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探偵 ハインリヒ に 2人が投票した
シスター ナターリエ に 1人が投票した
研究生 エーリッヒ に 9人が投票した
ランプ屋 イレーネ に 2人が投票した
研究生 エーリッヒ は村人の手により処刑された……
次の日の朝、探偵 ハインリヒ が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、教師 オトフリート、神父 クレメンス、少女 ベアトリーチェ、少年 ティル、陶芸家 アマンダ、貴族 ミハエル、小説家 ブリジット、騎士 ダーヴィッド、シスター ナターリエ、ランプ屋 イレーネ、職人見習い ユリアン、青年 アーベルの12名。
[鐘の音とともに、大きな力のうねりが、二つの存在を呑み込んだ]
[一つは、今まさに、裁きの本性のままに、力を高めていた雷撃の主、そしてもう一つは、穏やかに時を過ごしていた、陽光の楽師]
…まー、普段から有り余ってっから、すこし、やすめば……
[だるそうになんとか言葉を返した、その時に…]
な…これっ…!!
[街中をざわめかせる力。
捉えるように、引き込むように。]
[鐘の音が響いた。]
[真っ先に、それに気付いたのはブリジットだったろうか。見上げた夜空から、目に見えぬ、それでいて圧倒的な大きな力のうねりが迫って居て]
[まるで、大きなうねりが目に見えたと錯覚するばかり]
な…
[計らずとも、遠くで対のものがあげたのと同じような声をあげ]
[強く、ブリジットの腕を引いた。]
[濁流の激しいうねりの様なモノを感じ取りながら、彼は立ち尽くしていた。]
[ナターリエの言葉に、やっと我に返り。]
あぁ…そだね。
ひとまずこの子休ませないと……。
[意識を失ったのは自分の身を守るためでしょうか。力の影響を受けた様子もほとんどなく、ベアトリーチェは昏々と睡り続けているのでした。]
─北東・森林─
有り余っているというのも、ある意味どうかと……。
[火炎の若竜の言葉に、呆れたような声を上げたその矢先]
……っ!?
これは……。
[感じた波動に、はっと夜空を振り仰ぐ]
……結界の力……かっ!?
えっ……あ、いやっ!
[思わず悲鳴を上げた。
対となる陽光の気配が一気に希薄になってゆく]
あぁっ!
[傍でもう一つ。気配は薄れて]
や、ぁ、っ!
[取り乱しかけた所でミハエルに強く腕を引かれた。
ハッとして正気に戻る。
ここで取り乱してしまったら]
だめっ!
[必死に空気を宥め始める。
一度崩れた均衡は、それだけで元に戻ったりはしないけれど]
ー西の桜ー
[目の前で消えたハインリヒの姿に、軽く目を見開く]
これはまた…厄介なことになりましたねえ。
[どこかのんびりとした口調]
[その時、時計塔が荘厳な鐘の音を鳴らす
そして、綻びが臨界を迎えたと感じた瞬間、違和感として感じていた対の気配が消滅した。これは]
あの楽士さんが消えた? いえ、綻びに飲み込まれた?
[どういうこと、と動揺]
[しばし呆然としていたが、気を取り直すと]
……とりあえず、ベアトリーチェを横にさせる方が先決ですね
アーベルさん、こちらに
[そう言って教会の中に]
―西の桜―
[「地と風がドンパチ」発言で目をそらしたものの、
空から圧倒的なナニカが近くに落ちてきて。
慌てて振り返った瞬間、そのナニカはハインリヒをからめ取り、そして「消えた」]
……!!
[驚きで声がでない。へたん座り込んだ]
遺跡でのものと…同じ。
[引き込まれぬように、その力に抗おうとした矢先]
[歪みの矛先は目前の男へ向かい]
[咄嗟に掴んでいた手を離して]
お前一人が焦って抑えきれるものなのか。落ち着け。
[乱れた空気に呷られぬよう、器の内に冷気を満たし]
[地を踏み締める]
[全然困ってないようなクレメンツの様子にいらり]
[立ち上がるとクレメンツに詰め寄り]
ていうか、あんた人が一人目の前で消えたのに、
なんでそんなに平然としてられるんだよ!
[クレメンツの襟ぐらをつかんんで、がしっと桜の幹に押し付けた。]
き、消えちゃった。
陽光の、エーリヒさんの気配も。
[先にそちらを感じ取ってしまったのは、やはり自分と親しい属性だったからだろうか]
そう、おじさまと、一緒。
[小さく震えながらもミハエルに肯いて]
全部なんて無理。でも少しでも安定させないと。
[その視線は意外にもしっかりとしたものだった]
[ユリアンに詰め寄られ、幹に押し付けられても、動じず]
いえ、人が一人と言われましても、まあ正直、私は人ではありませんので、今ひとつ実感が…申し訳ない。
[ゆっくりと、ユリアンの腕を握って、襟元から外そうとする。穏やかな動きだが、その力は強い]
それに、私のようなものが、動揺しては、この街そのものの平穏が危ない。
そうしたものなのですよ。
[礼拝堂の長椅子のひとつにベアを寝かせるようお願いしたあと、倉庫から毛布を持ってきてベアに掛けてあげる
アーベルからの問いに]
……ええ、おそらく
行き先はわかりませんが、此処ではない何処かへ転送されたという感覚でした
[対のあらぬ力はとどまることを知らず、
崩れたバランスをさらに崩してゆきそうな己の力に
苗床はただ一つ、それしか方法を選べないことを悟る。
もう少し壊れていなければ、他にも考えられたのだろうけれど。]
ケイ。
――出て来い
[その命令に茎が、枯れた右腕の中から現れる。
同時にできた、空白。
力の器の空白にめがけ、翠樹の力が入り込む。]
陽光と、雷撃…。
お前まで巻き込まれたいのか。
[言ったものの、”支える”事が出来る訳でもなく、ただ己を保つ事が出来るだけだから、ブリジットのする事を見ているしか無い]
[ユリアンと、クレメンスの様子も気掛かりで]
[相変わらずのんびりしたクレメンツに口調に...の勢いは削がれ、手を離す]
……あんたも「人ならざるもの」なのか。
まあ、そんな予想はしていたけど。
つうか、この街に人間じゃない人は何人いるんだ。
やっぱり「一人見かけたら三十人はいると疑え」の世界なのか?
[...は脱力]
[じっとクレメンスを見た。
けれどユリアンが激昂したままに詰め寄るのを見れば]
だめだよ。
今ここでこれ以上均衡を崩したら、もっと酷いことになる。
それに。
[陽光の気配が消える時。
その力はいつもと変わりないもので]
まだ、終わったわけじゃないんだから。
始まって、しまったのだから。
[皆で力を合わせないと、と静かに告げる。
彼から今にも放たれそうな疾風の気配も宥めながら]
……あ。
[ユリアンは何も知らないのだと気が付き]
うん、まあね?
[ここにいるのも後は全員人間じゃないんだけどなと思いつつ。
どうすれば衝撃を与えずにそれを教えられるだろうかと悩んだ]
[封じられたその力は、しばらくは大丈夫だろう。
雷のいないバランスの封印は先よりも強く。
そして落ちた右腕は、血を流すでもなくただ転がる。
服の袖で隠れて見えないそこにも、血のあとなどない。
唐突に舞い戻った薄紅色の花が、ひらり。
その額に咲いた。]
「ここに三人」……?
[オウム返しにミハエルの言葉を繰り返す...。
目の前にいる人は自分を抜かしてちょうど三人]
…………。
………
……
…。
[汗がたらり]
−中央部・教会−
[ふわり、ほんの一瞬、ベアトリーチェの身体に天聖の力が宿る――もしかすると戻ったと云えるでしょうか――のに気附いたものは、居なかったかもしれません。わずかに淡かったいろが、人形のようだった様子が、元の状態を取り戻しました。
それから少しの間を置いて、こどもは暢気に嚔をひとつしたのでした。]
─Kirschbaum・店内─
[外のざわめきを知っているのかいないのか。
影輝の王はいつものように、カウンターの中でのんびりとしていた。
傍らには、動くぬいぐるみのような眷属]
「……そろそろ、封護結界の迷宮が、動き出す……な」
[小さな呟きがこぼれる。それに、ヴィオレットはきゅう、と鳴いて答えかけ……上から降りてきた気配に、慌てて口を噤む。
降りてきたのは、陽光の力に包まれし、楽師の青年。
影輝の王にとっては、対なる力をまとった青年はやはり好ましい存在であるらしく、やあ、と出迎える声は穏やかだった。
勿論、相手はそれに気づいているのかは定かではないけれど。
ともあれ、お茶と食事の注文を受け、他愛ない言葉を交わしつつそれを用意しようとした、その矢先]
「……きゅっ!」
[ヴィオレットが甲高い声を上げる。
ぬいぐるみが鳴き声を上げた事に、青年はやや、驚いただろうか?
そんな事を考える余裕は、影輝の王にはなく]
「これは、封護結界の力……何故、ここに!?」
[反射的に制御しそうになるのは、遠い記憶のなせる業か。
いつか、自身が対の欠落を味わった時の。
だが、今は干渉を抑えなくてはならぬ身と。
自戒。
その空白に、力の奔流は、楽師の青年を捕えて]
「……くっ……」
[消えた。
後に残るは、*変わらぬ店の佇まい*]
そうですね。おそらくはギュンターさんも同じ所に転送されているかと
ただ、これが犯人の仕業かどうかまでは判断できません
何らかの別の意図が作用している可能性もありえますから
まあ。どちらにしろ、解決のためには鍵の書の持ち主を見つけ出さないといけないでしょうね
−北の遺跡−
[アマンダと千花は瞳を閉じて集中する。
【大地】の力で、この【場】を支えようと、祈るように願うように]
[それを破ったのは、突然の大きなうねり。
【鍵の書】が奪われた時と同じそれに大地の支えはたやすく揺らぐ]
――っあ… 「ヂッ…」
[大地に片手と膝を突いた姿勢のまま、前のめりに身体が倒れる。
見開かれた茶色の瞳は、何も映さず玉のよう。
されど、千花がその背へと降りれば、直に瞼の内へと消え去った。
身動き出来ず蹲る千花を背に乗せたまま、アマンダは昏々と眠る。
その身体は柔らかいまま、ヒトのものと*変わりないだろう*]
[指を折り折り数え上げる]
えーと、クレメンツさんにミハエルさんにブリジット、アマンダさんにダーヴィットさんにティルに……後何人いるんだ?そんな人たち。
[ため息まじり]
これが手っ取り早い方法だったんだ
[火の竜を見て、口に微笑を上らせて]
これ以上、場を狂わすわけにも行くまいよ。
崩れて喜ぶは、書物だろう。
[響く、乾いた音。
それに気づいて目をやった翠樹の魔の様子に、紫と翠の異眸が険しさを帯びる]
……それで。
どのくらい、持たせられるんだ?
[問いを投げる、声は静かにもの]
[眼を擦っていると、毛布がからだからずれて、椅子からも落ちてゆくでしょうか。ぼんやりとした視界には、アーベルとナターリエの姿が映りました。]
ラ……?
[誰かの名前を呼んだようですが、それは上手く風には乗りませんでした。]
さあ、どれくらい持つかは僕にもわからないよ。
ただ、力を受けなければ何も問題はない。
力を使わなければ、かなり持つのではないかな。
[少し考えて]
……持たせてみせるよ。
……ナターリエさんとアーベルさん。
オトフリートさんとイレーネさん。
[こうなったら隠しようもないし、とばかりに自分の気が付いた人たちを並べ立てる。
それでも王のことは刺激が強すぎるだろうか?と躊躇して]
別の意図………。
[考え込んでいたその時に、かわいらしい欠伸が聞こえて]
あぁ、気づいたんだね。
……大丈夫?
[心配そうに顔を覗き込んだ。]
[誰もいなくなった広場に、彼女はまだたたずんでいた。
大きな力のうねりを感じ、空を見上げる。]
……ふたり?
[ぽつり、呟いて歩き始めた。]
[ナターリエの声にはっと気が附いたようにまたたきして、こくんと大きく肯きます。]
うん、……大丈夫だよ。
ギュンターとおんなじって、なにかあったのだろうか。
[わずかに聞えた言葉を、繰り返します。]
……そうか。
[思案を経て、返って来た言葉に短く返し。
空へ、手を翳す。
その手にふわりと舞い降りる、無限の輪]
……さて。
森の記憶は何を語りて、何を見定めさせる?
[手にした輪を見つめる異眸は酷く険しく。
……それは、虚の申し子──時竜としての、彼のもの。
全てをただ、見届ける、感情を排した冷たい目]
ー西の桜ー
[辺りを見回す]
とりあえず、ここにいても埒があきませんねえ。力を辿るのも無理ですし。
私は、教会に帰りますが、あなた方は?
[だが、誰もいなくなったと思っていたのは、彼女が自分の世界に入り込んでいた為本人ただ一人だった。
周りから見れば、彼女はひとりで虚空を見つめて歩き出したように見えるだろう。]
今更、少しくらい、変わらないだろう。
[力が足りねば何が種たちの餌になるというのか。
その答えなど、言うことはない。
ただ、時の竜を見やる。]
[名をあげられた人の顔を一人一人思い浮かべる]
知り合いばかりじゃないか……。全然気づかなかった。
もしかして、君たち魔族だったりするのか?
[普通に暮らしていれば一生お目にかかれない種族の名前を挙げてみる]
[クレメンスに声を掛けられれば、ピクリと肩を揺らし]
私は、もう少し、ここにいます。
[まだこの場の空気も大きく揺れているままで。
ユリアンの反応も気になっていたので、そう答えて道を空けた]
んぁ……。
[言うべきか言わざるべきか逡巡。]
[このような事に、チカラがあるとは言え人の子を巻き込みたくはないけども。]
[それでも、どうせKirschbaumへ行けばわかってしまうから。]
……また、誰か消えちゃったみたい。
[無限の輪がゆらりと周り、森の記憶を像として解放する。
巨木の生命の失われる様。
それは、火炎の若竜と翠樹の魔にも見えるように映し出され]
……なるほど、ね。
[間を置いて、時竜がもらした声からは、感情は失せて]
誰かが、消えてしまった。
[自分でも一度、小さな声で云い直します。ベアトリーチェなりに、事態をわかろうとするように。ひとつ、肯いて、少し、間を置いて、もう一ぺん口を開きます。]
……誰が?
知っている、ひと?
