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宿屋の娘 ベッティ に 1人が投票した。
修道士 ライヒアルト に 2人が投票した。
洗濯女 クロエ に 1人が投票した。
細工師 ゼルギウス に 4人が投票した。
細工師 ゼルギウス は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、洗濯女 クロエ が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、賭博師 アーベル、貴族 ミハエル、雑貨屋 ゲルダ、宿屋の娘 ベッティ、修道士 ライヒアルト、細工師 イレーネ の 6 名。
[駆けつけてライヒアルトの姿が遠くに見えて]
ライヒアルトっ!!!
ゼルギウスがっ!ゼルギウスがやべぇっ!!
[二人の様子に気づくのはどれだけ近寄ってからのことだったろうか]
二人ともなにしてやがるんだっ!
[間に割って入るように飛び込んだ]
(幼馴染の片方に人狼が居る?
ゼルギウスはアーベルは視ていないし、
まだ人狼を発見出来ていない。
何故あんな言葉が出るのだ)
[駆けながらの思考。
けれどそれが長続きするはずもなく、意識は次第にライヒアルトを探す方へと]
幼馴染どうしなんだろ?
だめだ、そんなの、だめだろ。
[論理とかよりもはや感情で動いていて、その言葉が二人に届いたかどうか。
アーベルに自分の手は届いていただろうか?]
――…バレてるって何の事だ?
[クツリと咽喉を鳴らしアーベルに首を傾ぐ。
彼が動かずにいるので狩る気が失せたか
それとも、拒絶されても諦めきれぬのか
金色だった眸は元の深緑へと戻った]
なぁ、裏切りたくない奴って、誰、だ?
[答えを期待せぬまま紡いだ言葉。
遠く聞こえる声>>0に、青年は瞬きしいつもどおりに戻る。
ベッティが間に入ればことと首を傾げ]
……ゼルギウスが、如何した!?
[焦りを滲ませる声で問う]
[落ち着けとアーベルの言葉、二人の会話は聞こえていなかったので正確に何があったのかはしらない。
ライヒアルトからの声に]
ゼルギウスが血を吐いたんだよっ!
ライヒアルト、いますぐ行ってやってくれっ!
[切羽詰まった様子で]
宿屋の食堂のところにいるはずだからっ!
はぁ…っ、はあっ
[娘は駆けながらも胸騒ぎを覚えていた。
急く想いは脚力の速さと相まってミハエルのやや先を行く。]
何処、だろう…ミハエル君、心当たりはないかい?
[階下に居たミハエルの方が知っていると想い口にする言葉。]
[コンパスの差でゲルダの後ろを駆けながら]
2人が外で話をするとは聞いたけど、どこに行くとまでは言って無かったんだ。
けれどこう言う時に歩きながら話をするとしたら──。
[偏った考え方かもしれないが、推測として湖畔の名を口にする。
足を止めたゲルダが見えると、ぶつかりそうになるのをどうにか堪えて立ち止まった]
ゲルダ?
ダメ、って何が……
[勘付かれただろうか。
ベッティの言葉>>2にそんな事を思いながらも
表情に出さぬまま不思議そうに首を傾げる。
続く声>>5にはさっと顔色が変わった]
血を吐いた……?!
分かった、知らせてくれてありがとよ。
[アーベルの声>>7に一つ頷きを返す。
深緑が宿の方へと向けられると同時に
駆け出し、ゼルギウスのもとへ急いだ]
―宿屋 食堂―
[コエが、聞こえる。
ごめんねと、ありがとうと、
愛してるという優しいコエが。]
聞きたくない、ごめんだなんて―――
起きて、ねえ、起きて―――――
[それはずっと昔、暗闇の中で眠る人にかけた言葉と同じようなもの。
違うのは、あの時のように応えてはくれない事。
涙を拭われた手がゆると落ちて、膨らんだ腹に触れれば
何も知らない子は楽しげにオトをその手に返した。
揺らいだ赤は、気づいただろうか。
ここに確かに己の一部が息づいている事に。]
[繋いだ手はそのままに、だけど糸は切れてしまった。
強く握っても揺すっても、
もう伴侶が動くことは無い―――。]
――――――――いやああああああ!!!!
[死者を見る娘が、死者となったばかりの人を見て何か呟いたのなら
それは夫が間際に言った様に、ただ幸せを願うものか
それとも狂ったように、たった一つを求めた末路か。
どちらにせよ、失ったものの大きさに、嘆く女には遠い言葉で。
その場で泣き崩れ、傍らから離れようとはしなかった。]
そっか、アーベル君とライヒ君が…
[息を切らせながらミハエルから事を聞き。脚を止めて立ち止まった事を聞かれるとふりむいて。]
…ベッティの声がしたのだよ
ミハエル君の言った、湖畔の辺りから
[そう遠くは無い距離か、聞こえた方角へ行こうと少年に声を掛けた。そのうちアーベル、ライヒアルト、ベッティの姿が見えれば其方に駆け寄り。ゼルギウスの事は知っていたらしく推して知るべしか、宿へ向かう様子なら娘も向かう心算で。]
[道すがらゲルダとミハエルを発見した]
な、ゼルギウスの様子は……!?
[思わず問うも答えを待たずして首を振り]
すまん、先に戻る。
アーベルたちも直ぐに戻ってくると思う。
[二人にそれだけ紡いで宿の食堂へ向かう]
[男同士の会話というのにじっとアーベルを見上げる]
会話って感じじゃ……なかったぞ……。
[とっさにとめに入ったものの、自分の思いすごしだったかもしれないと冷静になれば思いもして、
呼吸はだいぶ落ち着いてきたところで、急ぐライヒアルトを見送った後]
どうしよう、私のせいかもしれない……
[ぎゅっとアーベルにすがりついて、そう泣きそうな目をしていた]
じゃあ、2人もそこに。
[湖畔の方からベッティの声が聞こえたと聞くと、ゲルダと共にそちらへと向かい。
先に鉢合ったライヒアルトには]
かなり酷い状態だと思われる。
ゼルギウスの事、頼んだ。
[答えを聞く前に駆け出したライヒアルトの背中に言葉を投げた]
―宿屋食堂―
[其処に辿りついた時には既に手遅れ。
イレーネの嘆きが聞こえ青年は呆然と立ち尽くす。
気配はもう消えてしまった。
自分がゼルギウスに出来る事は、もう、無い]
――…莫迦。
なんで、俺を呼ばねぇんだよ……。
無理するな、って、言ったのに……。
アーベル! ベッティ!
