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牧師 ルーサー に 1人が投票した
吟遊詩人 コーネリアス に 4人が投票した
冒険家 ナサニエル に 1人が投票した
見習いメイド ネリー に 2人が投票した
流れ者 ギルバート に 1人が投票した
お嬢様 ヘンリエッタ に 2人が投票した
吟遊詩人 コーネリアス は村人の手により処刑された……
次の日の朝、酒場の看板娘 ローズマリー が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、書生 ハーヴェイ、学生 メイ、牧師 ルーサー、冒険家 ナサニエル、見習いメイド ネリー、牧童 トビー、双子 ウェンディ、流れ者 ギルバート、お嬢様 ヘンリエッタの9名。
[少女はルーサーの言葉に静かに頷き――]
[同行するということは、この後何が行われるのかは薄々感付いてはいたが、それを拒む理由などは無く――]
解りました。お供いたしますわ、神父様――
[ふわりと微笑むと――]
[ルーサーの手をきゅっと*握った*]
[まずは、人の多い広間に向かう。
そこにいるとは思えないが、誰かしらいるだろうから、『彼』の行方も聞けるかもしれない。
施錠した後、二人は部屋を出た。]
―ウェンディの部屋→広間―
[少年の泊まる部屋][寝台に腰掛け]
[卵の中身だけを器用に呑み込む少年に][クスリ][微笑]
[見様見真似で][卵の殻に上手く][皹を入れようと]
―一階・広間―
[ 湯気の立つ料理にフォークを突き立て口に運ぼうとした其の時、黒衣の神父と金髪の少女とが其の場に現れる。漂う雰囲気に何時もと違う物を覚えてか、僅か眉間に皺が寄せられる。誰かを捜している様子だった。]
……如何かされましたか?
[ 訝しげに問う。]
−客室−
[手に確かに伝わる感触と、耳に届く音。]
………ふぅ。これで、よし。
[安堵すれば、くらり。――睡魔が襲ってきて。
卵を持ったままのお兄さんの傍へと戻り。ベットに、*ぽふり。*]
[広間に入ってきたルーサーに気付いて挨拶をしようと。
しかしその様子に何処か違和感を感じて]
こんばんは…
いったい何を…?
[昨日聞いた話を思い出し、そう訊いて]
-広間-
[そう言えば、これだけの人数の食事と館の掃除や洗濯などをネリーは一人でこなしているのだろうか?
ここにはじめて来た時、少ない人数で大きな館を切り盛りしていることにも驚いたが、今ここを動かしているのはたった一人だ。
食事の後片付けくらいは、手伝った方が良いかも知れない。
じゃがいもの、最後のひとくちを飲み込んで、ヘンリエッタは思った。]
─広間─
[温かい料理を、一口、口にして。
その味にほっとするのと前後して現れた二人。
妙に張り詰めた様子に戸惑いつつ、口に入れた料理を飲み込んで]
……どうか、したんですか?
[口をついたのは、挨拶ではなく、疑問の声]
[そう、彼女が決心した時、扉を開けて金の髪の少女と、黒衣の神父が入って来た。
食事に来たのかと、席をつめることを考えれば、彼らの表情はその目的にはそぐわないもので、首をかしげる。]
―広間―
[扉が開いたその向こうにいた2人に、いつものように会釈をして]
…こんばんは。
[宜しければと料理を勧めようとして、けれどそれは次の言葉に遮られた]
[戻って来た少年が][眠そうに]
[寝台に倒れ込む様に][横たわり][目を閉じたかと思うと]
[瞬く間に][眠りに落ちていく]
[その][無防備な寝顔を][見つめ]
[上掛けを掛ける]
[口の端に][うっすらと浮かぶは][笑みなのか]
[低いが良く通る神父の声が広間に響く。
その言葉の意味を理解して、ヘンリエッタは視線を神父の顔に留めた。]
えっ? 本当に?
[誰か、と聞こうとして、先ほど神父が問うた名が、答えとして導き出される。]
[卵の殻を割ろうと][恐らくは少年の様に巧みに剥がれないものかと]
[悪戦苦闘していたが][為らず]
[ぐしゃっ]
[割れた卵]
[どろりと][手を汚す]
[持て余し気味に][両手を見つめ]
[殻をゴミ箱に捨てて]
[舌で汚れを][舐め取る]
[舌で清めた手]
[暫しじっと見ていたが]
[溜息]
[諦めた様に][立ち上がり]
[扉の内鍵を外し][そっと][廊下に滑り出る]
[ウェンディと牧師が廊下へと消えていくのを見送って、不安げに広間の面々を見回す。
彼が本当に人狼なのだろうか?
何故、神父はそれを知り得たのか。
わからない。
けれど、コーネリアスが逃亡し、神父がそれを追っていったと言うことはきっと。
彼らが消えた廊下の向うを、ヘンリエッタは何かを探すようにじっと*見つめた。*]
[広間を出て行くのを見送りながら]
…まさか、彼、が?
[もう一度呟く。
そして思い出す…彼の言葉
『…あなたは……。
その方を守るためならば、
人 を 殺 せ ま す か ?』
その対象は…彼自身なのか?]
……。
[ 食事の手も留めて去って行く神父の背を見詰め暫し茫としていたが、軈て吐息を零せば椅子から立ち上がり他者の視線を気にする事も無く、無言で広間を出て行く。其れは惨劇の終焉を見届ける為か。
*――否、本当に惨劇は終わりを告げるのか。*]
[単独行動は控えるように。
その言葉に今更のように気付く]
…ローズは、何処だ?
[コーネリアスが最後に見たのは庭園だと。
しかしこの時間にそれは考えられなくて]
部屋に居るのかな…。
[もし、人狼を恐れて篭っているのなら、傍にいなくては、と。
立ち上がって、その場に居る物に会釈をして*部屋へと戻って行く*]
……コーネリアスさん……が?
[ルーサーの言葉と。
消えたコーネリアスと。
二つの要素から導かれる結論に。
こぼれた声が、震えた]
…………。
[それで、終わるのか。
死を視るのも、声を聴くのも、あと一度きりですむのだろうか。
……不安が消えなくて。
でも。誰かにすがる事はできないから。
せめて、独りになれる場所へと。そんな思いから*ふらりとその場を立ち去っていた*]
[牧師と少女が部屋を出て行く。
その姿が完全に見えなくなると、息を吐いて目を閉じた]
コーネリアス様が…
[背後の壁に凭れる。かの義弟が主を殺したのか。
彼の娘の部屋に眼球を――
――ぎり。忌々しげに奥歯を*噛み締めた*]
[階下に下りると]
[広間の辺りの雰囲気が][異様な気配]
[やがて][緊張の面持ちで]
[大勢の人間が出て行く]
[躊躇い、]
[気配を押し殺し][一旦はホールの隅の物陰に身を潜め]
[遣り過ごす]
―二階・自室―
[部屋に戻り、灯りを灯して部屋を見渡す。
そこに彼女の姿は無く。]
……何処だ、ローズ……
[暫し考え、自室に戻ったのでは?と。
だけど 胸騒ぎ
部屋の灯りは灯したまま
部屋を出て、ローズの部屋へ]
―二階―
[ローズの部屋まで来て、扉を開けることに躊躇する。
此処には、あれが在った。
もし……]
そんな筈があるか!
[ドアを開け放つ]
ローズ!
[しかし、そこには誰も居なくて。
一瞬の目眩。
見れば服を探した形跡に、確かに此処には居た、と]
でも、今は……?
何処に居る…ローズ……
[焦燥感が自分を支配しかけて、それを振り払うように走る]
…ローズ、何処だ!
[それだけをただ呟いて、館内を探し回る。
厨房も、浴室も、思いつく場所すべてを
だけど
ローズの陰さえ見つからずに]
まさか……外に?
[残る場所はそれしかなく、しかし彼女が外に出るとも思えずに]
まさか……
[だけど、探すべき場所はもう無くて。
重いドアを開けて、外に向かう。
外はやけに明るく、見上げれば
夜空には冴え冴えとした蒼い月。]
[月明かりの下、見渡せば崖のそば
その枯れ木の下に白く浮かぶ何か。
息を呑む、遠目にもそれが何が分かったから]
……うそ、だろう?
[ゆっくりと歩み寄る。
いや、本当は近付きたくなかった、見たくはなかった。
木の根元、眠るように目を閉じる、緑の髪の……]
ろ……ず?
[返事は返らない、返る筈がない。
何故ならば]
[眠るようなその姿。
肌は月明かりに照らされていつもより白く、唇は赤く
だけど、そこから下は……]
[細い杭のような物が、まるで大地に打ち付けるように、正確に心臓に打ち込まれ。
腹部は開かれて、その周りに喰いちぎられたように腸やその他の臓腑の残骸が散らばって。
だけど、その手足はそのまま、まるで眠るように
彼を待っていたかのように伸ばされて。
それらが月明かりに照らされて、まるで作り物のように……]
……あ…ぁ……うそ、だ……
嘘だろう、ローズ……そんな……
[抱き上げる、まだ生きている者にするように。
そのローズの首が、がくり、と落ちて
其れがただの抜け殻だと主張して]
……ぁぁあああ……!!!
[絶叫は、しかし思いが強すぎてか声にはならずに。
ローズの抜け殻をただ強く抱き締めて]
赦さない ゆるさない ユルサナイ……
殺してやる ころしてやる コロシテ……
[狂ったように、壊れたように同じ言葉をくり返す。
怒りと、悲しみと、憎悪に心捕らわれて。
ただひたすらに、ローズの名前を*呼び続けて*]
─二階・客室─
[独りになれる場所を探したとて、結局たどり着くのは自分の部屋しかなく。
不安を抱えたまま、いつの間にか眠りに落ちて。
……夜の間に何があったのか、直接知る事はなかったけれど。
でも。
間接的には、知る事になった──否。
知らざるを得なかった、と言うべきだろうか。
その『力』故に]
……ん。
[覚醒を呼び込んだのは、弱々しい光かそれとも、意識に飛び込んできたその『声』か。
静かな、静かな、歌声。
それはつい最近、聴いた声。
自分の一番得意な曲──それを教えてくれたのは、その『声』の主と良く似た、美しいひとだったのだけど──にあわせて、紡がれた、歌]
……っ……。
[ぎゅ、とシーツを掴む。
目を開けるのが、怖い。
わかっていたけれど。
否。
わかっていたから。
視たくなくて。
それでも、と。
目を開ける。
薄紫の瞳を開いて、起き上がる]
……コーネリアスさん……。
[ぼやけた視界が、その『姿』を捉える。
それは、黒い霧のようなものに包まれて、霞んでいたけれど。
赤い、あかい……水平線に沈みゆく月のいろの瞳。
それだけは、はっきり見て取れた]
……視たく、なかった……よぉ。
だって…………。
[後の言葉は、続かなくて、俯く。
……やがて『姿』は揺らめいて消え、『歌声』も遠くなり。
終わった、と思った。これで、全て。
でも、それは。その思いは。
直後に聞こえた違う『声』に、儚くも打ち破られて]
─悲しまないで─
[静かな。とても、静かな。
女性の声。
それは]
……え……なん……で?