ううん。知らないひとでも、よくはないけれど。
[できるだけクレメンスから離れようとミハエルに近寄り]
えっ、私たちは違うよ?
[そう返した。クレメンスのことを含めるのは素で忘れた]
…イレーネ……。
[竜の力を秘めながら、竜の律も、竜の掟も知らぬもの。]
掟を知らぬものは、裁かれるべきか?
[迷いの答えを求めて、先達の竜を見る。]
んと……おにーさんもよく知らないんだけども。
Kirschbaumに泊まってた、楽士の男の人、ってわかるかな?
あの人が、消えちゃったっぽいよ?
……うん、誰かが消えちゃうと、嫌だよね………。
[ぎり、と小さく歯噛みし。]
……歪んだ『輪転』……か。
[先ほどの予測は、今は確信となり]
知る知らぬに関わらず。
我らの存在は、それ自体が律である故。
[若竜の問いに、静かに答え]
だが。今回に関しては、鍵の書の介入の気配も見受けられる。
それを、我らが皇がどう捉えるか、が問題だな。
…そうだな。私も魔族では無い。
[未だゆらゆらと、大気が揺れている。
それを止める事だけなら出来るのだろうが、樹の傍で力を使う事は躊躇われて]
[「教会に戻る」というクレメンツに黙って頷く]
おやすみ。クレメンツさん。
夜道は危険だから気をつけて。
[そういうとブリジットやミハエルの方を見て]
それはごめん。「人外=魔」のイメージがあって。
ってなんの種族?[わくわく]
他、にも……?
[その言葉に、真っ先に浮かぶのは二人の対。]
……や、僕らのバランスは保たれている。
ミハエルも、ダーヴィッドも大丈夫っぽいね。
ー西の桜ー
[ユリアンの問いには、敢えて応えず、ブリジットの答えに訂正も入れずに笑う]
さて、それでは、失礼しますよ。おやすみなさい。
主の御恵みを。
[聖書に手を重ねて、そう唱える]
よく判っているね、時の竜。
大丈夫、僕は壊れないし、
あの封印もやぶらないよ。
……とりあえず、先に、何か食べようか。
しっかりとそうしておけば、力を蓄えられように。
…。
[俄然、目を輝かせ始めたユリアンに溜息。
そうでなくとも桜の傍、居心地が悪いのだ。
そうでなくともハインリヒが消えた後、煽りを受けているのだ。]
[眉間に皺を寄せて]
[不機嫌を露わに。]
主の恵みか。人の言う”主”が何であるか、知らない訳では無いだろうに。皮肉のつもりだろうか…な。
[クレメンスの後ろ姿が、闇へ消えてゆく]
[少しずつ少しずつ大気の揺らぎは小さくなる。
一度崩れた均衡は、安堵できる所までは戻らないけれど]
えっ?
[ここまで言ってから答えてしまっていいのか悩み始めた。
どう考えても遅すぎです]
えーと……
[困ったようにミハエルを見た。じーっと。縋るように]
楽士。
[二人の言葉に、円い眼は大きく開かれました。]
……エーリヒが?
[ベアトリーチェによく肖た、金いろの髪に少しいろの違う眼が思い浮かびました。小さな手は、落ちかけていた毛布をきゅっと掴みます。]
演奏を聞かせてもらう約束をしていたんだ。
外のお話も、たくさん聞いたんだ。
居なくなって、しまったんだ。
[そうしてしばらくぼうっとした後、ぴょんと椅子から降りて、よいしょと毛布を折り畳んで上に置きました。他にも、という言葉に、なんとなく胸元の輪に手を触れました。]
……オトフリートは、大丈夫な気がするよ。
なんとなく、だけれども。
君にとって、樹の生命が理不尽に散らされるのは、容認できぬ事だろうからな。
……だが、余り囚われないように。
俺の推測と読みからして、彼女は……ただ、力を受けているだけらしい。
[静かに告げた後。ようやく、その表情には感情が戻る]
……ああ、今の内に力を蓄えておいた方がいいだろうな。
できるわけなどないよ。
ましてここは、あの子の愛する森だ。
僕には許せるわけもない。
悲しんでいるのだよ、樹が。あの子が。
[そして、頷く。]
わかった。心しよう。
ただ力を受けているだけなのだね。
……したことには変わりはないけれどね。
[小さな微笑]
影の王のところに行こうか。
先に、行くよ
[森の奥を一度見て、暗い緑の瞳を閉じる。それから西の方向へと、*歩き出すだろう*]
[なるべく、怖がらせたりしない様にやさしい声音で]
そか……それじゃぁ、早く見つけ出さなきゃ、ね。
約束、守ってもらいたい、よね?
[ベアトリーチェの指先、不思議な形状の輪を見やり]
オトフリートは……まぁ、自分から無茶しなきゃぁ大丈夫でしょ。
["ほっとくと無茶しそうで怖かったりするのだけども"などと内心思いながら。]
………見せ物では無いぞ。
[じーっと見られても。]
[わくわく見られても。]
…。
[黙殺することにした。精神的には鍛えられて来たようだ。]
…私は行くぞ。いつまでも此処へ居ても仕方がない。
欠けたものは戻らないが、いま在るものが宥めるだろう。大地も、翠樹も残って居れば、此処は任せて構うまい。過干渉は喜ばれない、それに何を引き起こすか。程々にしておけ。
[言って、つかつかと歩き出した。]
[逃げた訳じゃあ無い。多分。]
[約束をしていたと言うベアの言葉にわずかに目を伏せ]
……そう。演奏を……
なら、早く見つけ出さないとね
[オトフリートは多分大丈夫と言う言葉には]
そうね。オトフリートさんは強い人だからきっと大丈夫
……そう、か。
[その言葉だけで、翠樹の魔の、この森への想いは感じられたため、それ以上は言わず。
先に行くよ、との言葉にああ、と頷いて]
時を戻す事は、できない。
為した事を、消す事はできない。
[それは『無限なる虚』より生じし彼にも。
そして、恐らくは彼の王にも叶わぬ事]
……それは世界という巨大な生命の法則。
歪める事の許されぬ輪転。
無限を無限に、悠久を悠久たらしめるもの。
[独り言めいた呟きは、闇にすっと溶けてゆく]
そ、そ、そうだね。
後でアマンダとティルにお願いする方がいいよね。
[実際に彼女ではこれ以上は無理なのであって。
それが一番良い方法なのだろうと思った]
ほ、ほら、ユリアンも戻ろう?
[ミハエルが答えなかったので、やっぱりこれは言ってはいけないことだったのかと思って。
ミハエルの後を追いかけた。逃げたとも言う]
[...は呆れたように二人を眺める]
そっちは街の外れに行く道。方向逆だから。
いいもんね。教えてくれないなら他の人に聞くし。
[半分すねながら...はKirschbaumに向かった]
[ぼんやりとしたかおをしていましたが、二人の言葉ににっこりと微笑いました。そこにはさみしさもなにも、見えません。]
きっとまた逢えるから、大丈夫。
見附けることも出来るよ。
[ああ、と今更思いついたように、声をあげます。]
……消えてしまった、というのは、
死んでしまった、というのとは違うのだよね。
それなら、気配を追ったりすることは、出来ないのだろうか。
それとも、『あれ』を探し出さなければ、駄目なのだろうか。
[ベアトリーチェはそういうことはわからないのですが、皆が云っていたことを思い出しながら、なんとか解決策を考えます。]
…むう。
[方向感覚が狂いでもしたろうか。ユリアンに指摘され
特に街外れへ行く予定も無かったのだが]
[仕方がないので、そのまま歩いてゆく。]
折角だから、影輝王の造った結界でも、拝見しておくか。
ああ……。
出自はどうであれ、竜の一族である以上は。
それに……。
命竜のお方様は、彼女に会いたいと言うだろうからな……きっと。
[ドラゴンズランドを飛び出す直前の事をふと思い返しつつ。
とりあえずは、とKirschbaumへ向けて*歩き出す*]
えーっと。
[拗ねてしまったユリアンにどうしたものかと思案して。
良く考えたら王その人に訊かれてしまうような気がした]
私も、戻るね?
[それは拙いとばかりに、ミハエルに断りを入れて]
まってー!
[ユリアンを追いかけていった。
店に入られる前に内緒話をしてしまうつもりらしいが。
彼女の足で追いつけるのだろうか]
[...はブリジットの足音を聞き立ち止まった]
早くしないと置いていくよ。
んー、ミハエルさんはツンデレだなあ。
[本人に聞かれたら絶対怒られる台詞をはき、
..は歩くスピードを緩めブリジットの歩幅にあわせた]
おそらく転送されただけですから、命に別状は無いでしょう
[ただ、転送された場所が安全である保障はないことは言うことが出来なかった]
気配は……。完全に感知の範囲外に突如消えてしまっているので難しいね
やっぱり一番確実なのは、鍵の書を見つけ出すことでしょうね
ありがと。
えっとね、内緒だよ?
[歩調を緩めてもらえたので横に並び、前置きしながら耳打ちする]
私はね、精霊なの。
こんな風に暮らすのは初めてだけどね。
[それからきょとんとして]
つんでれ、って何?
かぎのしょ。
[既にもう、なんべんか聞いたその言葉。世界が壊れる、と聞いても実感が湧かなかったのですが、ようやくベアトリーチェにも事の重大さがわかってきたようでした。ハインリヒも居なくなっているのを知ったのなら、それはますます強まるでしょうか。]
うん。
……わかった、探そう。
[いつになく真面目なかおで、ベアトリーチェは*云ったのでした。*]
そっか、精霊か……。
しかし、人間そっくりだな。もっと妖精みたいの想像してた。
[「これくらいのちんまいの」と両手の間隔で示し]
「ツンデレ」はな……ミハエルさんみたいな人のことを指すんだよ。詳しくは本人に聞いてみな。
[にやりと悪戯っ子の笑みを浮かべた]
そんなに小さくないよ。
それに生活するには人間の姿してないと変でしょう?
[この姿がそのまま本性ではないのだけれど]
ふーん?
わかった、後で聞いてみるね。
[にやりとした笑みには首を傾げつつも、素直にそう答えて。
やがてKirschbaumに二人で入っていく*だろう*]
[...はブリジットと二人Kirschbaumに戻ったら、
巨大チョコパフェを頼むでしょう。
それを時間をかけて突っつきながら、
マスターや集まった面々の話を*いろいろ聞くことになるでしょう*]
そうだね。早く鍵の書を見つけ出して、ギュンターさんと楽士さんを見つけ出そう
[そう言うとベアの頭を*ぽんぽんなでなで*]
―昨夜/→Kirschbaum―
[Kirschbaumに戻ると、右腕のないことにすぐに気付かれたろうか。
苗床はそれを気にすることなく、影の王にたべるものを願う。
その腕について問われたならば、
「気にしなくて良いよ」
とほほえむだろうか。
ただ、竜の二人の口をとめることはないだろう。
左手だけの食事を終えたなら、その日は部屋に戻ろうか。]
[部屋に戻る前に、聞き忘れた、と時の竜に近付いて]
誰が、かの女に力を与えたかわかる?
[答えを聞けたなら、感謝の言の葉を、
聞けなかったなら、特別気にすることもなく、
苗床はあてられた部屋に戻るだろう]
―昨夜/Kirschbaum/2F 東―
[着替えるためにか、それとも他か。
部屋に入った苗床は無器用に、左の手でボタンを外す。
長い袖にかくされていた右腕のつけねは、生々しさなどなにもなかった。
ぱきりと折られた何かの断面。
傷口というにはほど遠いそれを、少し考え苗床は放置した。
そのまま*眠りの世界へ*]
─Kirschbaum/夜─
[店に戻れば、どこか浮かぬ様子の影輝王。
彼から、エーリヒが消えたと教えられれば、その微かな消沈の理由も窺い知れる。
彼が彼として生れ落ちる最も大きな契機、精霊王の継承。
それにまつわる騒動の際の出来事を、思い出したのだろう、と。
微笑むばかりのティルに何があったか、と問われれば、ただ]
対の消失に対応するため……だそうだ。
[短くこう返すのみで、後は何も語らずに]
「誰が、かの女に力を与えたかわかる?」
[静かに投げられた、問いに。
今は、翠の双眸はやや険しさを帯びて]
……状況からの推測による部分は大きいが。
俺が、鍵の書を追って放った追跡の輪は、時空に対し得る唯一の力……天聖の力に焼かれた。
だが、それは純粋な天聖の気ではなく……魔の力を帯びていた。
……天聖に在らざる身にて、その力をまとう、魔。
こう言えば。君も俺と同じ結論に達する事ができるんじゃないか?
[静かな言葉に、それを聞いた者がどんな反応を示すかを気にかける事無く─いや、実際には、そこまで気を回す余裕が彼にないだけなのだが─、食事を済ませ]
……俺も、先に休ませてもらうよ。
[短く言って、3階の部屋へ。
記憶の探査のもたらした疲れが身体に重く、部屋に戻るなりベッドに倒れこむ]
……強大な力を持つが故に。
我ら竜は、最もそれを恐れ、敬わなくてはならない……。
[小さな呟きの後、*その意識は眠りの内へ*]
−昨夜/北の遺跡−
[アマンダは昏々と眠る。
自らを守る為にか意識を失った天聖の少女と違い、限界を超えての眠りは深かった。
千花はその背の上で、小さく丸く蹲る。
いつまでも戻ってこなければ、自衛団の見回りに発見されるだろう。
けれどアマンダを動かす力も、事情のわかる者に助けを呼びにいく力も無く。せいぜい発見された時に「人ではない」とばれないよう、意識を保つくらいしか出来なかった]
「チ…チィ」
[千花は小さく小さく鳴いた。
既に町中に鳴り響いた鐘の音の余韻は消えていたけれど、その哀しげな声を聞く事が出来たのは*闇と月と星だけだろう*]
[ふらり、と路地から広場に出てきた。
東の空は、見事な薄紫色に染まり、太陽がその姿を現している。
その光が、いつもより弱弱しく感じるのは気のせいだろうか。]
[牛乳配達の少年が、大きな荷物を背負って広場を横切るのが見えた。
カタカタと、瓶のぶつかる音が聞こえた。
ふい、と見ると、時計台の根元に黒猫がたたずんでいた。
そっと近寄っても微動だにしなかったので、そっと胸元に抱え上げた。
その毛並みはつややかで、とてもさわり心地が良かった。]
-桜の木の下-
[少し前まではそれほど思わなかったが、この場所は生命の属性が強く働いていて気持ちが良い。]
…貴方の、せい?