[2人の姿を見つけると、声を掛けながら駆け寄って]
擦れ違わずに済んだようだな。
…何かあったのか?
[ベッティをあやすような仕草のアーベルを見て首を傾げた]
[自分の思い過ごしなら、そのアーベルの言葉に安堵の表情を浮かべるか、
それもすぐになきそうな顔に告げる言葉、
何をとアーベルの言葉に]
ゼルギウス達に負担、与えて、私が言ったせいかもしれない……
だって、あんなこと言うから……
[すがりついて、頭を撫でられる感触]
ゼルギウスも、死んじゃったら、どうしよう……
[それは彼も見ることができるものと聞いていたから、そのこともあって]
[その直後、ゲルダとミハエルの声が聞こえれば、一度ぎゅっと下唇の裏側を噛み、それから]
喧嘩しそうに見えたから、やめてくれって、二人とめてたんだ。
涙は、乙女の武器だからよ…。
[口調はいつもの様子に、返す言葉はわずかに力がなかったかもしれない。
アーベルから離れて振り返り、目元は言葉のとおり涙の後があっただろうか]
私の勘違いだったみたいだ。
それより、はやくゼルギウスの方に。
[話題をそらすようにそっちの方へ、自分は心配いらないからと幼馴染に視線を向けて、それからアーベルに同意を求めるように]
――…何で、先に逝くんだよ。
お前、子供の顔みれるの、愉しみにしてたのに。
なんで、………っ!
[頼りない足取りでイレーネとゼルギウスに歩み寄る。
閉じられたままの紅が此方を向くことはない]
イレーネ……
済まない、何も、出来なかった。
[青年が居たとしても手に余る状態だっただろう。
それでも何も出来なかった事を悔いて彼女に謝る]
[宿屋へと移動するようなら共に歩き始め。
ふと思い出して、ベッティの隣に行きこっそりと声を掛ける]
そうだベッティ、聞きたい事がある。
先程宿屋を出る前に言っていた言葉。
「幼馴染同士で人狼が居たことになる」と言うのはどう言う意味だ?
ゼルギウスは、ライヒアルトとユリアン、それと僕しか視て居ないぞ。
[考えても解らなかった疑問。
ゼルギウスが秘するのを止めたのだから言っても良いだろうと、今まで視た者の名も挙げた。
結果を訊ねられたなら、全員人間だったと答えるだろう]
[ゲルダには自分の言葉が聞こえていたらしく]
あ……、
[ばつの悪そうな顔をして顔を背けた。
嘘がばれた時、子供の時からそうしてよく幼馴染達に怒られたりもしただろうか]
とりあえず、戻ろうぜ。
[そう、アーベルたちと宿屋への道を行く途中ミハエルからかかった声にそっちを見た]
―宿屋食堂―
[泣く事を続ける事は難しい。
もぞと腹の実が動けばその勢いは少し削がれた。
それでも下を向いたまま、涙は溢れ続けて
しゃくりあげる声も止まる事は無く
目を閉じ眠るような夫の手を握っていた。
幼馴染の声に、悼む心はより強く湧き出て。
謝罪>>25が聞こえたが、顔を上げることは出来ずに
ただ辛うじてゆっくりと、首を振ることだけはした。
そのうち自衛団が遺体を引き取りに来れば、その手は無理に引き剥がされた。]
や、だ……
か、ないで……
[弱々しく見上げるも夫だった人は連れて行かれて。
縋る事も出来ずに床に座り込んだまま、夫が居た場所をじっと見つめていた。]
…かえろっか。
僕もゼルギウスさん心配だし…
[優しく在る彼を想いながら言の葉は紡がれて。
ミハエルがベッティに話しかけているらしきと識ると、
不思議そうな貌をして。]
……見つけられるひとが、ふたりだとしたら
是は如何いうことになるのかな
[つぶやきが聞こえたか如何か。
娘はアーベルとゼルギウスを想い馳せながら、
一つの結論を出す事となるか。]
[ゼルギウスが見たという相手、ユリアンはそもそも人狼に殺されていて、
他にも人狼がいれば今頃放っておくわけもないので、その結果は人なのだろうと、改めて聞くことはなかった]
ゼルギウスがあんとき、二人いて片方死んだら疑われることになるって話からだ。
その論理がそのまままっすぐに通るとしたら、幼馴染同士で人狼がいたことになるだろう。
[そのとき思ったことをそのままに]
ミハエルの命の優先と信用がどうなってるのか、私は知らないけどよ。
人狼が死ななけりゃ、ことは長引くし、最終的に大切な人は死んでくことにもなりかねないんじゃないか?
[それから視線をそらし]
まぁ、あんときは言い過ぎたけどよ……。
――…イレーネ。
[振られる頤に幼馴染の名を紡ぐ。
無理をするなと、言いたいが言葉にはならず。
自衛団がゼルギウスを連れて行こうとすると]
くっ……、乱暴はするな。
彼女には子が宿ってるんだぞ!?
[思わず声をあげて自衛団員を睨む]
……大丈夫か、イレーネ。
部屋に、戻って、休もう。
床は冷える――…、子にも障るから、な?
[床に座り込む彼女の直ぐ傍に膝を折り案じる声を掛ける]
うぬ?
[答えを返されて>>32しばらく悩む]
……どちらも人狼じゃない可能性もあるだろう?
疑いがかかるだけで、どちらかが人狼と確定するわけじゃない。
ベッティは、どちらかが人狼である確証でもあるのか?
[口に出して、自分が引っ掛かった点に気付いた。
本当はベッティは誰が人狼か知ってるのではないだろうか、と]
僕が一番信じてる人を、僕が手に掛けることは無い。
それだけは言える。
[他の信じたい者が死なないとは言わなかった。
順位が決まっている以上、場合によっては手に掛けざるを得ないこともある]
…あの時は色々と差し迫った状況だったからな。
僕は気にしていない。
狼を見つけられる人が二人いるとしたら…
そのどちらが嘘をついている可能性もあるのだよね
[人狼の伝承が書かれた本の内容を思い出す。
彼らに味方する者の存在も含まれているとすれば。
ベッティにそう応えると、また歩き出す。
ちょん、とミハエルの背をつつき、叶うならば。
ゼルギウスが誰を占ったのかを訪ねるだろう。]
お話、僕も聞いて良いかな?
