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学生 ラッセル に 1人が投票した
教師 イザベラ に 6人が投票した
踊り子 キャロル に 1人が投票した
見習い看護婦 ニーナ に 1人が投票した
教師 イザベラ は村人の手により処刑された……
次の日の朝、踊り子 キャロル が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、村長の娘 シャーロット、冒険家 ナサニエル、お尋ね者 クインジー、学生 ラッセル、見習い看護婦 ニーナ、流れ者 ギルバート、のんだくれ ケネスの7名。
[そうして、己以外に誰が食するのかも分からぬ料理に無駄に腕を奮ってみたり]
[見事な出来栄えのオニオンパイを見て、ほんのりと満足げに微笑んだ。]
しかし。
私がこんなふうにものを作って食べることを楽しむなんて。
そんなふうになるなんて思いもよりませんでしたね……
[厨房の作業台の上に広げられたささやかな晩餐]
[ひとり静かに食事を取りながら]
[此処に来るまでの、つい先頃までの自分を思い出して、感慨深げに洩らした*]
[夜の帳の下りる頃、かれはその場から離れた。
部屋に戻り寝台に腰を下ろして天を仰ぐ。
閉じたスケッチブックはその脇に。
硝子越しの月のひかりを受けて、*物思う*]
[夜は終わり、朝が来る]
[キャロルに向けた刃のために破れた衣服は、また新しいものにかわっていた]
[引き出しの中にはまだあるのが、不気味さを覚えさせるが、男はその点を気にする素振りすらなかった]
――さて
[使者が終焉を齎した――それは二人(番人とハーヴェイ)]
[己が殺した――それは一人(ネリー)]
また死体が二つ増えたか?
それとも一つか
どちらにせよ、居ないということは無いな
[己が無事であった以上、もっとも気になるのはシャーロットの無事]
[もし無事でないのなら――と、男は考え、水差しを取る]
[喉を鳴らし水を飲むと、窓の外を眺めた]
[緋に情景が重なる]
[成す術なく狩られ、火をつけられ、町が消えた日]
[傷を負い、その目に最後に捕えたものは、緋色の髪を散らして火に沈む小さな妹の姿――]
[それは陽が落ちてからのこと。少女は焦茶色のブランケットを肩に羽織り、廊下を歩いていた。静かな廊下に小さな足音が響く。しばらくして、とある扉の前で足音は止まった。キィ、と扉に悲鳴を上げさせ中へと滑り込む。そこには既に先客が居た]
……イザベラ?
何だ、ここに居たのね。
[書庫の入り口とその奥で、お互いに僅かな驚きを見せる。イザベラも平静を装い、暇潰しが出来そうだから、と返答してきた]
そうね……ここなら時間潰しは出来そう。
私もそのつもりで来たのだし。
ご一緒して良いかしら?
[訊ねると、イザベラはしばし考えを巡らせた後に承諾の言葉を返してきた。万一があっても少女相手なら大丈夫だろうと思ったのかどうかは定かではない。礼を言いながら書庫の中へと進む。周囲が暗いせいもあってか、紫のオッドアイもイザベラに気付かれることは無かった]
[しばらくの間はお互い何も喋らず、ただ時間だけが過ぎて行った。少女は植物の事が書かれた本を開く。読み進めて、とある項目でページを捲る手が止まった]
……おなじ……。
[そのページに書かれていたのは、この城の周囲に咲き誇る緋色の花について。じっと見つめているうちに、残る左目も滅紫へと変じた]
……ねぇ、イザベラ。
緋色の花について書いてるのがあるわよ。
しかも見て、稀に白い花も咲くんですって。
[読んでいた本を示し、イザベラを呼び寄せる。花についての知的興味が働いたのか、イザベラは少女に近寄り本を受け取った]
この花、何て言うのかしら。
イザベラ読める?
[相手の意識を本へと集中させる]
[そして、小さく囁いた]
[ブランケットを左手で持ち上げ、自分とイザベラの間に垂れさせる。右手はケープの中へと滑り込み、銀に煌めく刃を掴み]
私に、見せて?
[ブランケット越しにイザベラの心臓めがけ、突いた。イザベラの身体が突いた衝撃で僅かに揺れる。突いたまま、刃――刃渡り30cm程のナイフを抉るように捻った。ごぽり、と何かが溢れる音がする]
っ――!
[同時に左腕に走る鋭い痛み。イザベラの最後の足掻き――万年筆の先が左腕に刺さり、表情を歪めた。万年筆を振り払うようにしてブランケットをイザベラに投げつけ、突いたナイフを引き抜く。イザベラの身体は立ったままの体勢で後ろにどっと倒れた]
…っは、ぁ…。
[少し息が上がる。人を手に掛けたことに対する恐怖などではなく、単純に腕の痛みから来るもの]
……緋色の中の、白。
なん、だ、ハズレ、か。
[倒れたイザベラの周囲に広がる緋色。少女の滅紫の両目には、緋色の花に似た、夢幻の白い華が映し出されていた]
[時は流れ、外が白み始める時間だった]
[獣が緋を散らした地にめぼしい物証を見つけることは出来なかった。持ち込んであった食料を齧り、水代わりに葡萄酒を流し込んで思考に耽る]
番人はともかくとしてなぜあの男がやられた?