[言って、そっと桜の太い幹に手を触れる。
とても力強い、生命の気が感じられた。
暖かいそれを感じ取り…彼女は、クスリと笑う。]
―現在/Kirschbaum2F 東の部屋―
[片手で動くのには慣れている……というわけではなかったが。
ゆるり、身を起こし、左の手をみやる。
右腕にあった茎は左腕に。
命たる果はその掌に。
次に壊れる場所はどこであろうか。
冷静に考えながら窓のそとをみやる。
思い出す言の葉。]
[かの女の気配を感じれど、そちらに進もうとは、苗床は今は思わなかった。]
…………時間がないんだ。
“ ”
君はまだ…その籠の中にいるの?
君はまだ……でようと想ってくれない程に。
[*目を閉じて。
階段をおりてゆく*]
―Kirschbaum・3階/現在―
[まどろみから目覚め。
嘆息。
それから、ゆっくりと起き上がる。
窓を開け、庭を見やれば、桜の木の下に強い生命の気配]
……。
[しばしの思案の後、直接庭へ。
ばさり。
響く、羽ばたきの音]
[庭に降りても声を掛けるでなく、しばし見つめ]
……やはり、か。
[その気を辿り、一つの確信を]
まったく……面倒な。
[小さく呟けばそのまま店内へ。
影輝の王の渋い顔に苦笑した後、外へ]
―西の桜―
[店を出て向かった先は、桜の大樹。
その幹にもたれかかり、目を閉じる]
……養母殿……いや、命竜王。
さすがに、この状況では。
あなたの愛し子としては、動けん。
[小さな呟きは、*桜花の乱舞に飲み込まれ*]
−朝/ベアトリーチェの部屋−
[柔かなベッドの端に腰かけて、ベアトリーチェは素のままの足を揺らしました。膝の傷はまだ治っておらず、そこには瘡蓋が出来ていたのでした。緑の眼は、どこか珍しいものを見るように眺めています。]
ラ?
……どうしたのだろう。
[誰かの名前を呼んで、顔をゆっくりと動かします。窓から差し込むお日さまの光は、いつもと違う気がしました。宝石のきらめきはなくて、なんとなく遠いのでした。
ベッドから降りて立ち上がり、着替えを済ませます。こどものからだは人より細くて、足りないようでした。桜の花びらに肖たいろの服を着ると、そばの机に置いていた無限の輪を通した首飾りをかけました。少し苦労して、後ろで留めます。]
[そっと居間への扉を開くと、お父さんとお母さんが何ごとかを談し合っているようでした。からだを滑りこませてお早うの挨拶といっしょにお辞儀をしますと、その会話は止んでしまったので、なんだったのかはわかりません。
ベアトリーチェはよいしょと椅子に座り、手を合わせて朝ごはんを戴きます。]
ねえ、お父さん、お母さん。
なぜ、ベアトリーチェは、町の外に出てはいけないのだっけ。
[ふっと昨晩のことを思い出して、ベアトリーチェは訊ねました。
お父さんとお母さんは俄かに顔を見合わせると、ほんの少しの間を置いてから、「こどもには、危ないからだよ。」と云ったのでした。]
それでは、大きくなったら行けるのだね。
[楽しみだと笑うこどもを見る親のかおを、ベアトリーチェは見ませんでした。]
―Kirschbaum・昨夜―
[Kirschbaumに入ると、浮かない顔の影輝王に迎えられた。
理由など考えるまでも無いだろう。離れた場所にいた彼女にもあれだけの衝撃があったのだ。
親しみの深い属性の消失。
陽光の気配を纏う楽師が泊まっていたのは彼女の隣の部屋で]
「巨大チョコレートパフェ一つ」
[隣でユリアンが首を傾げつつもそう注文する。
苦笑しながら「そっちはどうする?」と聞かれれば]
あー、小さいの一つ?
[まるでおじさまみたいね、という言葉は表には出ず。
ゆっくりと運ばれてきたそれを食べ始めた]
[やがてティルが戻ってきた。
どこか違和感を感じてきょとんと見れば、その右袖は揺れていて]
ティル、それ……
「気にしなくて良いよ」
[けれどいつものように微笑んで返されてしまった]
[そのまま彼を見つめていて思い出した。
ああ、先程目の前で消えてしまった人は彼の対であったと。
そしてそれは後から入ってきたオトフリートに肯定される]
う、ん。
[彼女にはそう返すことしか出来ない。
その気配は何だか不安定で、あまり触れてはいけないもののように思えたから]
無理は、しないで?
[それだけ言った]
[パフェをあらかた食べ終わろうかというところで。
食事を終えたティルがオトフリートに近寄っていった]
「誰が、かの女に力を与えたかわかる?」
[「かの女」という言葉に首を傾げたが、続くオトフリートの台詞にそれも吹き飛んだ]
「……天聖に在らざる身にて、その力をまとう、魔」
それって。
[息を呑んだ。先程まで対峙していた人物が容易に浮かぶ。
元々強い力を持っていた人物。
その人が書を手にしたのだというならば、今どれだけの力を彼は持っているのだろうか]
[パフェの残りをどうにか口に運んでゆく。
他に何も問いかけることも出来ないうちに、オトフリートもまた部屋に戻ってしまった]
ええと、私も戻るね?
おやすみなさい。
[会話を続ける気力もなくなってしまって。
まだパフェを攻略中のユリアンにそう声を掛けると、彼女も二階へと上がった]
−朝/中央部・教会−
[いつもはたいてい朝のミサとずれたときに行くのですが、今日ばかりはちょうどその時間に着くようにしました。道の途中、どこかに『鍵の書』がないかとあたりを見回すのですが、もちろんのこと、落ちていたりする筈もないのでした。
教会に着くと、休みの日ではないものですから、居る人たちはまばらでした。その中には、いつものとおりの神父と、ねむそうなシスターもあったでしょうか。厳かな雰囲気の中、とりどりのいろを宿すステンドグラスを見つめ、パイプオルガンの音いろを聞きながら、ベアトリーチェはお祈りを捧げるのでした。]
……主の御心のままに。
[神さまはこのことを知っていて、それでも、なんにもして下さらないのだろうか。もしかすると、そんなことを思ったかもしれません。]
[ミサを終えると、ベアトリーチェはぱたぱたとクレメンスのもとに走ってゆき、にこりと微笑って挨拶をします。]
クレメンス、お早う。
[内緒の話があるのだと云えば、告解室に連れて行かれたかもしれません。ともかく、クレメンスには、いつもより不思議な感じが強くありました。その手には古そうな聖書があったものですから、それのせいだろうかとちらり考えました。
ベアトリーチェは『鍵の書』について訊ねたのですが、クレメンスからは他の皆と話したときのような答えしか、*返ってこなかったでしょうか。*]
―Kirschbaum2F・昨夜―
[自分の部屋に入る前、隣の部屋の扉にそっと手を当てた。
そういえばおじさまという呼び方を教えてくれたのは彼だった。
その二人が一度に消えてしまうだなんて]
大丈夫、なのかなあ。
[もう一度詳しく思い出す。
最初に圧倒的な何かが傍にいたハインリヒに向かってきて。
その身を包み込もうとした瞬間、弾かれるように動いた力があって。
その力とぶつかったうねりはそのままエーリヒの方に飛んで]
消されたというよりは、取り込まれた、だよね?
[あの時は気配の断絶にばかり気を取られてしまったけれど。
どちらかといえばそんな感じがした]
[それからゆっくりと自分の部屋に戻り。
隣の部屋の壁にピタリと背をつけて座った。
もう気配は残滓くらいしか残っていなかったけれど]
明日は、もう一人に、会いに……
[いきたいな、と呟きながら*目を閉じた*]
―Kirschbaum・3階/現在―
…ん……。
[寝台の上で目を開ける。
昨夜は何とか自室までは戻れたが、そのまま半ば倒れこむように寝入ってしまったようで。
半身を起こして、ふと手の中をみると、花びらのように白い灰。
窓を開けて、それを風に散らす。]
力に正しき道を。力に正しき流れを。力に正しき輪廻を。
[咲き乱れる、桜。
花は、種を残すために咲き、種を作るために散る。
ぼんやりとそれを眺める。]
[どれくらい眠っただろうか。
桜の花びらが鼻をくすぐって、目が覚めた。
膝の上にいた筈の猫は、そこから降りて脇に丸まっていた。
手を伸ばし、そっと胸に抱く。
少し、お腹がすいたかな、と思って立ち、店の中へと入っていった。]
-→Kirschbaum 1Fへ
―Kirschbaum・喫茶室―
[階下へ降り、店主にチキンカツカレーの特盛りを注文。
ついでにそこで、金髪の楽士が消えたことも伝えられる。]
…そうですか。
[スプーンを咥えて思案顔。]
[カウンターで店主と話をしている赤毛の男を横目に、いつもの隅の席に座ってコーヒーを待つ。
話している内容は、聞き取れるような聞き取れないような。]
[席を立ち、(ちなみに、しっかりカレーを完食してからだ)
その銀髪の女性の前へ行く。]
…猫、好きなのか?
[どう切り出すべきか迷って、選んだのはこんな言葉。]
[窓からの光が翳る事で、初めて目の前に人が立ったことを知り顔を上げる。
目の前に、先ほどまでカウンターに居た赤い髪の男がいた。]
…好き。
猫に限らず…動物は、好き。
[言って、再び猫に目を戻す。
黒猫は、ひとことも発さずに膝に座っている。]
…貴方は、嫌い?
[もう一度ダーヴィッドを見上げ、首を傾げた。]
割と好きな方かな…。
やわらかいし、あったかいし。
もう少し愛想よければなお良いんだが。
[猫に手を伸ばし、首のところを撫でようとする]
[彼女を満たし、包み込む力の気配。
それが、生気とか活力とか呼ばれるものなのだというのが漠然と判る。
それだけじゃなく、世界の全てが、ほんの少し違う感覚で伝わってくるようになってきては居たが、
まだ慣れぬその感覚をうまく自分の中で言葉に出来なかった。]
[ダーヴィッドが伸ばした手を、黒猫は不意に体をひねらせて地面に降り、ひらりと避けた。]
…嫌われた。
[ほんの少し、口の端を上げてダーヴィットの顔を見上げた。]
[その笑顔をじっと見て、やはりどことなく似ていると感じる。
消息を絶った娘を案じる、穏やかな方。
命を育む母の力を統べる竜。]
君は、自分が何者なのか…知ってる?
[静かに問い、見つめる彼の目は、縦に切れた爬虫類の瞳。]
…何者か?
[聞き返すと、彼の目に少し驚く。が、それは一瞬の事で、すぐに無表情に戻り]
…知ってる。
母は気高き種族と、
人は「バケモノ」と。
[小さく、それでも目をしっかり見返しながら言葉をつむぐ。]
[一度目を閉じ、瞳は擬態の小さな円に。]
…確かに、人間からみたらバケモノにみえるんだろうな。
“俺達”の力は、あまりに大きいから。
[“バケモノ”。
その言葉で彼女がどんな扱いを受けてきたのかなんとなく判って、目を伏せる。]
「俺達」…?
…あぁ、貴方、も?
[言って少し首を傾ける。]
力は、大きいの?
良く、分からない。
竜の力を使った事は無いから。
[貴方も?との言葉に、頷く。
使った事が無い?…自覚がないのか、それとも…違う異質な力を持っているのか?
未熟な火竜にはそこまでは判らず。]
あぁ。その気になれば未熟な俺でも…この街くらいなら。
だから、人の世へと出向く竜は、掟と刻印に縛られる。
俺達の力は、世界の流れを守り、歪みを正す為にあるから。
[襟元を引いて、鎖骨の間の逆鱗に刻まれた、金の繊細な紋章を見せる。]
人の世へと出向く…
掟?刻印…?
流れをまもる?ゆがみを正す?
え…?
[次々と降り注がれる、分からない単語に眉をひそめる。
そして鎖骨の間の逆鱗から目が離せない。]
それは、何の話?
良く分からない。
[紋章をじっと見たまま、ふるふると首をふる。]
やっぱり、何も教えてもらって居ないのか…。
いきなり言われてもわかんねぇよな、うん。
[苦笑いを浮かべて、襟元を正す。]
君は、刻印を持って無い?
流れを乱す…?
[やはり、良く分からない、と首を振る。]
刻印……
[言われ、長々となやんでいたが]
…知りたい、と思う。
[ぽつりと言うと、突然カタリと席を立つ。
足元で丸くなっていた黒猫が、驚いて少しとびすさった。
そのまま彼女はぐいぐいとダーヴィットの手を取って階段へ向かい、自室へと入ろうとする。]
[自室へ入ると、後ろを向いて上着とシャツを脱ぎだした。
ダーヴィットが驚くのにもかまわず、そのまま後ろ半身をさらけ出すと、その首筋から背中いっぱい、二の腕までもびっしりと何か模様が刻まれていた。]
これの、こと?
[それは、ひどく不細工な紋章。皇竜ほどの力を持つものにとっては小さな紋章ですもうが、力ない竜がそれを施そうとすると、これほどのものになる、その証だった。
体の成長に合わせところどころ掠れ始めてはいるが、一応効力はあるようであった。]
[その白い背中に刻まれた、文様に目を奪われる。
たどたどしく、つたないが、丁寧に、思いを込めて描かれた封印。]
君の…お母さんが?
[はぐれた竜が、娘の為に、娘が人の中で生きられるように、自らの手で刻んだものだろうか?]
…そうか。
[頷く様子に、頷き返す。]
お母さんは、君のことを心配していたんだね。
君が使い方を知らない力で、うっかり世界を壊してしまわぬように。
君が、人の中で、生きていけるように。
…でも、人の中で生きるなんて無理。
少しの間、変化しないことだけで怪しまれる。
暫くここに居たけれど、10年も居られない。
貴方は、違う、の?
人の中で、生きていられるの?
