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天文学者 オトフリート に 1人が投票した。
旅の商人 エーリッヒ に 7人が投票した。
旅の商人 エーリッヒ は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、天文学者 オトフリート が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、助教授 ハインリヒ、団長の孫 イレーネ、青年 ユリアン、自衛団員 ダーヴィッド、村長の息子 フォルカー、神学生 ウェンデル の 6 名。
─ 一階廊下─
─────え。
[視界がぶれる。身体が何かに捕えられた。それは、本当に意識外だった状況]
エー…───!
[普段呼ばぬ名を呼びかけて、口を噤んだ。自分は、彼を名で呼んだことは無かった、はず]
[首筋に鋭い爪の先が当たる。こくりと息を飲んだ。彼に、自分を殺す意思が無いと理解したのはその直後のこと。傍から見れば、殺されそうになっているように見えるだろうが]
―玄関・外―
[よく分からないが、ウェンデルの弁から察するに、自衛団だから締め出されたらしい。
ちょっと、疎外感に打ちのめされてしょんぼりしたら頭が痛んだ。
お前 早く 中に 入れ といわんばかりにカンカン頭が鳴る。
理不尽とはいえ、締め出されたのにまた開けるのもと思い、仕方なく裏口、台所の方から向こうに回ることにした。
入り口の見張りの自衛団には、何でもないと言ってはみたが、中から聞こえる音やら何やらのおかげで、あまり信用ならないかもしれない。]
―→台所―
オト…兄……
[一歩一歩。頼りないようにそれでも確かに階段を下りる。広間へと向かったエーリッヒはどうなったのかは察しながらも、ただオトフリートの元へと向かう。
動かない。あの時。ヘルミーネの墓地にて呟いていた言葉を思い出しながらしゃがみこみオトフリートへと触れる]
…ユエ…
[鼓動がない。止まっている。
あれは文字通り最後の力を振り絞った行動だったのだろう。
だがユエは未だそれが理解できないのか。それともできていてなのか。
オトフリートの頬を前足で何度も叩いている。
それが酷くものがなしくて―――ァア…なんて]
……ぅっ
[輝かしい遊戯。と浮かんだ言葉を否定するように頭を横に振るう]
―一階:廊下―
[駆け出す、人と獣の狭間のモノに、少年は咄嗟に反応出来なかった。
しかしその先に何があるかを悟れば、頭で考えるよりも早く、体は動く]
―――――レーネに、手を、出すなっ!!
[吠えた。
赤石が色を変えたのは、向かう先にいる者には見えたか。
近付くより先に爪が振るわれるなどは考えない。
振るわれたとて、叶うことはなかったろう。
意志すらないとは、少年には考え付きもしなかったが]
[手を伸ばして、“人狼”の腕を掴んだ。
ばち、と。
何かの弾けるような音がして、“人狼”の力が、緩む。
平時の少年ならば有り得ぬ程の力を持って、その腕を掴み、彼の捕らえた少女から引き剥がして、地に引き倒す]
─ 一階廊下─
[身を捕らえたエーリッヒの左腕は弱々しく、突き飛ばせば容易に外せるものだったかもしれない。それをしなかったのは状況に驚いていたのもあったが、あることを考えていたせいでもあった]
っ、は、ぁ。
フォル……っ!
[思考が戻ったのは幼馴染の口から自分の名が紡がれた時。瞬く間にこちらへと飛んできたフォルカーが、エーリッヒの手を取り自分から引き剥がした。ブローチが色を変えていたのには気付いたが、今は目の前で起きていることの方に意識が向いて。何かが弾けるよな音に、反射的に身を竦めた]
[少年が力を発した、よく似た半透明の存在が浮かび上がり、消えた。
魔除けの力を持つ刃を突き立てられ、弱った“人狼”は直ぐには起き上がらない。脈打つ鼓動は、刻一刻と弱まっているのだろうと思われた。
蹲る男の肩に体重をかけて足を下ろす。
子供の重みなどさしたるものではないだろうが、勢いづけていたせいか、骨の軋む音がした]
人、狼が……、お前が……………!
[きつく眉を寄せて、発する声には負の感情が含まれる]
─ 一階廊下─
[血濡れていたエーリッヒの身体。服にべったりと血糊がついてしまっていた。けれど今は気にならない、と言うよりは、気にすることが出来ない]
───っ!
[フォルカーが勢いをつけて足を振りおろすのを見た。ぞくりと寒気が走ったのは、本能が危険を察知したせいか]
―結構前・集会場へ戻る道すがら―
[ダーヴィッドがローザを違うといったことについてはユリアンも居る場所で端的に離していたか。
しかし、自分にはわからぬことが、まだあった]
…ダーヴィッドってのはよ、あんたと同じなのか?
ローザのことや、ゆうべは修道士のにーさんのことも、違うといっていた。
あいつは何がわかっているんだ?
[問えは、すべてではなくとも何をか察せられる答えが返ってきただろうか。
なるほどな、と言って息をつく]
情報がない限り、余所者の俺にはさっぱりだ。
[言いながら、肩をすくめた。余所者、という言葉にはどこか自嘲的な響きもあったか。
集会場の近くまで来たところで、ふと立ち止まり]
先に戻っててくれ。すぐ、戻る。
[オトフリートに告げて踵を返した。向かうはさっき埋葬したばかりの墓標]
…信じないでくれて、ありがとう
[調べた人間を全て教えなかったことが、多分どこかに疑心があったのだろう
だからそのことに礼を言う。その横ではユエが起きるのを願うように、オトフリートの頬を舌でなめている]
後で…ぁあ…でも
[自分なんかが埋葬していいものかどうかもわからないけれど]
ユエ…オト兄は疲れてるから、寝させてあげよう?
[語りかけるようにいう。
それに一度だけこちらをみて首をかしげながらも、まだ温もりをが残るオトフリートの上で丸まった]
―階段下―
[言うだけは言った。
が、エーリッヒはイレーネを人質にとる。
何が起きたのかわからずにぼぅっとしていた。
ら、降りてきたユリアンが、猫が、オトフリートのところにいる。
ダーヴィッドの存在を完全に忘れていた、というわけではないので、一度玄関を見たが、いないようだったので、少し首を傾げた。
悪いのはまぎれもなく少年である。自覚はないが]
――っ
[オトフリートが死んでいくのが、凍るようにも感じるが。
視線の先で、エーリッヒがフォルカーに引き倒されているのを見る。
変貌に、少し口唇を震わせた]
――なん、ですか、あれ…。
―少し前・墓標前→今、集会所―
[戻ってきて何をしたかといえば、シャツの襟からいつもいい加減に結んでいたタイを外した。
細いそれをローザの墓標に撒きつけて、括る]
頼む、これが片付くまで、見ていてくれ。
[向けた言葉は亡くなった者たちへ。
―きっと、俺もそっちへ行くことになるから。
胸の裡でそう思いながら、手を胸にあてがって祈った。
どれくらいそうしていたのだろう。
急いで集会所へ戻って目にしたのは―力なく横たわったオトフリートとイレーネを盾にするエーリッヒの姿、で。
オトフリートがエーリッヒを責めたのだろうとは予想が出来た。
とにかく、このままではいけない、とポケットの中のナイフを握る]
フォルカー…
[フォルカーがイレーネをエーリッヒから引き剥がし、足を振り下ろすのに顔を顰めながら、なにかあれば手を出すつもりで身構えた]
[そしてゆっくりと音の激しい地を覗けば]
半端で嫌になるな
ぁあ…もういい加減に寝かせてくれ
[諦めたような言葉は小さくか細く]
フォルカーも、選ばれた子。だったんだろう
[ウェンデルの言葉に反応するように言う
選ばれたと聞けばいいものにも聞こえるそれは態のいい生贄だ]
えらばれ、た?
[ユリアンの言葉に、彼を見て。
それからまた、フォルカーへと視線を戻す]
……選ばれた、って、何に、ですか?
あんな風に、なるなんて。
[――いなければ、と。
唇が紡ぐのは呪詛の如き怨みごと。
それなのに、奥底にある感情は愉悦に似て、神経は昂っていた。
幾度目かに蹴りつけて、荒く息を吐き出して足を引く。
反応が失われていたのは、いつからだったか。
血を大量に流した“人狼”は身動ぎもしない]
……………、 これで、
[終わったんだ、と少年は呟きを漏らす]
それは……
[脳にノイズが走る。顔を苦しげに顰める]
…神…じゃねぇの?
[結局出たのは伝承にもいわれるような事柄]
あんな風になるように魂に刻まれてるんだよ
―台所―
[早く行けと頭は訴えるものの、足はなかなか先に進もうとはしない。
多分、怖いんだと思った。人狼を、その魂を見る事が。
それはいけないと、頭への痛みは訴える。]
とりあえず水飲んで…。落ち着こう俺。
[痛みに負けず、水をしっかり一杯飲み干してから階段の方へと向かった。]
―→階段付近―
[たどり着いた時には、フォルカーがエーリッヒを踏みつけて、少したった頃だった。]
神……が。
[ぽつり、と呟く。
止められなかった。
ただ見ていただけだった。
うそだ、と、小さく口にして、再びユリアンを見て、]
ユリアンさん?
大丈夫ですか…?
[苦しそうな顔に、心配そうな目を向ける]
……いろいろと、お詳しいんですね
―集会所―
――。
[正直、その変わりように驚いていた。
力を持つらしいと聞いていたフォルカーが人狼に対峙した時のそれに]
なんて、顔してやがる…
[自分が襲われたときも、あんな顔をしていただろうか、と。
それとも、それが力を持つもの達の性なのだろうかとも]
くっ。
[血塗れになるまで蹴り続けるフォルカーに、どこか常軌を逸した恐ろしさを見て
背中をひやりとしたものが走る。
ポケットの中で小さなナイフを握る手は、じとりと汗をかいていた]
[神といったが、神学生の彼には辛かったか。
だから声を発することなくこくりとだけ頷いて]
相変わらず半分ぐらいなら大丈夫だが
…あ、ああ。昔ちょっと色々あったのを思い出してな
[頷くのに、まぶたを伏せた。
しかし、首を振って、ユリアンをしっかりと見て]
それなら、休まないとダメですよ。
……辛そうです。
むかし。ですか。
[視線が少し泳ぐ。それから、窺うような目になって]
こういうこと、が?
……って、聞いても、良いですか?
─ 一階廊下─
[身体がカタカタと震えていた。エーリッヒに捕まったからではない]
……フォ、ル……?
[呟きを漏らすフォルカーの名を呼ぶ。声も震えていた]
…おぉ。そういえば俺昨日から埋葬ばかりして働きっぱなしだった。なんてこった
[なんてちょっと冗談っぽくいいながらも、動かなくなったエーリッヒを一度見てから目をそらし
遠慮がちにいうウェンデルの言葉を聞いて]
ぁあ…あった。
俺はこの村出身だが、両親がなくなってから親戚中たらい回しにされてな。
そんななかここに戻る直前のとこで同じことがあってな。
…よくわからないがずっと忘れてたけど…今回のせいでだいたい思い出した…はぁ
[名を呼ばれた少年は、ゆっくりと、少女へと向き直る]
……なぁに? レーネ。
[その顔に浮かぶ笑みは場に似つかわしくないほど、柔らかなものだった]
―一階・階段付近―
[エーリッヒは動かない。たぶんきっと、事切れてるんだと、思う。
赤い血の色にくらりと後ろに倒れかければ、痛みが叩き起こした。
『魂の色を見極めろ―――』
誰の声だか、内なる何かはそう告げて。
エーリッヒの方をじっと凝視すれば、その体から、黒いもやが立ち上っていった。]
………ああ……人狼……。
あれが、人狼の魂、なのか?