隠れ蓑にならない者、目障りな者、脅威になる者、狩りやすい者……どれも中途半端だな。
あ゛ー血の匂いってだけなら何の情報にもなりゃしねえか。
[苛々と髪を乱暴に掻き、ふとその手を止めた。この地に来てから身なりを構わずいた身は鼠と変わりない]
ちっとどうにかしてくるか。
匂いでこっちの動き感づかれちゃやべえしな。
[夜の帳が下りる前に水の出る一室を乗っ取り、慣れた態で水を浴びた。暗い色が並ぶ棚の中からよく似た色の古臭い衣服を拝借して身に着ける]
[目を閉じても浮かぶのは緋――それは、先に見たイザベラの死]
[人が人を殺すことに嫌悪を抱けるものがいるとしたら、それはたいそう恵まれた者なのだろう]
[水差しの中、目を覚ました時に飲もうとし、それが空になっていることに気付いた男は昨日と同じように外へ出た]
[廊下の黒ずみは少し薄く、人の死の臭いも強くは無い]
[だが進むにつれ、臭いが強くなる]
――また誰か死んだか
[そうして、夜と朝の狭間、まだ天秤は夜に傾く頃、男は戸を開けたのだった]
[夜が深まり獣が好む時間の前に浅い眠りを貪り、夜半は刃物を手に息を殺して過ごす。クインジーの企みがどう転ぶにしろ、下手に近づいて巻き込まれるつもりはなかった。ことが起こればそれなりの騒ぎになるだろうと薄く扉を開けた地下室で耳を澄ます]
[書庫の中、倒れたイザベラにかかるブランケットの端で刃に付いた紅を拭き取る。刃をケープの中に隠し直すと、痛みが走る左腕を押さえた]
……この服、気に入ってたのに。
[こぼれ落ちる言葉はその場に似合わぬ暢気なもの。万年筆の黒と自身の紅が混ざり合い、薄い翠色の袖はどす黒く染まっていた]
[ゆるりと顔を上げれば、そこにはクインジーの姿]
…ええ。
彼女も違ったわ。
[促されたことを口にし、視線を男の瞳に合わせる。両の滅紫が男を見つめた]
あ゛ー夜が明けたな。
どうやら命は拾えたようだ。
[雲間から差す光に似た明り取りの窓から廊下に落ちる光を見、もぞもぞと動き出す。毛布から抜け出た夜明け直後の寒さに大きく震えてブランデーを呷り、燃料に変わったところで慎重に廊下へ踏み出した]
野郎の野太い断末魔が聞こえなかったってこたあ、アイツは無事みてえだが…
[どう動くか考えながら階段を上り気配を探る。鼠じみて鼻を動かし感じ取った血の匂いに足を慎重に前に進める。新たな死が生まれた場所に辿り着くのは二人の話が*一段落した頃*]
当たらない、ね。
これでもう人が四人も死んでるのに。
[やや冷めた口調。僅かながら悔しさも乗っていただろうか。怪我には大丈夫と返し、瞳の変化には数度瞬いた]
両目…。
また戻さなきゃ…。
一応、制御は出来るみたいだから。
[しかし今直ぐには出来ないらしく、紅紫に戻る気配はない]
さっさと使者を殺せればいいんだが……
とりあえず、血を流して来い
その後で治療だ
殺しは初めてか? 精神が昂っているんだろう
落ち着いたら目も戻るんじゃないか?
制御が出来るなら、何よりだ
[その色も綺麗だがと、口にするのにためらいもない]
しかし、うまく隠れているんだな、獣は
……あぁ、そうだ
昨日の面々の反応を教えておこうか
イザベラについてはいらないな?
[ケネスが来るのはそのころか]
[能力に興味を持っただろう者、武器に興味を持っただろう者のことを話しはじめる]
[キャロルが使者により翌日に死体で見つかることなど、その時の男は*知る由も無い*]
[血を流せとの言葉には短く承諾の言葉を返し]
…さぁ?
私がその前にどんなことをしていたかなんて覚えてないもの。
けれど、手にした牙は随分と私の手に馴染むわ。
[使い慣れた感があると告げ、自分の右手を見つめる。手には左腕を押さえた時に付いた血とインクが混ざり合って付着していた]
[昨日の各々の反応を聞く頃、無精髭の男が顔を覗かせた。話に興味が向けば、男も共に聞くことになろうか]
そうね、イザベラの反応は要らないわ。
[クインジーに答えて告げられる言葉を耳に入れる。内容の整理は後にして、まずは怪我の治療をする事になった。水場で傷口を洗い流し綺麗にしてから、大人しく治療を受ける*こととなる*]
馴染むか
案外近くで戦ったことがあったかもしれないな
[シャーロットの言葉を聞き、男はその手を見ながら言った]
[反応の話に興味があるならとケネスにも聞かせる]
[ナサニエルは武器を気にしていたということ]
[見せるつもりはなかったが、キャロルの要望をかなえるために武器を見せたこと]
[ギルバートは"見分ける方法"について、真偽を考えているようだったこと]
刃物で傷付けたというのがわかったのに、それ以上何が必要なのかもわからなかったな
発動のときを見たいとギルバートは言っていた。その目を見られないように注意したほうがいいだろう
[既にケネスは"シャーロットの次に"信頼に足る人物であった]
[理由は簡単で、シャーロットが殺されていないから]
[何か言われたらその説明は軽く語られることとなる]
とりあえずはまずその怪我だ
この体は――暫く置いておいても大丈夫だろうな。また服を駄目にするのも面倒だ
―朝・野外―
[東の方より昇り来る太陽によって夜が駆逐され、空が澄んだ青に変わる頃。]
[男は独り、緋色の原を歩く。]
[目指すは、花に囲まれた泉]
……しかし、なんで泉、なんでしょうかね。
[少しく疑問を含んだ言葉が零れた。]
[シャーロットの怪我を消毒し、包帯を巻き、男は場を離れる]
[何もない顔でキッチンへ行き、水差しに水を入れ――]
[男は回想をやめた]
[あまり特別な事でもなかったからだ]
[緋い髪の少年は無事だろうかと、再び窓の外を見た男は、ぼんやりと*考える*]
[何故犠牲者は夜に泉へ向かったのか?]
[泉の何が惹きつけるのか、]
[そんな取りとめも無いことを考えつつ、森の小道を半ばまで進んだところで]
[大輪の花が咲いていた]
[否、咲いて、散っていた。]
[紅い緋い花群のなかに広がる、ひときわ鮮やかな緋の色彩――
それに彩を添えるのは、赤に縁取られた白と波打つ豪奢な黄金]
[何よりも美しい赤を好んだキャロルが、自身を鮮赤のひと色に変えて横たわっていた。]
[引き裂かれた首筋から溢れ出した血で、長い蕊を揺らす花は茎まで赤く染まっている。]
[それの生える大地も]
[男の眼は]
[女の指先の、赤く染められた爪が欠けているのを見て取った。]
[その爪に毒が孕まれていたことを、男は知らない。]
――花も毒を持ち、手折られる際には抗う……だったか。
[確かに彼女は手折られる前に抗ったのだろう、]
[空しい抵抗だったとしても。]
…………
[女の骸の傍に、折り取られた赤い花が落ちている。]
[それを男はそっと拾い上げ、血に染まった女の胸の上に落とした。]
[廊下に何か話している声が聞こえ迷わず書庫に踏み込む。後ろ手に柄を握り胡乱な目が部屋の惨状を映す。イザベラを一瞥し、手を血に染めたシャーロットに短い口笛]
心臓を一突きか、やるねえ。
で、結果は?