[眉をひそめたまま、目の前の男に問う。
何故、同じ竜なのに、彼は。
背中がチリ、と痛んだ。]
俺は多分、一つのところに留まらないから。旅してる限りは大丈夫なんだと思う。
時によって分かたれても、また新しく出会えばいいし、本当に思ってくれるひとは、たとえ変わらぬこの身でも、受け入れてくれるから。
それに、帰る場所はちゃんとあるし。
―昨夜・西通りの外れ、桜よりさらに西―
[夜道をひとり歩く。花見客も絶え、あたりに人の気配は無い。
桜の大樹のもとを離れると、冷たい夜風に頬を撫でられ覚醒した気分になる。
春に咲く桜。人はそれを見て春の訪れを知る。
常磐の冬の終わりを告げる花。
何と不快なのだろう。
それほどの息吹。]
[少し歩くと、すぐに其処へ辿り着いた。]
[影輝王の創り上げた結界。]
[力あるものの通行を阻むそれは、目に見えないが確かにそこにあって、触れずとも解った。地を這うものも空を飛ぶものも全てを阻む為に天まで伸びており、街を覆う天蓋のようだった。
外の闇を阻んでいるかのようであり、また内の宵闇を閉じこめているかのような
ミハエルはその境に、暫し立ち尽くしていた。]
[この結界を通り抜けることが出来るだろうか。否。少なくとも自分には。
通り抜ける事の出来た者が居たとして、影輝王へそれを悟られずに居ることは?]
[考えるだけ無駄な事象に思われた。]
[精霊王の力を目の当たりにする機会は少ない。]
[暫し瞑目]
[それから、北を目指して歩き出した。
ハインリヒとかいう男を飲み込んだものが、北…寧ろ遺跡から訪れたのは間違いの無いことで
ならば確かめてこようと、夜道を往く。
危険が伴うであろう事は承知だが、それで退くつもりは微塵も無かった]
…そう。
貴方は望まれている。
私は望まれていなかった。
それだけ。
…私のコレと同じモノだという、貴方のその小さな紋章は、いったい誰が?
[「かえる場所」と言われて また ちり、と背中が熱くなった。
ふと目を窓にやると、黒猫が窓辺から覗いているのが確認できた。]
…竜の中の竜。竜を統べる皇から。
[胸元に手を当て、答える。]
君も一度、連れていきたいな。
君のお母さんが産まれた世界へ。
君をずっと探している方がいるから。
―昨夜・北、遺跡―
[ざわめき。]
[其処では大地も風も、ざわめいていた。
不穏だった。]
[純粋な精霊の力を容れた器は、その内側を揺さぶられ、その表を粟立たせた。]
[それでも、何事も無いような顔をして、眉一つ動かさずに遺跡を歩く。]
[流されず、溶かされず、崩れず在ること
それが存在意義の一つだったから。]
[ミハエルが、アマンダを見付けるのにそう時間は掛からなかった。
その時には既に哀しげな鳴き声も絶え、辺りは静寂に包まれていた。]
…何奴も此奴も。
[彼女は大地を宥めようとしたのだろう]
[もし影輝の精があのまま続けていたらこうなっていたろうか]
[屈んで、アマンダを背に担ぐ。
彼女の工房へは訪れた事があったから、その場所は既に知っていた。
幸いにも戸締まりはされていなかったので、彼女を担ぎ込む。]
[遺跡から離れて、気が緩んでいたのか
それとも、やや疲弊していたのだろうか]
[ミハエルは、足元へ何かが落ちているのに気付かず、それに躓く。
工房だから、様々な物があるのは解っていた筈なのだが。]
[ミハエルは、アマンダの下敷きになった。]
[動けない。]
[*そのまま朝を迎えるだろうか…*]
…母様が、生まれた場所。
あぁ。
あるのね、そういう場所が…
[当たり前の事なのだが、気がつかず。]
私を、探している人が…?
誰?誰が?
[身を乗り出してダーヴィッドの腕を掴もうとするが、服をと言われて改めて]
あ。
[ひどい格好に気がつき、後ろを向いてとても高価には見えない服を身に着けた。。]
[色々と、目の毒な光景に、目を逸らしつつ。]
多分、君のお祖母さんに当たる方だと思う。
行方が判らなくなった、君と同じ力を持つ竜を、ずっと探してた。
俺も、こっちに行く事が決まった時に、頼まれたから。
−昨夜/北の遺跡−
[千花は近づいてくる人ならぬ気配に、糸のように細めていた目を薄く薄く開けた。その瞳がもし見えたなら、冷たい月の光に照らされているにもかかわらず、赤みを帯びて見えただろう]
「…」
[弱弱しく何かを訴えようとするも音にならず、決して離れぬようにとアマンダの服に爪を立ててしがみ付く]
[ミハエルはそれに気付いているのかいないのか。
一言だけ零して、アマンダを工房へと運び込んでくれたのだった]
お祖母様…
私に、お祖母様が。
[ぽかん、と口をあけ、とすっとベッドに座り込む。
呆けた顔は、無表情な彼女にはとても珍しい表情だっただろう。]
…あぁ。どうしよう。
私は…そんな、どうして、今。
[言って、その銀の髪をかきむしる。
長い爪が、額を傷つけて赤い筋が残った。]
…でも父は私と母どちらも要らないと。
お祖母様が私を必要とするかは分からない。
でも、探してる、とか…
望まれてる?私が?いまさら。500年も一人だったのに。
[ぶつぶつと呟きながら。]
−昨夜/工房−
[工房へと運び込まれた事で安堵したのか、千花の爪から力が抜ける。運んでくれた彼が精霊だという油断もあったのかもしれない。
…
工房の床はその仕事ゆえに、木ではなく固められた土だ。
大地はアマンダだけでなく、千花にも優しい。
ミハエルの足元に転がり落ちた音など、これっぽっちもしなかった]
[ミハエルは、足元へ千花が落ちているのに気付かず、それに躓く]
「…ィ!」
[ほんの微かに上がった悲鳴は、親亀子亀に潰されて、聞こえなかったに違いない]
−→翌朝−
[頭上から響く、ダーヴィットの声。
ずっと、ずっと。
そう、言った?
だが彼女にとっては、「今更」であることには、間違いない。]
もう、遅い…!
[銀の髪と顔を長い爪でかきむしる。涙と鼻水と血でくしゃくしゃになった頭をぶんぶん振り、耳をふさぐ。
そして、ダーヴィットをその場に置いたまま、彼女は*走り去った*]
[窓からそれを見ていた黒猫が、そのしなやかな肢体を翻して彼女をそっと追っていった。]
─西の桜/現在─
[ふ、と目を開けて。目の前を横切る桜花をぼんやりと見つめる。
見上げれば、薄紅]
……八俣の諸侯の領域を思い出すな。
[翠樹の竜王の住処を思い出して、くすりと笑み]
と、そう言えば……。
[それから、出掛けに影輝王に聞かされた話を思い出す。
昨夜、ここで消えたハインリヒから託されたという、奇妙な伝言を]
図書館……ね。あんまり行きたくないんだが……行くか。
[小さくため息をついて、ゆっくりと歩き出す]
−朝/工房−
[大地の精霊とよく馴染んだ工房の土は、吸血鬼のそれほどまでの効力は無いものの、幾分かの回復をもたらしたらしい。
アマンダは倒れているそこが工房の床と気付いて、茶色の目を瞬かせる。
次いで、下敷きになっているミハエルと、その更に下の千花に気付き]
ーーーッ! ごめんごめんごめんっ!
[現状把握終了と同時に飛び退き、横の壁へともたれかかった]
─図書館─
[名乗る肩書き的にはこう言った場所を好みそうだが、その実、虚竜より与えられた知識には到底及ばぬ知の眠る場所に足を向ける機会というのはとことん少なく。
こんな用事でもなければ、立ち寄るつもりは全くなかった。
……今とは異なる名を使って著した本を見たくないとか、そんな気持ちもわずかにあるが]
……ええと。
[カウンターに寄り、奇妙な伝言の事を告げる。
係員は一瞬きょとん、とするものの、すぐに合点が行ったらしく、『予約された本』を持ってきた]
で、これをどうしろと……?
[呟いた所で、相手の所在は知れぬのだが。
ともあれ、閲覧スペースの一角で、預けられた本を開き]
−朝/工房−
[数時間ぶりに重力に対して真っ直ぐ立ったミハエルは、壁際のアマンダをよそに、自分の下敷きになっていたミルフィオリを見付けて摘み上げた]
…お前か
[昨夜躓いたモノを発見。]
[すっかり潰されていた所為で毛の潰れた(見ようによっては寝癖に見える)ミルフィオリを、アマンダへ向けて放った。]
…もう少し軽い器になれ。
ま……一つの可能性として、考えられなくはない、が。
ふむ。
念のため……辿ってみる……か?
[小さく呟きつつ、*本を片手に図書館を後に*]
[アマンダは放られた千花を、慌てて両手で受け取る]
「ヂ〜ィ…ィ」
[千花はどんな物凄い寝相だったら、こんな状態になるのだろうという情けない有様だった。心の中で合掌。
そして何故ミハエルが下敷きになっていたのだろうと疑問符でいっぱいのまま言葉を返し]
うん、あ、でもこれ、千花が気にい……って
…あ。君が、運んで?
ええと、たいへん、御迷惑を
[ようやく、そこで理解に及んだらしく、またもや平謝り]
[千花はアマンダの手の平から、ミハエルを糸の様な目で見ている。
ものすごく感謝したい気持ちもあり、潰された切なさもあり。
その心中は図りきれない――というか、知りたくないとアマンダは思った]
[ミルフィオリを投げてから空いた手で、服へついた土を払う。
すっかり潰されていた所為で髪もぐしゃぐしゃだ。
ついでに目が据わっている。]
…そういう事だ。
それで、お前はあそこで何をしていた。
[大地を鎮めていた]
[それ以外の可能性もある、と考える事は出来ると
気付いたのは下敷きになっている間のこと。
精霊である彼女が、自然の調和をとろうとしていたと当然のように考えたがしかし]
―Kirschbaum/1F―
[気配を感じていても動くことはできなかった。
しばらく苗床は、その場で目を閉じる。
影の王に声をかけられて、ゆるり、開いた瞳はやみみどり。]
知っているよ。
陽もいなくなったのだろう?
……とっくに聞いた
かの女……君の属性の幼き子は、辛かったろうね。
[アマンダはミハエルの問いに、気まずそうに視線を逸らせる。
怒られそうと思った為ではない。
あそこに居た理由を詳しく話すこと――オトフリートへの疑いを、イレーネからの言葉を、彼に話してもいいものかへの躊躇いがそうさせた]
…ん、ちょっと…ね。
失われたモノの、代わりに。…支えようと、思って。
ダメだった、みたい。だね?
[ここに運ばれ、彼までも倒れていた様子からそう捉えて、壁を背に座り込んだまま、見上げる]
――何が、あった?
[アマンダの茶色の瞳は不安げに揺れる。けれど確信を含んだ声]
[そしてかの女のかけてゆくのを感じた。
普段は苗床の探査を手伝う花は、今は苗床の身にはない。
三ツ花は……
追うかどうするか、少し悩む。
かの女への報復。
しないわけはないのだが……裏に見える影に、悩むのも事実]
[しばらく、呆然と、開いたままのドアを見つめていたが、
そんなわけにもいかないと、ゆるりと階段を降りて、下へ。
パンプキンプディングをつつきながら、ぼんやり。]
―Kirschbaum2F・西の部屋―
[壁に背中を預けたまま、時間は過ぎていった。
ただただそうして休んでいたけれど]
そろそろ行こう。
[小さく呟いて立ち上がり、部屋を出た]
[店主が丸い目をしているのも見ずに扉から走り出した彼女は、知らず知らずのうちに墓場へと向かっていた。
入り口についたころには、走りつかれて足はフラフラだった。
ぐるぐるする。
考えが、ぐるぐるして。]
…わから、ないッ…!!
[ひとつ、叫んだ。]
―Kirschbaum1F―
[降りたそこには、元気なくパフェをつつくダーヴィッドと。
マスターと話をしているティルの姿]
あ。
[休んでいる間に一つ思い出したことがある。
昨日のうねりに、翠樹の力を感じたのは何故?]
[乱れた髪を掻き上げ]
[気まずげに揺れるさまを、どう受け取ったか]
[大地の色した瞳を]
[見つめる。]
雷撃の力を纏った男と
陽光の力をもつ男が消えた。
私は雷撃の男の近くに居たが、その異変の元を辿って遺跡へ行くとお前が倒れて居た。
お前が、それを成したので無ければ手に負えぬ揺らぎを負おうとも、それが元で自失しようとも私の構うところではない。
だが、過ぎた力へ手を出して居たのであれば話は別だ。
[ひとつ叫ぶと、少し落ち着いた。
あんなに切望していた事が。実は。]
でも、もう遅い。
私は…
[言って、目は黒猫を探して周りを見る。
すこし離れた場所に居たのをみつけてほっと安堵し、寄っていって胸に抱く。
そのまま、ぺたりと墓場の入り口にあった木にもたれて座りこんだ。
手の中の猫の瞳を、じっと見つめる。]
―Kirschbaum1F―
[おりてきた影の精の視線に、微笑んで頭を下げる。]
こんにちは。
……ダーヴィッド。昨日はありがとう。
[一応それだけは言うものの、命を追うからか、扉にむかいかけ]
……質問してもいい?
[扉に向かうティルの背中に声を掛ける]
昨日動いた力。
私はその中に翠樹の波動を感じたの。
あれは、何故?
[少しだけ緊張しながら問いかける。
昨日のオトフリートの会話から違うようには思いつつも
もしかしたら、の不安がよぎった]
[扉に手をかけたところで聞こえた質問に、少し虚をつかれて]
え?
あぁ。……雷がいなくなったせいで、封じていた僕の力が、それを破ってでてこようとしたんだ。
全部出る前に、とめられて良かった。
[それから苗床は少し笑う]
君も、少しなりかけなかったかな?
でも影……君に負担をかけて申し訳なかった
ああ――
[アマンダは、温むを赦さぬ氷の精霊からもたらされた現実に、目を閉じて天を仰ぐ。
涙は無い。土と硝子で出来た器から、水は零れない。
アマンダの愛する平穏の欠片の一つであった、甘い物好きの探偵。
ほんの少しだけだが言葉を交わした、陽光のように穏やかな青年。
そして、イレーネは――やはり、これを知っていたのか、と]
手の平から零れ落ちていく平穏(安定)。支えるのは大地の役目]
…私は、支えようと、あそこに。
あの子が…イレーネが。
「これから」だと、言っていた、から。
[しばらくの後。
返された声は、金剛石のように硬く、*亀裂が入ったように脆く*]
あ、うん。それは私もなったけれど。
[対となる力の消滅は彼女にも少なからず打撃を与えたけれど]
違うの。うねりが来るときに翠樹の力が働いていた。
おじさまを捕まえた、力の方。
[それが彼の力ではなく、彼から奪われた力だとは知らずに]
どうして?