[掠れた呟きが、こぼれる]
─苦しまないで……ごめんなさい─
[再び、聴こえた、『声』。それは……]
ローズマリー……さん?
[何故。
どうして。
彼女の『声』が、聴こえるのか。
答えなんて、一つしかない。
けれど。
けれど……]
……ゃ……ぁ……。
[視たくない。今度のは、絶対に、視たくない。
そう、思ったけれど。
でも。
もしかしたら何も視えない、単なる気のせいかも知れない。
そんな思いが。
顔を上げさせて──]
……っ……。
いや……だ。
[それが意味するのは。
まだ、終わっていない……という。
冷たい『現実』で]
やあああああああああああっ!!!!
[絶叫が響き、そして。
意識は*闇の帳の内へと堕ちてゆく*]
−客室−
[温かなまどろみの中。口元に微かに笑みを浮かべて。
青年が出て行ったことにも気付かぬまま、眠りをむさぼる。
やがて、空が白む頃――彼が起きるべき時刻。]
………んー…?
[微かに届いた声に、ぽやぽやと瞼をこすって身を起こす。]
[人が出て行った広間]
[テーブルの上には会食の跡]
[セットされた食器]
[並べられた料理の数々][手を付けていない、或いは残された][それ]
[乱れた椅子]
[ぽつりと]
[取り残された様にそこに]
[座っている赤毛の少女と]
[メイド姿のまだ若い女性]
[二人の姿が見えた]
[見知らぬ、二人]
[懼れは僅かに眸の中に浮かび]
[それでも]
[躊躇う様を見せつつも][確りとした様子で]
[話し掛ける]
……てを。あらいたい。いいだろうか。
ばしょ、おしえてほしい。
[何も持たぬ][両の掌を差し出して]
[二人が、皆が消えていった闇の向こうから、突然現れた男にはっとする。
男の顔に残る痣と、唇の傷から、その男が怪我をして運びこまれたと言う男だと気付く。
いくらか回復したとは聞いていたが、起きている彼に会うのは初めてだ。]
[室内に漂う雰囲気の][只ならぬ感じに]
[訝しげに眉を顰める]
[果たして]
[二人の彼への態度も][著しく]
[ギクシャクとした][不自然なもので]
―回想―
[慟哭はやがて静まり
顔を上げてローズを見る。
蒼ざめたその顔に口付けて]
…もう帰ろう。ローズ…
こんな所で眠っては風邪を引いてしまうよ?
[そう呟き、そっとその髪を梳いて。
胸に刺さったままの楔を力任せに引き抜く。
血は吹き出すことはなく、どろりと胸元を流れて。
そっと体を横たえ、周りに散らばる彼女を広い集め空になった腹部に乗せて、自分の上着を脱いでそれを隠すように掛ける]
―回想 二階・自室―
[そっとベッドへと寝かせて毛布を掛ける。
まるで眠っているようで。
唇を重ねる
もうそこに温もりはないけれど]
待ってて、ローズ。
君を傷つけた奴は……
俺が殺すから。
[狂気を秘めた笑顔を残し、部屋を出る]
[その外見の印象を裏切るたどたどしい言葉づかいに、目を見開くも、彼の求めには答えて。]
手を洗うの?
[思わず、食事の時に使った濡れ布巾に目をやる。]
きちんと洗うなら、水場の方がいいと思うけど……。
[言いながらも、ぎこちなく布巾を差し出した。
やはりたどたどしい名乗りにも頷く。]
私はヘンリエッタ。
体……大丈夫?
―広間―
[人の気配がして目を開いた。その先に人影。
ややあって、それがかの怪我人であると気付く]
…
[眸を細める。この得体の知れぬ客人を少なからず彼女は疑っていたのだが、牧師の言うことが本当ならば、彼は違うのか]
手を洗う場所、でしたら…
…ご案内致しましょうか?
[場所を示しかけて、けれど連れて行ったほうが早いかも知れないと、扉のほうへ歩む]
―回想 自室→広間―
[こんな時間に誰も居ないと解っていたけれど。
少しでも情報を得ようと広間へ]
………
[無言でソファに歩み寄り、そこに座る
銀髪の彼が座っていた場所
じっと無言で座り続ける。
時が来るのを*待って*]
[赤毛の少女、ヘンリエッタ][の差し出す]
[濡れ布巾を受け取り][手指を拭う。]
ありがとう。
……だいじょうぶ。もう、うごける。
[そっと顔色を伺う様な][視線]
[メイド姿の女性が][案内を申し出ると]
[頷き][少女には軽く会釈]
[そっとテーブルの隅に布巾を乗せ]
うん。ばしょ、おしえてほしい。
[女性へと向き直った。]
…それでは。
[ギルバートと名乗る男性に頷いて、そのまま扉の外と一つ足を踏み出すが]
…ああ。申し遅れました。
私のことはネリーと。
[ふと、こちらが名乗っていないことに気付いて振り返る。
相手の名前はかつてローズマリーとの話の中で記憶していたのだが。先の知らせで、余程気が動転していたのかも知れない]
―広間→廊下―
きいてもいい?
……いま、なにがおきている?
さっき、ここからひとが、……
[言葉を切り][少し考える仕草]
ひとがしんだのは、きいた。
こりつしている。でられない。
じんろうがいる。
…
[ここから近いのは厨房だろうか、と思案しながらそちらに足を進める。
男性に問いを投げられ、暫し何と言ったものかと悩む]
…“人狼審問”。
[結局、一番簡潔な答えを口にした]
でも、もう…見つかったそうです。
じ、ん、ろう、しんも、ん。
………………
[其の言葉が。][認識された途端、]
!!!!!!
[ぐらり。]
[蹌踉めき]
[驚愕][恐慌][混乱]
[眼球が零れそうな程][目を見開き]
…ええ、
[厨房の扉に手をかけて、肯定の声は途中で止まり。
訝しげに振り返って、眉を寄せる。…彼は怯えていた]
………。
貴方は…
[“人狼”という言葉は普通に発していたのに、それを追い詰める儀式に彼は過剰とも言える反応を示す]
…何があったのですか?
[答えが返ってくることはあまり期待してはいなかった]
……なにが、あった?
[ぶるっ][身震いし]
[己の身体を抱き締める]
わ、から、ない。おもいだせない。
でも、こわい。とても、とても。
[ほう、と息を吐き。
心配するような表情を作る]
……本当に、大丈夫ですか?
まだ、顔色がお悪いようですが。
[本来ならば怯えを見せた時点で労るべきであったろうけれど、彼女には余裕がなかった。
思い出せない、との言には軽く眉を顰めるも]
…そうですか。
[大丈夫かと言う言葉には、][こく、と][頷き]
……へいき。
はやく、おもいだしたい、から。
なれないと。
[憔悴してはいるが][きっぱりとした口調で]
[男性は平気だと言うけれど、あの様子はどう見ても尋常ではなかったと思う]
くれぐれも、無理はなさいませんよう。
[一応はそう告げて。
立ち上がったのを確認し、厨房へと足を踏み入れる]
―…→厨房―
[厨房に入り]
[ネリーに示された場所で手を洗う。]
[このような僻地にどうやって水を引いているのか]
[或いは汲み上げているものなのか]
[潤沢に流れる水で、手を再度清める。]
―厨房―
[先程の調理からさほど時間が経っていないせいか、チーズの香りが仄かに残っていた。
蛇口を示し、男性が手を洗うのを眺めながら、傍にあるタオルを手に取り。
流れる水から手を離すのを待ち、それを差し出した]
[差し出されたタオルを受け取り、手を拭く。]
ありがとう。
[湿ったタオルを返しながら]
……さっきのは、みながじんろうを、ころしにいった。
ちがう? もう、しんだ?
──じんろうがしんだら、みんなあんしんするはず。
でも、みんな、……
[適切な表現が見つからないらしい。][眉を寄せ]
……こわい、かんじだった。
だから、ネリーも、ヘンリエッタも、こわがってる?
じんろうが、つかまっていないから。
[小首を傾げ][琥珀色の眸をメイド姿の女性に向ける]
[受け取ったタオルを簡単に畳みながら。
人狼は既に排除されたのか、まだなのかは分からなかったが]
人狼退治には、牧師…異端審問官の方が。
[だからいずれは。
そこまで言って]
……怖い?
[首を小さく傾げ]
…お嬢様は、怯えていらっしゃいました。
[自分は怖くはない。その筈だけれど。
その後の言葉に眉を寄せる]
……捕まって、ない?
おじょうさま『は』?
[訝しげな表情]
[が、][問い掛けられ]
うん。つかまえたじんろうはころす。ちがう?
ネリーは「みつけた」といったけど、「もうころした」いってない。まだ、じんろうは、いきてる。
[ハ、と思い至った様な表情で]
……トビー。
かぎ、はずしてきた。はやくもどらないと。きけん。
[不安げな][落ち着かぬ素振り。]
トビーのところ、もどる。
ネリー、ありがとう。ネリーも、きをつけないと。
ヘンリエッタ。ひとり。
[メイド姿の女性に軽く会釈して]
[慌しく厨房を出て行く。]
[急ぎ][憶えている限りの記憶を辿って]
[迷いながらも二階の客室へ]
[やっとトビーの眠る部屋を見つけると]
[安堵の吐息。]
私は……いえ。
それ程までには。
[軽く苦笑する。憎しみのほうが強かった、とは言わず]
…ああ。
[後の説明にはそういうことか、と]
もうすぐ、殺される筈です。
……もう。終わります。
[言い聞かせるような言葉は男性に向けたものか、自身に向けたものか]
[トビーのしていた様に][内鍵を掛け]
[彼の眠る寝台に][物音を立てぬよう][静かに忍び寄る。]
[あどけない寝顔]
[乱れた上掛けを掛け直し]
…危険?