[始めてみる、人狼の魂は、黒い塊をしていた。だがその顔は人と殆ど変わらない。
目をしばたかせてその表情を見ると、まだどこかぼんやりとしている風に見えた。]
…フォルカーみたいなのは見たことある。強い衝動に逆らえないとか聞いたが…ま、具体的な中身を聞くのはできれば遠慮したい。
[疲れたように笑みを浮かべ、そして事が終わったところで、また埋葬のための仕事をした後。自分の部屋へと*戻るだろう*]
お手伝いできなくてすみません。
今日は、
…手伝いますね。
[今日は、と口にした時に、今日も、といいかけてやめた。
過去を聞いて良いか、考えるようになったのは、エーリッヒのことがあるからだろう]
……そう、なんですか。
思い出したく、なかったです?
[溜息に、元気出してください、と。
フォルカーの名前を聞いてそちらを見て、視線を落とした]
そうですね。
僕には、多分、理解できないし、理解できないほうが、良いんでしょう。
やすみます、か?
[椅子とか近くにあるだろうかと思うけれど、階段の段差くらいしかない。
彼がしたいようにするのが良いと思って、あまり口出しはしなかった]
─ 一階廊下─
───!!
[向けられた笑みに息を飲んだ。場にそぐわぬそれは身体の震えを助長させる]
フォ、ル、何で、笑って───。
[足が、一歩下がる。この場から逃げろと深層の意識が言う。けれど、身体がうまく動かない]
なんで、って。
[不思議そうに、少年は瞬いた。
疑問の意味が理解出来ないと言うように]
……人狼は、いなくなった。
死んだんだ。
終わったんだよ。
レーネは、嬉しく、ないの。
[意識は、他者の声を捉えるまで浮上したようだった。
ダーヴィッドの声を聞きつけた少年は、顔を動かす]
人狼の、魂?
……ダーヴィッドさんには、なにか、見えるんですか。
─ 一階廊下─
嬉しいとか、嬉しくないとか、そうじゃ、なくて。
怖いよ、フォル───。
[ただ、恐怖だけが身を支配していた。それは終わらぬを知るが故の恐怖か、それとも純粋にその様子に恐怖したのか]
[フォルカーがダーヴィッドに問う言葉が耳に入る。そちらへフォルカーの意識が向いた隙に、足を動かした。廊下に居るものの傍を擦り抜け、階段へと向かう]
終わり…そうだな、終わりなんだ。
人狼が死んだから、これで。
[フォルカーの言葉が耳に届けば、ぽつりそう呟く。
フォルカーに問われれば、ちょっとヘルミーネの言葉が思い出されたものの、もう終わりなら隠す必要もないのかと。]
ああ、俺は人の魂…うん、幽霊だな。幽霊が見えるんだ。
団長に、先に死んだグラーツ殿、エルザ、ローザの魂は、人のものだった。
でも、そっちのグラーツ殿のは…
[そう言って、ちらとエーリッヒの死体を見る。
赤い血に、かくんと頭が後ろに倒れかけたものの、何とか持ち直して。]
…狼の魂だ。
[口にして告げれば、頭の奥がすっと冴えていった。]
[ユリアンやウェンデルの会話までは、届かない。
ダーヴィッドの口から為される説明に、少年は興味深げに相槌を打っていた]
……力を持つ者。
他にも、いたんだ。
[独り言のように漏らす言葉も、終わったと思っているがゆえだろう。
魂が見えると聞いた折には、己の首元を飾る赤石に目を落とした。もっとも、そこに宿るものは、“魂”といった存在ではないから、彼にも見えはしまい。
彼に釣られて“人狼”の遺体に目を向けれど、フォルカーの表情は変わることもなかった]
だいじょうぶ、ですか?
[倒れかけたダーヴィッドに、瞬いて、問いかける]
……レーネ?
[別の話題に気を取られていたから、イレーネの動きに気付くのは遅れた。
怖い、と評されたのが少年自身であると気付くのは、更に。
ただ、不思議そうにして、去ろうとする少女を見ていた]
―一階廊下―
[オトフリートへ近寄って、彼に触れればそこに命がないことを知る。
そばにいるユリアンとウェンディに向かって]
…埋めてやろう。
[短く告げ、視線ではウェンディへ手伝え、と命令調だった。
ユリアンがフォルカーのことを衝動に逆らえないというのを聞き、一度そちらに目を向けた]
―。
[ダーヴィッドがエーリッヒの魂が人狼のものと言うのを聞けば
血塗れの遺体を見下ろして―
それから、改めてダーヴィッドが自ら力について話すのを聞いた]
で、この行商のにーさんが人狼なら、もう終わりなんだろう?
[オトフリートの横で腕を組み、そう言った]
[ダーヴィッドの言葉は聞こえていた。けれど今は返す余裕も無くて。階段を上る前にウェンデルに声をかけられると、怯えるよな表情を向けた]
っ───。
[問いに、碌に答えることも出来ないまま、階段を駆け上がって行く]
……はい。
エーリッヒさんも、ですよ。
[自分相手には命令的な視線を送るハインリヒに、ちょっと先生横暴じゃない、という顔にはなったけれど]
そういや生きてる人間見分けられる奴がいるかもとかは、ちらっと聞いた覚えが。
……フォルカーも?
[他にも、という言葉にそんな響きを感じて尋ねてみた。
問いかけには、何とか笑みをつくって。]
う、大丈夫大丈夫。
何かここ来てから血ぃ見えても倒れにくくなってきたみたい。
[とはいえ得意になったわけではないので、やっぱり顔色は良くないのだが。]
[魂の言葉も聞こえたけれど]
エーリッヒさんは、人間です。
人狼かもしれないけど、でも、人間です。
僕はそう思うから。
だから、……
[言葉は出せない。
イレーネが怯えた顔をしたのに気付いて、埋葬を頼まれたけれど、心配そうな目をハインリヒに、そしてイレーネが行った2階に向けた]
―一階廊下―
エーリッヒも、と言うウェンデルを見下ろして]
…だったら、あいつらとは違うところに埋めればいい。
[すでに亡くなった者たちとは、同じ場所には埋めたくない。
それが素直な思いだった。
もちろん、横暴だと言っている表情は、だまってスルーした]
仕方ないだろう。
ここで俺が素性をわかってるのはお前さんだけなんだから。
[ウェンデルに呑気な口調で返して、オトフリートの体の横へ屈みこむ。
もう人狼はいないと思っていながらもどこか警戒は残しているのは
力を持つものとて油断ならぬことを知っているからか]
……、
僕は、そういう力は――……ないです、けれど。
[迂闊に口を滑らせたことに視線を彷徨わせたものの、相手が力を持つ者と知れば、それほど隠すこともないかと、口許に宛てかけた手を下ろした]
……村の長たる者は。
代々、狼の牙より人を護る役目を担う。
ゆえに、この地から離れることは、赦されない。
[護り手であることを、そっと、告げた。
村を出て行けない理由も]
血、……あぁ、僕、洗ったほうが、いいですね。
[自身へと視線を落として、呟く。
また服を替えねばならないなと、暢気に思った]
―あ?
…お嬢もなんか変だったな。
[ウェンデルの視線に階段の上を見上げ]
しかし、お前さんの博愛っぷりにも恐れ入るよ。
[好きにしろ、と告げた]
―一階廊下―
引き渡すのは、嫌です。
……だから、違うところでも。
[こくり、と頷いて。
スルーした先生に、じろーっという目を向けて]
僕もそうですよ。
ああ、でも
フォルカー君は、ハイムさんの関係者かも…?
[一度視線をそちらに向けた。
その後で、ハインリヒの見ているオトフリートを見る。
猫が近くで、小さく鳴いていた]
終わり、だと思うんだけど。
ああそうだ、報告、しないと。
………これ、自衛団に見せたらもって行かれるだろうなぁ。
[変化した腕は、死んでもそのまま残っていた。人狼だという目に見える証拠。
埋めてやりたいというウェンデルの希望を適えるのなら、自衛団に見つからずにやらなければと思った。]
ただ少しは人狼を殺したっていう証拠がないと、向こうも納得しないと思うけど。
[小さくため息と共に呟いた。]
博愛とかじゃないです。
嫌いな人は嫌いですよ。
[首を傾げて]
だって、女の子が悲しんでいたら、助けるべきなんでしょう?
僕はあんまりイレーネさんのことを知らないですけど。
……フォルカー君と仲良くても、今は、多分嫌だと思うし。
[悩むように、溜息を吐いた]
でも、埋葬の後にします。
[引き渡すのは嫌だというウェンデルの希望が聞こえたか、彼の視線に気付いたか、少年は目を向ける。何も言わずに、じっと、見据えた]
終わりだったら、
きっとこれ以上、何もおきませんから、
一日はもしかしたら閉じ込められるかもしれませんけど、
それ以上はないんじゃないかなって思っています。
[ダーヴィッドに言って]
……あ、
さっきはすみませんでした。
[ぺこり、と頭を*下げた*]
へぇ!そんな便利な力もあるのか。
[フォルカーの告白には、感心したように呟く。]
そうか。村長ってだけでも大変なのに、そんなもんまであるのか。
大変だなぁ…頑張ってたんだなぁ。
[とはフォルカーの頭をわしっと撫でながら、労い言った。]
あ、だったら嬢は安泰か。
よかったよかった。団長も安心して天国に行けるなこりゃ。
[何時も通りというか、いつもの調子でうんうん頷いていたが。
フォルカーの服についた血に気づくと、また後ろに倒れかけた。どうやら言われるまで気づいていなかったようだ。]
―一階廊下―
……。
[フォルカーの言葉が聞こえたら、
護ることと、誰でもいいから排除することは違うと思ったが―
ため息をついただけで黙っていた]
さて、と。
俺はお空のせんせいを旦那様の元へとお連れしてくるよ。
[オトフリートの体を抱えて立ち上がる。
病弱だったためなのか、その体は思っていたよりも軽くて]
ったく、無茶しやがって…
[苦々しい表情で呟いて、玄関へと。
黒猫がその後をついてこようとしていた]
─ →二階・自室─
[震えで足が縺れる。どうにか転ばないように駆けて、自室の中へと飛び込んだ]
はっ……く、ぅ……。
[荒い息のまま扉を背にし、ずるずると床に座り込む]
───怖い、怖いよ……。
あんなフォル、見たく、ない───。
[人狼であるエーリッヒに向けたフォルカーの負の感情。あれが自分に向いてしまうかもしれないと思うと、身体が震えて止まらなかった]
[深層の意識は全て喰らってしまえば良いと言う。表層の意識はそれを拒み、自ら場を壊そうと考える。相反するそれに苛まれ、床に座り込んだまま頭を抱えた]
[少しびくり、としたけれど。
それだけは譲れない、というように、フォルカーを見た。
視線が外れるのは、オトフリートの埋葬を手伝い始める自分が*先だろうか*]
―一階廊下―
…とっとと、引き渡しちまえばいい。
[エーリッヒについては低い声で言い放ち、僅かに苛立つ様子を見せるか。
大切にしようと思った人を殺めた者など、知らない、と]
嫌いなもんは嫌いというなら、俺はそいつが嫌いだ。
[ウェンデルへ告げて、手伝うならスコップを持ってきてくれと顎で場所を示しながら外へ出る。
しばし前までいた墓標へ戻れば、沈痛な面持ちで*埋葬をする*]
[ウェンデルへと向いた少年の視線は、ダーヴィッドに頭を撫でられたことによって逸らされる。
暢気にも聞こえる言いようは己の所業を知らぬからか。
それまで浮かんでいた笑みが、ふっと掻き消えた]
……頑張って、なんて。
僕は――……護れ、なくて、……護ら、なくて。
[掠れた声が、零れ落ちていく]
……………洗って、きます。
[踵を返そうとして、物言わぬエーリッヒの姿が視界に入ると、目を瞑った。
振り返りもせず、浴室へと*駆けていく*]
―墓標前―
[ただ、ウェンデルには手伝うことを強要はしなかった。
これで終わりなら、そんなに手伝いもいらないだろうと思っていたから。
スコップで土を掘りながら、ふと首を傾げて―]
…ハイムさんて、だれだ?