[はぐらかされたのかと思って。声が硬くなった]
失ったことを悔やむのであれば取り戻せ。
[一言を残して、工房を後にした。
イレーネ。生命のちからを持つ者。親を亡くした孤独の竜。
これから、という言葉を小さく繰り返して、宿へ向かう。]
[*日は中天。*]
え?
[よくわからずに、かの女をみやる]
それはおかしい。僕の力はすべて変化してこの子らにあげることだけに使われるのだから。
……君はしらないのだろうけれど苗床とはそういうものなんだ
かれをなくした時の反動で、滅びるかもしれないのに、僕がするわけはないよ
……誰がそんなこと
[ふ、と思い出すはかの神父の擬態。聖なるものではないのにそれを纏う……]
そうなの?……そうね。
[即座に帰ってきた返答は、それが偽りでないことを示しているような気がして。
何よりもすぐに納得できるだけの説得力があって]
でも、それならあれは?
[そして彼女も気が付いた。
自らの属性を覆い隠すことすらできる者もいたのだった]
ごめんなさい!
ちょっとだけ疑ってたの。
でも、違うのね。
[慌てて謝った。恐らくあれは彼の力ではなかったのだ]
疑っていたのか。
[かの心の魔を思い出して、少し険しくなっていた顔が、言の葉きくと苦笑に変わる]
僕はちがうよ
僕はまだ生きていないといけないから
[胸元に目を落とす。それはいとしげなように見えたか。
しかしすぐに微笑みにかわり]
……それじゃあ僕はそろそろゆくよ
[扉に手をかける。
ゆっくり開いて……ふりかえった]
かれには気をつけて。下手に動くのではないよ
[そして*外へと*]
うん、本当にごめんなさい。
いってらっしゃい。
[出てゆく少年を見送って。
振り返った所には苦笑する人影もあった]
間違えちゃった。
[自分の未熟さと、不安定さを思い知った。
そしてもう一人の対となる者に会いたいと思った。
少しでも安定しておきたいと]
私もちょっと出かけてきます。
[彼女は忘れている。
その人物のいるであろう場所には、今気をつけろといわれた人物もいるであろうことを]
―…→広場へ―
…装うもの、か。
[二人のやり取りを耳にして。
先達の時竜も、そう言っていただろうか。]
ブリス、気をつけたほうが……
[出て行く少女を一度は見送るが、やはり心配になってその後から出て行く。]
─中央部・広場─
[月を見上げる
昨日の力のうねりによる対の消失。そして、先日のティルとクレメンスの問答。そして、ベアトリーチェのことなど考えることは尽きず、彼女の思考を鈍らせる]
……いっそ、全員を斬るほうが手っ取り早いか
[ぼそりと呟いた言葉は、かなり物騒な言葉]
ー教会・私室ー
[テーブルに肘をつき、目を細めて呟く]
揺らいでいるな…揺らげば危険だと、教えたろうに…
[薄く笑み]
しかし、あの娘の心は、とても興味深い…
─広場・東通り側─
……他とかわらぬいとしい子……か。
[ふと足を止め、一つ息を吐く。瞳には、微かに自嘲の翳りらしきもの]
お方様にとっては、皆同じ。
俺のような存在ですら。
……ならば。
[通常に生まれた血族であれば、何もなくとも受け入れられるのは確かなのだけれど]
……厄介な状況に、代わりはない訳なんだよなぁ……。
[はあ、と。またため息が零れ落ち]
―中央広場―
……いたの。
[迷いなくその気配を頼りに。月闇纏うその女性の所へ]
こんばんは、ナターリエさん。
[近寄って挨拶の言葉を掛ける。
近寄るたびに感じている違和感はまだあったけれど。
今は安堵の方が強かった]
[そのあともブツブツと何やら呟いていたが、ブリジットから声を掛けられると顔を上げ]
ああ。こんばんわブリジットさん
[物騒なこと呟いていたとは思えない微笑みで返答]
あの。
ナターリエさんは、大丈夫なのよね?
[呟いている言葉は幸いにも聞こえなかったらしい。
微笑に微笑を返しながら問う。
とても安定しているようには見えてはいたけれど]
―→北東部/墓地―
[森を抜ける。かなしい、かなしいと囁くコエが聞こえる気がして、
苗床は少し目を伏せる。]
かなしいね。
だから――
君たちは、休んでおいで。
[歩いてゆく。
こっち、こっち。
進む方向は、たがうことなき、命の竜の気配の――]
[ふ、と感じる二つの力。
影と闇、残されし対の者たち。
一先ず、邪魔はするべきではないか、とKirschbaumの方へと足を向ける。
翠樹の魔が、どうしているのか。それが、妙に気がかりで]
─…→西通り方面へ─
大丈夫か、ですか?
[僅かに首を傾げるが、くすりと笑うと]
ふふふ、どうでしょうね。私は正気のつもりですが、その正気が本当の正気かは私には保障しかねますし
[そう惚けてみせる]
[金髪の少年。誰だったかーー
今の彼女にとって、考える事が多すぎて。]
…こんばんは。
[挨拶を返して、再び思考の渦に飛び込もうとするが…
…何か感じて黒猫をその胸に引き寄せた。]
[その黒猫には何か覚えがあるような気がした。
だが、それよりも――
それよりもかの女に、苗床は近づいて。]
君が、殺したのだね。あの子を。
[身の裡の種が、かれらが、騒ぐ。
ころせころせころせころせ。
それを抑えながら、苗床は、くらみどりの目でかの女を見た。]
―南通り―
[アマンダの工房から宿へ戻って、癖のついた髪を整える為にシャワーを浴びた。冷たいままの水が、心地よい。
バスルームから出ると急に疲労を感じ、寝台に横になった。事実、昨夜から疲労するような事ばかりではあるのだ。]
[ミハエルは陽が落ちて、気温が下がってから外へ出る事にして、日中を宿の部屋で過ごした。]
[身支度を整えて宿を出る。
夜の住宅街は、雪の日の朝のように静まっている。
頭上には月。]
[広場にはブリジットとナターリエが居たようだが、オトフリートと同じく遠巻きに其の姿を見ただけで西通りへ向かった。]
え?
[惚けた答えにきょとんとする]
ナターリエさんも不安だったの?
[そうは見えないのにと思いながら。
けれどこうして近くで確認できれば彼女自身は安心を得て]
よかったぁ。
[思ったままを素直に呟いた]
[かの女にとって、樹は何なのであろうか。
くらみどりの瞳に、わづか金が移るか。
つ、と視線を森に移して]
あの子だよ。
僕の――僕の力を受けた子が、愛したあの森の子を。
[少しの間、思案する。ティルの視線の先に目を向ける。森。あぁ、昨日の。]
あぁ、あの木は…
[思い出した。]
生命の力を、もらった。
それが、何か…?
[まるで異国語を聞かされているかのように風に首を傾げる。
腕の中の黒猫の尻尾が、一緒に揺れた]
肉を食べるために動物を殺す。
野菜を食べる為に、畑から採る。
それと、何が違うの?
[無表情に、淡々と口から言葉が出る。]
─西通り─
[不意に、足を止める。
前方から飛来する、白い影]
……そういや、置き去りにしてたな。
[苦笑しつつ差し伸べる左の腕に舞い降りる、白梟]
―西の桜の木の下―
[ハインリヒの事務所や図書館、そして遺跡や教会の前。ハインリヒの昨日の足取りを辿って捜索や聞き込みするも、手がかりは一向に得られず。
...は最後に彼を見た場所――桜の根元までやってきた]
[昨日、アマンダに足止めを食らいそうになったり、ハインリヒの連れ去られた痕跡は、どこにもない]
そうだろうね。
君にとってはそれだけであろう。
[苦しみ、痛み――]
だけれど僕にとってはそれ以上の意味を持っているのだよ。
僕と、かれらにとっては。
戯れに命を奪われねばならなかったかの子を。
かの子の嘆きを。
……君は聞きもしなかったのだね。
殺す、採るに、感謝はせぬのか?
ただただ君は喰らうのか?
─西通り─
[Kirschbaumへ至る通りへ差し掛かると、風に溶けるような歌声と、それを遮る羽音、舞い降りる白い翼が見えた。]
オトフリート。
[追い付いて、軽い会釈。]
[Kirschbaumの戸をくぐった。]
感謝…
……分からない。
ただ…欲しかったから。
思うとおりになるのかどうか、試したかった、から。
[ぽつりと言って、肩をすくめて黒猫をぎゅっと抱きしめる。]
ええ、不安ですわよ。私は平穏無事に過ごしたいんですから
今回のことは平穏の中の僅かなスパイスどころじゃなく、十分脅威になりえる事態ですしね
仮にこのまま事態が悪い方に進むなら、いっそ……いえ、何でもありませんわ
[物騒なことを再び口走りかけるが、自重]
ただ、それだけのために君はかの子を殺したのだね。
ただただ生きていた、かの子を。
[ゆる、と、背より出でる蔦。
暗緑の蔦は命の竜への攻撃の意思。]
必要もないのに、君はかの子の命を奪ったのか。
……鍵の力でも、君は使った?
ん……やあ、ミハエル、こんばんは。
[白梟の文句に眉を寄せつつ、挨拶をして。
自分も扉をくぐる。鈴の音は心地良いがどこか、落ち着きなく響いて]
嗚呼、だとしても。
そんなことよりも僕はただ君が赦せないだけなのだよ。
[残った左の手を、口元に。
腕に噛み付くようにし、茎を引き抜く。
ひきずるように出された固い茎を、左の手に持ち直す]
[少女を追って広場へと行き、シスターに軽く目礼。
微妙に不穏な気配を持つ人だと思ったが、彼女が力を手にしていたとしたら今の状況くらいでは済まないような気がして。
少し離れた位置で、煙草を吸いながら見守っている。]
―Kirschbaum―
[カウンターへ着いて、いつもの通りにぎこちなく、アイスティーを注文する。オトフリートも店へ入ったのを見て、声を掛けた。]
雷撃と、陽光が消えたな。
十四の属性が集いそのうちの幾つかが消えてゆく。まるで、界の狭間での事を思い出すようじゃないか。
[背後から現れる暗い色の蔦に、驚きと恐怖の表情を表して後ずさる。]
…鍵の力?
そんなの、私には使えない。
私はただ、自分の使っていなかった力を、使えるようになりたかっただけ。
望まれるように、望んだだけ。
[更に下がろうとしたが、背中はあっけなく木に当たりそれ以上は下がれなかった。
それでも下がろうと、足は動く。]
[桜の花びらが彼の周りだけ変則的に飛び交う。
ふわふわふわり]
ん?どうした?
………
[一際大きな花びらが、ぴとりユリアンの頭に止まる]
−夕刻/工房→Kirschbaum−
[アマンダがようやく動けるようになったのは、空が赤く染まりかけた夕刻だった。
まだ重い身体を引き摺るように工房を後にし、Kirschbaumへ向かう。
そこに泊っているイレーネに、話をしようと――叶うならば彼女を止めて、失われたものを「取り戻せ」るように、と]
[それはイレーネが走り去り、ティルが追い、ブリジットが訊ねに、ダーヴィッドが続いた後。
オトフリートが訪れる前の、ほんの僅かな狭間の刻]
…そう、いないの。イレーネも…ハイン、も…
[ハーヴからそう伝えられ、アマンダはハインリヒの指定席を見る。
大きな背中を丸めて甘味を口にする、どこか憎めない飄々とした男が、アマンダは嫌いではなかった。否、好んでいたと言ってもいい。
頭に乗せられた千花も、よくお零れをくれた彼を思い出したのか、寂しそうに小さく鳴く]
そうか、そうよね。
こんな状態を自分から望む人はいないよね。
……書を奪った人以外には。
[落ち着いて見える人でもそうなのだと思えば、更に安心できた。
それなら自分も落ち着くように努力すればいいのだと]
いっそ?……まあいいや。
[聞き返そうとしたがやめた。
どこかからそれ以上聞いていけないと言われた気がした。
本能からかもしれない]
ナターリエさん、どこまで知ってる?
[そういえば昨日は姿を見かけなかった気がする。
他の人たちはどこまで状況を知っているのだろうかと、確認することにした]
─Kirschbaum─
[カウンター席に座れば、やはり向けられるのは諌めるような眼差し。
それに、すみません、と素直に謝って、紅茶を頼む]
ああ……消えたようだな。
彼の件では、精霊珠の内側に取り込まれた訳だが。
恐らく、あの辺りにいるんだろうとは思うんだが……どうしたものやら。
[どこかでぴしりと音がする。
それは左の瞳の奥か。
あぁそれでも構わないと思う。
そこには金の亀裂が縦に走り。
逃げる竜を追い詰めるように、一歩、近づく]
使えるようになるのは君の勝手だ。
力のためだけに殺されたかの子の哀れさを君に与えてやろうか。
[黒猫のことなど気にも留めず、
かの女を見やる。]
逃げるか
逃げるのならば好きに逃げればいい。
どこにも逃げ場など、ないのだよ
…だけど、どうして。愛されても、人間なのに?
[そう、仕事を除けば、恨みなんて買いそうに無い…いいヒト。
精霊に愛されてはいたけれど、書を手にする程の存在が彼を?
それとも、なにか――そんな要因があったのだろうか]
…行って、みよう…か。
[そんな呟きだけを残して、アマンダは踵を返した。
アルバイトの青年の姿があったかなかったかすら、気付かぬままに]
[猫を抱え、墓場の奥へ走る。が、そっちは行き止まりだ、と思い直してきびすを返したが。
それは、ゆるりと追う彼と正面から対峙する形になりやしまいか。]
あ…!
[思わず、足を止めて腕から黒猫を取り落とす。]
─Kirschbaum─
[界の狭間、精霊珠といった言葉が交わされてから、思い出したように店主を見る。その事件の当事者の一人である店主は飄然とした笑みを浮かべるだけだった。]
あの辺り。書が封じられていたらしい遺跡の事か。
そう、あの辺りは特に乱れている。
そして、昨夜私はハインリヒとかいう男の近くへ居たが奴を取り込んだモノは北から訪れた。一体奴らは何処へ消えたのだろうな。
[黒猫の落ちるのも気にせずに、苗床はかの女と向かい合う。
ゆる、と左の手で持った、その棒のような茎を向ける。]
死ねなどとは言わないよ。
ただただ――死ぬことも出来ぬままに苦しめばいいのだよ
どこまで、ですか。……そうですね
[暫し思案すると]
大きな歪みが起きて、あの楽士さんが消えてしまったこと。それに前後する形でベアトリーチェがここで倒れたこと。その介抱をアーベルさんと教会でしたこと……といっても礼拝堂の長椅子に寝かせていただけですが
昨日の行動も含めて言えば、そんなところでしょうか
[その動きはゆっくりであっただろう、避けられたのではないかと思うが回りをめぐる暗緑色の蔦がそれを許さなかった。
ずぶり、という音がしただろうか、彼女の横腹に茎がゆっくりと沈む。
彼女は何が起こったのかわからないような、きょとんとした目で沈んでいく茎を見る。]
…え?