[また少し眉を寄せて。
だが彼はまだ殺されてないと思っていたから、そのせいだと思い直す。
トビーという言葉に、あの少年を思い浮かべる。いつの間に仲良くなったのだろうか]
[寝台を見る]
[それは、少年一人には随分と大きなもので]
[もう一人位は寝られそうなスペースはあるものの]
……
[怯えの色][目が泳ぎ][諦めた様な嘆息]
[暖炉に火を入れ]
[カーテンやテーブルクロスを外し][包まり]
[炉辺で丸くなって、横になる]
[赤く照らす火の]
[踊る様に魅入る内]
[浅い睡りへと*堕ちて行く。*]
…そろそろ、お休みになられたほうが良いでしょう。
お身体にも障ります。
[広間に一人残っていた少女に声をかけて。
少女を伴い、自室へと*向かう*]
―ニ階・客室 朝―
[ ――結局、青年は其の最期を目にする事は無かった。
静寂に包まれた此の部屋で、睡りについたのは大分遅くの事。然れど目覚めは早く、結果的に殆ど睡眠は取れていない。眠気は無いのに躰は休息を欲している様で、揺らぎかける頭を押え緩々と首を振り、寝台の端に腰掛けた。
昨夜の服装から上着だけを脱ぎ胸元を緩めた白のシャツの下、先日程では無いにせよ僅かに汗ばんだ肌の感覚がぞわりと背筋を震わせ、黒曜石の双瞳を伏せ床を見詰めれば睫毛の作りし影が頬に落ちる。]
[ 使用人の部屋からでも取って来たのか、卓上には紙巻き煙草が一箱と硝子製の灰皿。侍女が居たのならば室内での喫煙を咎められただろうし、普段ならば青年も外で吸うのだが、現在は出る気には成れなかった。シガレットを指で挟み、先を銜えれば安物のジッポのホイールを回して着火させる一連の仕草は既に手慣れたもの。
微か開いた薄紅の口唇の間から吐き出される煙は開かぬ窓の外へは逃れる事も出来ず、暫しの間宙を漂う。通風孔が在りはするも矢張り喫煙には向かない環境で、普段彼が吸うものよりマシだとは云え、煙草特有の其の匂いは青年だけでなく軈て部屋中に染み込んでいく。]
……。
[ 喫煙の合間微か唇を動かすも声とは成らず、其れは他者の耳に届くことはない。煙草を持たぬ片手を躰の後ろに突いて体重を預け足を組めば、思考を放棄したかの如く遠い眼差しを遙か彼方へと向け、*唯、静かに紫煙を燻らせる。*]
−客室−
[部屋は十分広いとはいえ、人影を見つけるのにはさほど難しくはなく。崩れ落ちた熾がけぶる暖炉の傍で、大きな布地に包まり眠る青年の姿に、ほぅと安堵の溜息。]
…お兄さん……?
[小さく小さく呼びかけるも、返事はなく。よく眠っているのだろうと、起こさぬように静かにベットから滑り降りた。]
……ぁれ?
お兄さんの…寝言じゃ、ない……?
[――目覚める原因となったはずの、声。
今思えば、それは、メゾソプラノのように高く、尾を引いていたような気がして。すぅと血の気が引く。]
まさ、か。 また…だれか……?
[明らかに震えながら、それでも部屋に閉じこもるのではなく、確かめに動いたのは。陽の光に既に魔が追い払われたはずの時刻だったからだろうか?]
−廊下−
[早朝ゆえか、廊下はしんと静まり返っていて。
まだほの暗い廊下を、声の聞こえたと思しき方へと進む。
半ば夢現に聞いたのだから、はっきりと確信があったわけではないけれど。どこか、聞き覚えのある声のような気がしたから。
確か昨日、このドアから姿を見せていたはず――と。
メイの部屋の扉をノックする。]
[コンコン、コンコン]
メイさん? ボクです…トビーです。
起きていますか……?
[返ってこない声に、不安が募る。
けれど、今は早朝なのだからと無理やり自分を納得させて。]
メイさん…寝てるんですか……?
……怖い夢でも、見たんですか……?
[夢くらいで、あの苛めっ子なメイが悲鳴を上げるなんて考えられなかったけれど、よく見知った人に何かあったなんて思いたくなくって。]
[ドンドン]
[やや強めに扉を叩けば、ガチリと錠が鳴って。無意識にノブに手が伸びれば、カチリ、あっけなく扉は開いて。]
―ニ階・客室―
[ 硝子製の器へと視線を向ければ、既に燃え尽きた煙草が幾本かに積もる灰。少々吸いすぎたかと思いつつ立ち上がり、喚起を促す為に部屋の扉を開けば漂っていた空気が外へと逃れ散っていく。其の儘廊下へと黒の視線を緩やかに巡らせ、何時までも此処にいても現状は解るまいかと腰に手を当てて小さく息を吐き部屋を出る。
階段迄辿り着けば、反対側の廊下から聞える強めのノックの音。何か在ったのかと足を止め其方へと視線を向けるも、曲がり角の先は見えはしない。]
[緩慢な動作で起き上がり][寝台の上を見る]
[寝乱れたシーツ][乱雑に捲られた上掛け]
……トビー……?
[微かに眉を顰め][もう一度少年を呼ばわる。]
[外はまだ、白んだばかりで]
[カーテンを外した窓から]
[弱い朝の日差しは部屋に届くものの]
[未だ室内は薄暗く]
[しかし、]
[少年の姿は見当たらない。]
[一通り部屋を見回り][扉を見れば、]
[内鍵が開いていた。]
[部屋の前で][暫しの間きょろきょろと]
[辺りを見回す。]
[少年の姿は無く、][少し考え込む仕草]
[そろそろと未だ慣れぬ][屋敷の廊下を歩いて行く]
−廊下→メイの部屋−
[ギィィ]
[扉の開く音は、早朝の廊下にやけに響いた……気がした。]
メイさん…? ねぇ、寝てるの…?
[頭だけをドアの隙間から覗かせて。部屋の中を見やる。
恐れていたような――血の流れる匂いは、霊感のない彼には感じられなくて。少し、ほっとしながら、大きく扉を開けた。]
[メイは、ベットに伏せて眠っているようだった。
けれど、その声を聞くまでは安心できなくて。]
……あの、大丈夫ですか…?
何か…悲鳴が聞こえたような気がしたんですけれど…。
[もしかして、違うのかなとも思いつつ、伏すその傍へと近寄れば、規則正しい呼吸音。
少なくとも、息があることに安堵しつつ、軽く身体を揺すろうと。]
[固く閉ざされた扉の並ぶ廊下に]
[一つだけ、大きく開け放された扉]
[立ち止まる。][迷い]
[しかし、其方へと][静かに歩を進める]
[ 其の儘階下へと降りようかとも思ったが、平時ならば兎も角今は少々の事でも気に掛かり、方向を転換して客室の並ぶ廊下へと歩を進める。]
……あれ?
[ 角を曲がれば其処に在ったのは少々予想外の男――ギルバートの姿。]
[ 部屋の中から聞えた声と男の呼んだ名にも驚いたが、青年の姿にか立ち止まり迷った様子にキョトリとして緩やかに瞬く。]
えーっと……、御構い無く?
[ 何と無く紡がれたのは其の様な言葉。]
[はっきりと聞こえた自分を呼ぶギルバートの声と、駆け寄る足音に姿に、ぱっと顔を明るくして。
しかし、メイの身じろぐ気配に気付けば、ゆさゆさと軽く揺すり、覚醒を促そうと。]
…メイさん、起きて。怖い夢…見てるの?
[ムッとした表情で何かを言い掛け]
「お兄さん…?」
[呼び掛けるトビーの声に][開き掛けた口を閉ざし]
[ハーヴェイに些かきつい視線を注ぎつつも]
[部屋へと飛び込んで行く。]
─二階・客室─
[闇に堕ちた意識は覚醒を拒んでいたものの。
呼び声に反応したのか、僅か、それを呼び込んで]
……や……だ。
[しかし。
呼び込まれた覚醒に意識が示したのは、幼い子供のような拒絶の声]
[拒絶するような、幼子のような頼りない声に、眉を寄せて。
少し乱暴かもしれないくらいに、強めに揺する。]
メイさん、メイさんっ!
起きて下さいっ! ねぇっ、朝ですよっ!
[少し不安げな声に、聞こえたろうか?]
[ 男の表情に再び瞬くも部屋へと向かって行くのを見遣れば軽く肩を竦め、然し其の扉の位置に誰の部屋かを悟り、数瞬の後に歩みを進める。]
[駆け込んだ部屋には][トビーと前に一度だけ見た少女]
[真っ直ぐに寝台に近寄り]
トビー。一人で歩くのはあぶない。
[まず第一に出てきたのはそんな言葉]
―肖像画前―
[深夜。薄暗い蝋燭の明かりが、辺りを照らしている。
『仇を打ってくれてありがとう、嬉しいわ。』
『でも、もう少しきちんとした食べ方をマスターした方がいいわね?』
もう、姉さんは厳しいな。仕方ないじゃない。
ちょっと力加減を間違っちゃったみたいで。あんなに食べ散らかしちゃうなんて思わなかったんだ。
でも、ちゃんと見ててくれたんだね。僕の事。ふふっ。
肖像画によりかかり、絵に向かってぶつぶつと呟いている。
まるで、生きている者に話しかけているような。そんな。
そこに、ローマン・カラーに身を包んだ長身の男と小さな少女が現れる。]
ああ、神父様。どうしたの。僕に何かご用事?
[あはは。幼児のように、無邪気な微笑み。]
ええ。貴方を、処刑する為に参りました。
ああそうだ。例の答え合わせを先にやっておきましょう。
『ばらの下で』。この意味は?
『秘密』でしょう?