[聞いたことのない名前をウェンデルがフォルカーと関係があるとか言っていた、なと。
もしかしたら、自分もどこかで聞いた名かもしれないが。
まあいいか。息をついて、土を*掘り続けた*]
─二階・自室─
[どれだけそうして居ただろうか。ふらりと立ち上がると、特に理由もなく足が机の方へと向く]
………?
なに、これ…。
[裏返しにされた紙。それを捲ると、『唯一とする望みはなんだ?』と言う文字だけが書かれていた]
のぞ、み……。
[誰が書き置いたものなのか等と考える余裕もなく。目にした文字について思考する]
っと、フォルカー!お前は嬢を護ったじゃないか!
護れてないのは、みんな一緒なんだからな!
[気に病むな、という意味で口にした言葉だが。そこに居た者らにはどう聞こえたものやら。
誰のせいかといわれれば、それは人狼のせいなわけだが。
誰かの責任とか、そういうのはあまり考えていないというか。ある意味全員の責任、みたいなものもあるんじゃないのかとか、自分でも良く分かってないけどそう思ったりしたはいいが、フォルカーのどこか気に障ったらしく走り去られる。
事情までは知らないのでまずい事言ったかな、とは思ったものの。
言った言葉は撤回できないので、結局背を見送るだけだった。]
[ウェンデルとハインリヒは、エーリッヒの埋葬の件でなにやら話をしているようだった。
ウェンデルはエーリッヒと何か交友があったのか、どうしてもエーリッヒを埋葬したいと言う。ハインリヒは、ローザの仇でもあるエーリッヒを引き渡しても辞さないとも言う。]
……正直なところ、俺も引き渡す方に賛成なんだよな。
[それは自衛団視点での判断だった。]
これ以上もし…仮に人狼騒ぎでなくても、何か騒ぎとか問題とか事故でも起こったら、それが人狼と結び付けられて、また一からやり直しって話になるし。そうなったら、人狼を隠したとか何とか難癖つけられかねないのがね。
ん―――――………譲歩案。
その手だけ引き渡して、それで勘弁してもらうように頼んでくる。
[視線に入るのは、狼の腕。]
あとは好きな所に埋めればいいさ。
エルザ達と同じところに埋めないほうがいいってのも、同意するけど。
[流石に殺した相手と近い場所には埋められたくはないかもしれない。
ちらとゆれる魂を見たが、彼らが何を言ってるのかは解らなかった。]
[ウェンデルの謝罪には一瞬何の事かと思ったが、そういえばさっき締め出されたんだっけと思い出して。]
あー。いや、気にしてないから。
大した事でもないし。
[された直後はしょんぼりだったが、今はすっかり忘れていた。
にわとり頭とか言われても仕方が無いと思う。
そんなわけで、エーリッヒの死体から狼の腕を切り取らなければならなくなったのだが。
言いだしっぺがやらなければ、という無駄な責任感から、刃物を持ってきて腕を切り落としにかかったはいいが。
途中で血が出て倒れかけてはまた取り掛かるという、またえっらい時間がかかってしまった作業になったとかは、あらためて説明する必要もないだろう。]
─二階・自室─
[意識が混濁する。表層と深層、二つのそれは混ざり合うも融合することは無く。二種類の意識と想い、感情はぐちゃぐちゃになり不快感となって身を襲った]
[眩暈がする。頭痛がする。胸が苦しい。吐きそうになって、その場に蹲った]
く、ぅ……ごほっ……ぐ……。
[望み、拒み、苦しんで。それが極限に達した時、混ざり合った意識が突然弾けた。眩暈も、頭痛も、胸の苦しみも吹き飛ぶように消え。身体を起こしたイレーネの顔に表情は無かった。床に座り込む体勢の少女に残ったのは、果たして何の意識なの*だろうか*]
―1階・廊下―
僕も、人狼は嫌いです。
でも、エーリッヒさんは……
[浴室で聞いた話を思い返して、首を振る]
先生が嫌うのは、珍しい気がします。
[少なくとも講義ではわからなかったと、当然のことをつぶやいて。
ダーヴィッドの提案に、少し考えてうなずいた]
死者を冒涜するのは、悪いことだと思いますから。
……我侭を言ってしまってすみません。
[ユリアンも埋葬の手伝いをするようで。
とりあえずスコップだけは先にもっていき、ダーヴィッドの手伝いをしようと心に決めた]
―墓標前―
[スコップを持っていくと、少しの間、その場所で、穴が掘られていくのを見る。
ユリアンは大丈夫だろうかと首をかしげていたりもした]
フォルカー君には、確認してないんですけど。
町に住んでらっしゃる方で、シスターのお遣いで行く時に、少しお話したことがありまして。
双子の、
一人しか生まれてこなかった双子の話を、聞いたんです。
さっき、双子の話をちょっとした時、なんとなく、あの方の雰囲気に似ているなと。
ええと、町のですね……
[あそこらへんに住んでいる、とは言ったりして]
ちょっとダーヴィッドさんが心配なので、先に行きます。
―1階・廊下―
[戻ってきたらダーヴィッドは気を失っていた。
とりあえず手紙を拾って、ダーヴィッドをぺちぺちしたりして起こそうとした]
いいですか、ちゃんと休んでてくださいね。
じゃないと変態さんってあっちこっちに触れ回りますよ。
嫌でしょう、呼び名が変態さんになるの。
[起きたのなら、休ませようとする]
僕がやりますから。
[その言葉にはどう返ったろうか。
それでも自分がやるというのなら、大丈夫かと心配しつつも、お願いすることにはなるだろう]
[冷たい水で血を洗い流し、自室に戻って服を替える。その間にダーヴィッドの傍を通ることもあったが、少年は、何も言いはしなかった。
激しい感情の波は、今は収まっている。
しかし凪いでいるとは言い難く、酷く不安定だった]
……何か、食べて、薬、飲まないと。
[思い出したように独りごちて、俯き加減になりながら階下へ向かう]
[何にせよ、しばらくはその場所に。
たぶん、ハインリヒは嫌がるだろうしと、埋葬のお願いにはいかなかった。
別けられた体と手をどうするのか、ダーヴィッドに聞いたりはする。埋葬場所だって、少年はよく知らない。
横に、遠く階段の端に放置された手紙には、血の色はうつっていなかった]
…あと、イレーネさんに、何かあたたかいものでも持って行くほうが良いでしょうか。
ショックだったでしょうし。
親しい方の方が良いとは思うんですが…。
[広間に行こうとして、再度、廊下を通りがかるのは神学生が思考を口にしている頃。
階段を降りきり、その姿を認めると、小さく会釈をした]
[フォルカーが降りてくる。
ぺこり、と少年も会釈を返した。
先程までと違う様子に、少し首を傾げる]
……フォルカー君、だいじょうぶですか?
……はい。
[ウェンデルに目を向けると視界に赤が入り、ゆっくりと逸らした]
すみません。手伝いもしなくて。
[小さく言いながら、進める足は台所へと]
僕も、ほとんど何も、していませんから。
[台所へ向かう様子に、瞬く。
数瞬の躊躇。
それから、後を追う。
言葉は特に、かけなかったけれど]
―一階:台所―
[扉を開き、中へと足を踏み入れる。
ウェンデルが後から来ていると知れば、閉めることはしなかった]
何か、口にされますか。
……何があるのかは、分からないですけど。
―台所―
飲み物を。
人数分、用意したほうが良いかと思ってはいます。
食べ物は、わかりませんけど。
簡単なものなら、作れますよ。
[言いながら、視線を棚の方へと向けて]
紅茶とか、ありましたよね。
ミルクとかはあるんでしょうか。
[奥へ行く様子を、棚の前で立ち止まって、見ている]
……エリザベートさんも、
ローザさんも、
オトせんせいも、
いなくなってしまったから。
みんな、ちゃんと食べてないです、ね。
[水瓶の前で足を止め、中を覗き込む。
まだ、十分にありそうだった]
……ハシェさんは、怖かったですか。
食事、作ってくれていましたしね。
…でも、あっても食べられない気がします。
今は。
[困ったような声音になった。
問われた言葉に、フォルカーから視線を一度、はずした]
怖くないことは、なかったですよ。
人狼のことも。
死っていうことも。
……君のことも。
僕も。
でも、何も食べないと、体に悪いですから。
[笑みは上手く、形作れなかった。
水瓶から視線を外して、ウェンデルに向ける]
……僕は、怖いはずなのに、怖くなかった。
ライヒアルトさんのときも、
“人狼”――……エーリッヒさんの、ときも。
最初は、確かに怖かったのに、あのときは。
……その事が、今は、怖い。
僕は、
……ちゃんと、僕で、いられてますか。
[ろくに知りもしない相手に問うには、滑稽ですらある言葉。発してから口を噤み、ウェンデルを*手伝った*]
そうですね。
食べないと……。
[溜息を吐いて、フォルカーを見る。
視線がかち合って]
……。
ユリアンさんが、言っていました。
そうなる人もいるって。
君は、選ばれた人なんだろうって。
あんな風になるように。
[神に。とは言わなかった。言えなかった]
―少し前・廊下―
[ウェンデルが、珍しいと言ったことに対して僅かに顔を歪める]
あのな、俺は聖人君子じゃねえんだ。
嫌いなやつだっている。
…こいつは、ローザの仇だ。
そして、エルザも…ヘルミーネも、おまえの神様とやらも食ったんだよ。
ああ、自衛団長のじいさんもな。
そしてお空のせんせも…こいつのせいで。
[人狼は他にいないと思っていたから。全てはエーリッヒのせいだと言い切る。
オトフリートはもしかしたら直接は違うのかもしれないが、
揉み合いにならなければ今死ぬことはなかったはずだ。
吐き捨てるように言い、それから墓標まではウェンデルにも、ユリアンにも無言で]
―墓標前―
町のあの辺りは知ってるが、あんまり用のねえ場所だからなぁ。
双子ねぇ。
[ウェンデルがハイムさんについて説明するのを、半分聞き、半分聞き流し。
最後にふうん、と生返事をした。
なぜなら頭の中では、終わった後、何をすべきかと考えをめぐらせていたから。
村長に事情を説明し、酒場のオヤジさんに殴られて…それから、それから―。
戻ると言ったウェンデルはそのまま見送るが、あの二人でできるのかと首をかしげる。
もっとも、人狼の腕を切り落とす…そんな妥協案には頷きもしなかったので
何を言える立場もなかったが]
…俺が行ったら、ずたずたにしちまいかねねえからな。
[見送ったウェンデルの背を見ながら苦笑した。
吐き処を失って消化不良なままの怒りは、胸の裡にくすぶったままだった]
少なくとも、
僕は、今の君を怖いとは思いません。
[見据えて、それから、笑みを作った。
少しまだ、ぎこちないけれど]
エーリッヒさんが、最後までエーリッヒさんだったのと同じように、
君も、ずっと君だと思います。
今そうやって思うということは、君が、君だっていう証拠じゃないでしょうか。
―墓標前―
[ヘルミーネを埋めたその隣に掘った穴に、オトフリートの身体を横たえ、
まだ、ほんのわずか温かさの残る身体に土を被せる。
それは冷たく固くなったそれを埋めるよりも精神的に辛いものがあり―]
…ちゃんと嫁入り、しろよ?