[ゆっくりと沈む茎に、赤い血が伝った。ぽたり。ぽたりと落ちる。]
―昼・南通りの宿→Kirschbaum→遺跡―
[宿を出、一度Kirschbaumへと寄り、あの探偵も消えてしまった事を聞き。]
[その後独り遺跡へと向かった。]
[通りには相変わらず自警団の姿がちらほら。]
[変化に飲まれ、朽ちていった建物たち。]
[その中を独り、歩いていく。]
[元は柱だったモノ、今は倒れてしまったモノに腰を降ろす。]
[幾人かの人影が遠くに見える。]
[どこか冷めた瞳でそれを見つめていた。]
あ…
[茎を持った手を離され、それが刺さったままの体を「く」の字に折る。
それは、彼女にとって生まれてこの方一度も経験したことの無い力。痛み。
やめて。
苦しい。
痛い。
助けて。
……誰にすがればいい?わからない、わからない------
体を丸くした背中から、チリチリと火の粉のようなモノが噴き出す。
周りの空気が歪み、背中を中心に円を描き-----爆ぜた。]
あ あ あ あ … ッ !!!!
[---周りを閃光が包んだ。]
[影輝王を振り返る氷精の様子に、微かに笑むものの。
続いた疑問の言葉に、その笑みはすっと消える]
そう、書を封じし地『封護結界の迷宮』。
二人を取り込んだのは、書を取り戻そうとする、結界の力の暴走だろう。
恐らく、彼らがいるのは……迷宮の只中だ。
[自衛団長までいるとは、さすがに思ってはいないようだが]
[腕に伝わる肉の感触。
苗床の口に笑みが浮かぶ。
それは魔界のものと言うに相応しい――
まがまがしくもみえたろうか。]
かの子の苦しみの少しでも、君は味わえば良いのだよ。
生命の力の竜族。
[一刻後。]
……ぁー…なんも見えない、か。
なーんか隠されてる気がするんだけどなぁ。
気のせい、なんかなぁ……?
[ぽり、と頭を掻いて、そのままごろりと寝転がる。]
[気がつけば、いつしか眠りに落ちていた。]
ベアトリーチェが倒れたの?
[その言葉にはびっくりして]
大丈夫なのかな?
あの子は不思議な力を持っているのだもの。
よくはわからないんだけれど。
[その関係が負担が大きかったのだろうかと、心配そうな顔になる]
ああ、それじゃ知らないのね。
昨日消えちゃったのはエーリヒさんだけじゃないの。
おじさま……ハインリヒさんも、なの。
私たちの目の前で、大きな力に取り込まれて。
ええと。
私だと全部は説明しきれないな。
オトフリートさんたちの方がずっと詳しいはずなの。
今ならKirschbaumにいるかな……
一緒にいかない?
[説明しようとして、まだ混乱している部分があることに気が付き。
そう誘った]
[光がやんだ後、そこにいたのはお世辞にも美しいとはいえない真っ黒の「バケモノ」だった。
シルエットとしては、「恐竜」に似ているだろうか。大きさは、小さめの象程だ。
太くとても短い蛇のような体の中心あたりから降りる太い後ろ足、肩らしきところから生えている為前足であろうと思われる、羽根。そこに羽毛のようなものも全く見当たらず、ただの皮の延長のようで。
鈍重そうな太い体に鱗は無く、ゴムのような分厚い皮膚が全てを覆っていた。
体の先に顎は無く、ただ筒状の口に細かい歯が内円に並ぶのみ。目はどこにあるのだろうか、見当たらない。
そしてその腹には、さきほどの茎がぶっすりと刺さったままであった。]
「 !!!!」
[首を回し、声とはいえない、「音」の咆哮。
空気が、震える。]
[噴出す生命の力、そして竜の力。
それは、結果以内にいる「力あるもの」全てに気づかれるであろう。
だが彼女は止められなかったし、止め方もわからなかった。
攻撃をしたいワケではない、殺したいワケではない。
ただ、どうしていいか分からず---------]
「 !!!!!」
[もういちど、声とはいえない「音」の咆哮を放った。]
っ――
[見覚えのない姿。ああ、竜族だ。
かの女か。
閃光のあとに思うはそのことなれど、
手を離した茎はその腹に。
咆哮に痛みが走る。]
――っ
[左の手は庇うように小瓶を掴み。]
[びくり、と身を強張らせて、北東の方角をみる。
悲鳴が聞こえたような気がして。
同時に膨れ上がる大きな力。
人の可聴域ではない、空気を伝わる振動のような咆哮。]
…イレーネ……?
いたい。たすけて。いやだ。
[わずか、小さな声が響き。
それでもこの結界の中でその姿をとどめることが出来るワケもなく。
もうひと声あげてから ソレは ずし、と音を立てて墓の上へと倒れた。
石墓が、粉々に砕けてソレを受け止めた。
暫くして、その黒いモノの姿は薄くなり、そこには倒れる血まみれ銀髪の女性だけが*残っていた。*]
[苦しみに呼応するかのように、森の中で封印が崩れそうになる。
どれを取れば良いのかわからなくなったとき
ちいさな声を聞いた。
それは――
その竜は、落ちて。
荒い息を、落ち着ける。]
迷宮、か。
書の暴走について、略奪者は知っていたのか、この事態は計算外なのか。厄介だな。
ところでオトフリート
お前は書を持つ者を探知する事が出来るのか?
もし、その者を見付けたらお前は…―――
[咆哮が届いた]
−→探偵事務所−
[アマンダが向かったのは、ハインリヒの事務所だった。
主の居ないその部屋は、助手であるユリアンの為にか鍵はかかっておらず、容易く入る事が出来た]
…何かある? 千花
「アンッ」
[鼻先を紙に埋めて探していた千花は、短く否定の鳴き声を返す。
人のしての文字も、おかしな気配も見つけることが出来ぬまま、アマンダは主のいない事務所で、困ったように腕を組んだ]
[ばさり、と。
大きく羽ばたく相棒の羽音。
同時に感じ取る、咆哮。それは]
……これはっ……同族の……イレーネかっ!
[がたり、と椅子を倒し、らしくない焦りを帯びて立ち上がる]
一体何が……ティル、かっ!?
まったく、そろいもそろって!
[苛立たしげに吐き捨てつつ、右手の腕輪から鎖を解き放ち、右腕に巻きつける]
[もう一度その方角に意識をやるも、既にその力は街を囲んだ結界に、押さえ込まれるように霧散し。]
…何が……。
[一度目の悲鳴は苦痛、だが…その後の咆哮は、困惑の色に聞こえた気がした。]
[頭に止まった花びらがふわりふわり。
桜の木の周りをとび周り]
そういうことか。あれは…ってどうした!
[突然花びらが激しく動き出す。
風とは無関係な軌道で、くるくるくるくる暴れ狂う]
…なにか、あったのか?
早く戻れ!僕も後から追うから!
[...の声に花びらがふわり宙に浮かび、
そのまますごいスピードで飛び去った]
ええ、見たところ大事は無かったようですが、少し心配ですね
[エーリッヒだけでなくハインリヒも消えたことを聞くと]
……そう。あの探偵さんも
[Kirschbaumへの誘いには]
そうですね。この街の中で現状に最も詳しそうなのは、あの人でしょうし
(あるいは……)
[小さく呟き、背後の教会を見上げる。そこに未だ居るはずの同居人。『あくまでいつもと変わりの無い』神父様。だが、軽く頭を振ると]
いえ、そうですね。行きましょうか、一緒に
[コエも返せぬほどに。
苗床は消耗し。
それでもゆるりと立ち上がる。
左の目の金は広がり。
それでもゆるりとそこへと近寄る。
血濡れの竜族の少女の姿]
[種と苗床は呼びあいて。
額にふわり、いつのまにか舞い戻る三ツ花か。]
苦しいか。
かの子の苦しみがわかるか
竜族の娘よ。
君に……
[触れようと手を伸ばすか]
全く、揃いも揃って愚か者の嵐だ。
…連れてゆけ。
[オトフリートの遣う鎖が解き放たれたのを見て、机に代金を置いて席を立ち、椅子をカウンターの下へ入れる。]
王、紅茶はまた後程頂きたく。
[ミハエルの言葉に、そちらを見やり]
ああ、全くだな。
影輝の王、すまん、緊急事態なんでな!
[叫ぶように言い放ち、右腕の鎖に意識を凝らして]
エターナル・ロンド!
『渡れ』っ!
[鎖に命じる。いつもの加速とは異なり、時空そのものを越える跳躍。
その勢いは、周囲の力ある者を無作為に巻き込むやも知れないが……気づかずに、声の元へ]
─…→墓地─
[振り返った視線の先には、緊張しきったダーヴィッドが]
あれ、ダーヴィッドさん。
ねえ今のって……
[その時横を抜けてゆく気配があった。
全身を強張らせる。この気配は]
…………。
[思わずナターリエの影に隠れるように。
歩き去るクレメンスから身を遠ざけた]
―現在・遺跡―
[浅い眠り。それを破る大気の震え。]
[びくりと跳ね起きる。]
……なんだ、今の……?
[再び聞こえる。ここより少し東側から。そちらを見やり。]
……竜?
[呟いた後、そちらへと駆けてゆく。]
―→墓地―
…多分、墓地のある森だと思う。
昨日もあの場所で、木が一本喰らわれていたし。
[困惑するブリスに声をかけ、どうする?と問う。]
[しかしかがむ拍子に、その足の力がふらりと抜ける。]
……は、まったく。
こんなになって、しまうなんて……
[力の欠如は、
力の供給を止めて。
それが奪うは当然――かわりとなるもの。
力の代わりとなりしは……
昨日の、樹へと捧げたしづくに同じ、苗床自身の……]
─墓地─
[ふわり、と。
滲み出るように現れる、姿。
力ある者の目には、一瞬重なるように不思議な影が見えようか。
黒と白の、龍の影]
……まったく……いい加減にしてくれ……。
[跳んだ先の光景に、こぼれ落ちるのは、ただ、嘆息]
−中央部・広場のそば−
[赤、黄、緑、青、白。淡いいろも濃いいろもとりどりに、花ばなは広場へと続く道のかたわらで、ほのかによい匂を漂わせ、花壇いっぱいに咲いて居りました。それはとても綺麗なのですが、端のほうには萎れたものもあったのでした。]
ぜんたい、どうしたのだろう。
[しゃがみ込んでじいと見つめながら呟くと、そばで世話をしていたお爺さんがこちらに顔を向ました。]
いって、みる。
[緊張を声ににじませたまま。
ダーヴィッドの問いかけにはそう答え]
ごめんなさい、先にそっちにいかせて。
[ナターリエに謝った]
「ああ、それは遠いところから来た花なんだよ。
けれどもこの町の気候は合わなかったようだね。」
気候が、合わない?
「そう、その土地ではないと生きられない花だったようなんだ。」
……他の場所では、生きられないのだね。
「かわいそうなことをしてしまった。」
[ざく、ざく、ざく。
お爺さんが死んでしまった花の面倒を見るのを、ベアトリーチェはなんにも云わずに見ていました。その膝のかさぶたは、いつの間にか消えていたのでした。]
[今はやってきた気配に気づくも遅く。
しばらく声の聞こえた後に、ようやく気づくであろうか。
金の亀裂の走る暗緑をそちらに向けると、時の竜族と……
声をかけようかと、口を開くも、言の葉は零れることがなかった。]
[花びらを追う...。
しかし風の申し子とは言え、人の子。
翼を持たぬ身では到底追いつけず]
くわっ!とりあえず、こっちか!
『ていうか、絶対大丈夫じゃないだろう!
心配するに決まっているだろ!嘘つき』
[コエを頼りにそちらの方向に走る。
気が動転していて、コエが声になっていることに気づいていない]
−現在/探偵事務所−
[アマンダは墓地で起こっている出来事に気付かぬままに呟く]
…どうして。どうして、君は、巻き込まれた? ハイン?
[*答えは返らない*]
方や生み出すもの。
方や育むもの。
生命を巡らせる者同士が。
何故、相争うか。
[呟く刹那の瞳は、冷たき時の竜の異眸。
その肩から白梟が飛び立ち、ふわり、倒れし竜の傍らへ]
─墓地─
[影輝王ハーヴェイへ一礼をして]
[オトフリートに一瞬遅れて、姿を現した。]
[血の匂いが満ちる墓地へ]
………。
お集まりだな。当然だが。
[アーベルを視界に収め、肩を竦めた]
何故、この二人が?
[感じるのは、かれの心配の情か。
困ったような、その色が、少し、口元に浮かんだか。
落ち着けた息でようやく、時の竜の言の葉に。]
ただ。
試すためだけに。
殺されたかの子が。
……僕には、この竜よりも、大切なのだよ
[その時、北東から強大な生命の気配が発せられる]
!? これは……
[こちらへ歩み寄ってくるダーヴィッドに]
……これはイレーネさん、ですか?
[そう問いかける。その時、彼女たちの横を何も言わず歩み去っていくクレメンス。そんな彼を恐れるように体を隠すブリジット
彼が向かった方角を見遣ると]
そうですね。いまはこっちの方が先決です。行きましょう
[そう言って彼らと墓地へ向かう彼女の腰の長剣がドクンと鳴動したのを、彼女も同行者も気付くことは無かった]
[舞い降りた梟はふるり、身を震わせて。
歌う。
それは穏やかで、どこか哀しげな女性の声]
「さがしていた子
さがしていた子
いとしき子
生命の子
腕にいだきて祝福を
生命の海の洗礼を
まよえるいとし子
かえっておいで……」
[白梟は何度となく、歌う。
それは、生命の竜王より託された、歌]
エントは森を護るもの。
それは精霊でなくとも、翠樹の性か。
[口許に指をあてる仕草]
[翠樹のものは酷く弱っているように見えて]
[白梟の歌声は、弔いの歌のようだった]
[その場でミハエルが口を出すべき事は何も無く]
[ただ黙って]
―墓地―
[鼻につく臭い。][赤く染まる女。]
[そして右腕の無い少年。]
[一瞬顔をしかめ。]
[オトフリートとミハエルの姿が見え。]
……いや、僕も今来たばかりで何がなにやら……。
う、うん!