書庫にあった書物から、ようやく見つけましたよ。
たった一つの言葉を調べる為に、あんなに時間がかかるなんて思いませんでした。
でも、楽しかったですよ。神父様。
……ご名答。すみませんね。しかし残念ながら、ご褒美はあげられそうにありません。
もう、貴方に明日はない。そうでしょう?
あ、そうそう。何故3つのパーツがあのような配置になっていたのかわかったのですよ。
玄関に投げ出された足は大勢の目を引き付ける為のいわばエサにすぎず、
本命はローズマリーさんの部屋にあった左腕とヘンリエッタさんの部屋にあった片目です。
この時私は思ったのです。
何故、親類である貴方の部屋に、パーツが置かれなかったのか、と。
[揺さぶられる衝撃と、声と。
覚醒を促すそれらに対して、感じるのは、恐れで]
やっ……やだっ!
[衝撃から逃れるべく、跳ね起きて。
逃げるようにベッドの隅へと]
あの時。何故、遺体がバラバラにされたのかという話をしていましたね。
貴方は……
[以前、古い書物で読んだのですが…、
[[ふと思い出した、その凄惨で切ない物語。]]
とある男と、後ろめたい関係になった女がおりました。
二人は、ひと目を忍んで逢瀬を重ねましたが、その最中に…女ははずみで男を殺してしまいました。
その男を失うのを恐れた女は、男の身体の一部を切りとり、そっと持ち出して逃げたそうです。
…大切だから傍に置きたい…そういうのは、
いえ、流石に考えすぎ、ですよね?]
……と。こんな事を言ってましたね。コーネリアスさん。
でも、これはあまりにもあからさまなミスリードだった。
……何故なら。
その物語を裏返して考えてみれば、『何故貴方の部屋にパーツがなかったのか』はっきりするではないですか。
そう、つまり。
…………あなたは、アーヴァインを憎んでいたのです。心の底から。
嫌いな人間の一部を、部屋においておけるはずがない。違いますか?
…ふふ。ふふふふふ。名探偵様はそうおっしゃるのですね。
流石に、勘がよろしい。
そうです。僕が犯人ですよ。僕が、醜く汚らしいあの男をこの手で引き裂いてやったんだ。
ふふ。ははは。あはははは、あははははははははははははっ。
[哄笑]
あの男は僕の大切な姉さんを殺した。それだけですよ、理由など。
姉さんは被害者だ。旅人に襲われさえしなければ、あんな事しなくて済んだ。
旅人の汚らしい肉なんか食べなくて良かった。
それを、あの男……アーヴァインは。泣きながらうろたえる姉さんに銃口を向け、撃ったんだ!!
僕?……止めたよ、必死で止めた。何かの間違いだって。義兄さんは、姉さんを愛しているんでしょう?
なら、姉さんにそんなもの向ける理由なんてないじゃないか、って。
でもあいつは。……『これ以上罪を重ねさせるわけにはいかない』と言って、引き金を引いたんだよっ!!
せっかく僕が姉さんの幸せの為に身を引いたのにあの男は全然理解なんてしてなかった。
ただ、飽きた玩具を放り出すように姉さんを殺した!これが許される事なのか、神父様!
……そうですか。では、そろそろ宜しいでしょうか?
[ルーサーは、『聖書』から銃を取り出し、構える。
鈍い銀色に光るリボルバー。弾は6発。]
えぇ、かまいません。気が済みましたから。
幾度もやったように殺せば良い。…皆の前で。いや、彼女の前で、ね。
……でも、ちょっと迂闊すぎたんじゃないかな。神父様?
もっと、たくさんの人を連れてくるべきだった。
もう少し、戦力になる奴を連れてくるべきだった。そんな小娘がいても足手まといになるだけ。
逆に不利だと思うよ?あははははははははははははっ
姉さんは僕のもの。誰にも渡さない。姉さんを返せ。
ほほえむかおをうつくしいかみをうたうこえをかろやかなあしおとを。
ねえさんにふれていいのはぼくだけ、そうぼくだけだ。
返せかえせカエセッ!!ネエサンをカエセ!!!!!
[その眼は、凪の海に似た青灰色から水平線に沈みゆく赤い月の色へと。]
[そしてその身体も、銀の毛を全身に纏った狼へと変わる。
直後、神父の方へ向かって疾駆。
しかし、神父も怯まず。銃弾を叩き込もうとする。
1発目は避けられ、2発目は壁に穴を空け。
3発目は銀狼の左肩に、4発目は肖像画の眉間に。
瞬間、振り向くコーネリアス。]
……ねえさん? おのれ、よくもねえさんをっ!!
[怒り狂った銀狼はさらに速度を上げて奔る。
一足飛びで神父に掴みかかり、右肩に爪を立てた。]
ふふ。それで勝ったとお思いですか、狼さん。
……甘いですね。
[銀狼の左胸に銃口を押し当て、零距離射撃。
連続で2発。
狼の胸に、赤い薔薇を咲かせた。]
あはは……完敗だよ。……なんて、ね。
……僕が死んでも、悪夢は終わらない。
ふふ、ふふふ、ははははははっ
[ひとしきり哄笑した後、息絶える。]
[少女が飛び起きて][逃れる様に]
[声を掛けようとして][躊躇い]
[顔見知りのようである][トビーに任せ]
[少し離れて様子を見ている。]
―二階・メイの部屋―
[ 部屋に踏み入る間際、動きが止まるも其れも一瞬で、幾度緩やかに瞬くとそうと中に入り、]
何が……、
[然う問い掛けて声は止まり視線が揺らぐ。昨晩の出来事を考えれば解らない筈が無かった。]
[打ち倒した狼をしばらくの間見下ろした後、
広間へ報告に向かった。傍らの少女と共に。]
『悪夢は終わらない』……?
[そういえば。
私は、おかしなことに気が付いた。
……確か、コーネリアスは玄関の物音がした後に玄関へ向かっている。
そこで、使用人が足を抱えているのを私達は見た。
ここまではいい。いくらでも細工は出来るだろう。
……問題は。
この後、コーネリアスは私達と行動を共にしていた。
私だけならまだなんとでもなる。
しかし、あの時はローズマリーやナサニエルもいた。
彼ら二人の行動は、コーネリアスにとって予測可能だったかどうか。
もっと正確に言うならば。あの後ずっと、彼はアーヴァインの部屋にいた。
そんな彼に、パーツをばら撒く時間などあったのか?
本当に、悪夢は終わったのか?
見落としている……何か、何か。]
[部屋に入ってきたハーヴェイに][鋭い一瞥を投げ掛けて]
[またトビーと少女に視線を戻そうとして]
[しかし]
[入り口で立ち竦む]
[ハーヴェイの様子に][傷ましげな目線へと変わる]
[かけられる言葉は柔らかで。
害意がないのは感じていたけれど]
やぁ……やだ、よ。
もう、やだ……これ以上……。
みせないで……きかせないで……。
ボクのしってるひとを、ころさないで……。
[震える声が紡ぐのは、少年への答えではなく、何者かへの嘆願で]
[ ハーヴェイの存在に気付けばトビーは困ったように此方を見上げて来るも、少女の其れを視ても聴いてもいない青年には解りようも無く、唯震える姿を声を感じて知る事しか出来ない。唯出来るのは、寝台の隅へと逃れるメイに近寄り声を掛ける事くらいで。]
メイ? ……確りしろ。
昨晩、ルーサー神父が云っていただろう。
「人狼を見付けた」と。
……若しお前が視たのが其れなら……、
[相変わらず気を遣う事を知らぬ口調で、然し僅か云い淀んだのは確信が無かったが為か。]
終わったんだ。
[ 其れでも強く、云う。]
[薄紫の瞳が、揺らぐ。
そこにあるのは不安と疑問。それから混乱]
じゃあ……なんで?
どして……なの?
おわったんなら……どして……ふたり……。
ローズマリーさんがみえたの、なんで……?
[震える問いが、解き放たれて]
――肖像画前にて――
[少女は初老の男の手に引かれ、屋敷を探索する。
揺らめく燭台の明かりに、息を殺して――]
[そして見つけた銀糸の影。子供のように微笑む姿に。
背筋が凍りつく――]
[そして人が狼の姿に変わる瞬間――少女の背中の傷が疼き出す。
しかし少女は泣き叫ぶことも逃げ出すこともせず。ただ――
異端審問官と人狼の戦いを見つめていた。
それが唯一与えられた少女の――
使命とも思えるように――]
[ 其の名を聞けば驚きに目を見開きはしたが、此処で自分までもが動揺してはなるまいと平静を装い、黒曜石の双瞳は揺らぐ薄紫を見詰める。]
……死んだ、人狼が……やったんじゃないのか?
[ 楽観ではあるが推測で云えるのは其れしかなく。]
[銃声が鳴り響く――]
[一発、二発、三発、四発――]
[ふわり――]
[空気が動き――]
[さらり――]
[少女の金糸が靡く――]
[そして人狼と化した者との距離を空けずに宛がわれた銃口から、残り二発の銃声――]
[飛び散る鮮赤の飛沫と、崩れ落ちる人狼の姿に――]
[さらり――]
[靡く髪筋の行方を追いながら、少女は何を思ったのかは。
誰も知るはずもなく――]
……だって……その前に……。
コーネリアスさんが……視えて……歌……聴こえて……。
そのあと……で……。
[言葉が途切れる。
視えるのは必ず、その者の最期の姿。
思い出したそれが、再び、錯乱を呼び起こして]
……やだ……あんなの、もう、みたくない、よぉ……。
[また、幼子のような、拒絶の言葉と仕種]
-廊下/夜半処刑後-
[ネリーの部屋へ、二人、無言で歩く。
もう人狼はいないのだ。
そう思うだけで、夜の闇がいくらか明るくなった気さえする。
もう、死の危険も、好意をもった人を疑う必要もない。
ローズマリーも、命を縮める占いをしなくていい。
朝になれば、外界と連絡をとる手段を探し、ここを出ていける。
浮き立つ心でそこ迄考えた時、ヘンリエッタはふと隣を歩く緑の髪の少女を見つめた。]
ねえ、ネリーは、ここを出たらどうするの?
[そして、耳を裂くような断末魔の叫びに――]
[ゆるり――少女は首を傾げて――]
ねぇ、神父様…。
本当にこれで…悪夢は終るのでしょうか…?