―宿屋食堂―
……。
[幼馴染が怒鳴る声が耳をすり抜け遠くに届く。
ただ「子が」、という言葉だけが、本能のように耳に残った。
それでも立ち上がるまでには至らずに。
目線を合わせられ、囁きかけられれば、
ようやく頷く事で反応を返した。]
……っ、ぅ。
[涙ばかり出て、殆ど喋る事は出来ず、
幼馴染の顔を見る事すら出来なかったが。
手を借りればようやく立ち上がるが安定はせず、ふらと体は傾いだ。]
[悩み返された言葉にこちらも首をかしげる]
へ?そりゃ、別にどっちも人間ってこともあるだろうな。
疑われる話の元ってのは、片方人狼って話だろ?論理がそのまま通るってのは、そういう話だろ?
[ミハエルがどう思ったか、彼がどんな誤解をしたかを自分は知らないが首を傾げながら]
一番がミハエルの手にかかんなくても、だ。
[彼の一番が誰かは知らないが]
人狼の方は待つ気なんてないんだろうしな。
そもそもおとなしくしてりゃ、こんなことにもならなかったんだしな。
一番大切な人に生きてほしいってのは、当然のことなんだろうけどな。
[いつか、アーベルと話したことを思い出し]
一番大切な人が人狼だったら、悩むかもしれないけどな。
[その言葉は彼に与えた誤解を深めたかもしれない]
―宿屋食堂―
[傾ぐ幼馴染の身体。
慌ててイレーネを優しく抱き止める。
彼女と彼女に宿る子を案じての行為]
肩貸してやるから、ほら、掴まれ。
――…歩けるか?
[ゼルギウスが居なくなった今、
自分が彼女を守るしかないのだと思えば
嘆いてばかりもいられず深緑が真っ直ぐ前を見据える]
そうなのか?
[ミハエルとゲルダの言葉に首をかしげて]
ゼルギウスが嘘を言ってた可能性……
んー、でもそれって調べる方法ねぇんだろ?
[アーベルが占い師であることは、たとえ幼馴染が相手でも今は知らせるつもりはなかった。
これが自分のことだったならば、明かすこともあったのかもしれないが]
別にゼルギウス疑うってわけじゃないけどよ、その見る力のやつがいないってこととかあるのか?
[自分よりも詳しいらしい二人にそう尋ねた]
―――…僕の憶測にすぎないけれど
[アーベルの言の通りならばと娘は想う。]
ううん、考えてみればとても単純(シンプル)だったんだ
………だってね
[ミハエル、ベッティ双方を見詰めて
少年から結果が返ると、嗚呼と呟く。]
僕がゼルギウスさんの立場、ならだよ
――…結果か如何あれ、イレーネさんを真っ先に識ろうとするはず
あの人は、いとしいひとを必ず守ろうとするだろうから
誰かに話すにしろ、秘匿するにしろ
そうでないのは何だか違和感があるのだよ
…若しかしたら最初から識っていたとも、考えられるけど
―宿屋食堂―
[深緑の視線に、返す青色は涙と嘆きで濡れた分揺れていた。]
……ぅ、。りが…。
[うん、という返事も、ありがとうという礼も、
詰まって満足に伝えられなかったが。
支えられ、大人しく身を預けるのは
ふらつき傾ぐ身体が満足に動けない現状を知ったのと、
それ以上に幼馴染に信頼があったから。
歩き出す、という目的があれば流れる涙も一度は止まり。
ゆっくりと、借りた部屋まで連れられていった。]
いや、ゼルギウスが自分で視たものが前提になっているから、片方が人狼と言う話では無い。
ライヒアルトが人だと分かっているから、何かあればアーベルを疑うと言う事。
しかし疑うと言うことはアーベルが人狼であると言うことに直結にはならない。
ゼルギウスはまだアーベルを視ていないから、人狼であるかは分からないままなのだよ。
……視点の違いなのだろうか?
僕が言いたいのは、ゼルギウスはライヒアルトを人だと言ったが、アーベルを人狼とは言っていない、と言うことだ。
ベッティの言い分では、確実にどちらかに人狼が居ると言っているように聞こえるのだよ。
[これで伝わるだろうか、と首を傾げた。
視点の違いと言うのは、ベッティがゼルギウスの言葉を信じていないように思えたため。
自分は、ゼルギウスの言葉を信じていたために]
他の人の手に掛かりそうなのであれば、それは勿論止める。
人狼の手にかかってしまうなら、流石に止める手立てが無いが。
どちらにせよ、僕は僕の信じた道を行く。
その結果がどのようなものになったとしても。
行動しなければ、何も結果は生まれないのだよ。
[最後の言葉の返答も含め、そう言葉を紡いだ。
こちらもベッティの大切な人が誰なのかが分からないため、それ以上の口出しはしなかったが]
[守る者がある獣は狩る事を躊躇わない。
例外があるとすれば――
それはもう一人の幼馴染と、金の髪の少年。
涙に濡れる青色に深緑は困ったような貌をする]
今は何も言わなくていいから……。
[イレーネを部屋まで連れてゆけば寝台に寝るよう促して
青年は一人食堂へと戻る事となる]
んーー、視点か……、論理的な問題だと思うな。
[ミハエルの返答に考え込んでから]
この場で疑うって話は人狼かどうかだ。
残った方が人狼ってのがそのまま通るならって言えば伝わるか?
[がしがしと頭をかいて]
んー、私の言葉が悪いみたいだな。
[素直に、そう思った。
ゼルギウスのことを疑う気持ちは確かに、根底にあったのかもしれない]
居ない、と言うことは無い、と思う。
この手の話は伝承でしか知ることが出来ないから、確信を持っては言えないが。
[ベッティの問い>>41には歯切れ悪く答える。
ゲルダの憶測>>42を聞くと、しばし考え込んで]
……あれ、言われてみれば……。
仮に人狼だとしても護ろうとするなら、視ておくのが良い、のか。
[考える程に納得出来て。
途端不安げな表情を浮かべる]
最初から知っていたとしても、団長のように徴を持っていなければ確信するには難しいんじゃないか?
もう一つ可能性があるとしたら、ゼルギウス自身が、人、狼……。
……人狼、だったなら、他は人だと、直ぐ、分かる。
[思い当たった考えに蒼白とも言える表情になった]
こう考えた方が…僕からすれば、しっくりくるかな
識ろうとした動機を考えても好くはないかい?