[立てた墓標を見上げながら胸の苦しさに耐えかねて、そんな冗談を言う。
ユリアンがいれば彼ににやりと笑って見せただろう]
―…結局、俺は、まーた嫁入りできなかったわけだ。
[煙草を取り出して火をつけながら、ぼそりと呟いた。
嫁入りどころか、好きな女一人護れやしねえ……。
スコップを手に、見上げた空に*紫煙が揺れた*]
―台所―
[手伝いをしてくれるフォルカーに、それじゃとお湯を沸かすことを願う。
食料庫の場所を聞き(すぐそばだったが)、じゃがいもを幾つか持ってくると、慣れているとは言いがたいが、危なげはさほどない手つきでむいていく。
言葉は勝手に口から出ていた]
ビーは、こういうの、昔すごく苦手だったんです。
僕と性別が反対だったら良かったのにと、言われていて。
それが嫌だったんでしょうね。今じゃ、髪も長くてお淑やかになってると聞きます。
もう随分と、会ってないんですけどね。
[食べやすい大きさに切って、ボールに移した水に入れていく。
適当に切り終わると、鍋に移して火にかけた。茹で上がっていく音を聞く]
フォルカー君は、
もしかして、ハイムさんの……?
[ふと尋ねたのは、ゆでている時だったか。
紅茶の用意を頼みながら、そう尋ねる。
やがて茹で上がった芋は目の粗いマッシュポテト状になり、それを丸くフライパンで焼き上げ、積み重ねておいた。
塩コショウでさっぱりした味ではあるようだ]
……イレーネさんに、紅茶でももっていこうかと、思っていたんですが。
一緒に、行きます?
[ホットミルクは諦めて、温かい紅茶に蜂蜜を垂らす。
ほんわりと甘い香りになった]
―一階・廊下―
[やっぱり無理は良くない。体にも心にも。
当然の結果のようにぶっ倒れていたらしく、揺り起こしたのは昨日散々聞いた言葉だった。]
だれが、変態ぃ〜……
[まずそこを否定できるだけの余裕はあるらしい。]
って、ハシェ殿。
……いや……いいや、俺がやるよ。
死体を傷つけるなんて事、神様の事勉強してる奴があんまりやらない方がいいだろう?
[代わると言われればそう断った。理由あっての行為とはいえ、それも死者への冒涜と変わりないように思ったので。]
代わりに、また倒れたら後ろから蹴飛ばして起こしてくれ。
[そう頼んでから暫くして、ようやく腕は切り落とせた。その間何回叩き起こされたか、数えてはいなかった。多すぎて。]
―一階・廊下―
[傷口を隠すように上着を脱いでエーリッヒにかけてから、何とか背にのせた。ついでに腕も抱える。途中で自衛団に会えば渡すつもりで。
だいぶ冷えてきた体にふれれば、自然と背筋が寒くなった。]
とととりあえず、埋められる場所まで運んどく。エルザらの墓とは、反対の方にするつもりだ。
[やや震えながらそう言い外へと向かおうとして。イレーネの事を言われれば少し足を止めて考えた。]
あー…そうだな。そっちは任せていいか?できれば、フォルカーと一緒がいいのかな。一番仲がいいはずだし。
あ、あとここの血拭いといてくれると非常に有難いです。
[それだけ頼んで、外へと向かった。**]
―外―
[エーリッヒを背負い、こそこそ森の奥に隠すように置いてから、腕を持って一旦見張りの自衛団の所へと戻り獣の腕を渡した。]
副団長に報告頼む。人狼を見つけて、きっちり…処分したってな。
[渡された腕に驚いたり歓声をあげたり、よかったなとほっとしたように言う同僚らには、そうだなと曖昧に笑んで返した。嬉しくなさそうだなと問われれば。]
まぁ……鉱夫の爺さんに団長、エルザにローザ、ヘルミーネさんにオトフリートさんとか…けっこう死人が出たしな。
良かったとは思う。でも大喜びするのも何か違うというか。
[と呟けば、同僚らも死者を思ったか少しの間言葉をつぐんた。
ふと、フォルカーもこんな心境だったかなと、ようやく少し思えたりした。
それから、団員らと分かれて、掘るものを手にしてから再び森へと*入っていった。*]
─二階・自室─
────……ボク、は。
[不意に零れる声。静寂を保っていた空気を震わせる]
場を壊したいの。
人を喰べたいの。
殺してほしい。
死にたくない。
[矛盾した言葉。どちらも自分が望むもの。表層と深層にあった意識は散り散りになり。しかしそのために意識の入れ替わりが容易になる。交互に現れる意識は望みを交互に口にした]
抗いたい。
流れるままで良い。
[そこに望みを訊ねた者は居ただろうか。矛盾する言葉に何を思っただろうか]
喰べ続ければ
場は壊れる。
殺し続ければ
きっと殺してもらえる。
──ああ、なんだ。
やることは一つじゃないか。
[二つの意識の言葉はちぐはぐに繋がり合い、一つの結論を導き出す。少女に歪んだ笑みが浮かんだ]
―一階:台所―
ユリにい、が?
[兄と慕う人物の名が出たのは予想外で、まなこを瞬かせた]
選ばれた、のかな。
自分に『力』があるって知って、誰かを護れるってわかって、嬉しいより、怖くて。
……実際、僕は、護るより傷つけてばっかりで。
人狼の事をおもうと、訳が、わからなくなる。
エーリッヒさんは、
……全部、“エーリッヒさん”だったんでしょうか。
人と話すのも、人を襲うのも、全部、自分の意志だったんでしょうか。
それとも、彼も、……同じ、だったのかな。
[エーリッヒの告白を、少年は聞いていなかった。
聞いていたとて、あの場では理解することは出来なかったろうが。
己の拳を緩く握り、開くことを、繰り返した]
[ウェンデルに指示を受ければ、言われるままに瓶から水を汲み取り、火を起こす]
仲、良いんですね。
別々のところに、住んでいるんですか。
[彼の語りを聞いているうち、表情は笑みに近いものになった。時おり相槌を打ち穏やかに話しを聞いていたが、よく知る姓を耳にして、沸かした湯をポットに注ぐ手も止まる]
……はい。
それだと、ご存知なのかな……
僕も、双子――の、はずでした。
生まれて来たのは、僕だけだったけれど。
[でも、と言葉を区切り、己の首許を示す。
常に付けている、赤石のブローチを。]
エーファは、ここにいる。
器も魂もないけれど、彼女の力は、……ここに。
[遠くを見つめる眼差しで静かに言い、少年は作業を再開した。
ウェンデルの料理が出来る頃には、紅茶も程よく蒸れたところだった。彼へと告げ、運ぶためのトレイを用意する。
問いかけには、俊巡ののちに首を振り、他の皆の様子を見に行くと、外に足を向けた。
行き先は昨日も訪れた、太陽の、月の光を一杯に受け取れる、開けた場所。そこに佇む人物を見つけて、ゆっくりと歩み寄る]
……紅茶と、食事の準備が出来ました。
ハシェさんが、して、下さって。
[そう声をかけたものの、二の句はなかなか継げない。
口の開閉を幾度かして、大きく息を吐き出した]
先日は、……すみませんでした。
[ようやっと言えたのは、それだけ。
まだ物言いたげにしながらも、相手の反応を*窺っていた*]
―回想 階段下―
いや、無理せんでいいが…あまりいい記憶でもない。
でも忘れたままってのも気味が悪いもんだからこれもまた半々なのかもな
[半端だ。と内心で呟きながらも]
理解できないほうがいい。いっそまるで関わらないほうがよかったんだろうけどな
[運が悪いこったというように肩を竦め休むのを勧めるのには断る。
それよりもすることがあるわけで、埋葬しよう。とハインリヒよりも先に来る前にイレーネが走り、自分の横を抜けて階段を駆け上っていく。
それを無言で、ただ目を細め注意深く見つめる姿は他のものたちには見えたのだろうか]
ああ。もちろん。このまんまにはしないよ。
夫婦は一心同体…ってか?
[若干茶化すようにいいながらユエをなでつけたところで、ダーヴィッドがエーリッヒを人狼だという言葉を聞く。
魂といっていた。ああ、死したものを見るものはそこだったのか。と思いながら]
そだね。終わった…やっとか
[本当は終わっていないのを知りながら安堵するようにハインリヒに追従する。
その後エーリッヒを差し出すか、埋葬するかの話題が出て、ウェンデルの意見を考慮したダーヴィッドの意見に賛成と控えめに主張しながら、外へ。
まずはオトフリートを埋葬しに向かった]
―→ 外(墓地)―
―墓標前―
[スコップを片手にハインリヒとともに土を掘る
心配そうにこちらをみるウェンデルには大丈夫だというように一つ頷いてみせる
ちなみにヘルミーネの墓標の隣に作るのはお互い示し合わせるでもないが当然のことでした。ハイムという名の話題には特に反応は示さなかったが、エーリッヒについての話題にはただぽつりと呟く]
完全な本心じゃなかったとは思う
[とはいえ、兄、姉と慕う二人。幼馴染の二人。それらがなくなったことを全て流せるでもない。それも全て本音で]
こっちは俺とハイン兄さんだけで大丈夫だから、ダーヴを頼む。
弱ってたら蹴飛ばしていいから
[そんなことをいってウェンデルを見送った]
[そして土を掘り、オトフリートを納め、土を被せ終えるとしばし瞑目をする。
ユエが先程まで鳴いていたが、その声も今はなく、ただ淋しそうにオトフリートが埋まっていた場所を見つめていて]
いや、ヘル姉に鍛えられてオト兄はがんばって婿修行中じゃない?
[あの人嫁はいらんといってたしというように。ハインリヒの冗談に乗った。じゃないともう色々やりきれない気持ちもしかとあるから]
結局、甲斐性がない野郎だらけだったってこったな。
[肩を竦め、タバコをすうハインリヒを横に思考は既に別に移っていた]
ん、俺、先に戻ってるな
[未だ紫煙を揺らしているハインリヒに短く言って、軽く手を振って、別れる
途中、トレイに紅茶と食事をもってきたフォルカーには話しかけられても、薄い反応しか返さずに、すれ違って]
安堵する人々を横に、血の宴はまだ終わらず、くだした結論は、終幕は如何に
[底冷えするように冷めてるとも、煮え焦げ付くように熱くもとれる声は風に乗って墓標近くにいる面々に聞こえるだろうか。だがそれに気づいたときには既に...は集会場へと入っていた]
[そしてそのまま二階へとあがり、目指すのは、イレーネの部屋
音もなく静かに扉を開ける]
―二階 イレーネの部屋―
望むもの…唯一の願いは出たかい?
[その言葉に反応したのかはわからない。ただ空気を震わせてイレーネの口からもれる矛盾した言葉に似通ったものを見出し、同時に合わないものも見出す]
単純だな。
結局…いずれかが死なないと進まないんだから
[過去に、どうにか場を上手く壊したものがいた気がするがそれは口にせずに、
歪んだ笑みを浮かべるイレーネに静かに言う]
―墓標前―
へえ、そいつはスパルタなんじゃないのか?