[ナターリエも共に来るのを確認しながら。
手を引かれて一生懸命に走る。
行く手の力と走ることとに気を取られて、その場にあった他の異変には気が付くことが出来なかった]
―…→墓地―
僕はこの森の親のようなものだ
ずっとずっとずっと
この森が、つくられるときより、ずっと見ていたのだから
[先より、落ち着いた様子で。
本来は深いあおの瞳は、もう暫くは暗緑のままであろうか。]
……そう、か。
[歌う白梟を見る事無く。
ティルの言葉に、呟くように]
……輪転を司るものとして、あるまじき行いではある……が。
……しかし……。
不当な殺しを僕は赦せぬし、
かの女はきっと、知らずなら、
また繰り返そう。
痛みを知らずば、痛みを与えられよう。
[白梟の歌は聞こえているのだろうけれど]
僕とて、かの女を殺しはしない。
手加減はしたよ。
……覚醒を促してしまったようだが
[困ったような声。
それから、ふと、気配を感じる。
風の。]
……雷光の蛇王に、問うたら。
どちらの非を重く見るのやら……。
[そんな呟きをもらしつつ、イレーネの傍らに膝をついて、ティルを見やる]
ああ……確かにな。
彼女は律を知らぬ律の繰り手。
その危険性はあっただろう。
とはいうものの……死なれても、困る。
律を知らぬ同族を、放置はできん。
皇の元へ、連れて行かねばならんからな。
ー墓地ー
[走ってきたのではないだろう、しかし飛んできたのでもない。息も切らすことはなく、静かに集まる者を眺める]
どうしたことです?この有様は。
[しばらくの間を置いて、ベアトリーチェはふっと、顔を挙げました。どこかでなにかが起ったのを、感じたかもしれません。誰かの声を、聞いたかもしれません。けれど、ぼうっとしたかおは相かわらずで、立ち上がると、服に附いた砂を払いました。
花の世話をするお爺さんにぺこりと頭を下げ、さようならの挨拶をして、通りをゆっくりと歩いてゆきます。]
―墓地―
[夜目にも真っ赤に染まった地。
倒れているイレーネ。そして――]
――ティル。
[ぼつん、と名を呼ぶ。後は声にならず]
そうだな。
領域を侵すものは罰せられる。
私も同じ事をしただろう。
[ティルへ頷く。冷ややかなままで
樹の一本へ背を預けて、集まった面々を見渡した。]
私が知る限りイレーネから現れる力はとても弱く、微かなものだった。森を侵すことが出来るかどうかも不安な程に。
何があったのか。
まさか、かの女が、覚醒をするなど僕は思わなかった。
[ゆると、時の竜に目を向けて]
竜の封印が甘いのではないか?
[その目は少し、咎める色か。
名を呟く風の子には、困ったように首をかしげ。]
大丈夫だよ、僕は。
[金色の亀裂の走った目で、笑う。]
[クレメンスの声は聞こえるものの、そちらを振り返る事はせず。
歌い続ける白梟をつ、と撫でる]
ヴィンター。
お方様の力、借り受けられるか?
[歌い続ける梟は、僅かに首を傾げるか]
……無理なら、いい。
お前は、歌を届けていろ。
俺が、無茶をすればいいだけだ。
─墓地─
[たどり着いた頃には、人もまばらに集まりだしていて。]
…イレーネ。
[血にまみれたまま、横たわる姿を見つめる。
暴走しかけた力を押さえ込まれて、意識を失い、眠っているようだ。]
封印か……。
[ティルの言葉に、一つ、息を吐いて]
……彼女は、律を知らぬ竜。
即ち、皇竜の刻印は受けてはいないだろう。
どんな形で力を抑えていたかは知らんが……本来のものよりも、それは脆いもののはずだ。
[彼の養母が彼女を気にかけていたのにも。
その点が、含まれていて]
―墓地―
[そこの気配は酷く乱れていて]
なにが、あったの……?
[小さく呟いたけれど、誰も答える余裕はなかっただろう。
それでも目の前の状況から見えることは少なからずあって]
イレーネの力、いつもより不安定?
[そこでティルの言葉が聞こえた。
驚いてそちらを振り返る。どこまでも冷静な魔の姿を]
彼女の封印は…母親が。
…ひとりで子を産み、ひとりでその子の将来を案じて、刻んだものらしい。
[昼間見た、白い背中に刻まれた、つたない呪。
それを思い出して、小さく伝える。]
竜族は何をやっているのだ。
[ゆると目を向けるそれは。
怒りの色に、染まる。]
返せというても還らぬだろう。
わかっているから僕は殺さなかった。
何ゆえ命の属性あるものに、
それを教えられない。
母があるならその母が
違うのならば他のものが
教えてやらねばなるまいよ
……そうか。
[火炎の若竜の言葉に、呟いて]
何故、道を失したのか……。
竜郷への道標は、魂の内に。
それは、変わらぬはずなのに。
[...はティルの隣に行き、頭をぐしゃっと撫でた]
この状況で、どう見たら「大丈夫」といえるのか、簡潔に答えてもらおうか。
そりゃあ、僕は何も力を持たないし、
ティルから見たら頼りにならないのは重々承知だけど。
心配なものは心配なんだ!
[もう一度ティルをぐしゃっと撫でてクレメンスのほうを見た]
[困ったように、首を傾げる]
確かに私と、この娘は対なる属性ですから、不安定な様子が殊に気にかかって、様子を見てはいましたが、覚醒せぬ竜の子に不用意に力を分け与えたりはしませんよ。
私の司る力は、心の定まらぬ者には毒でしかありませんからねえ。
[こどもはひとり、いつものように、「Kirschbaum」へとあゆんでゆきます。桜の花びらは、はらはらと舞って夜闇をいろどって居りました。
扉をそっと開くと、カランカランというベルの音が聞えます。いつもより人は少ないようでした。今日はユリアンは居ないようでした。いいえ、他の皆も居りませんでした。
カウンターまでいって、せいの高い椅子によじ登って腰をかけますと、両の肘を突いて頬に手を添えました。外に居たせいか、少し冷く感じます。]
[冷静なのを装うことなどとうに慣れて。
高ぶりを抑えるも、すぐにできること。
竜の二人に、ごめんと小さく呟いて。]
……それでもかの子は、何故、死なねばならなかった。
たかだか力を試すためだけに。
[風の子に、コエを届けられる相手に、撫でられて。
ようやく、その瞳からしづくは溢れた。]
[そっと、イレーネを抱き起こし、乱れた衣服の狭間に刻印を見る]
ああ、これが封印の印ですか…幼い頃に施されたせいで、所々掠れている…どうやら、そのせいで、力の制御が出来なくなったようですねえ。
─墓地─
[2人とともに墓地へ駆けつけると、そこは混迷とした気配]
これはまた……
[血を流し、倒れ伏すイレーネ。右腕が無く、眼に亀裂の入ったティル]
凄惨ですねぇ
[そう呟いた彼女の口許は僅かに笑みの形に歪んでいた]
[翠樹の魔の瞳に宿る、怒りの色に。
紫と翠の双眸は、僅かに伏せられるか]
……返す言葉もない。
輪転を司るものが、その理を失した事。
その事実が確とここにあるのだから。
それにより、俺にとって慈しむべき世界が傷付き。
……俺を育てた竜王の想う、いとし子も傷付いた。
[その場の空気は力を受けてひずみ始めていて。
けれど下手に手を出すと逆に均衡を崩してしまいそうで]
…………。
[無意識のうちに、そっと近くにいた人物に触れた。
すなわち、対たる存在であるナターリエの手に]
[ティルの問いに、ああ、と頷き]
ですから、あれは私の使い魔。様子を見ていたと申し上げたでしょう?
何の力も持たぬ、ただの夢魔ですがイレーネは時折夢にうなされていたようなので。
[一瞬、鋭い視線がオトフリートを見返したか。…だがすぐに、それも笑みに擦り変わる]
御意のままに。
[慎重に、イレーネの身体を降ろし、立ち上がって静かに後ろに身を引く]
使い魔なのはわかっているよ。
君の使い魔が何故そこに居たのか。
夢にうなされて?
君は何かかの女に言ったのだろうか。
かの女は使いこなせていない力を、何ゆえ突然、使おうと思ったのか?
君ならわかるでないのか? クレメンス。
……皆も、下がってくれ。
[クレメンスが離れるのを見て取ると、他の者にも静かに声をかけ。
右腕の鎖を解く。
ふわりと揺らめく無限鎖が、時竜の周囲を舞い]
−Kirschbaum・一階−
[ぼんやりしていると、眼の前にジュースの入ったグラスが置かれました。月の光を受けて、柘榴石のようにきらめいています。]
ありがとう、ハーヴェイ。
[お礼を云って、端に口をつけました。こくん、小さく喉が鳴ます。]
……エーリヒが、居なくなってしまったのだって?
[そう訊ねると、ハインリヒも居なくなったのだと、教えられます。さきほどまでオトフリートやミハエルが居たことも、伝えられるでしょうか。もしかしたら、呆れていたりするかもしれません。けれどもこどもの耳には、上手く入らないのでした。]
…書の再封の使命を終えたら、俺が連れて行きます。
場合によっては、裁かれるかもしれないけど、
彼女には、知識と…居場所が必要だ。
[目を覚まさぬままのイレーネを見つめる。]
[ティルの顔を見返す]
これを言うと、私が街に住みにくくなるのですが、言わねば私も殺されますか?
私にとっては、夢と心は我が領域、時折街に住むものの夢を覗くこともある。まして、街にやって来た生命の竜、気にならぬ筈がないでしょう?
イレーネと直接言葉を交わしたことは余りありませんよ。せいぜいが挨拶程度。
先刻も申しましたとおり、あまり近付き過ぎては、彼女のためにならぬと思っていましたからね。
彼女が最近特に不安定なのには気付いていましたが、この街に集まった方々の事を思えば、それも無理からぬことと思っていました。それ以上の事は解りません。
……多少、無茶だが……ま、100年分程度の生命を対価にすれば、封印された状態でもできるだろ……。
[ある意味ではもの凄く物騒な事を呟きつつ。
右目に左手を押し当てる。
そこに宿る皇竜の刻印、その力。
それを、ほんの少し用いるために]
[更に空気が変化してゆく。
何かあれば自分にできる限りのことをしようと。
ナターリエの手に触れたまま、事態の推移を静かに見つめる]
[アマンダが居たのは、雷撃の気配残る、木で囲まれた空間。
土の属するものと切り離されていた為に、大地への衝撃は伝わらなかった]
ん、ここに居ても…これ以上は、無理。
他の場所も、他のヒトも、調べないと。
[アマンダの脳裏を、イレーネとユリアン、そしてオトフリートの姿が過ぎる]
さ、行こう、千花。
戻ってるかも、ね?
[そんな状況で無いとは、露知らず]
−→Kirschbaum−
[ひそかに薄ら笑みを浮かべていたが、ブリジットの手が触れ彼女の影輝の気配が流れ込むと、ハッとし、彼女の手を握り返す]
[近くにいてくれる、風の子に。
感謝のこころを。
ゆるりと、神父姿の魔族を見る。]
君はいつもそうやって濁す。
本当に隠し事はないのだろうか?
否や。
まあ別に僕は君が何を隠そうと関係などない。
かかわりの深かったものを考えるならば
そういう手段の君が一番深かったのではないか?
なれば君は何をそそのかしたか、考えても仕方在るまい?
むしろ、私が、お二人に御聞きしたい。
なぜ、今ここに、イレーネの前に現れたのです?
[視線は、ティルを離れ、オトフリート、次いでダーヴィッドへと移る]
["無茶"の言葉に、どうせ止めても聞かないだろうとけどと少しだけ呆れつつも、じっと様子を伺っている。]
[頭の中を整理しながら。]
[神父の言葉を聞きとがめて、表情が凍る。]
…俺の、せいなのか?
[呟きは小さく。
昼間の彼女の困惑。
自分の言葉が、彼女を刺激してしまったのだろうか?]
無限なる虚の王。
虚竜ウロボロスの力を受けし者。
虚の申し子にして、命のいとし子たる者。
皇竜の承認を受けし、時竜の名において。
輪転の眷属たる娘、その力を今しばらく鎮めよ。
我、皇竜の力を借り受け。
命竜より託されし祝福と共に。
汝に刻印を授けん。
[ばさり、と。
翼が大気を打つような、そんな音が周囲に響き渡る。
人の姿には在りえぬ真白の翼が刹那、その背に閃き光を放つ。
琥珀の色の、穏やかな光。
合わせるように、歌い続ける白梟も羽ばたいて。
琥珀色の、光の乱舞]
[ハインリヒはなんと云っていたでしょうか。
たしかその推理をベアトリーチェもほんのわずかですが、聞いていたはずなのです。あのときここに四人居て、その中の一人が、どうだとか。けれども、のうち二人は、居なくなってしまいました。そのうち一人は、ベアトリーチェ自身です。すると、残るのは誰でしょう。]
……ユリアン?
[でも、そんなの、ベアトリーチェにはおかしいように思えました。そんなふうには見えなかったからです。それを云うなら、誰だってそうとは見えないのですけれども。
いいえ、ほんとうにそうでしょうか。きょう会ったクレメンスは、]
[再びティルに視線を戻す]
私が何を濁していると?
問いには全てお答えしている。どこかに矛盾がありますか?
あると言うならそれを示して頂きたい。
魔なる身に、無条件の信頼など望むべくもありませんが、怒りに任せて竜の子に訳も尋ねず傷つけたのは、あなただ。
訳を知りたいなら、なぜ、彼女に直に尋ねなかったのです?
こうして、口も聞けなくしてしまう前に。
彼女自身に、言い訳も、問い返しも出来ぬようにして、私が彼女を唆したと決めつける、その根拠は一体なんです?
私が使い魔を彼女の傍に置いていたから?ただ、それだけですか?