[どちらかが本物、なんて娘は知らない。
憶測の域は出ないがミハエルからの結果を聞けば、
ゼルギウスに些細な引っかかりを感じていた。
アーベルも先程、可能性を見出したばかりであるからに、
何が正しいのか解らない所ではあるのだが。]
…其のあたりは本人にもう一度聞いてみる必要があるね
兎に角戻ろうか…ライヒ君に心配されちゃうよ
[二人が話を続けるなら、自分はそれを聞くつもりで。
急ぎ早に帰路につこうとした]
― →宿屋 ―
居ないことは、か……
[アーベルかゼルギウスのどちらが本物か、自分の中で天秤が傾くのは考えるまでもなくアーベルの側、
それでも、ゼルギウスが嘘をついてるならば、ミハエルの推測の通り人狼ならば]
ユリアンは……あれだったけどよ…、
ミハエルやライヒアルト残して人間だって言って、他の人を殺して……、
それってイレーネやゼルギウスが死ぬ可能性増えないか?
[疑問に思うことはそこだった]
ライヒアルトは、イレーネの幼馴染だとして……。
でもそうだと、ゲルダが言うようにイレーネ人間だって言っておいたほうがいいのか……。
[んーーと考えてながら答えはすぐにはまとまりそうになかった]
―宿屋 個室―
…………。
[泣き顔も嘆きも、困らせているのは解っているので、
言われるまま言葉は出さずに、ありがとうと震える唇が動いて空の言葉を紡いだ。
促されるまま、大人しく寝台に横になるのは心の疲労に耐えかねたから。
そのまま目を閉じても眠る事は出来なかったが、
何も考えなければ、子供の胎動だけが身体に響いて
今はそれだけを安らぎと希望に変え感じとり、死んだように動かなかった。**]
いや、こっちも悪かった。
いろいろとな。
[そう素直にミハエルに謝り、後悔との言葉には]
それも、そうだな。
[あのときの様子を思い出して、ふとくしゃりとミハエルの頭を一撫で、
ゲルダからの言葉にも頷いて、宿屋へと3人連れ立って帰るだろうか]
僕はまだ、知らないことが多いな
[手にした情報はそう多くは無い。
想うところはあるものの、其れ以上は口にせず。
ベッティがミハエルの頭をなでるのに淡く笑みを浮かべながら食堂へと娘は向かった。]
― →食堂 ―
ただいまなのだよ
[皆はもう上に上がってしまったのか。
ライヒアルトの姿を見つけるとそう返事をして。]
あの…ゼルギウスさんはどうだったのかい?
─ →宿屋─
イレーネを視て人間だと他に知らせたら、隠れ蓑の無くなった人狼が襲いかかる可能性を考えたのではないか?
まぁそうだとしても、視ないと言う手は無さそうではあるんだが…。
[ベッティの疑問>>52そう返したものの、自分の中のゼルギウスの順位は揺らいでいて。
不安げにしていると、ベッティにくしゃりと頭を撫でられた>>54。
一瞬きょとんとしてから、感謝するように小さく笑んだ]
[帰路につきながら、ゲルダの言った考え方を頭の中で纏める]
(知ろうとした動機……何故最初に僕を視たのだろう。
僕が子供だったから?
ユリアンについては、視ることが出来ると悟られてそうだったから、と言っていたな。
じゃあライヒアルトを視た理由は…?)
[思考する間にも宿屋へと辿り着き。
ゲルダ達と共に宿屋の中へ]
―宿屋食堂―
[ゼルギウスは既に自衛団に連れていかれてしまった。
ぽつと食堂の壁に背を預け他の者の戻りを待つ。
イレーネの潔白を証明しようとしたゼルギウスの言葉>>2:126
彼がどれほど彼女を案じていたか、それを知る者はもう少ないか]
――……。
[深緑が伏せられる。
場の空気はとても重い]
―→宿屋・食堂―
んっ、まぁ全員に知らせるならそうなるな。
[ミハエルの言葉にそう頷いただろうか。
宿屋に着くとゲルダの言葉、ライヒアルトの方を見ながらその答えを待つ、
どこか祈るような風もあったかもしれない。
自分が聞いた伝承がすべて正確ならば、どちらかが本物でどちらかが偽物。
見極めるために話を聞きたいという思いと、胸中にある罪悪感とが入り混じってのこと]
―宿屋食堂―
[ゲルダの問い掛けに漸く瞼を持ち上げる。
深緑が彼女を映し、その柳眉が寄せられる]
間に合わなかった。
ゼルギウスは、死んだ。
[ミハエル、ベッティと続けば紡がれた言葉]
─宿屋・食堂─
[食堂にはライヒアルトが居て。
ゲルダが問う様子に翡翠をライヒアルトへと向ける。
しかしその返答を聞いて、翡翠は大きく見開かれた]
ゼルギウスが…死んだ…?
間に合わなかったって、そんな。
[信頼が揺らいでいたことなど今は忘れ、知らされた事実にただ*驚愕する*]
[重い雰囲気に、自然と、つむがれる言葉は予測がつき、
そして告げられた言葉]
そっか……
[なんとか、そう言葉を呟き]
イレーネは……?
[下唇の裏をぎゅっと一度かんでから、その身を案じるように尋ねた。
宿屋に一緒に戻ったアーベルの様子はどうだったか、どこかすがるような目を一度アーベルに向けたかもしれない]
― 宿屋/食堂 ―
そん、な………
間に合わなかった、のかい…!?
[おろりとしながらライヒアルトに問う。
寄せられた青年の柳眉が物語るようで。]
……イレーネさんは何処なのだい?
ゼルギウスさんの亡骸に、ついているとか…?