[口にした疑問は、目の前の人狼の遺言からか、それとも過去の経験故の慎重さか――]
[しかし少女は、それ以上深く追求するのはやめて――]
[ふわり――]
[温かな手をルーサーに差し伸べると、ゆるく、ゆるく握り締めて]
皆さんに報告に行きましょう?
[広間への道のりへと*足を進めた*]
[取り乱すメイを何とか宥めようと、彼なりの必死さで語りかけるけれど。
彼の言葉は耳に入っていないのか、彼女の口から零れるのは、誰にもとも知れぬ切ない嘆願。]
メイさんっ、しっかりしてっ!
[コーネリアスの、人狼の死を知らぬ彼には”大丈夫”とは言えなかったけれど。なんとか、現実へと帰ってきて欲しくて、その肩を揺さぶろうと手を伸ばして。]
………ぇ?
[ハーヴェイの告げた言葉と、それへ返すメイの言葉に凍りつく。]
[その問いはまた、自分にも向けられる。
ここを出て、どこへ?
ヘンリエッタは、法の上でアーヴァインの実子と認められたわけではない。認められるはずもない。
ここにいて良いと言った主がいなくなった以上、ここにいる理由も権利もない。]
―廊下―
[広間に辿り着いたのと殆ど同時、牧師より人狼――コーネリアスの死を告げられた。とりあえずは、終わったのだ。自分では何一つ、奴に食らわすことは出来なかったけれど。
そうして少女を伴い、自室に戻る途中]
……え?
[思いもしない言葉に、思わず立ち止まる。
或いは考えないようにしていたのかも知れない。敵の排除。そのことばかりを念頭に置いていた]
――残念ながら。
私にも分かってはおりません。
[首を横に振る]
うそだっ! うそだうそだうそだーーーっ!
[絶叫]
[彼を止めようとするギルバートの声も聞かず、部屋から転がり出て廊下を駆ければ――その先に、階段から転々と黒ずんだ何かがある部屋へと続いているのが目に入り。
よろめきながら入った部屋の中。ベットの上には、眠るような、否、永遠の眠りに付いたローズマリーの姿。]
ぃゃ…、ぃゃだーーーっ!!!
[目を瞑り、耳を押さえて。意識をも手放し、*現実を拒絶した。*]
後……?
……何かの……、
[ 間違いではと問おうにも、尋常ならざるメイの様子を見遣れば再び其れを思い出させるのは酷に思え、言葉を留める。
昨夜の神父の科白と状況、そして今メイが紡いだ名により誰が“人狼として処刑された”かは理解出来たが、]
……直接見た訳でも聞いた訳でも無いから解らない。
其れが本当だとして、若しかしたら、……傷の具合に依れば時間差でって事も、有るのかもしれない。
[続けようとした言葉は少年の絶叫に掻き消された。]
わかんない……わかんない……。
[ふるふると、首を左右に振る。
少年の絶叫も、今は、遠いもののようで]
いるのか、いないのか、わかんないけど……。
もう、みるのは、いや……きくのも、いや……。
……こわい……よぉ……。
[震える声が紡ぐのは、これまで言葉とする事を忌避してきた心情]
―広間―
[どれ位こうしているのだろうか。
時間の感覚などとうに失せていて。
静か過ぎる広間に一人
いや、誰かが居るのかも知れないけれど
其の全てを自身の感覚は拒絶しているようで]
『何故だ?何故ローズが死ななきゃいけない?』
[其れだけが頭の中、廻って]
………
[無言のまま
彼女の血で汚れたままの其の手を、ただ握り締めて]
[ネリーに合わせ、立ち止まる。
彼女の驚いたような顔を見るのは少し珍しい。]
……私がお金持ちだったら、ネリーを雇うのに。
[下唇を、緩く突き出して噛み締める。
自分一人さえ養うことができないヘンリエッタにとって、それが夢物語だと分ってはいたけど。]
ネリーはずっと、一人で働いていたの?
トビー……ッ!?
[ 彼の少年が緑髪の女性を慕っていたのには気付いていた筈なのに、其処に気に掛ける余裕は青年には無かった。駆け抜けていったトビーを止められず立ち尽くす男に、微か眉を顰めつつ視線を向け声を掛ける。]
……トビーを御願いします。
お嬢様が悔むことはありません。
[苦笑するけれど、その気持ちは嬉しかった。
小さく礼をするように頭を下げて、また足を進める。先程よりもゆっくりと]
…ええ。ここに来る以前は。
旦那様と2人きりでした。
[言いながら、彼は何故彼女をここに寄越したのだろうという念が頭を掠めた。
けれど、きっと何も知らなかったのだと思う。ずっと娘のように可愛がってくれていたのだから]
[ネリ−が歩き出すのに従い、自分も進む。
いつも忙しそうな彼女が、自分の歩く早さに合わせてくれるのが嬉しい。]
ずっと、働いて来たのね。
……私も、子供でも働かないと暮らしていけないような家だった。
だから、本当はお嬢様でもなんでもないのよ。
[ぽつりと、呟く。
恐らく自分はアーヴァインの実子でもない。
それを知ったら、ネリーはどうするだろう?]
……で。
[ 開け放たれた扉から震えるメイへと視線を戻せば、其の様子は先程迄とは打って変わり、大分ぞんざいな態度。]
お前、其れなら最初っからそう云え!
厭だ厭だって首振ってるだけじゃ何も解決しない。
……自分で行動しなきゃ意味が無い。
[ 其れは半ば己に云い聞かせる言葉か、吐き捨てるかの如き声には他者の気を遣う様子等無く、寧ろ無理にでも話を聞かせようと云うかの様に少女の細い肩に手が伸ばされる。]
はい。
旦那様に拾って頂いた時からずっと、…です。
[思えばこの口調もすっかり染み付いてしまったものだ。
働かないと暮らしていけない、という言葉に、本来労働は楽しいものではないのだろうと思う。自分にとってはすっかり普通のことになってしまったけれど]
そう、…でしたか。
……でも、お嬢様はお嬢様です。
[けれど、この目の前の少女は実の父親が大層な富豪でありながら、ずっとそういう暮らしをしてきたのだと、そう思うといたたまれない。
せめてもの微笑みを少女に向ける]
だっ……てっ……。
[厳しい言葉に、どう答えていいのかわからなくて。
言葉を捜すも、見つからず。
それでも、肩に伸びる手に気づけば、反射的にそれから逃れようとするものの、壁を背にしていて逃げ場はなく。
ただ、身を強張らせるしかできない状態に]
[聞こえて来るトビーの絶叫。]
[それに一瞬棒立ちになり]
[途惑い][混乱][惧れ][様々な表情が混沌と過ぎり]
[其処へ掛けられた声に]
[ハッとして思わず青年を見れば]
[笑み]
[何かを決意した表情で]
[少年を追い][急ぎ部屋を飛び出す]
[叫び声のした方へと奔れば]
[点々と廊下に落ちた][血の痕]
[それは]
[もう一つの][扉開かれた部屋へと続く]
[唇を引き結び、駆け込む]
『いったい誰がやったんだ?』
[座り込み、ただ黙って考える。
時間だけは有り余っていて]
牧師…いや、神父だったか。彼は…違うだろう。
メイは本物だ、だから違う。
あの、怪我をした男は…?俺が様子を見に行った時抵抗した力は強かった、けど。…あの状態じゃあんな事は出来ないだろう。
ネリー、ヘンリエッタ、ウェンディ……ローズをあんな所まで運んで行けるだろうか?
ハーヴェイは…?
……運んでいく必要などないんじゃないか?あの場所まで連れて行ってそこで…あぁ、それじゃ……
[ふと思い出すのは、ローズを慕っていた少年の姿]
[眠るように横たわる]
[女の]
[骸]
[血臭と死臭]
[蒼褪めた横顔][昨日会話した]
[美しい女性]
[固く眼を閉じ][両手で耳を覆った]
[床に倒れた少年の姿]
……。
[ 身を強張らせるのに気付けば伸ばし掛けた手を下ろし、小さく吐息を零す。]
だって、も何も。
じゃあ、どうすれば好いって云うんだよ。
[ 如何して好いか解らないのは此方も同じで。]
…まさか、あいつには殺す理由がない。もしそうなら、何故俺じゃない?
[いつかの、こちらに向けられた目を思い出す。
険をもった、睨むような瞳]
……何故、俺じゃない?
[そうすれば手に入れられたかもしれないのに?
ふと、思う、自分が子供の頃に思った事
手に入れられないものは、壊してしまえば良い
子供特有の我儘]
………まさか。
[あの無邪気な様子からは想像がつかなくて、でも
無邪気ゆえの残酷さは、自分も知っている事]
……っ
[笑顔に胸が痛くなる。自分はこの人にそう呼んでもらえるようなお嬢様なんかじゃない。
ただの狡い子供で。
『私が来たばかりに、あの人を傷つけた』
まだ手に残る感触。恐怖の記憶。
あれは、自分に対する憎しみ。自分が来なければ、アーヴァインが襲われることなどなかったのではないか。
幸せそうな肖像画の女性と、よく似た青年が目蓋に浮かぶ。
ぽろりと、少女の瞳から涙がこぼれた。]
[触れられなかった事に、ほっと息を吐いて、力を抜く。
肩から力が抜けたためか、肌蹴た襟元から胸の上の異質な紅い色彩が覗いているが、それには気づかずに]
……霊視の力からは……逃げられない……から。
ひとがしなないように、するしかない……けど。
それこそ、どうしていいか、わかんないよ……。
[何とか少年の泊まる部屋に運び込み]
[寝台の上に寝かせる]
[最早習慣となった様に][上掛けを書け]
[恐々とした手つきで][着衣を緩めてやり]
[寝台の端に腰掛け]
[意識を喪った儘の少年を見守る]
まさか…いや、考えすぎだ、きっと。
[そこまで考えて、気付く]
そういえば、コーネリアスは…?
彼を処刑する、と、人狼だと言っていた。
……彼がもしそうなら、終わるんだろうか…?
ローズ、教えてくれ…君を傷つけたのは…誰だ…?
[そういって手を組み額を伏せる。
じっと、考え込むように]
[赤毛の少女の頬を伝うものが、最初何だか分からなかった。
きらりと僅かな灯りに反射し落ちていく…雫]
…え、あの。如何、されました?