[興味を示すのはそれ一点と訊ね、結果に失望交じりの息を吐く。それでも容疑者が減ってくれたことには変わりないとクインジーの話す武器や異能への反応に意識を向ける。聞き終えての感想は一言]
…赤毛のちびが入ってねえな。
[埋葬には来なかったと耳にしても鼻を鳴らすだけ]
[信頼のあるなしに興味はなく、クインジーがなぜ自分に話すのかは問わない。だが推し量る目で見、軽くなされた説明には気のない態で耳を傾けた]
死んだ後の正体なんざ構わねえだけかもしれねえぜ?
[言った後で偽悪めいた響きに聞こえ顔を顰める。獣が仲間をどう思うかはともかく、間違いなく隠れ蓑にならないシャーロットを害する価値は想像が付く]
[後で考えても、男にはそれしか言えることがなかった]
[もしラッセルがかの獣でも、生きてほしい]
[そう彼が望む限り]
[その言葉は、決して口にされない]
[秘めた決意は、大きくも小さくもなりはしなかった]
[ラッセルを庇う言葉にも胡乱な目は変わらない。生きた状態で違うとわかるのは目の前の男ではないと、自分だけは知ってるのだから。だがそれ以上言うべきことはなく男の執着だけを頭に残して扉へ向かう]
あ゛ん? 返り血だけじゃねえのか。
ほらよ、消毒に使え。残りは返せよ。
[血を流すという声に振り返り、ポケットの酒瓶をクインジーに投げる。手当てを手伝うのは一人で十分と昨日と同じく城の内部を巡る]
[玄関ホールへと辿り着いた時、外からナサニエルが訃報と共に戻ったのを見つけた]
へえ、今度は女か…ちっと見てくらあ。
[名は覚えていなくても知らされる死体の状態から誰かはわかった。他に知らせるのか埋葬の準備か残るナサニエルを置いて森の小道へ行く。緑の屋根で朝が来ても薄暗い中、緋と金は良く映えた]
あ゛ーあ、いい女だったのになあ…
[胸に落ちる一輪と欠けた爪を上から見下ろし、血に触れぬよう血の気のない白い顔に手を伸ばす。碧眼を蝶の羽のような睫毛で覆うと、鋭い目が*獣の残した痕を見る*]
そういえばあの男はなんというんだ
[ぽつりと呟いたのはそんなことだった]
[窓の外、彼岸花の中、青が見えるのは少しの時間を*置いた後だった*]
[物音が止んで、人気がないのを見計らって、わたしは廊下に踏み出しました。
できるだけ音が立たないように、杖は持たず、廊下の灯だけを頼りに、手探りで進みます。
目的を果たす前に、見つかるわけにはいきません。
やがて或るひとの部屋を探し当て、扉の内へと潜り込みます。
2人のうちどちらでも良かったのですけど、相手はびっくりしたかも知れません。]
[わたしはそのひとに近付き、言葉を重ねます。
相手の正体を知っていることと、わたしの正体と。]
…それと。
[わたしを「ハズレ」と称した、男の話をしました。
考えて出た結論に確証はありませんから、気をつけたほうがいいかも知れない、とだけ。]
[もし望む訳を尋ねられたなら、わたしは答えたでしょう。
この世界が終わったら、新しい世界に行けるのでしょう、と。
そう長い時間は取らず、わたしは部屋を後にします。
話の間、きちんと眼を見ていたことに、相手は気付いたでしょうか。]
[そうして日が昇る頃。
昨夜のことなどなかったかのように、わたしは部屋を出て、また血の臭いを嗅ぐのかも知れません。
気配には気をつけたつもりでいましたから、何処かで見られた可能性など考えていません。*]
[暗澹たる夜は終わりを告げ、
世界は陽の下に照らされる。
城内の冷えた気配は日に日に増していた]
……なんか、変な音する?
[されど厨房に立ち、煮立つ鍋と顔を付き合わすさまは。なんとも平和だった]
[鍋を一つ駄目にしかけつつ、
一時は温め過ぎたミルクをカップに注ぐと
椅子に腰かけ足を伸ばした]
……料理って、大変だなぁ。
ベルといい勝負かも。
[呟いた名の持ち主が彼岸の人となったのは知らず、
しかし、誰かがまた、殺された事は察していた。
人の手によって――人が。
ネリーを弔わなかったのと同じく、
見に行くことはなかったけれど]
―城内廊下―
[他の人間の寝泊りする場所を探してうろつくのは非効率的なので、取り敢えず人の集まりそうな広間へ向かう。]
しかしねえ。彼は本当に神出鬼没ですねえ。
[と、呆れたように呟くのは、普段見かけないのに、死体が見付かると現れるケネスについて。]
まるで鴉かシデムシか……。
美味しくないや。
[日が経っている所為か、
焦がしかけた所為か。
冷ましたミルクを舌先で掬い、感想を漏らす]
クー?