[ふと想い二階を見上げた。]
[ベッティの傍にアーベルが見えたなら
じ、と向けられるのは物言わぬ深緑。
驚愕の色を見せるミハエルにゆると眼差しを伏せる]
――…折角知らせて呉れたのに、な。
俺が来た時にはもう動かなくなってた。
[イレーネの事を問うベッティに]
泣いてたよ。
辛そうだったから、俺が部屋に連れてった。
今は部屋で…………
[昨日まで隣にゼルギウスが居た部屋。
余計哀しむかもしれないと気付いた時には既に遅い]
……まだ、泣いてるかもな。
ゼルギウスは………
自衛団の奴らに連れていかれたよ。
[クロエも其れを見ていただろうか。
一度視線がその姿を探すも
彼女が何を紡いだかまでは知らず。
上へと視線を向けたゲルダに]
ついててやりたかっただろうな。
けど、止められなかった。
―宿屋・食堂→厨房―
すまない……
[ライヒアルトの言葉に呟くのはそんな言葉、周りの反応はどうだったか]
水取ってくる……
[そう、厨房へとゆっくりとした足取りで*向かった*]
――…何でお前さんが謝んだよ。
[ベッティに向けた声は覇気のないまま。
此処での出来事を青年は知らない。
案じた二人が言わずにいたから
最期の言葉以外、何も、知らされてはいなかった]
……、…
[朝の件で此方を気にするイレーネの姿を想う。
訊ねようとも考えたが今の自分に何ができる訳でもなく。
見上げた視線を下におろし、先程までゼルギウスがいた席に視線を写した。]
そう、なんだ…
こんな時に傍にさえいられないなんて…
[慰めにもならない言葉しか紡げず、娘は憐憫を漂わせて。
クロエは何を識ったのだろうか知る由もなく。]
そんなの、悲しいじゃないか
せめて、今だけでも…一緒にさせてあげたいよ
[しゅん、と俯き、泣きそうになりながら娘は言葉を綴り。]
哀しくても、さ。
自衛団のやつらがそうと決めたなら
如何しようも無いだろ……?
……嗚呼、気持ちは有り難いが、な。
[泣きそうな表情を見せるゲルダが
ゼルギウスを疑っていたのは知らないから
感謝の言葉を彼女へと向ける]
さて、と。
……俺もそろそろ休ませて貰うよ。
お前さんらも疲れてるだろ?
早く休めよ。
[ミハエル、ゲルダ、クロエたちにそう声を掛けてから
疲れを見せる青年は部屋へと戻っていった**]
[水を取ってくるベッティに、行ってらっしゃいと声を掛けて。
自分も戻ろうかとしているうちにライヒアルトの言を聞けば、]
―――…本当にどうしようもないのかな
せめて、死者を弔うくらいの人情はあると想っていたのに
……駄目もとで聞いてみようかな
[休むらしき青年にはそう応えて。]
…おやすみなさいなのだよ
祈るなら僕の分まで祈ってて欲しい
[そう言って、自分も部屋に戻ろうと。
クロエがその場にいたのなら、共に行こうと誘いを掛けたか*]
─宿への帰途─
[大丈夫か、というゲルダの言葉>>26に返したのは曖昧な笑み。
今、ここで知った事実と言う名のカードをどう切るか。
巡るのは、何を生かし、何を切り捨てるか、という思考]
…………。
[道中交わされるやり取りには、口を出す事はしなかった。
今になって重く圧し掛かって来ている、呪に寄る疲労が主なものだが。
何より、自分の考えをまとめたかったから。
ゼルギウスが示したという力。
ユリアンから示唆されていた話の裏づけ。
自分の視点からすれば、ゼルギウスが全てを知っていた事は容易に繋がり。
手にしたカードから繋がるのは、もう一つの推測。
刹那、陰る蒼に気づいたのは、今は肩に居場所を移した蒼鷹のみ]
― 朝・宿屋/自室 ―
[ゼルギウスの弔いは其々密やかに。クロエが落ち込んでいる様子ならば彼女を気遣って部屋に行こうと促し、息をひそめながら自室で過ごした。疲れからか深い眠りに落ちてしまってたようで。]
もう、朝なんだ…
…こんなこと、何時まで続くのだろうね
[不安そうにしていれば何時も幼馴染に励まされてはきたが。それは一時的なものに過ぎず、この状況を耐えうる術でしかなく。]
――――…クロエ、起きてるかな
[もそりと寝台の上で身じろぎする。窓から見える朝焼けを見ながら寝台から降りることにして。]
―――…あのね、こんな時間にごめん…起きてる、かな
ちょっと話しておきたいことが、あって
[小さく控え目にノックをし、反応を待つが返事はかえらない。少し待っては見るが動いた気配は覗えず。ドアノブに手を掛ければ回る手ごたえに眸を瞬かせ]
あれ…若しかしていないの?
[其の時娘はまだ気がつかなかった。廊下に漂う以前の血の匂いで判別が付かなかったのだろう。、クロエの部屋からも鉄錆の予感を感じるまで時間が掛かってしまっていて。]
―――…、これって…
[想わず口許を覆うのは濃くなる血のにおいのせいだけではなく。変わり果てた姿で寝台に横たわる幼馴染の亡骸に、娘の呼気がとぎれとぎれとなり。]
クロ、エ………そんなの、って
嘘…こんなのって、ないよ…
お願いだよ、眼を開けて……
[ぼろぼろと涙を零し、もう手遅れだと解っていても。其れでも尚、娘はクロエの亡骸を揺さぶり続けていた。損なわれた心臓から零れる血が、娘の手指をとめどなく濡らしていく。]
や、だ…ぁ 厭、だよ…
おきて、よ……… クロエ
なん、で…………
[肩を震わせ、血まみれの敷布に涙が落ちて濃い染みを作る。クロエの、眠った様なその貌が苦悶に満ちていなかった事が、娘をそんな想いにさせていた。
すすり泣く声に気が付いた者はそのうち此方に遣ってくるだろうか。涙に濡れた貌を隠す事なく、娘は幼馴染の死を皆に伝えて。騒ぎに気が付いた自衛団の者がクロエの亡骸を連れていくのに対し連れて行かないでと縋るがそれは叶わずに。
部屋には血の跡だけが取り残された。何か想い詰めた表情で娘は、服越しに聖痕を薄くなぞりあげて*]
― 宿/食堂 ―
[長い間、憔悴しきった面持ちで俯いていたが、
ふと貌を上げ辺りの面々を見やり。]
… 皆に伝えたいことがあるのだよ。
構わない、かな?