[ユリアンから返って来た言葉にふ、と静かに笑って空を見上げる。
墓標から伸びる影は、東へと長く伸びていた]
甲斐性なしだけ…って……は。
[煙を一筋吐き出して、自重気味に笑う。
―うるせえよ。表情はどう見てもそう語っていた]
てめえが甲斐性なしだってのは…とっくの昔から知ってるさ。
[どこまで行っても甲斐性なしは、甲斐性なしだったってわけだ。
そんなふうに思いながら伸びる墓標の影を見つめた。
戻るといったユリアンへは、もう少ししたら戻ると告げ、見送って
入れ替わりにやってくる足音を、耳だけで捕らえていた]
―そうか。
お前さん、強いな。
[紅茶と食事ができたと告げる次期村長に、そんなふうに言葉を向ける。
特に警戒もせず、彼に向ける怒りもない。
消化不良の怒りは向ける先を完全に見失い、ある種の空虚さと変わりかけていた]
落ち着いたみたいだな。
もういいさ、気にするな。
[謝る様子に煙をふわと吐き出して苦笑した。
いつまでもカリカリしている自分が大人気ないと思えた]
だが…次にまたやらかしたらぶん殴るぞ。
俺はお空のせんせいと違って、優しくはないからな。
[にやりと笑う。
―その耳に、風が誰かの言葉を乗せてきた―気がした。
「血の宴はまだ終わらず、くだした結論は、終焉は―」と。
聞こえたか?とフォルカーを見下ろし、誰の姿もない集会場の方を見た]
─二階・自室─
死ななきゃ進まないなら、殺すしかない。死ぬしかない。
その先にボクの望むものがある。
ユリさんは、敵じゃないって言われた。
でも敵じゃないことは、味方とは限らない。
ユリさんは、手伝って、くれるの?
[振り向いた先、ユリアンを視界に捉える。僅かに金を帯びた縹色がユリアンを見つめた。その顔に既に笑みは無い]
その認識は正しい…敵でも味方でもないんだろう
エリ兄から力を貸してほしいといわれて、こうしてきたのも気まぐれだ
[人狼を前にしてもあっさりそんなことをいう]
でも…そうだな。手伝うならせめて覚悟を聞きたい。
…フォルカーを殺せるか?それとも…フォルカーの変わりに死ねるか?
─二階・自室─
エーリッヒに言われてたんだ。
[今まで呼ぶことのなかった名を呼び捨てる。続いた問いには、歳不相応な艶のある深い笑みを浮かべた]
殺さなきゃ、死ななきゃ進まないんでしょ?
[融合ではなくちぐはぐに繋がれた二種の意識。歪んだ心は拒む部分を切り捨てていた]
―(前)1階・廊下―
…あなた以外の誰が変態だと。
いえ。他の方も変態かもしれませんが…オトフリートさんとか。
[死んだ人の名を言った。少しばかり、悩んだ後に]
ユリアンさんにも蹴れって言われましたから、遠慮なく蹴らせていただきますね。
……神学は。いえ、なんでもないです。
[とりあえず、最初は手で起こしていたが、実際蹴ったかどうかは心の底に沈めておこう]
――ありがとうございます。
後で、掘るお手伝いにいきますね。イレーネさんに紅茶をお届けしてから。
フォルカーさんは……、わかりました。
拭いておきますから、安心してください。
[フォルカーと一緒というのに、少し、悩んだ。
が、なんでもないというように、首を横に振り、そして拭き終わったころにやってきたフォルカーと、台所へ行ったのだった]
ユリにいは、何を、知っているの……?
[すれ違いざまに、小さく問いかける。
彼の顔は見なかったし、引き止めることもなかった。
答えを得ることを、厭うかのように]
―外:墓標前―
[強い、と評された少年は、緩く首を、左右に振る]
強くなんて、……ぜんぜん。
変わりたいと思った、でも、僕は弱いままだ。
[吐き出される煙が空へと昇っていくのを追って、顔を上げた]
……せんせい。
[殴ると言われたことに怯えるでもなく、ぽつ、と繰り返した。
地面に水平の高さになった視線を、墓標へと向ける]
せんせい――…………… オトせんせい、いなく、なっちゃった。
[今更に実感したように、噛み締めるように、声を紡ぐ。
しかし感傷に浸る間もなく、まるで知らない者のように聞こえる声が、届いた]
……………ルディン、さん。
僕、
……“人狼”が死んで、終わったと、思った。
でも。
胸の奥底に燻る、何かが、消えないんだ。
[言葉に呼応するよう、首元の赤石が煌めく]
もし、――……もし、僕が“やらかし”そうになったら、止めて、くれますか。
そうだよ。
にしても。こんなガキンチョがそんな笑み浮かべちゃって
[イレーネに近づいて、払われなければぼふっとなでる。]
んじゃま、人間でやれることでもやりますかね。
…どうせ…ま、いいか。
外に、フォルカーとハイン兄さんがいるのは知ってるが、後は知らん。既にしってるかもしれんが、神に選ばれたとかなのは、フォルカーとダーヴ。
俺も含めて後人間を三人殺せば確か場が壊れるんじゃなかったかね?
[と知っている事柄をだらだらと挙げていく]
―台所―
前に、同じことがあったと言っていました。
[ユリアンが、という疑問に、頷いた]
力が、嬉しいって思ったら、おぼれちゃうんじゃないですかね。僕がそういうものを持ってるとしたら、と考えると。
力に頼りすぎるのは、きっと良くないことだと思います。
…フォルカー君は、つらい、でしょう。
でも、そう思っていられるなら、きっと、大丈夫だと思います。
たとえ……神がそれをお望みになっても。
[最後の言葉はちいさく。
そして、エーリッヒのことを気にするのに、少し、曖昧に笑った]
いろいろ、あったんだと思います。
僕はエーリッヒさんではないから、感情の全部がわかるわけじゃないけど。色々、重なってしまったんじゃないかなと。
─二階・自室─
[表情について言われても何も言わなかった。自分がどんな笑い方をしているかなんて分かっていなかったから。撫でられるのには抵抗せず、挙げられた内容を耳にする]
場については母さんが残した日記でしか読んでないの。
母さんは、自分が死ぬことで場を崩してたけど……そう、後、三人。
一人、誰かを……頼んで良い?
出来れば、力ある人を。
[殺して欲しい、と。そう言外に含んでユリアンを見上げた。その顔に先程まで浮かべていた艶のある笑みは無い]
誰かに吹き込んで別の人を殺すように仕向けても良い。
手段は、任せる。
―墓標前―
[オトフリートがいなくなってしまったと言うフォルカーの視線につられるように墓標を見た。
その後、不穏なことを言う誰かの声にはフォルカーも気づいたようで―]
あー、その、なんだ。
俺はチビがそんなしけたツラしてっとむしゃくしゃするんだ。
[フォルカーの頭をくしゃくしゃと撫でる代わりに自分の無精髭をごしごしと擦って]
お前さんのことはお空のせんせいにも頼まれてるしな。
妙な力があるんだろう?
心配するな。―言われなくても止めてやるよ。
それに俺も―さっきからどうも胸騒ぎがする。
[集会場の方を見やって息を一つ]
―台所―
僕が村を出てしまったから。それ以来、会ってないですね。手紙は何度も書いてるんですけど。
僕が休学してからは、僕からしか送ってないのか、それとも寮に溜まってるのか。怒られるのは確実でしょう。
[姉の事を話すときだけは、とても楽しげに。
フォルカーの様子を見ては、ほっとした息を、気付かれないように吐いた]
――あぁ、やっぱり、フォルカー君だったんですね。
エーファさん、っていうお名前なんですか。良い、お名前ですね。
[ブローチを見て、微笑む]
ずっと傍にいるのは、良いことです。喜んでいると思います。
…エーファさんは、きっと、フォルカーさんをずっと護っててくれるんですね。
そういえば、僕のことは、ウェンデルで良いですよ。何なら、ウィーでも。
[姉が呼ぶ愛称だと、問われれば説明しただろう。
他の人を見に行く、というのに頷いて、少年は蜂蜜を溶かした紅茶を持って、台所を出ていく。行ったところで、また部屋を知らないと思ったが――まぁなんとかなるか、と階段へ]
へぇ…そなんだ。ってか母親もか
いや、まあ俺もわかんねーよ。聞いただけの話で確信なんてないから
[血族なのね。とか思いながら、思わず普段のように抵抗のようなものをしないので調子にのって頭をぽふぽふした]
吹き込んでは無理だな。
もう人狼いないって思われてる感じだし。じゃあ場所がわかってるやつか目に付いたやつにするか
[軽く伸びをしてから、扉のほうへと向かう]
―外―
[森の適当な場所に穴を堀、エーリッヒを埋めた。
ほんとに適当なのか、開けた場所でもなく、樹が生い茂った間の狭い隙間だった。]
目印目印と…。
[標の代わりに、拾った石で傍の樹に格子模様を彫っておいた。
後でウェンデルに教えないとなぁと思いながら、その前に暫く立っていた。]
[部屋の扉を開けたところで止まった]
ぉ、ウェンデル。
紅茶なんてもってどうしたんだ?
もしかして、俺と同じでイレーネが心配できたってとこか?
[なんていって、入るか?というように扉を開けて…誘い込んでみる]
─二階・自室─
うん。
母さんは、死を選んで一緒に場に巻き込まれた父さんと心中した。
それを知ったのは、ここに来てからだけど。
───自分が人狼の仔であるのを知ったのも。
[調子に乗って何度も撫でる様子には、軽く睨み上げるよな視線を向けた。それは以前にも同じようなことをされた時に行ったものと同じ仕草]
それで構わない。
よろしくね。
[声は淡々としたもの。扉へ向かう様子には引き留めることなく、僅かに金を帯びている縹色を向けた]
―2階廊下―
あ、ユリアンさん。
[部屋から出てきた様子に、首を傾げる]
いえ、2階にいらっしゃったとは知りませんでした。
イレーネさんが、さっき辛そうに見えたので、あたたかいものでも、と。
ほっとしますから。
[それから、半眼になった]
もしかしてイレーネさんのお部屋に、二人っきりでいたとか、言います?
ダメですよ、年頃の子と入るときは、ドア開けておかないと。
[言いながらも、扉を開ける様子に、それじゃあお邪魔します。なんて答えてその傍へ]
ユリアンさんも飲みます?
持ってきましょうか。
ご、ごめんなさい。
[むしゃくしゃすると言われて、思わず、謝罪を口にした。眉が下がる]
せんせい、が?
……妙な――……じゃなくて、……護る、力。
本当は。
[自らの力を告げる声は、小さなものになる。
言うのは多少の躊躇いもあったが、情報源が自らの師というのもあり、伝えても良いかと思うに至っていた。
騒ぐように煌めく石を、手で押さえる]
ずっとむかし、村の鉱山で採れた石だそうです。
神の使いが訪れて、石を清め、力を宿したのだって。
……………父が、鉱脈を調べることに否定的なのは、そういう意味もあるんだと思います。村が発展するならばとは思うけれど、万が一、護り手の秘密が広まっては、って。
[集会所に目を向ける相手を見やり、戻りましょう、と声をかけて歩み出す]
[睨みあげるようイレーネの視線は視線は受け流しました。しっかりと]
そりゃそうだ。ウェンデルにばれるほど俺も落ちぶれちゃいないぞ
[何がだろうという冗談を口にして]
なるほど、そりゃ気が利く…って、あのな。
イレーネは俺にとっちゃ妹分みたいなもんだっての。
だから心配ご無用
[なんてあっさりとした様子で軽く否定して]
ん?ああ、気遣ってくれなくても俺はいらんよ。
それよりもイレーネに
バレるって嫌な言い方ですよ。僕は確かに鈍いですけど。
[小さく溜息を吐いて]
でもダメです。マナーです。
って聞きました。
[否定にも、しっかりと言った。
けっこう厳しいらしい]
ユリアンさんもお疲れじゃないですか。
…もちろんイレーネさんにもお渡ししますけど。
それなら、下に、じゃがいものちょっとした食べ物もありますから。食べられそうなら。
[階段の方を振り返ってから、室内をひょこりと覗く]
イレーネさん、大丈夫です?