うん、オレは無事だよ。
……無事ではない人も、
多くなってしまったようだけれど。
―広間―
[人気の無い広間は閑散としている。]
[まだ誰もいないのは起きている人間が少ないからかも知れないし、分散してあちこちに居るからかも知れない。]
[だがどちらにせよ、現状城に存在するすべての人間が集まったところで、もはや此処に来た当初のように広間が人で賑わうことは無いに違いない。]
[大きく溜息をつき]
皆さんが起きてくるまで厨房に居ますかねえ……
[コキコキと首を回して、凝りをほぐしながら廊下に出た。]
[城の廊下は侵入者を拒むかのごとく長く暗く、冷たく淀んだ空気は埃の臭いがした。]
[此処を訪れた最初の時と全く変わりがない。
まるで、この地に現れた人間は一時の招かれざる客であるかのように。]
――此処は。
私たちが去ってゆくのを、じっと待っているのかも知れないですね。
[重苦しく圧し掛かる廊下の天井を半眼の目で見上げた。]
─明け方─
[案外近くで、と言うクインジーの言葉には、「どうかしらね」とだけ返し。瞳の変化を見られないように、と忠告されると小さく頷いた]
能力の有無を疑うのは、それが事実と確定して欲しくないからかしら。
引っかかりを覚えた人は、少し怪しいかも知れないわね。
[話を聞いて思ったことを口にする。傷の消毒には不精髭の男が持っていた酒が使われ、強く漂う匂いと傷口への刺激に顔を顰めた。治療が終わると、話もそれ以上なされることは無く、各々思い思いに散って行く]
[落ちかけた視線を、引き戻す]
うん?
……ミルクあたためていただけ。
[両の手に包んでいたカップを差し出す。
臭いの元とは程無く分かる]
─現在:自室─
[部屋に戻ると僅かばかりの休息を取る。クインジーが言ったように、気が昂ぶっているのは事実だったため、それを鎮めるためにベッドに横になり、しばしの時間そうしていた]
…クインジーが護りたい人って、ラッセルなんだ。
[書庫で話したことを頭の中で整理する。自分の力を明かした時に告げられたクインジーの決意。その対象がラッセルであることが、不精髭の男との会話で知った]
……でも、彼が終焉の使者だったらどうするのかしら。
クインジーはラッセルを護る?
少なくとも手はかけないかしら。
クインジーとあの飲んだくれは多分終焉の使者ではないわね。
私の力を知っても何もして来なかった。
そうなると、終焉の使者は他の五人の中に居ることになる。
[未だキャロルが獣の手にかかったことは知らされていない。選択肢は狭まったが、当たりを付けるには情報が足りなかった]
[しばしの沈黙の後、ぐぅ、と腹の鳴る音]
……どんな時でもやっぱりお腹は減るわね。
我ながら現金な身体。
[腹部を押さえてベッドから起き上がった。廊下に出ようとして、一時停止。左腕の袖に血とインクの汚れ。このまま着ているのも、と思いクローゼットの中を覗く。いくつか服はかかっていたが、明るい色の服は並んでおらず、黒や茶を基調とした服ばかりが並んでいた]
…喪服みたい。
でも背に腹は代えられないわね。
[仕方なしに黒いワンピースを選んで身に纏った。蒼いケープだけは変わらず肩にかける]
[支度を終えると再び部屋の扉へと近付き、まずは外の気配を探る。食事を取りに行く前に例の部屋へと向かい、瞳を確認しなければならない。人の気配が感じられないのを確認してから、するりと扉を抜け、奥の私室へと駆けて行った]
[厨房に近付いて感じたのは、洩れ出る異臭]
[扉を前にすると、一層激しくなる。]
まさかまたイザベルさんが?
[先日の惨状が脳裏に蘇った。]
─二階・誰かの私室─
[浮彫の扉を開け、その先の小さな扉を潜り、大きな鏡の前へと立つ。映し出された両の瞳は暗い滅紫に染まっていた]
まさか両目とも変わるなんて…。
これも戻るかしら。
[瞳を閉じ、夢幻の華を断ち切るよう念じる。再び瞳を開いた時、紅紫に戻って居るのは左目だけであった]
…どうしよう、右目だけ戻らない…。
見られたら何を言われるか…。
[鏡に映る自分の瞳を覗き込み、不安に表情を歪めた]
[かの男と、人に殺された哀れな女中の埋葬が終わると、ギルバートはふらふらとした足取りで自室に戻っていった。それから幾時間か、泥のように眠り、夜中にふと目を覚ました。]
[ベッドから起き上がり、彼は月に向かって祈りを捧げる。その傍らには、倉庫から拾ってきた、小さな聖書があった。]
……主よ。
あなたが力を与え賜うたのは、あの傷のある男でしょうか。
私は愚か者であるがゆえに、
隣人をすぐにそれと信じることができません。
「汝の隣人を愛せよ」とおっしゃった貴方は、
隣人よりも近しき男に裏切られ、十字架に掛けられました…
隣人をそう簡単に愛することができぬと我らに伝えたのは、
他ならぬ、貴方なのですよ……
主よ。
何故貴方は、この世に「疑念」を残して、かの地へと旅立ったのでしょうか……
……どんな気分かなって、思ったの。
[それ以上の言葉は次がず、一端口を噤んだ。
視線を戸口の男へと流す]
お早う、ナット。
ナットも、無事だったんだね。
[その場に漂う雰囲気に一瞬言葉を失ったのは否めない。]
[僅かの沈黙の後]
――ええ。お陰様で。何とかね。
[男の視線は、隻眼の男と少年の、交互に向けられた。]
だいたい……
[月明かりに照らされた窓の外を眺め、盛大に溜息をつく。]
『真夜中に女が一人歩きをしていたから、怪しいと思って殺しました』
……だなんて、ジャック・ザ・リッパーが残した供述調書とさほど変わらないだろうに。そんな殺人鬼を信じろっていう方がおかしいってば。
まあ、それこそ判別している姿を見ればどうにでも信頼できるんだが、な。それを嫌っている可能性がある…。「見たければ見ろ」だなんて、堂々としすぎているだろ。
或いは、彼は……
[もうひとつ、溜息。]
……他人に信頼させて生き残りたい、悪魔の遣いか……
[少し頭を傾けてクインジーをまじまじと見た後]
ああ、そうだ。
キャロルさん…でしたか。あの方亡くなりました。
終焉の死者に襲われたようです。
[思い出したように、話を切り出した。]
無事を喜んでいいのかは、わからないけれど。
[カップを己の手に戻し、足を揺らす。
吐き出す息は、やや物憂げ]
いつまで続くのかな、
終わるまでか。
[眼下に広がる泉を見て、もの思いに耽る。]
スワン・レイクかと思いきや。
出てきたのは優雅な白鳥ではなく、人喰い狼ときたものだ。
せめて黒鳥の姫君であれば、その美を堪能できたのだがな。
……まあ、白鳥の姫君が出てきたところで。
そいつを演じる人間は、悪魔の遣いたる「黒鳥」をも演じるわけだしな……信用ならんさ。
[そう呟いて、ベッドに潜る。
夜歩きをして、ジャック・ザ・リッパーに殺されぬように。]
[淡白な反応の少年を見遣る]
……あまり驚きませんね。
まあもうそろそろ慣れっこになってきてますけどね。
私も、薄情ですが自分じゃなくて良かったという気分ですよ。
[口の端にちらりと皮肉な笑みらしきものが浮かんだ。]
まあ何時終わるかは、皆目見当がつきません。
見分ける人が居ないのだし、この怖い人が殺して回るしか方法が無いと言うのでしょう?