[自分を含め6名となり、半数の命が喪われたと識る。
もう、時間も余裕も、ないのだ。]
―――…今まで隠してて御免ね
もっと早く明かしておくべきだったのかも知れない
[謝罪の後、娘は自ら纏う黒のワンピースの裾を摘まみたくし上げて。すらりと引きしまった白い右腿が露わとなる。
―――そこには、自衛団長と同じ銀の刻印――聖痕と呼ばれる証が鈍い煌めきを宿していた。]
[皆に聖痕を晒しながら、背筋が冷えて行くのが解る。聖痕は人狼を甘く誘う―――毒(poison)のようなものだとも娘は聞かされていた。
クロエが殺されてしまった今、この中に人狼はまだ居るのだ。自衛団長達の亡骸が脳裏を掠めながらも、ややしてスカート裾を指先から離した。]
僕はもう、逃げも隠れもしないのだよ
―――…僕は此処に居る
叶うならば、僕は……お話がしたい
[誰が、とは云わなかった。もし聖痕の事を尋ねられれば応える心算か其々の貌を見渡し。ややして部屋に戻るよと伝え、娘は自室へと向かった。*]
―前日/宿屋・自室―
……さっすがに、きっついなぁ、これ。
[ふらつきながら自室に戻り、ベッドの上で壁に寄りかかりつつ、小さく呟く。
きついのは状況だけではなく。
自分の身体]
……今の状態で視れるのは、あと一回が限度、か。
なら、確かめておくべき、だよな。
[帰途につくまでに得た情報から、推測はついているが。
それでも、と思うのは、自分の甘さなのだろう。
苦笑が滲む。
その笑みに、蒼鷹が物問いたげな視線を向けるのに、なんでもねぇよ、と返し。
受け取ったきり、飲まずにいたワインの封を切った。
酔いに任せて何かするには、酒に慣れすぎてはいるけれど。
その時は、眠りを呼び込む助けとなってくれたようだった]
―宿屋・自室―
[翌朝。目覚めの時間は、いつもと変わらず。
けれど、身体には気だるさが残る]
……バテてんなぁ……。
[浮かぶのは、自嘲の笑み。
それでも、机の上に瑠璃のダイスを並べ紅を落として、呪を紡ぎ――]
……やっぱり、か。
[灯る黒光。
かちり、と。パズルのピースがはまる感覚]
……ま、ふつーに考えりゃ、ねぇもんな。
こんな状況で、身重の女が放置されてるとか。
[ずっと引っかかっていた疑問が解ける。
知り得るカードは、恐らくこれで、全て。
ならば、これをどう切るか。
どう使えば]
……あいつら、死なせずに、済むかね。
[自分の命は、既にAll-In――全額賭けに注ぎ込んだ。
だから、それを惜しむ気はない。
問題は、賭けに如何にして勝つか。
生きて勝つ、は生かして勝つ、に。
死んで負ける、は死なせて負ける、に。
自分の中では置き換わって]
……とりあえず、まずはライと。
話の仕切り直し、だな。
[小さく呟き、蒼鷹を連れて二階へと上がり]
……あれ、あそこって……。
[目に入ったのは、不自然に開いた扉。
蒼鷹が落ち着きなく羽ばたく。
嫌な予感に足早にそちらへ向かい、そして]
……クロエっ!?
[目に入ったものに、言葉を失う。
蒼鷹が甲高い声で、鳴いた]
……ゲルダ……。
[蒼鷹は、命を失したクロエの傍へ。
起きて、と訴えるよになくのを聞きつつ、泣き濡れるゲルダの頭をぽふり、と撫でて]
……これ、答え、って受け取っていいのかね……。
[掠れた呟きをもらした後、部屋を出る。
ベッティやミハエルが来ているなら、ゲルダの事を頼み。
食堂でのゲルダの宣の後にか先にか。
いずれにせよ、ライヒアルトの姿を見たなら、一言]
……話。
まだ、終わってねぇからな。
[短く、それだけを告げて。
蒼鷹と共に向かうのは、道連れを喪った馬の所**]
─昨夜/宿屋・食堂─
[言葉を失ったまま、ライヒアルトの報告を聞く。
戻って来た時には手遅れで、遺体も自衛団に運ばれたと聞くと、軽く俯いて唇を噛んだ]
───容疑者だから、か。
イレーネの気が済むまで傍に置いても良いだろうに。
[非情とも言える自衛団の対応にそんな言葉が漏れる。
早く休めと言われると、応じる頷きを返して。
ライヒアルトが部屋へと戻るのを見送る]
─ →昨夜/宿屋自室─
[各々部屋に戻る様子に続き、自分も部屋へと戻り。
休む前に考えを巡らす]
……ゼルギウス、君は僕に嘘をついて居たのか…?
それとも、僕は君を信じていて良いのか…?
[揺らいだゼルギウスへの信頼。
もう一人見出す者が居ると言う確信は無かったが、ゲルダが言い出したことであるため本当に居るように思えて。
上着の内ポケットから取り出したパペットごと膝を抱える]
僕とユリアンについては本当のことを言っていた。
ライヒアルトは──分からない。
本当のことを言ったのかもしれないし、嘘をついたのかも、しれない。
……僕の取るべき途……考えなきゃ。
[今まで起きたことを思い返して整理し、自分の中の「順番」も組み直す。
そうしている間に、いつしか深い眠りへとついていた]
─朝/宿屋・クロエの部屋の前─
[目覚めたのは甲高く鳴く鳥の声を聞いてのこと。
嫌な予感がしてパペットをベッドの上に置いたまま部屋を出た]
[開け放たれた扉。
その先に先客が居り、一番に信じている者が泣いていた]
クロエ…?
今度は、クロエが…。
[死せる者から見出す者が襲われた。
人狼を探す手段が一つ喪われたと、胸中で思う。
悼むように瞳を閉じ、アーベルにゲルダを頼まれると頷きを返した]
ゲルダ、一旦部屋を出よう。
手も洗って、着替えなきゃ。
[その言葉に応じる声はあったか。
長く時間がかかってもゲルダの傍に居続け、クロエの部屋から連れ出した]
─宿屋・食堂─
[その後、ゲルダを食堂へと連れ出し、席へと着かせる。
彼女は俯いたまま何も喋らずに居た。
ベッティが居たならミルクティーか何か飲み物を頼み、ゲルダの前へと置く]
───ゲルダ?
[どのくらいの時が経った時だろうか。
不意にゲルダが口を開く。
伝えたい事、それが何を意味するか容易に知れて。
名を呼んだものの、それ以上は口を挟まず言葉を待った。
明かすべきだとゲルダが判断したのだろうと、そう考えて]
[ゲルダの持つ刻印は知っていたために驚くような反応は無く。
それを他の者にどう捉えられたかは定かではない。
ゲルダの刻印は見ずに、他の者の反応を見ていた]
ゲルダ、待って。
[部屋に戻ると言うゲルダを階段辺りで呼び止める。
傍に寄って、こそりと囁いた]
僕も一緒に居て良い?