…紅茶飲めそうでしたら、これ。
[手元へと視線を落として。許可がないので、まだ入らないらしい]
―墓標前―
[ごめんなさい、と眉が下げるフォルカーを見て、たまらずその頭に手を伸ばす]
謝らんでいい。
…俺にもな、もしかしたら今頃お前さんよりもすこぉし小さいくらいのがきんちょがいたかもしれないんだ。
そう思うとつい構っちまうんだよ。
[軽い調子で言って笑うが、妙な力ではなく護る力だと言われて、ああ、そうだったと頷いた]
お空のせんせいはな、人間と人狼の区別が付いたらしい。
俺は人間だと太鼓判押してもらったよ。
[安心しろ、と言い、フォルカーの頭をぽふぽふと。
石の由来を聞いた後、行きましょうと言われて同意を示し、スコップを手に集会場へと歩きながら]
へえ、そいつはまたすげえもんだな。
だったら…今回の結果は出さねえ方がいいかもしれないな。
[と無精髭をぽりぽりとした]
―外―
……なんつーか。
生きたい生きたい言ってたから、死んだ今は苦痛か?
[墓の前で呟く。そこにエーリッヒの魂は見えない―単に今は目に映っていないだけかもしれない―が。]
死んだら、痛いのは無くなって、代わりに未練とか無念とか、それとも願いだけが残るって、婆ちゃんがいってたけど。
…やっぱり生きたかったって、俺らを恨んでるのかな。
それとも、生きることから解放されて、少しは楽になったかな。
[答えはない。]
─二階・自室─
[はたり、縹色が瞬く。金の髪が瞳に映った]
……ん。
だいじょう、ぶ。
ありが、と。
[問いかけに頷きを返す。先程ユリアンと居た時とはまた違った雰囲気、ぼうとした様子。それは偽りであり真の姿。ゆらりと立ち上がると、受け取ろうと扉の傍へ。その動きは緩慢でふらついていたが]
かったいなぁ。
イレーネが赤ん坊の頃おむつだって変えたことあるっつーのに
[そんなこと事実は一切ありません。]
ま、ウェンデルらしいっちゃウェンデルらしいけどな。
[扉を開け放ったまま、ウェンデルの頭をなでる]
疲れてるっちゃ疲れてる。
けど、こんな状況で疲れてないやつなんていねーし、それに…
[頭をガシリと掴む]
俺…人の肉意外喰えないし
[大嘘もここまでくるとなんとやら、そのまま掴んだ頭を壁にぶつけるように振るった。
…だが壁にぶつかる音のわりには、ウェンデルにとっては衝撃は少ないものとなるだろう]
―2階・イレーネの部屋―
大丈夫なら良かったです。
いえ、入れたばかりなので、熱いですから。
[と言って、それでも近づいてくるのを待つ。
ふらついている様子に、心配そうに眉を寄せた。
が、ユリアンのとんでもない(嘘の)告白に、まじまじと見詰め]
……ユリアンさんっておいくつです?
僕は背が小さくても、一応16歳なんですけど、わかってます?
[撫でるのに、紅茶が危ないなぁ、と思いつつも軽く睨む]
まぁ、撫でられるのは別に良いんですけど。
疲れてない人がいたら確かにそれはおかし、
[いきなりつかまれて言葉が止まる。は?と間抜けな声が出た時、振るわれて、
渡そうと伸ばしていたマグカップは、当然ながら中身を撒き散らし、落ちる。
どんっという音がした。のにそんなに痛くなかったから余計にきょとり、目を瞬かせる]
……わ、
[頭に触れる手に小さく声をあげ、目を大きく見開いた。
ハインリヒの語る事柄に何かしらの相槌を打とうとしたものの、過去形であったがために、何も言うことは出来なかった。代わりにというわけでもないが、撫でる手には、大人しくしていた]
せんせい……
それで、エーリッヒさんが、
[人狼だと分かったのかと、内心、独り言ちた]
どう、なんでしょう。
それでも、僕は――……村が活気づくのなら、見てみたい。
[結果を出さない方がいいというハインリヒに返すのは、以前の問いに、答える形になるような台詞。
しかし、それについて深く語ることはせず、止まないどころか強まる胸騒ぎに焦燥感を覚え、集会所へと進む足は、自然、速まった]
―外―
……俺は、グラーツ殿が居なくなってほっとした。
[ぽつりと呟けば、頭のなかがすっと晴れるような感覚がくる。]
……でも、あんたを恨んだり憎んだりするのは……違うのかな。
[その呟きには、ずきりとした痛みがくる。
顔をしかめて、がんと頭を格子の傷がついた樹に叩きつけた。]
うっさい頭痛。
ちょっと黙っとけ。
[外からの痛みが強かったので、頭の内側の痛みには、暫くの間耐えられた。]
あんたを恨んだりしていいのって、あんたが殺した人か、その人の家族とか恋人とかだけなのかなって、ちょっと思ったよ。
……あーまー、なんだ。
とりあえずローザとかオトフリートさんに怒られてこい?
[一方的に話をしてると、ちょっと怪しい人に見えるかもしれない。いや誰もいないが。
そう思い、最後にそれだけ告げると、道具を持って集会場へと戻っていった。]
23
[年齢について、端的にこたえ、飛び散ったカップから降りかかる紅茶が顔のかかるのを庇うように覆って]
ぁあ…疲れた…だから…終わりたいんだ。
なぁ?エリ兄が人間なら、俺はなんだろうな?
[頭を掴んだまま、取り出したナイフをその額目掛けて、突きたてようとする。その際、頭を掴んでる手の力が僅かに緩む]
─二階・自室─
[近付いた先、カップを受け取ろうとした矢先にカップが宙に舞った。中身が腕にかかる]
───っ!
[伸ばしかけた手が引かれた。反対の手で腕を押さえ込む。予期せぬ痛みに縹色が金に光ったのは、刹那]
[オトフリートがなぜエーリッヒが人狼と察したのかに気付いたらしい様子に]
ああ、そうさ。
で、自分で突っ込んでいっちまった…
…無茶しやがって…。
[最後の呟きは本当に心底から悔やんでいたのがぽろっと漏れたもの。
ふう、と煙草をくわえたまま煙をはいた]
活気付く結果になるかどうかは…わからねえさ。
次期村長が、もちょっと調査させてくれんだったら―結果を出してみせるけどな。
[村の可能性についてはそんな風に言いながらも、集会場へ向かう足は早くなる。
不安に背中を押されるように、一歩、また一歩と。
集会場に着けばスコップをしまおうと納屋を覗き―ふ、と黙った。
そこには他のものに埋もれながら鈍い光を放つ、鉈の刃が見えていた]
[近くまで来ていたイレーネも視界には入っていた。
一瞬の違和感。何があったかわかるよりも前に、ユリアンの言葉を聞くために、視線を合わせる]
ユリアンさん、なんか
変です、よ?
人間、じゃ、ないですか。
[さっきまでの様子と違うのに、思わずそんな事を言って。
だけれど、ナイフを見てさすがに息を飲んだ。
落ちたマグカップは、割れているのも見て取れる。
あ、殺されるのかもしれない。
そんな風に思った瞬間、ふっと頭にかかっていた力がゆるんだ]
――っ
[目をぎゅっと瞑って、しゃがみこむ。手の感覚が頭に残っている。髪の何本かは、ナイフの刃に散ったろうか]
な、んで! いきなり!
[命が無事だった、と分かれば、下からユリアンのことを睨みあげる]
その話は、いずれ。
[オトフリートに関する話題のときには、僅かの間、背後に視線を投げたきりで、黙り込んでいた。
可能性についてを語るのは後に――未来に、回す]
……ウェンデルさんに、レーネのこと、お願いしてたんです。
先、行っています。
[納屋に向かおうとするハインリヒに声をかけ、一足先に、室内へと入る]
ぁーあ。逃げちゃった。
[突きたてたナイフはぎぃんと揺れている。予想以上の力がこもってるのが察せられるだろう。それを抜く気は起きない。変わりはあるし、めんどうくさい]
…人間か。
…ってか俺ってば元々ウェンデルから見たって変なやつじゃないのか?
というか…なぁ?…そろそろ察しろよ
[呆れたというような態度でしゃがみこんだウェンデルを蹴り飛ばそうと足を振るう。
それは階段から落とされるほどではないが、相当な痛みを被るだろう]
─二階・自室─
[金は直ぐに消え、元の縹色へと戻る。腕を押さえ込んだまま、再び床に座り込んだ]
ユリ、さん、何を……。
[ナイフを振るう相手にかける声。震えたのは表層の意識。訝しんだのは深層の意識]
―集会場・納屋―
[道具を納屋にしまおうとしたら、ハインリヒと出くわした。]
ルディン殿。そっちも丁度終わったのか。
[言いながら、こっちも穴掘りに使った道具を中にしまう。]
後で俺もそっちの墓に顔出しに行くよ。
オトフリートさんとヘルミーネさん…ちゃんと見てなかったしな。
[それは魂を見る、という意味よりは、見送る的な意味合いが深かった。]
―納屋―
あぁ……気をつけろよ。
[先に集会場の中へいくフォルカーへ、どうしてそんな言葉を向けたのかはわからない。
しかし、あの時声が聞こえてから、じっとりと嫌な汗が掌に滲んでいた]
―何考えてるんだ、俺は。
[スコップを置いて、鉈に手をかけようとした自分に思わず苦笑した。
それでも胸の不安は取れぬままならば、何か身を守るものをと見回した。
丁度、そこへダーヴィッドがやってきたか]
ああ、まあな。…埋めてきたのか。
[誰をとは聞かずともわかる事。
答えを求めぬ問いを投げ、集会場のある方を目線で示し]
…嫌な予感がするんだ。あんた、なんか感じないか?
その、なんだ、俺なんかよりも妙な力があるんだから―
[また、妙な力と言った。
しかしそう思っているのだからしょうがない]
背に腹はかえられねえか。
[そう呟いて鉈の刃を掴んで引きずり上げる。
小振りのそれは、思ったよりぼろかった]
[踏み入れた集会所内は静寂に包まれていて、数日前の賑わいが嘘のようだと思った。
視線を彷徨わせた後、ひとまずは上へ行こうと、階段へと足を向けて上っていく。
近付くに連れて、一室での出来事も意識のうちに入って来ようか]
元々、変ですけど!
[思いきり本音で言った。
頭の上で、ナイフが戸につきささっているのがわかる。
察しろ、と言われても、すぐに結びつけられないのは]
だって、ユリアンさん…!
終わりかもしれない、のに、いきなりやる意味がわからない――っ!!
[飛んできた足を避けられるわけもない。
思わず身を丸めたけれど、飛ばされる。痛い。
視界の端にマグカップの破片が入り、けられた拍子に外れた手が伸びた。
手のひらに食い込み、血は溢れるけれど、
蹴られた痛みに涙をためながら、睨みあげた。
声は出ないし、震えているけれど。カップの破片で対抗できるわけもないけれど。
死にたくないから]
―納屋前―
ん、まぁ適当にそのうち養分になりそうな所に。
[向こうが名前を言わなかったので、こっちも名を口にはしなかった。
妙な力、にはまぁその通りなので特に言及せず、何か感じないか、には少し首をかしげた。]
何か…?
うーん、さっきから頭が痛い。
[自分で樹にぶつかったから、ではなく。]
嫌な予感っていうか……終わってよかったなーって思ってるんだけど。
そう思うとちょっと頭痛くなるんだよな。
そういえばこないだから、頭痛がするとその先にだいたい俺が見なきゃいけないものがあるって事が多々あったなぁ。
[と、自分でその意味する所の重大性に気づかないまま口にした。]
―納屋―
お前さん……。
今自分で言った事に気付いてるか?
[思い切り苦笑しながら表情を引き攣らせた]
それって、まだ終わってねえかもって事じゃねえか。
[あの時聞こえた声が言っていたのと同じだ]
中行くぞ!