[ちらとクインジーを横目で見て]
当たりを引くまで待つしかないなんて。
その前に自分が死んだらそれでお終いですから。
驚いて嘆いて、それで帰ってくるのなら、
するのかもしれない。
でも、そんなこともないから。
[カップに口はつけぬまま、
ゆらゆら揺れる水面を見る。
眼が映すは己の眼、男の笑みは映さなかった]
死んだら、終わり。
ところで。
お二人は何をしてたんですか。
と言うか。
そのカップは何ですか。
それにこの有様……
[げんなりしたように、焦げた鍋の転がる焜炉付近を見る。]
……オレは、何か飲もうと思って。
クーがしてくれたみたいに、
自分で温めようとしたんだけれど。
[案外難しかったと、眉根を寄せた]
もう捨てましょうそれは。
[とカップを取り上げて、中の液体を流しに捨てる。]
[ついでに鍋二つをシンクに放り込む。]
私が後でやっておきます。
取り敢えずキャロルさんのことを残っている皆さんに知らせないといけませんから。
[流し台の縁に手をかけ、
最後の一滴が失せるまで視線を注いでいた。
手を引いて、くるりと向きを変える]
……ん、後で――
楽しみにしてるからね。
[やはり緊張感の薄い物言い。
言葉を残して、扉をすり抜け*厨房を出て行く*]
─二階・誰かの私室─
[何度か試してみて、右目もどうにか紅紫に戻すことは出来た。しかし]
…あっ…。
また濃くなった…。
何だか不安定だわ。
誰かと居る時は気が抜けないわね…。
[ふとしたことで右目だけ滅紫になってしまうのだ。意識して居れば紅紫のままで居られるのではあるが]
…気は張るけど無理に隠したりしなくて良いだけ良いのかしら。
危険ははらむけれど。
[まぁ良いわ、とそれ以上の対処をすることなく私室を出た。いつも以上に緊張を帯びて廊下を歩いて行く]
お前は知る必要がない
[ラッセルの言葉>>64に、それだけを返す]
お前はそんなものを知る必要はないんだ
誰の死も、お前が導く必要はない
……お前にとって、良いものではない
[口元に浮かぶのは、困ったような表情]
[男は、それからキャロルの話を聞き、ナサニエルの言葉>>71に肩をすくめた]
残念ながら、己の言葉じゃないぞ
言ったのは番人だ
[情報は増えることなく城に戻る。廊下を進むと変な匂いが微かに漂い、片方の眉を上げ様子を伺う。短い赤の髪が廊下の薄暗がりに消えるのを見、声を上げず追いかけ始める]
…一人ならちょうどいい。
ちっと刃物見せたくらいで騒がれるのも厄介だ。
[人気のないところまで言ってから声をかけ、足を止めさせる。人形のような表情でキャロルの死を話すのを聞きながら、片手でポケットの中の鞘を外す]
死んだら終わり
なら、死なないように、殺せばいい
[ナサニエルにのみ向けた言葉]
[その後、空気は変わり、男はキッチンを出、一度部屋に戻る]
[*窓の外は緋い*]
…何かしら。
[廊下に漂うのは、ここ数日で染み付いた血の臭い、だけではなく。
妙な臭いに眉を寄せながら、また薄暗がりに消えた影に気付くこともなく、辿り着いたのは数日振りの広間でした。]
[流れたのは一筋の緋。ナイフに付いた血を舐め上げた顔に愉悦が浮かぶ。芳醇な酒に酩酊しジビエを口にした時と同じ表情で、城中に響く大声を上げる]
終焉の獣がいたぞーーーっ!!
赤毛のちびだ!!
[逃がさないと*ぎらり目が光る*]
!
[空気を震わすような声に、振り返り廊下に眼を向けます。
声が誰のものかを理解する前に、その内容に意識が向きました。]
…だから、言ったのに。
[直接ではないにしても。
零れ出た言葉は、意外に淡白でした。]
[気を張っていたことで神経も研ぎ澄まされていたのだろう。遠く離れていた場所からの大声にも直ぐに気付くことが出来た]
あの声…飲んだくれのっ!
[何故終焉の使者だと分かったのか、そんな疑問も忘れ声が響いた方へと駆け出す]
[“危険”は既に承知の上だった。
同胞から伝えられた情報に拠って]
[男の振るう刃など、平時であれば躱すのは難しくはない。
されど一手遅れたのは、身体を覆う倦怠感の所為。
ナイフは傷を負っていた左腕を掠め、新たに滴を落とす。
――目に映る、鮮やかな、あか。
花よりも甘い、甘い毒。
くらりとする。]
っ、
いきなり、何――…
[あげる非難の声を上回る大音量。
素の足は床を蹴り、逆方向へと駆ける]
[夜か朝かは分からぬ折に、ふと目を覚まして身体を起こす。]
―――だるい。
[それでも身体を起こし、日課となって久しい柔軟体操を始める。
1、2、3とフランス語で数え、身体をしならせ――]
[――大声が、城内にこだました。]
死なないように殺せばねえ……
生憎、あなたみたいに犯人かどうかもわからない人間をあっさり殺せるほど度胸が据わってる人間ばかりじゃないんですよ。
ある程度良心を誤魔化せる、免罪符みたいなのが欲しいものなんですよ。
[再度嘆息。]
[会話しながらシンクに水を注いで、汚れた鍋を浸した。]
―――誰だ!?
[目を閉じ、耳を澄ませる。]
あの声、ネズミ男………!