何か失礼なことを申し上げましたか…?
[少女の涙を流す理由が彼女には分からなくて、ただただ戸惑う]
……止めればいいだろう。人が、死ぬ前に。
[ 黒曜石の双瞳を伏せながら呟いた台詞は酷く単純な事。]
そんな簡単に済めば苦労しない、ってのは解ってるけどな。
何もしないよりはずっとマシだ。
[ 外方を向け不機嫌そうな顔をした青年は、其の色彩には未だ気付かない。]
止める……。
[それは当たり前の事……否、当たり前すぎて。
逆に容易く無い事なのだけど]
……ボク……は……。
[言いかけた言葉は。
何故か。
途中で途切れ]
……なんで…………ローズマリーさんだったんだろ、ね。
[代わりにこぼれたのは、こんな呟き]
[ネリーを困らせているのが分ったけれど、何も答えられなかった。
自分の狡さを曝け出すにはまだ怖くて。
ただ、首を降って、彼女の所為じゃないのだと示す。]
ごめんなさい。
なんでもないの。
私なんかにそう言ってくれて、ありがとう。
[この人を疑わないで済んで良かったと、心から思った。]
[呟いた後でハッとして顔を上げる]
そんな事、ローズは望んじゃいないよな…?
[苦笑して
自分の姿に今更気付く]
これじゃ俺が殺したみたいだよなぁ……
[ローズの血に塗れた己の姿。
だけど、着替える気にはなれなくて
そのまま、また深く黙りこむ]
[ 途切れた言葉を問う前に零れた疑問の呟きに其処に迄考えが至らなかったと云うように口許に手を当てる。]
……さあ、な。
コーネリアス……さんが人狼、だったのなら矢張り、アーヴァインさんの縁者だったから……?
[ 顔を上げれば、目に入るのは衣服の合間に覗く紅。黒の瞳が緩やかに瞬かれ、]
其れ……?
そう、ですか?
何かありましたら、遠慮なく仰ってくださいね?
[心配げに少女の目線に屈んで、右手の人差し指で涙の後を拭うように触れる。
手袋には未だあの鍵の錆が付着したままだったから、その臭いが少女の鼻先を掠めたかもしれない]
―広間―
[処刑後、報告を終えてから傷の手当てやウェンディとのチェスやらで時間を潰し。
ようやく、この時間になって広間にやってきた。]
……ナサニエルさん。
遺体の発見状況を詳しくお聞きしたいのですが。
[ナサニエルに近付き、話を聞く態勢に。]
……ん……そう、なのかな……。
[それだけで、殺せてしまうのかと。
ふと考えてしまったのは。
銀色の髪の人に対して抱いていた親しみ故か。
しかし、それ以上の思考は、投げられた疑問の声のために、続かず]
それ……って……?
[言われて初めて、気づく。
力の印と呼ばれる、真紅の百合が、人目に触れていたと]
あ……。
[思いっきり感じる、やらかした、という思いに急かされつつ、襟元をかき合わせてそれを隠す]
[頬を拭う手がやさしくて、ますます涙が込み上げた。
慌てて鼻を啜ると、涙の塩辛さに混じって金属の匂い。
不思議に思ってみれば、白い手袋には錆のあと。
それが何を意味するのか、少女にはわからず首をかしげる。]
[不意に掛けられた声にびくっ、と身を震わせ。
声の主を知れば安心して。
だけど訊かれた言葉には少し悩みながら、ぽつぽつと]
発見状況、ですか?
ローズが倒れていたのは外の…吊り橋があったそばの…木の下でした。
…彼女の様子も言わなきゃいけませんか?
[思い出す、あの姿は、できれば誰にも知られたくなくて]
[『悪夢は終わらない』。
この事だったのだろうか。]
……そうだ。私が知りうる、ローズさんに関する情報をいくつかお教えしましょう。
ですから、遺体の損壊状況も詳しくお教えください。
今は、一つでも多くの情報が欲しい。
[ルーサーの言葉に頷く。
本当は思い出したくなかった、けど]
…まず、顔には一切傷はありませんでした。
だけど…胸の、ちょうど心臓にあたる場所に木の枝が楔のように。
そして……腹が食い破られた状態でした…周りに…散らばって…
でも、それだけでした。
外の部分には傷一つ無い…
俺の部屋に居ますよ…ご覧になりますか?
今回の人狼は酷く猟奇的な所業を行いました。
私は最初、それを『人狼の本能』で片付けてしまう所でした。
しかし、実際は違う。
『置かれたパーツの場所』ではなく、『パーツが置かれなかった場所、その理由』について考えれば容易に謎は解けた。
つまり、今回も。
遺体の状況を総合すれば、何らかの情報が見えてくる。
そう言う事ですよ、ナサニエルさん。
[ぽん、と。ナサニエルの肩を叩く。]
…さ、今日はもうお休みになってください。
連日お疲れでしょうし、ね。
[立ち上がり、後頭部の辺りに手を当てる。少女の不思議そうな様子には気付かなかった。
そのまま部屋へと促して、自室へと*入った*]
―廊下→自室―
[ 其の花から視線を逸らす様にして再び顔を俯かせる。前髪が顔を隠し其の表情は見えまいが薄い口唇は固く結ばれ、躰は微かに震えを持つか。]
ええ。見ましょう。案内してください。
……書置きを残しておかないと、ね。
流石に、肉料理を食べる気にはなれませんから。
[こんな時でさえ、少々冗談めかして。
さらさらと、簡潔に一文を残す。
『肉、魚料理はいらない。野菜、果物類のみで。 ルーサー』]
さあ、案内してください。ナサニエルさん。
遺体の、状況…?
そういえば、アーヴァインとは違って損傷が少ない気がする。
あの時は狂気さえ感じたけれど、今回は…
何か狙いがあっての事なんだろうか?
[そうしてふと先ほどの疑問を思い出し訊ねる]
……そういえば、コーネリアスは?
彼は……
――広間――
[少女は、処刑後も片時も離れることなくルーサーの傍で時を刻む。
傷付けられた皮膚の手当てを見守り、約束のチェスに興じて――ほんの僅かに幸せな一時を過ごし。
今は、少女がこの屋敷に訪れた時、人の良さそうな笑顔を向けてくれた蒼髪の青年の話を、少し離れた場所から聞いている――]
やっぱり犠牲者は――出てしまったのね…。
[少女は途切れ途切れに聞こえる会話の端から、大人たちの会話の内容を推測する。]
[するり――]
[頬に掛かる髪が思い出させる――]
[カタリ――]
[かつての父と母の変わり果てた姿に。微かに眩暈を起し、少女は壁にもたれ掛かった――]
[ 深く息を吐いて顔を上げたときには既に何時も通りの青年に戻り、]
……変って失礼だな。
お前に云われたかないが。
[然う返す口調にも変化は此れと云った変化は見られない。]
……そう。
『遺体の損傷状況の違い』。
それこそが、一連の事件のキーになる。
私は、そう踏んでいます。
……やはり。
別の人狼が潜んでいる、というケースも想定しなければいけませんね。
コーネリアスさんですか?
私が処刑しました。
綺麗なものですよ、銃創は左肩と心臓の2発のみ。
ぱっと見ただけで、死んでいるようには見えないかもしれませんね。
……慣れたもんです。
[くす。自嘲的に笑う。]
[部屋に入り、ベッドの上の上のローズを示す]
…眠っているみたいでしょう?
でもね…
[毛布を引き剥がす
そこにあるのは惨劇の跡]
酷いもんでしょう…どれだけ、苦しかったか……
[返ってきた反応はいつも通りで、それに安堵するものの。
何か、妙に引っかかるものは感じていて。
ただ、それが何、と言葉に表すことはできないから、一つ息を吐くに止め]
むー、それ、どういう意味っ!?
……一応、心配してるんだからねっ!
[上目遣いに睨みつつ言葉を投げる様は、ようやくいつもの様子を取り戻しつつあった]
ー早朝ー
[昨夜は遅かったにもかかわらず、その日の目覚めは早かった。
泣いた所為か、少しだけ目蓋が晴れている。
けれど、もう誰も疑う必要はないのだと思うと心は軽い。
相変わらず、ヘンリエッタが起きる頃にはもういない部屋の主を思い、小さく頷いた。
寝具を整え、身支度を整えると部屋を出る。]
ご協力感謝します。
ウェンディ。辛いかもしれませんが、一緒に来てください。
貴方を一人で置いていくのは、危険な気がして。
[ウェンディの手を引き、共にナサニエルの部屋へ]
―広間→二階・客室(ナサニエルの部屋)―
彼以外の人狼が…?
ローズを殺したのは彼では無いと、終わらないと、そう言う事ですか?
[だとしたら誰が…先ほどの考えが廻る]
これは……ひどい。
[遺体の惨状を一通り確認する。]
腹部の損傷が一番酷い、か。
内臓……全部纏めて、ぶち撒けられていた。
そう考えていいですね?
[呼びかけられると、少女は一つ頷き、ふわりと微笑んで――]
お供いたしますわ、神父様――
[それだけを述べると、手を重ねて…]
――広間→ナサニエルの部屋へ――
[どの位然うして居ただろうか。]
[空腹を覚え、昨夜トビーが持ってきてくれた食料を少し摂る。]
[目覚めたらば少年も又食べられるかも知れないと]
[半分程を残し]
ええ、この分だとアーヴァインを殺した人狼とは別物ではないかと。
……ナサニエルさん。
単純に皆殺し、などとは考えないで下さい。
全員から情報を総合しなければ、判断がつかない。
もし、片っ端から殺戮を始めるおつもりならば。
[『聖書』からリボルバーを取り出し、銃口を彼の額にポイント。]
次の処刑者は、貴方になる。
御互い様だろうに?