[錆びた小鉈を手に集会場の中へと納屋前にいるダーヴィッドを促し、
自分も納屋を出て集会場の玄関へ。
何かを言ったウェンデルの声が聞こえて、表情を強張らせた]
[イレーネはそれが、嘘であることはしるだろうけれど]
何って…みてわからない?
[とイレーネにはあっさりと言った後]
ちょっとは否定しろやっ
[思わず突っ込んだ。なんでこんなやりとりの最中にこんな言葉が出るのでしょう]
ああ、やっと抵抗しはじめた。
[死にたくないという意志からくる姿にどこか楽しげに嬉しげにしつつ]
だから…終わってないんだよ。
おまえ俺が過去にあったこと知ってるだろう。どうやって…生き延びたと思ってるんだ?
…殺して生き残ったんだよ
―二階:廊下―
[音の方へと進む足は、速い。
けれど、目に飛び込んできた光景に、足は、止まった]
ウェンデル、さ――…… に、ユリ、にい?
何、
[何をしているのかという問いかけにユリアンの声>>149が重なる]
……ユリにい、も、なの?
[世界が揺れるような感覚が、あった。
己の胸の辺りの衣服を、強く、掴む]
[今やイレーネはまったく見ていなかった。
否定しろと言われても、変なのは仕方ないと首を横に振る。余裕があるふりなのか、本心か。
がたがたと震えてはいるが睨みあげて]
今、みんな、おわったと思って、て!
夜に、こっそりしたら、イレーネさんにも、ばれない!
なんで、今……!
─二階・自室─
───……。
[分からない訳がない。それは自分が望んだことでもあるから。腕を押さえ、何も言えず状況を見やる様子は突然のことに動けぬよにも見えるか。実際は、動けない振りをして動かないだけなのであるが]
[ウェンデルの動きを見て楽しげにするユリアン。最初、何故直ぐに殺さないのか、と思っていた。その姿を見て、理由を理解する]
―納屋―
へっ?
………あ、そういう事なのか!?
[指摘されて言われるままに、慌ててハインリヒの後を追う。
ウェンデルの声やら、他の声も聞こえてきて。]
人狼って、一人じゃなかったのか――――
[そういえば誰も一人とも一匹とも言っていない。仲間が居る可能性はなくはない。]
そういや仲間云々、ヘルミーネさん言ってたな…なんかすごいあっさり言われたから忘れてたけど…。
[あーもーとかちょっと思い返しながら、聞こえてくるウェンデルの声。
ハインリヒの目配せに頷いて答えると、二階へと駆け上がっていった。]
俺もって何が?
勘違いするなよ。そんな神聖な役柄俺はもらったことねー
[だがそれでいいのだろうと思う己は口調の割には刺々しくなくフォルカーにいって、そしてウェンデルの言葉に一つ首をかしげて…そして得心したように頷く]
ぁあ。それ。無理。
神に選ばれた子は見逃さない。罪人の烙印を押されたものも止まらない。これはそういう、ふざけた演劇だ。
―2階―
どあほぅ、なんでそういうことを、忘れる―っ!
[階段をかけ上がりながらダーヴィッドに突っ込みをいれながら。
残った者は誰だったかと思い浮かべる]
っ、チビばっかりじゃねえか…っ、くそ!
[子供達に何かあったらとさらに焦る。
2階に上がればフォルカーが早足で部屋に入っていくのが見えたか。
それは自分が使っている部屋の隣だった。
フォルカーを追うように、廊下の真ん中あたりにあるそこへと]
何してやがる…っ!
[見えたものに、驚きと、困惑と…そして憤りの混ざった声を上げた]
―二階:廊下―
……神聖?
[その語が意味するところが理解出来ないというよう、繰り返す。
ざわめく心を押さえつけるよう、胸に置いた手の力は強まった]
演劇って、何の話、ユリにい――……………
[彼に疑問を発そうとした直後、背後から声が聞こえ、ユリアンが幼なじみの名を呼ぶのが聞こえた]
今までは、夜、だったじゃ――っ
[こんな人目につく時間。
しかし言葉は、ユリアンが背をむけたことで、止まる。
イレーネを視界の内にいれる。
さっき、何を見たか。
すぐには思い出せずに、それでもただ二人を見ている]
―二階―
いやああごめんっ!
[あっさり言ったが、内心はちょっと本気で謝った。
そういえば仲間が居た場合、霊を見る能力は有用だとか、けっこう大事なことを言ってくれていた。]
そもそも俺の力って、人狼に仲間がいないとあんまり意味がなかったねっ!
[と言いながら、ハインリヒの後を追いかけ、続いて部屋の中を見た。]
…………ユリアン?何やってんだ?
[中の様子には、やや危機感のない声をあげた。
頭が少し、強く痛みはじめた。]
─二階自室・扉傍─
ふざけた、演劇……。
[ユリアンが紡いだ言葉、問う声。ひゅ、と息を飲む]
───……そう……そう、だね。
止めることなんて、出来ない……。
[どくん、と鼓動が跳ねた。内に渦巻く力が渇望を始める。悲しげに極小さく呟かれたそれは表層の意識。廊下まで届いたか否か]
……ユリさんに頼んだボクが馬鹿だったかな。
そこまでやっといて、裏切ってくれるなんて。
[はきとした声は深層の意識。縹色が金に光る]
止められるなら止めたかった。
抗えるなら抗いたかった。
こんな甘美なもの前にして抑えられるものか。
抗うなんて馬鹿らしい。
[表層と深層、二つの意識が交互に言う]
ここは意味もなく秘密ってことにしておこう
[ハインリヒの憤りの混じった声に、ふざけた言葉を返す]
…今の状況だよ。本当ふざけた演劇。
はじまったら最後まで止まらない惨劇…
―二階・イレーネの部屋の前あたり―
あ。
[さっきの違和感を、何だか悟る]
目が、
金色。
[呟く。
イレーネを見詰める。
ぎゅっと手に力が入って、痛みが増して、そういえば破片を持っていたことに気付いた。
それでも、取り落とすことは出来ない。
死にたくないから]
[一時は、護り手たる少年は、ユリアンに刃を向けられたウェンデルへと、その力を向けようとした。しかし赤石は何も反応しない。
その理由は即座に知らされることとなった。
己のよく知る幼なじみの、知らない声によって。]
――……レーネ?
[手にはますますの力が篭る。
押さえる手の下、心臓が、大きく震えた気がした]
なに、言い出すの。
[足が動く。
ウェンデルもユリアンも、他の皆の存在も、目に入らない。
扉の傍にある、少女の方へと]
エーリッヒさんが、
最後に、
人質に、してたのは……
もしかして
[相反する声を聞く。
ただ、見ているだけで、動くことはできないけれど]
[ユリアンの向こうからイレーネの声が聞こえた気がした。
しかし、聞き慣れた声とは違う響きに、嫌な汗がじとりと手を伝う。
鉈を握った手は、自分の後ろに置き、隠していた]
あぁ?
お前、なにふざけた事を―!
[ふざけた調子のユリアンに近寄りかけて、手から血を流すウェンデルへ]
ウェンデル…!
こっちにこい!
[手から血を流すウェンデルを見て後ろに隠れていろ、と声を向ける]
最後まで止まらない惨劇、て。
[婆さんが言ってたような言葉に、眉の間に皺が寄る。]
惨劇なんて、もう十分だろ?
まだ何かあるのか?それとも、やるのか?
[ユリアンへ問いかけたが、答えはイレーネの方から返ってくることになる。]
え、嬢?
[見慣れたはずの団長の孫の、その瞳の色は別人のようだった。]
[座り込んでいた状態から立ち上がる。腕を押さえていた手も離した。実際、痛みはそれほど残って居ない]
……ボクが人狼なんだよ、フォル。
ジジイを喰べたのは。
ほとんどはエーリッヒが襲ってたんだけど。
ミーネさんの肉は喰べた。
ボクがみんなが忌むべき、人狼。
人を襲わなければ生きていけない。
罪人の烙印を押された仔───。
[近付いてくるフォルカーへ向ける言葉。悲しみを湛えた声と、享楽を湛えた聲。近付いてくる様子に一歩後退る]
ぁあ…ごめんなぁ。イレーネ。本当は裏切りたくなかったんだぜ。
今回のは…どうも俺好みだったからな
最初やる気なかったけどよ。
でもさっきまでは狂ったもののままその役柄どおり人狼の味方でもしようかなーってな。
[それは己の内にある本音であるのは伝わるだろうか
でも実際には違う行動たる矛盾]
ただそこでちと問題があってな。
――っ
[ハインリヒの声に、イレーネから視線をはずした。
呼ばれるままに、立ち上がろうとして、ふらついた。
イレーネの声が聞こえる。
肉を食べた。
動きが止まる。ハインリヒの方にいきかけた足も。
ただ、フォルカーが近づいていく先の、イレーネを見た]
ん、だと…!?
お嬢、お前さん…
[まさか、と思った。まさか子供が、と。
だからイレーネへフォルカーが近づくのを止めようとした動きは後手に回り、
何かあったら…と後ろ手に鉈を握る手に力が入る]
――……。
[イレーネの表情のない顔を見て、苦い表情を浮かべた。
ふらつくウェンデルを視界におさめながら、
しかしフォルカーとイレーネからは完全に視線を外すことができなかった]
れぇ、ね……っ!
そんなの――……………
[継ごうとした言葉は、熱くなる胸の前に掻き消える。
誰かが言う声が、聞こえる気がした。
人狼を滅せ、と。
がく、と、前のめりながら、足を前に出して、少女の方へと進む。
痛くなるほど己の胸元を掴むんでいた手が、震えた。
苦悶にも似た表情が浮かぶ、けれど、少女の声を聞くたびに薄れていく]
えー。冗談が好きっていってたじゃんか
[ハインリヒにそんな言葉を返して、ダーヴが言葉に詰まったのを耳にしながらも、無防備に一歩イレーネに近寄り]
ぁあ。問題ってのはすんごく私的な問題。
俺……どうしても…裏切ってなきゃ生きてけないタイプなんだ。
[だから同じ人間も裏切って、見捨て
そうすることで自分が悲しいと知りながらも、そんな自分ごと裏切り続けて手は出さず。
心底と表面で浮かぶ思考のどちらかを裏切って。
そして人狼を味方すると思わせてやはり裏切って]
だからさぁ…頼られたって思われたら…裏切りたくなっちゃうじゃんか…
[そしてウェンデルを殺そうとする振りまでしたのだというように]
[先ほどのフォルカーの言葉を思い出して、
あ、と小さく声をあげる。
ふらついた足元のまま、フォルカーに向けて手を伸ばす。
届くだろうか]
フォルカー君…!
[怖いといっていた。
それでも、今の彼はもしかしたら――]
ダメです!
なっ…団長、喰ったって…。
[イレーネの言葉に愕然とする。ずっとエーリッヒが食べたものだと思っていた。
近くに団長の魂が見えた。相変わらず、どこか悲しげな顔をしているようだった。]
まさか、団長………だからそんな顔してたんですか………?
[御霊が答えることは無い。自分に宿った力は薄く、魂のその色を見分けることしか出来ない。
もしもっと力の強い女であれば、声を聞き、霊を宿すことが出来たのだが、祖母はそのあたりの詳しい事は話さなかった。ゆえに知る事もなく。
呆然と、イレーネとイレーネに向かうフォルカーを見る。
止めないと、という思考が浮かび。
何から、誰を?という思考がそれを打ち消し。
人狼だ!と歓喜のような思いが湧き上がった。]
やめろよ、黙ってろ、俺は…。
[ぎりと歯を食いしばり、ただ目を逸らす事はせずに。
唯一残った思考で、武器になるような物の場所を把握した。]
来ないで!