徴を明かした以上、いつ襲われるとも限らない。
[も、と付けたのは、ゲルダが人狼と話をしたがったため。
彼女の意図を知り、けれど心配だからとそんな言葉を紡ぐ。
許可を得られたならゲルダの後を着いて行き、断られたなら心配げにその背中を見送った*ことだろう*]
―宿屋・厨房→―
[頭を撫でられる感触に、少しだけ安堵の様子を見せただろうか、
厨房に行ってから道中、そういえばアーベルがしゃべらず何かを考えていたことを思い出す]
そういえば、アーベルは私…見てるんかな…?
[ふと、ゼルギウスのことで話していた二人の会話を思い出し、
一人そうつぶやいてから、がしがしと頭をかいて]
それなら、とっとと明かしてたか。
[水を飲み少し落ち着いて、去り際の幼馴染の言葉を思い出し、自分も自衛団員に言いにいってみるかと、
多分向かったのはゲルダ達と違う時に、結局は門前払いされる結果になった]
―宿屋・自室―
[それから、その日は自室に戻り、日記を書いて]
今日も誰か死ぬんかな……
[誰かが、誰が、誰に…そんなことを考えながらふと自分で日記に書いた事を思い、
そしてベッドの上で一人震えていた。
いつしか眠りに落ちて、次に目を覚ますのは朝のこと]
―個室―
[夢も見ず落ちた眠りの目覚めは最悪だった。
ぞわとした、内を探られるような感覚に思わず体を抱く。
それが何なのかは――すぐに思い至ったのは、昨日の彼の言葉を思い出したから。]
……リヒト。
[まだ横になったまま、今は二人きりになってしまった赤い世界でその名を呼んだ。]
私もアルに視られたみたい。
[多分、と付け加えながら。
一度台所へ行き、冷たい水を汲んで戻ってきてから、暫し意識を赤へと向けた。
まだ誰もいない静かな廊下に血の匂いをかぎとったが、ユリアンの時のように、様子を伺うことはしなかった。
何が起きているか、十分知っていたし、餓えは満たされていたため血の匂いに酔う事もなかった故に]
―宿屋・自室→食堂―
[朝、いつの間にか寝てしまっていたのかと、飛び起きるように、
その日は珍しく、起きる時間が遅かっただろうか、食堂につくとすでに皆がいて]
遅くなってすまん、おはよ。
[クロエの死を聞かされるのはそこでか]
クロっちも……か……
ゲルダが悪いわけじゃ、ないからよ。
[ショックな様子のゲルダに、そう言葉をかけて、拒まれないならそっとその頭を撫でるだろうか。
それからミハエルに飲み物を頼まれて]
あ、ああ、そうだな、気が利かなくて、すまない。
[立ち上がり、用意したミルクティーはゲルダとミハエルの前に、
他に望むものがいるならばそちらにも差し出した]
―宿屋・食堂―
[それから程なくして、ゲルダから聖痕のことを明かされて]
ギュンターと同じやつ……?
そっか、ゲルルンは人間でいいんだな?
[周りのみんなの反応や言葉からもそれでいいのだろうと知ることができるか、
謝る様子には自分は首を横に振り]
これで、幼馴染全員、人狼じゃなかったって、知ることはできたしな。
[けどそれはゲルダも同じように、他の幼馴染と同じように死ぬかもしれないということで]
二人とも、人間なんだって、自衛団員のやつもわかってても…なのか……。
[クロエの死体の一件を思い出しながら、そう呟いた。
死体をそのままにできないというのはわからなくもなかったが、納得はできなかった]
―宿屋・食堂―
[アーベルはライヒアルトを呼びに、ミハエルは自室へと向かおうとするゲルダを追って、
イレーネの姿はどこにあっただろうか。
行きたい、どうにかしたいと願いながら、自分は結局どっちについていくこともできなかった。
ゲルダについていくことができなかったのはあることが思い浮かんでしまったため]
自覚がない…自分がってことも……あるかも…しんねぇのかな……
[無意識に呟いた言葉、誰かに聞かれたかもしれない。
ここにあるのは自分の知らないこと、わからないこと、ただそればかりで、
自分が何か置き去りになっているような、そんな感覚から生まれただけの妄想だったのかもしれない。
でも、そのことに疑問をもつ要素も、今の状況ではなかった。
一人食堂に残る結果になったかもしれない**]
[ミハエルに気遣われると、娘は有難うと感謝しきりで。身の上を心配して呉れる様には曖昧な返事を返す。>>88]
あ、ミハエル君御免ね、ちょっと独りで考えたい事があって
―――…纏まったら直ぐ戻るのだよ
[やんわりと断りを入れて独りで階上へ向かう。別れ際に少年の肩をぽふと叩いて、大丈夫だからと付け加えた。]
― →自室 ―
…ゼルギウスさんが亡くなってしまったから、
もう確かめることは、出来ないかな…
[彼の真偽を問う事はもう出来ず。そも、彼が此処に来るずっと前から妻の正体を知っていた可能性も否定できないのだが>>2:126>>57]
アーベル君に聞いても…はぐらかされちゃう気がするな
……昨日、一体二人で何話してたのだろう
…ライヒ君なら教えて呉れるかな
[ゼルギウスが彼を白だと云うのをミハエルから聞いた事を思い出し、思い立つとベットから降りて階下へと先ずはライヒアルトを探しに行こうと。]
― →宿/食堂 ―
[階下へ向かうべく娘は階段を降りようとして。
下に居るものはその足取りが危ない物に見えただろうか。
――日々重ねられた心労が祟ってか、脚を下ろそうとした途端。]
……え、っ、あ、
―――きゃあああああああっ!?