[ 何時の間にか自らの腕を掴んでいた手は離され、メイの云い様に口許に軽く折り曲げた指を当てて小さくクスと声を洩らす。]
……まあ、其れだけ云えるようになりゃ、大分マシだな。
[ 僅か目を細め口端をニィと上げて笑う様子は悪戯っぽく。]
…えぇ、ほぼ其の通りです。
かなり食べられているようでしたけど。
周りに散らばっていた物は出来るだけ拾って……
[思い出したのか、言葉に詰まって]
まあ、お互い様だけど……。
[むう、としたままこう言いはすれども。
多分、自分の方が色々な意味で周囲に負担をかけた気はしていて]
……ごめん、ね。
なんか、一人で騒いでる。
あはは……みんなにも、ちゃんと謝らないと、だね。
[笑みを浮かべて言葉を綴る様子には、大分力が戻っていたか]
――ナサニエルの部屋で――
[案内されるまま、少女もルーサーの後に続き足を踏み入れる。
ベッドに横たわる美しい女性の姿が目に入り、少女は静かに目を閉じ、自らは捨ててしまった神に祈りを捧げた――]
せめて彼女だけは――安らかに…
[『眠っているよう――』
その言葉と共に毛布は、剥ぎ取られる。
途端に鼻を衝く異臭と――機能を失った内蔵の欠片が、無造作に体の中に納まっていた。]
――なんて…酷いことを…。
[薄紅色の唇は、ただその一言だけを漏らす――
それ以上言葉を紡がなかったのは、近しい人を失った者に掛ける言葉なんて無いことを、少女自身がよく知って居るから……]
……ナサニエルさん。
これは推測に過ぎないのですが。
犯行の動機に『ローズマリーさんの職業』が、関係しているかもしれません。
もしそうならば、『必ず食われなければならない内臓』が存在すると思うのです。
[銃をしまい込み、猟奇的な事を淡々と口にする。]
[銃を向けられ、其れが正確に額を狙っていると知り手を上げて]
聞いてたんですか?
もちろん冗談ですよ…そんな事をしても彼女は喜ばない。
彼女のもとに行くには早いでしょう?
仇を、討たないと。
でも、俺が人狼かも、とは思わないんですか、貴方は?
……ああ、すみません。
昨日、ローズさんから色々聞いたのですよ。
彼女の職業について、最初に誰を占ったのか、次に占うつもりだったのは誰か、を。
あれが最後の会話になるとは思わなかったのですが、ね。
……仕方無いだろう。
誰にだって、抱え込んでいるものはあるからな。
[ 謝罪の言葉に物珍しそうに――半ばからかうように――瞬けば、態とらしく肩を竦めて然う返す。視線が逸らされ何処か遠くへと向けられるも其れも一瞬の事。]
取り敢えず俺は、ルーサー神父に話を聞いて来るから。
[ 軽く埃を払って立ち上がれば、開かれた儘の扉の外へと向かおうと。]
……ああ。
[破顔する。]
私がローズさんに言った事と全く同じですね。
それはありません。
ローズさんは、真っ先に貴方を占った。
『信じたい』と思った、貴方を。
……そのうえでなおも一緒にいるのです。答えは明白でしょう?
[くすくす笑う。]
[からかいを帯びた仕種にやや、むぅ、とするものの、一瞬そらされた視線に戸惑い。
でも、その理由は何となく聞けずに]
あ……うん。
それがいいね。
[話を聞いてくる、という言葉に頷いて。その背を見送りつつ]
……ありがと。
[消え入りそうな声で、小さく、ぽつりと呟いて]
[ローズの仕事…それを思い出し少し目を伏せる。
自分はそれを気にしなかったけれど]
『喰わなければいけない内臓』……?
[そう聞いて、考える。
女性特有のもの……]
…子宮、ですか?
俺、そういう難しい事は知らないけど…
[それは果たしてどうだったかまでは思い出せず]
……そう。
おそらくはそれを隠す為に、他の内臓も食い散らかしたのでしょう。
…………だとすれば。
『その職業』に何か因縁のある人物か、コンプレックスのある人物。
そういった犯人像が見えてくる。
と、思うのです。
まあ、ローズさんが他に何処かで恨みを買っていると言うのなら話は変わりますが。
……おっと、殴らないで下さいよ。お年寄りなんですから。
[肩を竦めて。]
…占った?俺を?
それじゃ、ローズが……俺を、信じるために?
つまり、俺は人だと認めてもらえたと……?
貴方は、俺を殺さないと…?
[驚きと、そしてローズの思いに、声が震えて]
どーいたしまして。
[ 背を向けて答える声は素っ気無く、軽く手を振ってメイの部屋を後にする。
――其の後には神父への報告や昨夜の顛末を聞けば大分時間は掛かり、自室で休息を取っていれば、すっかりと夜の帳は下りていた。]
殴りませんよ…こう言う事です
[にやりと笑ってホールドアップ、すぐに手を下ろして]
其の職業に、ですか…でも俺には心当たりがないな…
貴方にはあるんですか、その…心当たりは?
ええ。
彼女は自らの命を賭してまで、貴方を信じようとした。
ただ、次に占う予定だったのがトビー君だった。
その理由は、結局分からないままなのです。
ナサニエルさんを占った理由と同じだったのか、それとも別の意図があったのか……。
[眉間に皺を寄せ、考え込む仕草。]
それを今必死で思い出しているのですよ。
この歳ですから、記憶力が著しく低くなっていてね。
……もし、私に何かあったら。
ウェンディをよろしくお願いします。
そして。私の情報を元に、事件の解明を。
[ナサニエルの両手を握る。意外に力が強い。]
−客室−
[――どれくらい気を失っていたのか。
鈍く痛む頭を抱え、よろりと身を起こせば、そこは馴染みつつある部屋のベットの上で。
ぼんやりと、生気が欠けた瞳で辺りを見回して。]
[ふと座っている寝台の微妙な振動に気付き]
[動き出す気配]
[見ると、少年が身を起こす所で。]
……気がついた?
[顔を覗き込む様に声を掛ける。]
トビーを?
[ルーサーが考え込むのを見、此方も考え込む]
トビーは怖がりだから、占って人だと証明できれば…そう思ったんじゃないかな…。
それにトビーは彼女を慕っていた。
信じたかったんじゃないかと、俺は思う。
[服の袖を掴んできたウェンディを見て。]
……ふふ。こんなに弱気じゃいけませんね。
天下の異端審問官とあろう者が。
しかし、私の言葉に不信感を感じている者は少なくないようです。
何せ、武器庫の鍵も一時的に誰かが持ち去ったようですからね。
おそらくは、武器を手に入れるために。
[ウェンディの頭を、わしわしと撫でる。]
何かあったら、って、そんな…
[握られた其の強さに、何かの決意を感じて]
…分かりました。
でも、俺が生きている保障もありませんけどね。
[窓辺にぼんやりと佇み、夜空を見上げる。
視線は空。
右手は左の胸に浮かぶ真紅に静かに触れて]
……止める……か。
でも。
結局そのためには、殺さなきゃなんないのかな……?
それすら嫌だって言うのは……わがまま、なのかな?
[呟くような声。
答えの出ない──否。
答えにたどり着きたくない、自問自答が続く]
[傍らの気配と掛けられた声に、そちらを見やり。覗き込まれた瞳に少し生気が戻る。]
……お兄さん…? ボク…どうして…。
[額を押さえるように手を遣り、顔をしかめて。思い出そうと。]
……何の為に、ここに3人いると思っているのですか。
[ウェンディの頭を、撫でる。]
人狼は残り一匹。処刑は一日一回。
つまり、私達がその両方の対象になったとしても。
[言葉を切る。]
一人残る。
その一人が、他の方と連携を取る事が出来るのですよ。
わかっていただけますか?
[とはいえ、死にたくないというのも本音なのですよ。と笑う。]
[少年の生気に欠けた瞳に][その顔が険しくなり]
[思わしげな][気遣うような][心配そうな]
[面持ちで其の様子を伺う]
トビー。
[幾らか反応しはしないかと]
[撫でられれば。その手の大きさに瞳を上げて――]
武器を手に…?
神父様が…いるのに?
どうして――?
どうして人は…嫌なことは皆押し付けて…自分の身だけを護ろうとするの?
そんなの…そんなのって…神父様がっ…!
[堪えきれずに吐露した感情は、その円らな瞳から一筋の雫を誘い出し――]
-廊下→玄関-
[そこを差し掛かる時、少しだけ躊躇した。
昨日の夜、扉の向うから漏れ聞いた哄笑。蝋燭に浮かび上がる銀の髪の青年と、その後ろで微笑む良く似た肖像。]
貴方のこと、幸せそうだと思ったの。
[肖像に向かい、ぽつりと呟いた。]
と言うわけで、ですね。
武器庫の鍵を使っていた人物なのですが、はっきりとは分かっていません。
しかし、状況その他から絞込みは可能です。
まず、私とナサニエルさんは自前の武器がある為除外。
そもそも私は長期間鍵を持っていたのですから今更隠す理由がありません。
次に、ウェンディを含む子供達ですね。
入ったとしても、使えるような武器がないのですよ。よってこれも除外。
そしてメイさんとハーヴェイ君ですが、メイさんは人の命が失われることに敏感です。
積極的に武器を取るとは考えにくい。
ハーヴェイ君に至っては「武器庫の鍵を知らないか?」とまで聞いてきた。
よって、この二人も除外出来るのです。
さて、後に残るのは……どなたなのでしょう、ね?
[くす。]
[少し生気を取り戻した様子に]
[ホッと][安堵したかの様な吐息]
君はたおれた。つかれてる。休まないと。
何か食べる?食べられる?
[少年に柔らかく声を掛けながら]
[少しだけ亦、発語が滑らかになっていっているのは]
[本人は気付いているのかどうか。]
―ニ階・客室 現在―
[ 文机に頬杖を突き闇に包まれた天を見上げ、周囲置かれた本や手帳は開かれた気配も無い。茫とした視線を卓上へと落とし、]
……あーっと、灰捨てにいかないとだ……。
[朝から放置した儘だった器の中、未だに降り積もった灰に溜息を吐く。]
[表情を険しくした青年には気付かずに、]
「トビー」
『そう、お兄さんが呼ぶ声が聞こえて。あれはどこだっけ?』
…そうだ、メイさんの様子が変で。あれはなんで……
[フラッシュバック]
嫌な事を押し付け合い、保身を図る。
それが、人の弱さなのですよ。
克服出来る人もいれば、出来ない人もいる。
そういうことです。
皆が皆、手を取り合って。
……世界で一番難しい事、なのですよ。
[ウェンディに、暖かい微笑を向けて。]
なるほど…。
残った者が、俺達のこの情報をもとに……
出来れば貴方には生きていて欲しいんですけどね、俺。
そんなに甘くはないですか、人狼は。
[肩を竦める]
ローズを見つけた時は、本気で手当たり次第とか思ってましたけどね。
[本心は、少し冗句の色をつけて]
[掛けられる柔らかな声は、耳を素通りして。
否、その柔らかな響きが、亡くなった優しいあのお姉さんの記憶を掻き立てたのかも知れず。]
[ぎゅぅと目を閉じて、身体を硬くして。]
―厨房→広間―
[あれから既に日は昇り、また落ちて。
今日もまた厨房でスープを煮込む。小皿に取り味見をするその表情は心なしか暗い]
……
[少し大きめの侍女服の上から足の辺りに手を滑らせる。そこには武器庫から持ち出した短刀。
それから、袖の辺りにも触れ]
……護らねば。
[吐息に混じらせ、小さな呟きを洩らした]
はあ……。
落ち込んでても、仕方ない、や。
ん、気分転換、気分転換っ!