[もう一歩後退りながらフォルカーに叫ぶ。瞳は金のままだが、表情に悲しみが乗った]
───自分じゃどうにもならないの。
人を喰べたいと思う衝動には抗えないの。
フォルが……人狼を殺さなきゃと思うのと、同じように。
[言いながら、防御本能とでも言うのだろうか。右手が爪を持つ獣の手へと変化する。灰青の、イレーネの髪と同じ色をした毛並みも現れた]
……面倒な人だと思ったけど、本当に、面倒な。
[聲は忌々しげにユリアンへと告げる]
協力する気が無いなら。
邪魔をするだけと言うなら。
───消えろ。
[変化した右手が振られる。下から掬いあげるよに、腹を抉るよな動き]
[ウェンデルの手が衣服の端を掴み、少年の足は一端止まる]
はな、せ……っ!
[されど、それを振り払おうと腕が動いた。
顔を向けた少年の目には、負の感情がちらつく]
空気を読めねえ冗談は、大嫌いなんだよ。
[不機嫌そうに眉を寄せ、ユリアンを睨みつけた。
イレーネに近寄るユリアンとフォルカー、一歩ひいたイレーネ。
フォルカーを止めるべきか否かを迷いながら、まだ正気でいるかとフォルカーの表情を窺った。
何かあったら止められるように、じりじりと位置を移動しながら―]
[フォルカーが振り払うのに気付くけれど、ぎゅうっと握り締めて離さないように]
怖いって、言ってたじゃないですか…!!
[とはいっても、一度は耐えられても、二度目は無理だろう。
びくりと震えたけれど、
言わなければと思って]
そのままだったら、後悔します――!!
予想通りでよかったな。見る目があったってことだよ
[救い上げるように振るう腕。人外の動きに神の加護のないものが無事で入れるはずもない。ただ身をそらし即死だけは避けるようにした。
腹部が熱い。ごっそりと奪われた感じ。いや、感じじゃなくて実際そうだろう。よろけるように壁に背をつけた]
っ―…!
[金の双眸をしたイレーネの手が、変わるのを目の当たりにした。
驚いた時にはそれは振るわれて―。
それはユリアンへ向けられたものだったが、
危ない、と、フォルカーの体を止めようと手を伸ばす。
ウェンデルに服の端を握られているフォルカーの表情に嫌な予感がして
その肩を叩こうと手を上げる]
まて―。
ウェンデルの言う通りだ…
落ち着け、フォルカー。
[爪がユリアンの腹部を抉る。その手には抉られた肉。爪が紅に染まる]
どうして、ユリさんはそうなの…。
馬鹿な人。
協力していたら生きて居られたかも知れないのに。
[悲しむ声と嘲る聲。ちぐはぐに繋がれた意識は相反する声色と言葉を生む。肉は喰らわず床へと投げ捨てた。腕の動きに沿って紅も飛び散る]
[ユリアンに意識を向けられる程の余裕はない。
耳に届くウェンデルの、ハインリヒの声に、その手に、動きは留められた。
腕を変貌させたイレーネへと、目を向けるのは、赤が散った後の事]
……………ッ、
[また、護れないと、その思いが思考を掠める。
表情に、狂気を孕んだものとは異なる、後悔の色が過ぎった]
でも、僕は、……………僕は、
[続きが紡げない。
自分は、どうしたいのか。
望みが、言葉に、ならない]
[腹を抉られたユリアンに、イレーネを見る。
そこにいるのは、まごう事なき、人狼で。
力を持つフォルカーが、人狼を意識すると高揚するならば、
同じように力をもつダーヴィッドはどうなのだろう。
そんなふうに思ったか、フォルカーの肩を掴みながら一瞬ダーヴィッドの方を見やった]
フォルカー君は、どうしたいんです?
[問いかける。
手はもうはずしても大丈夫だろうかと、少し考えて、はずした。
まだもう片手に握ったままだった破片を、今度こそ取り落とす。
ダーヴィッドはこういう状態になっていないだろうかと、少し心配して視線を巡らせた]
言いたいこと、言ったほうがいいです。
言っても、大丈夫です。
[ユリアンに対するイレーネを見る。
ユリアンの体から血が流れている]
イレーネさん…は?
どう、したいん、です?
[目を背けそうになりながら、小さな声で言った。聞こえたろうか、どちらでも良いというようなそんな大きさで]
ハッ…ははっ。
仕方…ない、だろ、それが。俺だ。
代償が、ないと、罰が、ないと。おか。しい。だろう
それに、裏切る前は。俺が死ぬことも。前提。だったんだぜ。
[血の気を失った顔色。痙攣する身体。痛みに意識を飛ばしそうで、でもその痛みで意識を取り戻しながら、途切れ途切れに言葉を紡ぐ]
[ユリアンとイレーネと、交わされる言葉はよく理解できていない。
力を持ちながら知識は置き去りな半端者には、目の前で起きた事実をただ見て受け入れるしか出来ないのかもしれない。
イレーネの一線がユリアンを襲い、血飛沫が飛んでいくのが見えれば別の意識が擡げた。]
ユリアンっ!
[慌てて、イレーネとフォルカーと距離を取りながらユリアンの割かれた腹を見て―――また後ろに倒れかけた。]
いやいやいやここで寝るな起きろ俺。
でもってしっかりしろユリアン!
[慌ててベットのシーツを引き寄せ、ユリアンの腹を押さえるが、すぐさまシーツは血に染まっていく。]
ボクは───。
[ウェンデルの問いに、声が、聲が、言う]
場を壊したい。
喰らい続けたい。
殺して欲しい。
殺してやりたい。
死の先に、ボクの望みがある────。
[交互に紡ぐ、声と聲。どちらも、自分の望み]
……ダーヴ…ありがとな。いい加減。血を見て倒れそうになる癖。治せ。
[苦しいのにどこか穏かな口調で、ダーヴに告げながらも、シーツをはねのけ、よろよろと、本当は、フォルカーとイレーネが殺しあうのが見たかった。
という燻る願いを裏切って]
ま、勝てないのは当たり前…狂ったやつは、人狼には勝てない。殺せない。
[よろよろとイレーネの元へと向かう]
僕、は、……レーネの“絶対”を、叶える、って、決めた。
[そう願うことすら、“意思”に反することになるというよう。
途切れ途切れ、喘ぐように息を吐いて、少年は、言う]
レーネ、そんなの――……そんなの、駄目、だ…………っ
そして。狂ってる。俺は。
[よろけるように、ナイフを片手に半ば倒れこむようにイレーネに向かうも、ナイフの行く先はまるで別のところ]
本当に、馬鹿……。
裏切り者に似合いの末路。
ユリさんなら、生きて償う道もあったじゃない。
どうせなら役立って死んで欲しかったけどね。
[息も絶え絶えなユリアンに、声と聲がちぐはぐな言葉を向ける]
場を壊すって、ほかに抜け道、ないんです?
[ユリアンの動きを視線で追って、
尋ねてみるものの、
その手のナイフの動きに、びっくりして視線を向けるばかり]
[肩を掴むハインリヒの手を強引に払って、床を蹴った。
護り手の力は行使せず、刃を手にしたユリアンの腕を引いて、イレーネの間に身を割り込ませようと。
ともすれば見当違いの方向に向いたナイフですら、己の身に当たろうが]
[ユリアンと自分の間に身を滑り込ませるフォルカー。表層の意識がハッとした]
フォル――――!!
[声が、叫ぶ。変化していない左手がフォルカーに対して伸びた]
んな事いわれても、もうこれ染み付いてるのが…。
[といわれた事に真面目に返しながら。
シーツを跳ね除け向かう様には、驚いたが少し反応は遅れる。]
ばっか、動くなって!ユリアン!
[と手を伸ばし、ユリアンの腕を取ろうとしたが、触れる感触をわずかに感じただけで。]
アハ…償う気も…役に立つ気も。ないから。
[刺そうとしたナイフはどこか不可視な力に阻まれるように逸れたのに、突き立つ感触]
…お前…な。
[フォルカーをみとめて、震えるながらも呆れ声。
浅いのか深いのか。どこに突き立ったのかも自分でもわからない]
…ぃ、………………ッ、
[目標から逸れた刃は、少年の右脇腹に突き立った。
悲鳴は、肺の奥から押し出された息に呑まれる。
鉄錆の味が、湧き上がってくる感覚があり、数度、咳き込んだ。
上体を前傾させながら、ユリアンには背を向け、イレーネに向き直る]
……れない、なら――……誰も護れないなら、
レーネを、護れないなら、レーネを、殺してしまうなら、
こんな、力、要らない、
……………僕なんて、いら、ない……っ
[傷口を押さえもせず、手は自らの首元へ、そこを飾るブローチを取り外す。
反発するように、赤い石は、明滅を繰り返した]
っと、おい、フォルカーっ!
[一瞬の隙に払われた手にはっとして、
身を躍らせたフォルカーを押さえられなかった。
ユリアンの手先でキラとするナイフの刃に
危ないと手を伸ばすが、すんでのところで届かず―
どうなった、と息をのんだ]
あるのかもな。ないのかもな。
わからんよ。
見つけたら広めてくれ…こんな馬鹿げた演劇が、もう終わるように…
[託すように言葉を放ちながら、ナイフから手を離す。]
片方はせめて生き残ってほしかったんだけどな…二人して…死ぬか?
[それが、一番いいのか?というように二人を見る]
[フォルカーが刺されたようなのはわかったし
そして、彼が手にとったそのブローチもわかる]
――っ
それ
[エーファ、と、フォルカーは言ってた。
そこにいると。
だが、止めに手を出すことはできず、ただ驚きのまま、様子を見ている]
フォル……───。
[フォルカーの言葉に深層の意識が、聲が、抑えられる]
フォル、ボクは、君を殺そうと、君の代わりに死のうと───!
生きてちゃいけないのはボクの方なんだよ!!
[左手が、フォルカーの傷を押さえようと伸びた]
ユリアンさんっ、……!
[二人への言葉を聞いて、思わず口を挟む。
場というのが何か、未だに少年にはわかっていない。
ただ、思い出す。
アレは、あのブローチは、エーファの力だといっていたことを。
器も魂もない力、だとしたら。
その力がなければ、場というのは出ないのではないか。と。
赤い色の、宝石から、目を離せない]
[ユリアンが、フォルカーの脇腹に刺さったナイフから手を離す。
イレーネとフォルカー、ユリアンの間に交錯する意図を感じたか、そこへは手を出せず。
石を外すフォルカーの手元で明滅する赤に顔を顰め、何をする気だ、と]
[力を振り絞り叩き付けた石は、本来の強度であれば壊れるはずなどないのに、高い音を立てて砕け散る。
その存在もまた、場を構成する要素の一つ。
それが、どれだけの役割を担うか、場が壊れるには後どれだけの鍵が必要なのか、少年は知る由もないが]
生きてちゃ、いけなく、なんて――……………、ない。
[咳に血を混じらせながら、少年は言う。
イレーネが傷口を押さえるより前に、脇腹のナイフを引き抜こうと、手が伸びた]
っ…。
[ユリアンがフォルカーを刺すのと止められず。
イレーネとフォルカーの様も見ていられず。
顔を顰めて、ユリアンの傍に立った。]
馬鹿が…何やってるんだよ本当に…。
[口から出るのはそんな言葉。ユリアンにだけ向けた言葉ではなかった。
昨日のオトフリートとエーリッヒの攻防よりも、複雑でぐちゃぐちゃだと頭のどこかが思っていた。]
ダメ、だよ。
フォルには、やることが───。
[血の混じった咳をするフォルカー。ナイフを抜いてしまったら死んでしまうのではないか、と声が震える。抑えつけられた深層の意識が暴れ始め、それをまた抑えようとして、動きが鈍った。そのためか、相手の手の方が先にナイフへと届く]
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