[慌てた様子でシャツを着込み、部屋を飛び出す。]
どうした!ネズミ男ッ!!
何があったんだ!!
[何を叫んでいるのか、内容は分からない。それ故に、ギルバートは声がする方へと駆け出した――]
[声の源に人が集う。
逃れる先に、宛てはない。
一先ず玄関から外へ出ようとして、
前方には男の影、階上には少女の姿。
背後には、あの“鼠”も来ているのだろう]
鬼ごっこは得意じゃないんだけれど。
[呟きつつ、選んだ先は外ではなく階段。
一段飛ばしに駆け昇る]
[歩みを進めて行けば、向かって来る足音が聞こえます。
近くの部屋に隠れました。
目の前を少年が駆けて行くのを確認してから、何も知らぬ振りをして廊下へと出て来ます。
恐らくは追って来ているであろう者を、少しでも足止めする為に。
それに何の意味もなくても、できることといえばそのくらいでした。]
[階段を降りようと向かったところで件の少年が駆け上がって来るのが見えた]
っ、ラッセル!
[立ち位置から立ちはだかる形になるだろうか。クインジーが護りたいと思った人物。しかし彼は不精髭の男に言わせれば終焉の獣だと言う。信ずるに足るを考えれば、自分はどちらにつくことになるか──答えは、一つ]
……なんだ?
ネズミ男に危害が……?
いや。そういう類の話じゃあ無さそうだ。
[音を立てずに階段を降りる。いくら朝でも、獣の巣くう城の中で警戒を解くわけにはいかぬのだ――…]
[ギロリ。
琥珀色の右目が、周囲を見渡す。]
[小さくとも、城と呼ばれる程の場所。
階段の幅は、ゆうに人が三人ばかり通れる程。
四足の獣の如く身を屈めて脇を擦り抜け、背後を奪おうとする]
[一言の断りもなくナイフを振るったのは、相手が獣だったことを思えば結果的には正解だったのだろう。逃げ出した少年を追いかける。走りながら叫ぶのはさすがに無理]
獣だっ! 追え!
[途中で問う声に短く返し、剥き出しのナイフ片手に廊下を走り階段を下りる]
[「ネズミ男」の声が、先ほどよりもくっきりと聞こえてきた。]
……獣?誰がだ……?
[足音を立てず、ひとつ、ふたつ、階段を降りる。]
(獣を告発する声ならば、きっとその先に「逃げている」人間がいる……。
落ち着け。耳を澄ませろ。
………見極めるんだ。)
[少女の身では階段いっぱいを封鎖することは出来ず。何なく横をすり抜けられてしまう。それでもその速さに追いすがるよう、即座に振り返る]
逃がさないっ…!
[右手はケープの中に滑り込み、ナイフの柄を握った]
[足でも引っ掛けられれば、と思ったのですが、一足遅かったようです。
大きく息を吐いて、壁に凭れます。
どうせ追いつけはしませんから、今更追う気もありませんでした。]
[足音は二つ、]
[既に玄関ホールへと移動しているのを感じ取る]
[逃げる者と追う者を確かめるために男は階段へとひた走る。]
ごめんねっ
[結果を見る事はなく、
すぐさま足を引いて廊下の先へと駆け出す。
傍の階下ばかりに気を取られ、
他の階上に潜む男には気付かぬ侭]
っ、きゃあ!
[階段の最上段。足元までは反応が追い付かず、足を払われ身体が宙に浮く]
くっ!
[手摺まで手は届かない。身体は重力に沿って落下を始め。咄嗟に身体を捻り、左腕で頭を庇い身を縮めた。派手な音を鳴らし、少女の身体は階段を滑り転がり落ちて行く]
―2階―
[2階に降り、耳を澄ませる。
――先ほどよりも、騒ぎの声が近くなる。]
……あそこか。
[階段を降りるよりも少しだけ足音を立て、騒ぎの声がする方へと向かった。]
[視界に赤毛の青年が近付くのも、時間の問題であろうか――]
[進路を邪魔するニーナの動きが故意か否かはわからない。大きく舌打ちだけして目立つ赤毛を追う。階上で悲鳴が上がり、青と黒が落ちてくるのが見えた]
へましてんじゃねえよ!
[邪魔しようとして落とされたなら確実に味方と計算し、落ちてきた体を止めようと動く。上に行ったなら外には逃げないだろうという考えもあった]
[名を呼ぶ男は、かれの背。
その声は届かず。
何処か戸惑いを含んだ様子ながら再び前へと進みかけ、
再び足が止まったのは、眼前に駆けて来る別の男の影が見えたから]
あっちゃ。
[如何したものかと視線を走らす、僅かな隙]
う……。
[短い呻き声。ケネスの声も耳には届いて居た]
む、ちゃ、言わない、でよ…。
相手、は、獣、なんで、しょ。
[意識はあるようだ。言葉も発せるが、痛みによりその言葉は途切れて紡がれる]
――…ラッセル?
[こちらに直進しようとして、戸惑うラッセルの姿が見えた。]
どうした?