お湯使わせてもらおーっと。
[ごく、軽い口調で言いつつ。手早く準備を整え、下へと向かう]
ぁ、あ。
[もどかしげに少年を見やるが]
[自身も又][呼吸が速くなり][立ち竦んだ儘]
[如何して良いのか分からない、と言った様に]
[武器庫の鍵を使ったのは…]
残る二人、ですか……
[名前の上がらなかった二人を思い出して]
どうなんでしょうね…。
[呟いて、だけど其の言葉は記憶に留めて]
…自分が苦労したくないだけですよ?
[そう言ってにやっと笑って]
俺も世間じゃ異端者ですから。
似たもの同士なんじゃないですか?
[少女はルーサーの言葉に、静かに頷いた――]
知ってます。人の弱さも…。
そして――人の愚かさも…。
だけどっ…神父様に頼りきりなんて…不条理すぎて……神父様だって同じ――
[と、そこまで言って口を噤む。人と言い切れないのは己の弱さか――?]
[軽い自問自答。そして首を振る。
信じると決めた――。目の前の彼がたとえどんなだろうと、自分だけは彼の事を信じると――
そう決意をして。少女は再び口を開く――]
――同じ…人間なのに…。
[はらり――]
[金糸が頬を伝い――]
[少女は改めて自分の無力さに、歯痒い思いを抱く――]
―一階・厨房―
[ 灰皿を片手に厨房へと入ろうとすれば緑のお下げ髪の少女の姿。僅かに表情が暗い様に見えたのは気の所為だろうか。]
今晩和。
[ 然れども普段と変わらぬ声――先日武器庫で顔を合わせた時のように――で、]
済みません、少々使わせて頂きますね。
[少女の挙動を見ていたのかいないのか、解らぬ様子で中へと入る。]
[手の中に、硬い感触を得た途端、膨れ上がった感情に名を付けるのは難しくて。ただ、考えるよりも先に身体が動いて。]
………ぅわぁーーーーっ!
[何処にいるのか、確信などなかったけれど。
あの部屋にいなかったから――広間を目指して、駆け出した。]
…………!…………!……!!
[叫んで駆け出して行く][少年に咄嗟に反応できず]
[声を掛けようとする仕草][しかし]
[言葉は出ず][喘ぎが喉を]
[
――ッ
…ああ、……こんばんは。
[弾かれたように顔を上げて、青年の姿を見ればいつもの如く会釈を。
声は聞かれただろうか?
鍋をかけていた火を止める。南瓜の甘い香りが仄かに香った]
−→広間−
[――飛び込んだ、その場所に”あいつ”はいた。
お姉さんは死んだのに、生きて。にやっと笑みさえ浮かべて。]
……なんで! なんであんたがっ!
[感情のままに、叫んで。身体ごと、ぶつかっていく。]
[ルーサーの言葉に、少女は――]
どうして…?
どうして大人は…皆…生き急いてしまうの?
――父のように…母のように…。
[そう呟くと、少女は天を仰ぎ――]
あぁ神様。
私は――
神父様と一緒に生きて……
この屋敷から出たいのに。それすら――
願ってはいけないことなのでしょうか…。
[涙を拭わずに――]
[そっと呟いた]
ええ、行きましょうか。ナサニエルさん。
あのメンバーの中に人狼が何人いるのかと考えるとぞっとしないけれど、ね。
[大仰に肩を竦めながら。]
私も、それは同じなのですよ。
生きて、貴方と共にいたい。
……けれど、罪深き私には。過ぎた願いなのでしょうね。
[意味深に笑ってから、ウェンディを連れて広間へ。]
[ 驚いた様子のネリーに瞬くも、青年の顔に浮かぶのは柔らかな微笑。会釈を返せば鼻腔を擽る香りに僅か目を細め、]
好い香りですね。何時も有難う御座います。
[然う声を掛けて、少女の横を通り過ぎれば灰皿の中身を塵袋の中に捨てる。]
-肖像画前-
[蝋燭の光ではなく、太陽の光のもとで見る肖像画は無惨に額を打ち抜かれている。
歪んだ笑顔を汚す、僅かな血痕。
人狼の血も、赤いのだ。
ヘンリエッタは眩しげに目を細めると、扉を開けて外に出た。]
―→広間―
[広間に戻り漸く一息と思った矢先
叫び声
振り返る、きらりと光る何か、飛び込んで]
……つっ……!…
[何かが当たる感触、それは体まで届かずに]
……トビー…何で、お前が……
[それでも衝撃はかなりの物で、息が詰まる]
[意味深に微笑むルーサーの姿に、少女は袖口で涙を拭って――]
そんなことは無いです。
生きて罪を償うことも…出来ましょう――
そのことは、神父様?あなたが一番知っておいででは有りませんか…?
[さらり――]
[金の髪を揺らせば]
[ふわり――]
[スカートの裾は翻り]
[少女はルーサーの手をしっかり握り締めて]
――ナサニエルの部屋→広間へ――
いいえ。お仕事ですから。
皆様のお口に合っていると良いのですけれど。
[相手に返すのはやはり微笑み。
食器は既に広間に並べてあるから、鍋をそのまま広間に持って行こうと扉の傍へ。
武器庫のことに触れぬのは若干気にかかっていたけれど、やはり自分では触れない]
―広間―
……っ?!
何をしているのです、トビー君。
彼に何の罪があると言うのですか?!
[遅れて広間に到着、目にしたものはその惨状。]
[ 扉へと向かう少女の表情は見えず、器を手に流し台に立つ青年の表情も叉見えない。蛇口を捻れば冷たい水が音を立てて流れ出る。]
……其れは誰かを護る為のものですか?
[ パシャリという水音に、其れとも、と続いた声は隠れるか。]
─…→広間─
[走って行った、影を、追いかける]
『やだやだやだ』
[頭の中を巡るのは、この言葉だけで]
『ダメだよ、キミは……そんな事したら……』
[なら、誰ならいいのかと聞かれたなら、返事に窮するだろうけど、でも。
そう思わずにはいられなくて]
[自身に怪我はない、だけど理由が分からない]
どうして俺を狙う?
俺がローズを守れなかった事への怒りなら、それは筋違いって物だろう?
それとも、俺が生きていると困るのか?
お前を、疑っているから…。
[目の前の姿に淡々と]
ナサニエルさんは人狼ではありません。間違いなく人間です。
落ち着きなさい、トビー君!
[つかつかとトビーに近付きナイフを取り上げ、平手打ちを。]
ー玄関前/外ー
[外の日射しを受けて、辺りを見れば、焼け落ちた橋が目に入る。
人狼はいなくなったのだから、どうにかして外と連絡をとればここを出ることはできるだろう。
このまま出られなければいいと、心の隅で思ったのはお下げの少女の所為。
少しだけ泣きそうになりながら、ヘンリエッタは玄関前の階段に視線を落とすと、注意深く降りようとした。
その視線が、階段に点々と残る赤いものを見つける。
それはどう見ても、血痕で。
追って今出た館を振り返れば、玄関の先が何か騒がしいことに気づいた。]
好きな奴を守れなかった、それは罪。か…?
守るといって守れなかった俺は……
お前に憎まれても仕方がないのかも知れないな。
[自嘲。
トビーを見つめたまま、手は無意識に隠したそれを探る
自分を守る為に]
[何が起きているのか、理解できない。
いや、したくないと言うべきか。
ただ。
わかるのは]
……やめてよ……こんなの、なんか、おかしいよ……。
[ただ、それだけで。
扉の側に、ずるりと座り込む]
[――ぴたり。
扉の直前に足は揃い止まるけれど、彼女は振り返りはしない]
……いいえ。
奴等を――人狼を排除するためのもの、です。
[…そう、足に隠したほうの“それ”は。
まだ残っているかもしれないと告げられた、奴等に向けるための。
地面に目を落とし、低く低く呟いて。
そのまま広間へと、足早に歩いて行く]
あんたが、生きているからだ!
『ローズマリーさんは、死んだのに』
あんなに傍にいたのに、なんで!?
『あんたが襲ったんじゃないのか!?』
あんたが、 しなせたんだ…っ!
『襲ったにしろ、守れなかったにしろ――あんたのせいだ』
-玄関/館内-
[ヘンリエッタは、恐る恐る室内に足を踏み入れた。
先ほどは光の関係で気づかなかったのだろう。血痕は点々と奥へ続いている。
コーネリアスの物ではない。
彼は、館を出ること無く死んだ。
では、誰が?]
[振り上げられた拳を避ける事無く
ただ、彼の様子を伺う
じっと、見つめて]
俺を憎んでも終わらないぞ…?
俺は人狼じゃない。
ローズが証明してくれた。
[それでも、今は彼の動きを探って]
……然うですか。
[ 答える言葉に感情の色は見えない。]
俺は口ばかりで、何方を選ぶ事も出来ない臆病者ですから。
武器を手に取る其の勇気すらない。
[ 広間から聞こえて来た声に流水を止め顔を上げれば、黒曜石の双瞳で少女が出て行くのを見送る青年に浮かぶのは苦笑か。然し視線は直ぐに僅か横に逸らされ扉の向こうに、意識は広間の方へと向けられた。]
何の騒ぎだ?
[ 訝しげな響きを持った呟き。濡れた灰皿は其の場に置いて、厨房を出る。]
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