして気持ちよかった。
くるくると回しながら、考える]
誰がやったのかなぁ。
ね、亘?
[写真に語りかけて]
……ほんと、さっさとはかなくなってしまえばいいのに
[どこかで血のにおいがした。それは彼女にまでは届かなかったけれど]
ま、いこっかなぁ
[下の人たちがあわててかけてゆく様子には、気付かずに]
桜……桜花だっけ?
答えなかったらもやしちゃおっかなぁ
[向かうは桜の花の下]
[人の集まる先をみたら、そこに近付くだろうか。
なにが起きたのかを誰かに聞いて、どういう顔を浮かべたのかは、うつむいていてわかるまい。
桜に聞くか聞かないか。
バトンを握って*考える*]
─昨夜─
[飛び出した後、背後で起きていた事になど気づく余裕はなく。
白と黒とを翻しつつ、走る。
伝わる感覚が伝えるのは、焦燥。
交差する声が、それを更に募らせて]
……っ!?
[やがて目に入った光景に、息を飲む]
あれは……九条さんと……霧生先輩っ!?
[夏休み前に知り合った後輩と、先日名を聞いたばかりの先輩と。
二人が交差し、紅が舞うのを、目に留める。
そこにいるのが何か、何が起きたか。
それは、説明を求めるまでもなく、内なる知識が物語る]
……くっ……。
[憑魔に反応して暴走しそうになる、風の力。
それを必死で押さえ込みつつ。
今はただ、*その場へ向けて駆けて行く*]
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