…今来たのは…彼女の声が聞こえたから。
苦痛が。縋るような悲鳴が。
[神父の視線を受け、目は逸らさずに。]
この街に来るまで、彼女がこんなところにいたなど、知らなかった。
[手を握られればその顔を見上げて。
無意識のうちの動作だったが小さく笑って肯いて。
こちらからも手を握り返し、再び対峙する形になっている人々の方へと向き直った]
あっ。
[やがて琥珀の光が辺りを染め上げれば。
ゆるやかに、けれど大きな力が動くことに驚いて、握り返す手に少しだけ力が入った]
[舞い散る光は、生命の竜王より託された祝福の光。
生命の海より舞い上がった生命の素。
それは倒れた生命の竜を包み、傷を癒して。
掠れた刻印を柔らかく修復する。
新たな印を刻むのではなく。
思いの込められたものを修復する。
……勿論、本来の力を使えぬ状態では、それが精一杯である、とも言うのだが]
言うなれば君のあり方に。
[魔を見る瞳はしずかに]
雷をここより消したのに、樹の力が混じっていたのだと影が言った。
何故君は天の力をその身に受け続けることができる?
……わけなど聞いた。
ただ望むからとかの女は答えた。
それがすべてでそれで終りだ
ならば聞こうか、クレメンス。
ああ君にはわかるまいかな
子を奪われて
しかも試すためだけに。
抵抗もできぬまま殺されて。
それでも殺せぬ僕の気持ちが君に*わかるのか?*
[胸元をきゅぅと、掴みます。そこには、無限のかたちをした輪がありました。その拍子に、グラスがかたんと倒れます。]
あ。
[声をあげたときにはもう遅くて、ぱたぱた、ぱたぱた、液体は机の上から零れ落ちてゆきました。服が濡れなかったのは、運がよかったでしょうか。]
−Kirschbaum−
[アマンダはベルを鳴らし、店内へと入る。
店内を見回し、ハーヴとベアトリーチェに笑おうとして…上手く笑えずに微苦笑を浮かべる]
やあ、こんばんは。
……皆、まだ…なの?
何か、あった?
「チッ」
[不安げに茶色の目を向けて問いながら、いつもの席でいつもの品を頼む。満月腹から三日月腹にへしゃげた千花にも果物を。
千花はアマンダの頭の上から、ベアトリーチェに一声挨拶]
……く……。
[光の乱舞が静まった後、上がるのは苦しげな声。
同時に、白の翼が弾けるように消え失せる。
倒れ掛かる身体を、どうにかついた手で支えた。
俯いた顔。
その右の瞳から紅の物が一雫。
地面に向けて、零れ落ちる]
[大きく溜め息をつく]
何を言うかと思えば。天と魔は、極にして対、無論互いの力を弱めはしますが、均衡を保つにはそれが最上。
なぜというなら、この世界を傷つけぬために成した術のため。それ以外に何があります?
…彼女が望むと言ったなら、きっとそれが全てだったのでしょう。
生命を望むはその本性ですから。
ああ、ハーヴェイ、ごめんね。
[おしぼりを手にして、拭き取ってゆきます。]
アマンダ、千花、こんばんわ。
[そう云って、微笑いかけました。不安もなんにも、もう、そこには見えません。]
……あいっかわらず。
するするするする理屈ばっかりごねて、自分の腹の底は見せやしねぇ……。
だから、嫌いなんだよ、あんたは。
[言葉の刃を交わす二人の魔。
そのやり取りに、ぼそりと呟く。
刻印に強く抗った影響か、口調は完全に、素]
オトフリート!
[傾いだ身体を労わるように手を差し出し、その瞳を見て表情を曇らせる。
それ以上言葉をかけることはできず。]
[アマンダは、零れ落ちた石榴色の液体に目を瞬く]
…あ、大丈夫?
ん、こんばんは。
[アマンダが手を伸ばす前に、ハーヴはグラスを片付ける。
きれいになったカウンターに、岩清水と果物と、それからもう一杯の石榴色。
アマンダはそれをベアトリーチェへと渡し、自分は無色透明な岩清水で口を湿らせてから、問いかける]
…皆、どこだろ。知ってる?
[千花はカウンターに降りてお食事タイム]
ないものなど、見せろとは言わん。
あんたの領域は『混沌』。
そして、俺は虚無。
どちらも、どこにでもあり、どこにもない。
そんな不確かなものを求めるのは、とっくに飽きたさ。
ああ……儀式中に、何やら言ってたな。
俺の目的の中には、確かに彼女を探す事も含まれていた。
命竜王の頼みとしてな。
それから……あと、なんだったか。
ああ。
ここに来た理由か。
俺にとってのはじまりの世界を無に帰しかねない力がある地。
そこが不安定になったから、引き寄せられた。
それ以上でも、それ以下でもない。
[今にも均衡が崩れてしまうのではないかという気配。
それだけの力が動いた。
そしてまだ力は、司る者たちの言動に反応して動いていて]
っく。
[少しでも加減を間違えればこの場の空気は一気に崩れかねない。
既に宥めるのではなく、ただ崩れないようにするだけ。
それだけでも精一杯だった。
握った手から流れ込んでくる月闇の力が、ギリギリの所でそれを支えてくれている]
……心配するな。
100年ばかり、生命を削ったが、何事もない。
[言葉を失う若竜に、静かに告げる。
微かに紅を帯びた紫の瞳、そこに浮かぶ刻印は、冥い光を放っていた]
[静かに、オトフリートを見つめる]
それがあなたの考えですか。
では、お望み通り、私の考えを申しましょう。
私は、まさに、あなたとティルを疑っている。
オトフリート、あなたは、何かに呼ばれて来たのだと言った。
それが鍵の書に呼ばれてのことだとしたら、あなたこそがアレを開く者なのではないですか?
時空を司る、古き竜、虚無の申し子。
この世を虚無に返すのが、あなたの役目なのではないのか?
そして、ティルは、永い時を、一つのものを守り続けていた。だが、その時が尽きかけている。
力があればと、思ったのではないですか?
大きな力があれば、時を引き延ばすこともできると。
−Kirschbaum・一階−
[ゆっくりゆっくり、意識が巡ります。足りないこどもには、いろんなことが起り過ぎていて、追いつけずにいるのでした。もしかすると、そのうちに手遅れに、いいえ、もう手遅れになっているのかもしれません。けれどもベアトリーチェには、どこか遠い出来事のようにも思えてしまうのでした。
グラスを持ち上げると、柘榴石のいろをした液体が揺れました。]
オトフリート。私から見ればお前も、其奴も大差ない。
いつまで膠着状態を続けるつもりだ。やるならやれ。やらぬのなら鎮まれ。
[小さな呻き声に、ブリジットを睨んだ。]
力在るものが心を乱すことは好ましくない。
[クレメンスの言葉を、呻吟する。]
生命を削った、って。
[サラリと言われた言葉に思わず横から呟いて]
……え?
[今まで思ってもみなかった視点を告げられ、一瞬呆然とクレメンスとオトフリートを見比べた]
ティルの事は、知らん。
勿論、裏づけがないというのは自由だ。
そこで論じても、時間の無駄だからな。
そして……どうやら、あんたは時空と言う力を、多少取り違えているようだな。
時空の領域は、無限。
そしてその無限は、天聖の悠久と対となり。
ただ、あるがままに全てを見続ける。
不変にして不変たる事、それが時空の属を宿すものの在り方だ。
そして、俺は。
この世界の消滅など、願わん。
それをするくらいなら、自らを虚無に還し、たゆたう。
[クレメンスの言葉に、...は叫んだ]
ティルじゃない。
ティルは決して「鍵の書」なんて触れていない。
ハインリヒさんの捕らえた力が翠樹としても、
アレはティルが使った力じゃない。
僕はティルがどんなに遠くにいても、
ずっと側にいたから、それは間違いない。
[きっぱり言い切った]
[ミハエルの言葉に、微かに笑んで]
俺は、落ち着いているが?
文句は、人の言葉の裏を取ってごねたがる、そこのおっさんに言ってやってくれ。
ぶっちゃけるが、今のでかなりへたばってんだ、こっちは。
[ミハエルの言葉を耳にして、小さく吐息を零す]
やれやれ、確かにここで言い争ったところで、意味は無い。
私としたことが、対なる者の命の乱れに、柄にもなく引きずられたようですね。
[いつものように笑み、オトフリートを見つめて頷く]
解りました、それがあなたの真実なのでしょう。ですが、私はそれを信じることが、まだ出来ません。
『うん、ありえない』
[今までなら、そのまま揺らいだままだっただろうか。
けれど今回はすぐに立ち直ってオトフリートの方を見た]
想いはしたよ
手にいれようかと。
ながきときを待っても戻らぬ彼女に。
[心の魔にあっさりと言い切った]
だけれどそれを手にいれたからとて、かの女が産まれるとは限らない。
もう僕にはかの女のことがしっかりわからないのだから。
なればかの女の産まれるかもしれぬ
それを待てる時間を望む。
かの女の幸せだけが「幻」とかの女にいわれた僕の望みなのだから
言いがかりは、方便か?
罪をなすりつけ、逃げるための。
[神父の瞳は底知れなく思えた。]
輪が一つ、消えたと聞いたが。
[先達の同族に眼をやり、訊く。]
[アマンダはハーヴに告げられる言葉に、小花散るグラスを傾ける事も忘れて聞き入る。
ベアトリーチェの様子まで、気が回らない。気付けない]
[千花は聞いているのかいないのか、回復の為にか果物を黙々]
[ダーヴィッドの言葉には肩をすくめる]
あなたは、同族の言葉を疑いはしないでしょう。魔を信じよと強制するつもりもありませんが、先に罪を言い立てられたのは、私。
私から見れば視点は逆です。致し方ありません。
[先に気が附いたのは、ベアトリーチェだったでしょうか。]
……アマンダ?
アマンダは、どう思う?
[その問いかけの意味は、どんなものか、自分でもよくわかりませんでした。]
[――そうして、最後に、
オトフリートとミハエルが 「イレーネとティルが」
何かあったと叫んで消えたと聞いて、グラスの中身もそのままに立ち上がり身を翻す。
片手で攫うように千花を抱いて]
――行かなきゃ! イレーネ! ティル!
[後ろも見ずに、夜の道へと駆け出していく]
[クレメンツの声にくすりと笑って]
生憎、僕には男色の気も少年趣味もないんでね。
せっかく恋人になるんなら大人の女性がいいな。
…真面目に話すと、まあ何故だか知らないけど、
現状唯一僕が使える技でね。ティルと交信できる。
ティルがハインリヒさんを襲った大きな力を放ったとしたら、あの時僕の側にいた「はな」が教えてくれただろう。今日みたいにね。
[ふんわりふわり。ティルの額から三つ花の蝶が飛び出して、...の手のひらに止まった]
[ふと、気づいて目を向けるは北の遺跡。
ゆっくりだが、じわじわと高ぶってくる封護結界の力。
奪われたものを取り返すべく、無差別に引き込み捉える力。
再封の為に渡された指輪で、この力を制御できぬだろうか?
唐突に、そんなことを思いつく。]
[額から抜け出た花は。
ふわり ふわり]
……花はカにて香あるもの
風の力に近しいものゆえ、君に近付いたのだろう
なぜかわからないけれど、僕にはユリアンのコエが届くし
ユリアンにもそうなのだろう
…………
[ただ不安そうに、亀裂の入った目がユリアンを見る]
[問いは届きはしなかったようで、ぽつんとベアトリーチェだけが取り残されました。ハーヴェイに、「行かなくていいのか」と訊ねられたかもしれません。]
うん。ベアトリーチェは、よいんだ。
[グラスをかたむけて、ゆっくりと喉に流し込んでゆきます。]
……駄目だと、云われているから。
[微笑って、云うのでした。それは、ぽっかりと空虚な笑みでした。]
[かすかに、動く。
声は出ない。
傷が、癒されているのを感じた。
封印を、施されているのも感じた。
声は、出ない。]]
[だが、流石に…咄嗟に術式を組めるほど、能力があるわけじゃなく。
もう少しきちんと学んでおくべきだったと、ちょっぴり後悔。]
[相変わらず冷ややかな視線をクレメンスに投げたまま。]
ふぅん……。
貴方からそんな言葉が聞けるなんて、ね。
貴方の方がよほど……珍しいと思うけども?
本来の属性を、別の属性で隠してるなんて、ね。
[うっすらと、ゆっくりと目を開く。
焦点は合わないがぼんやりと赤い、真紅の髪が、見えた。]
……
[唇を薄く開く。声は出ない。]
[ティルの視線に首をかしげて]
ティル、どうしたの?
大丈夫だよ。何も心配することなんてないよ。
だって、約束だもの。
[しかし...もティルの手をぎゅっと握り。
まるで「どこにも行かないで」といわんばかりに]
力、が。
[動いてくるのは感じていた。
けれど現状ではこれ以上どうにも手をだしようなんてなくて。
緊張しながらただそこに立っていた]
−→北東−
[目的地もわからぬままに、アマンダが目指したのは北東の方角。
森と、墓地――イレーネが身を寄せるランプ屋の小屋のある場所]
[千花を片手に抱いたまま、未だ重い身体で走って走って――]
[アーベルに、笑みを向ける]
そうですか?これも生活の知恵というものですよ。
あなた方、精霊と違って、魔族は嫌われ者ですからねえ。
おかげで、こんな有様です。
…今は、休んだ方がいい。
つい、本性に戻ってしまったんだろう?
枯渇しているから、暫くは動けないと思う。
[目を開けた彼女に、そっと囁いて。]
[絆を結ぶ者たちの様子に、ふと、笑む。
永遠の孤独の内にある彼には。
それは、決して手に出来ぬものだから。
……もっとも、その笑みは近づく力の波動に溶け。
紫と翠の異眸が、空へと向けられる]
[すうっと、睡りにつきます。昨晩とおんなじように、ただねむっているようにも、まるで魂の抜け殻のようにも*見えるでしょうか。*]
ん…まぁ人間じゃない、ってだけで怖がる人もいるからねぇ。
…でも、貴方の属性……精神まで隠す必要なかったんじゃないの?
神父として人に紛れて暮らすためにしても、ね。
[何か、よくわからないも
何か、何かを感じて。
ユリアンを見ているも、
静かな心の魔の声に。
そちらを、見やり。
手の力は変えられぬままに。]
−→墓地−
[走って走って、辿り着いた先には――店に居なかった皆が揃っていて。既に、なにかがあった後なのだと、知らしめていた]
――っ、イレーネッ! ティル?
どうして、なにが!
[アマンダは荒い息のままに、名を叫ぶ。
やってくるうねりにも、気付くのが遅れて――ただ目を見張るのみ]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
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