……血が出ているぞ。
[琥珀の右目には、笑みも睨みも無い――感情を押し殺した、探るような色。]
[手を出すことはできなかった]
[落ちていったシャーロットも気にしながら、それでも後ろ背に声をまたかける]
ラッセル――
[殺さないと、言った言葉を覚えているだろうか]
[それでも、積極的に手出しができないのは、先ほどの言葉のせい]
(人殺しの感触を、好ましく思っているのなら――)
……鼠の人が、いきなり切り付けて来たんだよ。
かと思ったら、人の事を獣だって。
酷いと、思わない。
[背後の声を聞いていた為か、その場からは動かず言葉を返す。
警戒を僅か窺わせるかれの表情も、また薄い]
そんだけ憎まれ口言えりゃ上等だ。
踏まれねえよう端っこに避けてろ。
[瞳をきつく瞑る様子に、引きずるようにして壁に凭れさせようと動く]
ああ、足元すくわれねえ内にと思って調べたらアタリとはな。
…あの赤毛の隻眼はあまりあてにするなよ。
確かに、そいつは酷い。
いきなり『獣だ』なんて言われたとはね、まったく酷い。
あれは、ネズミじゃなくて、本当は魔王なんだなぁ……
いやはや、恐ろしい。
[肩を竦めて、ラッセルに一歩近付く。]
そうだ。怪我をしているのなら、止血をしようか。そのままにしては、まずかろうて――…
[目を細め、唇に薄い笑みを浮かべた。]
[左腕で頭を庇ったお陰か、脳震盪の類は受けずに済んだらしい。その代わり、左腕には刺し傷の他に多数の打撲痕、肩や背中にも同様の痕が出来ていることだろう]
……クイン、ジー……。
[当てにするなと言われ、彼の青年の名を紡いだ。弱々しいそれは不精髭の男くらいにしか聞こえなかったかも知れない。壁に凭れ、薄っすらと細く開いた瞳は階上へと向けられる。右目は、滅紫を示していた]
[音が、声が、上から聞こえて来ます。
もう一度溜息を吐いて、身を起こしました。
こつり、杖で地面を叩きながら、わたし向かうのは騒ぎとは真逆の方向――赤い華の咲く、外でした。]
休んでろ。
[クインジーの名を呼ぶシャーロットを一瞥し、駆け上がっていったナサニエルを追いかけるようにして駆け上がる。階上にはニーナとシャーロット以外の生きている者が揃っていた。誰が獣の味方に付くか、ぎらつく目で探るように見回す]
[ケネスとシャーロットの言葉は聞こえるはずもなかった]
[階段をのぼってくる男のことも、気にはしない]
[男は、ただ、ギルバートが前に立って動かないラッセルのそばへと行く]
ラッセル
……お前は、どうしたい?
[男には、それがわからずに、手を出すでもなく口にした]
……そうかな?
もしかしたら、俺の目が片方しか無いからかもしれないね。人には、怖い顔に見えるって言われるよ――…困ったものだ。
笑顔になったつもりでも、そうは見えないらしい……
[眉尻を下げ、ラッセルに悲しげな表情を見せた。]
ラッセル……
きみもそんな冷たい人間のひとりなのかい……?
きみだけは違うと、俺は思っていたのに……!
[息を落とす。
目を伏せていたのは束の間。
クインジーの方へと、顔を向ける]
……クーは、大切なひとには、
辛くても生きていて欲しいと想う?
[それなら――と。
音なく口にした、ことばは。
彼にしか、届くまい]
[ラッセルは逃げるのを一時止めており、前をギルバートが塞ぎ、ナサニエルは背を向けているので表情は見えない]
やめろクインジー!
そのちびは獣だ。
番人達を殺し、引き裂き…食ったバケモノだぞ!!
[ラッセルに引き寄せられる風に動くクインジーへ低い叱咤を発す。獣は二匹――仲間なのか、狂っているのか見極めようと睨む]
……オレにはバートの言いたいことが、
巧く取れないみたいだ。
[芝居がかった物言いの男へと向き直る]
あなたは探っているように思えるよ。
オレが獣か、人間か。
手を差し伸べたいのではなくて、いざとなれば殺す気で。
だから、笑顔も悲しみも偽者に見える。
穿ちすぎかな?
…っ、いったぁ…。
[階上へ向かう者達を視線で追い、身動ぎすると身体が軋むような感覚に囚われる。ここからでは声はほとんど聞き取れない。ただ、その動きだけをオッドアイの瞳で見つめることしか出来なかった]
自分が冷たいかどうかなんて分からないけれど。
あたたかくは、ないのだろうね。
[仄かな、笑み。
じくりとした痛みが、染み込んだ]
己は、――言っただろう?
お前の望みを叶えると
[ケネスの声も届いていた]
[それでも、触れられるほど近付いて]
……生きていてほしいと、思う
だが、お前が――苦しむなら
[ラッセルが手を取れるように、差し出した]
――…そうだね。
[薄い笑みを消し、ラッセルの目を見る。]
俺は弱い人間だ。
一度疑い出したら、それは呪いのごとく俺の背に取り憑いて離れなくなる。人間故の、ごく当たり前のことさ……
それにね。
此処には、人を殺そうとする『魔王』は在れど、魔法で全てをハッピーエンドに帰してくれる『魔法使い』は居ないんだよ……。
悲しいね、ラッセル。
……魔法で、
この目を元に戻してくれる魔法使いが、
居れば良いのにね……
[そう言って、静かに眼帯を外す。
――そこには、皮膚が変色し、眼球が腐った、『瞼』の痕があった。]
[ギルバートに対するラッセルの態度から、残る候補は二人と絞る。手にしたナイフが興奮と緊張の狭間で震え、しっかりと握りなおす]
…どっちにしろ、敵って訳だ。
[クインジーがラッセルへ手を差し出す姿に呟く声は掠れて低い。その声は吼くナサニエルの声にかき消された]
――そこか!
[覚えようとはしなかったが、聞き覚えのない名。何より込められた響きが青毛の青年が獣の仲間なのだと知らせる]
[ギルバートは、澄んだ琥珀色の右目と、腐り落ちた左目で、ナサニエルを見つめた。]
『フィン』、だと?
聞いたことが無い名前だな……
そいつは、彼のミドルネームかい?
お兄さん。
……何故、君がそこまでラッセルに梃入れするのかな……?
是非、説明して戴きたい。
[双の眉をしかめ、唇を歪めた。]
[少年の反応は無視した]
[護るように胸のうちに抱き入れ、腕を回す。]
[男の全身を巡る血が瞬時に沸き立ち、]
[僅かに前傾姿勢を取ったその四肢に力が漲る。]
[ラッセルの言葉、だが手は取られず]
[脇を抜けたナサニエルに、男はあぁと小さく声を出した]
だから武器を気にしていたのか
――ナサニエル、お前は何がしたいんだ
ラッセルは、選んだ
お前にそれを邪魔する権利はない
[聞き慣れぬ名を呼ぶ叫びが聞こえる。それは青の青年の声だった]
……そう…そう言う、こと……。
[青の青年が呼んだのは赤の少年であると。それにより残る仲間はその青年であると。状況が示していた]
[何度も深く深呼吸をする。身体の痛みは引けない]
[けれど、右腕は、動く]
[ラッセルが何を選んだのかはわからない。だが、獣であることは確実と舌に甘く残る野趣溢れる獣の血が教えてくれる。緊迫する状況を鼠のように息を殺し、隙を狙って獣を殺そうと*ナイフを構える*]
逃がしゃしねえ…!
[少年を胸に抱き、前傾姿勢になった男から視線は離さず――]
お兄さん。
俺を、殺すのかい?
――いいよ。
俺は、バレエダンサーとしては、もう死んだも同然だから。
こんな目じゃ、使ってくれる劇団は無いんだ。
おまけに、この腐った色はね、視神経から先まで届いてるんだって――義眼で誤魔化すこともできないんだよ。
今更『身体が死んだ』とて、あまり変わらないさ――…
[外へと踏み出しかけた足がぴたと止まります。
吼えるような一声によって。]
…。
[赤い華を背にして、上を見上げました。]
可笑しいね、お兄さん。
[肩を竦めて笑ってみせる。]
だって、まだラッセルが獣って決まった訳じゃないのに――…
『なんでこの世の終わりみたいな顔をしているの?』
……本当に、可笑しいな。
そんなにこの状況が嫌ならば、まずはそこのネズミさんが稀代のペテン師だと言って御覧よ。
何故、言えないのかなぁ……?
ね、お兄さん。
俺はまだ、ネズミさんを信じている訳じゃないのに……
[胸元からナイフを取り出した。]
権利。
権利など必要か?
[唇に浮かぶは冷笑]
おまえは、こいつを殺すのを躊躇っていたな?
生きていて欲しかったんじゃないのか。
……手に入れたものを簡単に手放すほど、おまえはお人好しか?
[喉を鳴らす嘲弄の響きでもって応える。]
[呼吸を整え、神経を集中する]
…よし。
[意を決すると軋む身体に鞭を打ち、壁に手をあて支えながら立ち上がる。キッ、とオッドアイは階上へと向けられ、多少ふらつきながらも足は階段へと向かう。近付くにつれて階上で話される内容も耳に届いてくるだろうか]
……オレは、死にたいわけじゃないよ。
死ぬより厭なことがあっただけ。
[長い沈黙を置いて、クインジーに答えを返す。
身動きをとるは、叶わぬ侭]
[声には覚えがありました。
彼には今朝方、忠告をしたはず。
あれではもうバレてしまったのだろうと、そのことは見えずとも分かります。]
…多勢に無勢、でしょう。
[今日だけで何度溜息を吐いたことでしょう。
もうひとりいると思っていたから、追わなかったのに。
外に行く筈の足を中に向けて、
城の壁に揺れる灯をひとつ、手に取りました。]
お前が生かしたいと思うのもお前の権利だが
お前は本当にそいつの話を聞いているのか?
大切に思っているのなら、それくらいしろ
勝手に決め付けるんじゃなくな
――人を手に入れるなんぞ誰にも出来ないぞ
[男の声は冷静に、目はナサニエルを見る]
[その後ろのギルバートには、一瞥のみ]
ラッセル、もう一度聞くぞ
お前はどうしたい?
――ナサニエルのことは関係なく、お前は、どうしたい?
さっき、言ったよ。
[答えは短い]
終わりを齎さなければならないなら――
全て、あかの海に沈めてしまおうか?
[視線は壁にかかる燭台へと向く。揺れる焔]
――…吐いたな、ラッセル。
いや、『フィン』とやら。
まあ、名前なんざどっちでもいい。
くだらない与太話みたいなものさ。
そして、そちらの青いお兄さんは君のお仲間さんかな。別に、違ってても良いけれどね。
『あかの海に沈める』ねぇ――…
[緊張感に満ちた静かな言葉が交わされる中、狙うのは一点]
…ならっ、てめえが沈め!!
[狙うのはナサニエルの腕に身動き取れぬ*ラッセルの心臓*]
くだらなくは、ないよ。
――僕にとっては。
[呟く一瞬、瞳は翳りを帯びた。
問いかけに答える事は無く]
そう。きれいな、あか。
僕は色を知らないけれど、それだけは、分かるから。
[ぽたぽたと。
腕から落つる、熱い滴を感じる]
[炎がじわりと目の中に入り込むように]
[ラッセルの指がその炎に飲まれるように]
[それはぞっとするほど、焼きついた光景と重なった]
――っ
[後ろからケネスが行く]
[止めることはできない]
[緋がゆれる]
[少しうしろに、シャーロットの姿]
下がってろ!
[火が広がったら、彼女を助けられるようにと、*そちらに足が進んだ*]
[少年を抱いていた腕が、力を喪いだらりと垂れる。]
[冷たく獰猛だった笑みは、陽に照らされた雪が解けるように消え失せた。]
[浮かぶのは、苦く]
[虚無に満ちた]
[階段に近付いて、聞こえて来たのは]
…『あかの海』?
[唐突にそれだけを聞いても、浮かぶのは身体に流れる緋色が広がる様子か、外の緋色の花の群れ]
[ケネスが前へと踏み出す]
[クインジーがこちらを向き叫ぶ]
[下がれと言う言葉に、足はその場でピタリと*止まった*]
(人を殺すことになんのためらいも無いのに)
[男の感情は、今も冷静に、ただ事態の成り行きを見る]
[火の手から少女を救おうとする気持ち]
[そして、ラッセルの望みをかなえてやりたいという気持ち]
[頭は割れるように痛んだ]
[火の中で 緋が散る *まぼろしを見る*]
ギィ、―――――。
[もう一つ。
紡いだ名は誰に、届いたろう。
愛称ではない、同胞の名を。
眼差しは一時、笑う男へと向けられた。
眼を伏せて力の抜けた腕から身を離す。
焔を揺らす燭台へと手を伸ばそうとし、
刃が迫るは*その直後*]
[階上では未だ、音がしています。
少なくとも片方は未だ生きているのでしょう。
廊下を照らす灯が、微かに揺れています。]
…あれを全部床に落として回ったら、
終焉を見れるかしら。
[赤い色の少年が似たようなことを考えているなど、わたしには分かりません。
手許を照らす色は、あの華の赤よりも*綺麗に映りました。*]
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