[娘は派手な音を立てて階下まで転げ落ちて。腰や脚を強く打ったのか痛みに耐えきれず、苦痛を貌に強く滲ませて。如何することも出来ずに蹲り、もし音に駆けつけて呉れた人の中にライヒアルトの姿が有るならば、申し訳なさそうな表情を向けていた*]
―朝―
[目が覚めたのは常よりほんの少しだけ遅い時間。
自分とアーベル、そしてイレーネとゼルギウス。
アーベルが村を出る前の、ある日の夢を見た。
懐かしくて、そしてピースが欠けたその喪失感に
朝が来るのだと知りつつも中々目を起きられなかった。
両親の居ない寂しさを埋めて呉れた彼らとの時間。
――当人がそれを自覚しているかはさておき、
ライヒアルトにとって其れはかけがえのないものだった]
――…ン、ぁ。
[夢が終わる。
深緑が天井を仰ぎぼんやりとした声を漏らした]
―朝―
[聞こえた同胞の聲>>91に柳眉を寄せる。
懐かしくも優しい夢の名残は一気に消え失せた。
一人きりの個室で深く息を吐く]
――…グラォシルヴ
[光の名を持つ漆黒の獣の化身は同胞の名を呼ぶ。
彼の伴侶が呼んでいた愛称で呼ばぬのは
彼と自分の立場を明確にわける為でもあったが――]
お前さんもあの気配、感じたか。
あいつ、誘いの手を拒絶しやがったが……
簡単には諦めねぇよ。
別の手を使うまでだ。
[内容を告げぬまま紡ぐ聲は何時もどおりにも聞こえよう。
けれど、誰にも見えぬリヒトの貌には苦いものが浮かんでいた]
―朝―
[部屋を出るとクロエの死を知り嘆くゲルダの声が聞こえた。
仮令疑われていようとも――
アーベルがその事実を告げているかも知れぬとも
自分には偽り続ける道しか残っていない。
昨夜逝った仲間の代わりに、守らなくてはいけない者がいた。
クロエの部屋の入り口で立ち止まる。
誰も見ていなくとも、青年の表情は驚愕の態]
――…っ、今度は、クロエかよ。
[小さく紡ぎ瞑目する。
銀色に輝く十字架を握り締め青年はクロエに向けて聖句を綴る。
やがて自衛団が彼女を連れていった。
嘆き取り縋るゲルダを連れ出すミハエルに
気付かれずとも小さく頭を下げる]
―宿屋・食堂―
[ミハエルに顔を覗き込まれれば、それまでそばにいたことすら気づかなかったのか、
それだけぼーっと、まとまらない考え事をしていたらしく]
おわっ、なんだミハエルか…。
[一度驚いてから]
乙女の悩みってやつだよ。
[心配かけないようにと、笑いかけてみせるだろうか、その話題もゲルダの悲鳴ですぐにうやむやになるだろうか]
ゲルダっ!
[ミハエルよりやや遅れたのは椅子に座っていたからで、途方にくれるミハエルの背を一度ぽんと軽くたたいた後、ライヒアルトがその場にいなかったなら、ミハエルに呼んでくるように頼むだろうか]
ゲルダ?どっか痛めてないか?立てるか?私の声は聞こえるか?
[自分はゲルダの様子を確認するように、そう心配する声を*かけた*]
[それはゲルダの宣言がある前の話。
アーベルの存在に気付いた深緑が一度瞬かれる。
やはり彼だけは殺したくないと思ってしまう。
その、思いに気付けば微かに柳眉を寄せた]
――…話があるのはこっちも同じだ。
[短く声を返して蒼鷹を連れる幼馴染を見送る。
人目を避けるなら、共に行くのは拙いだろう。
昨日の一件で青年はそれを学んでいた。
タイミングをはかり、人の目を誤魔化して
青年は幼馴染の居る厩舎へと向かう。
――人ならざる獣に彼の匂いを辿るのは簡単な事だった]
―厩舎―
[厩舎に行けばアーベルに歩み寄る。殺気などありはしない。
幼馴染を殺す心算など今は無いのだから。
人の気配が他にないことを確認してから口を開いた。
潜められた声は微かに低くある]
話、だったな。こっちからさせてもらうぜ。
お前は全て知ったんだよな。
[同胞に聞かされて知った事があるからそう切り出し]
――…裏切りたくない、ってお前さんは言ったな。
なら、裏切りたくない奴が殺されても良いのか?
俺ともう一人を同時には殺せまい。
靡かねぇなら、お前さんの裏切りたくない奴、殺すぜ。
アーベル、お前は喰らわれず、残るだろうよ。
[身重の彼女が狩れる相手は限られていよう。
それに漆黒にもまた幼馴染を狩る気などもうないのだから**]
―厩舎―
アーベル。
――…誰か一人、お前の手で人間を殺せ。
[誰が人狼で誰が人間か。
理解できているだろう幼馴染にそう囁く。
ライヒアルトの眸には真剣な色が滲んでいる。
勝負事になど関心の無かった男が一世一代の勝負を仕掛けた**]
―宿屋 個室―
なにを……
[するの?と。
その鬣の如く灰銀の名を持つ女狼が問いかけるが、同胞は明確に答えを返さなかっただろう。
名を略されずに呼ばれる事は慣れていたが、彼にどんな意図があったにせよ、それが無意識に同胞との間に一定の距離を作っていた事に、自身は気付いていない。
変わらないコエに、ただ一言「気をつけて」と囁いて。]
―宿屋 廊下―
[目の腫れが少し引いた頃。廊下にでて、人のいる方へと向かえば、そこは一番血の匂いの濃い場所でもあり。]
……クロエちゃん。
[奥に眠る彼女を見れば、言葉が零れた。
憔悴した表情は、夫を失ったばかりな為に偽りのないものだった。
夫よりは嘘をつくに長けて、だが同胞のように演じるには少し足りない自分は、殆んどを誤魔化したりまぎらわしたりでやり過ごした。
そしてそれはこれからもきっと変わらない。
亡骸にすがるゲルダと、手を差しのべるミハエルを見てそっと目は伏せられ。
幼馴染みらが言葉を交わすのは聞いていたが、どちらにも視線は向けられなかった。
自身はゲルダらに付き添い、一度食堂へと。
そこで彼女の告白を聞けば、表情には驚きが浮かぶ。
それは傍目には彼女が刺青を持っていたことに対してにみえるだろうが、実際は合点がいったとうものだった。]
―宿屋 食堂―
(………ああ、だからミハエル君は、ゲルダちゃんを一番に信じてゼルのことを話したのね)
[声には出さずに思う。ずっと引っ掛かっていた事柄に、ようやく答えが得られた。
飛び出した彼を追いかけて行き彼にたどり着いたのはゲルダ、ベッティ、クロエの3人…と、同胞から聞いていた。自分があの中で信を置くとしたら、唯一能力者として名乗りをあげたクロエだと思っていた。それをあえて彼女にした理由に、引っ掛かりを覚えていたのだった。]
……ああ。わかってんなら、話は早いな。
んで、そっちの話って?
[既に知られていた事への驚きはあれど。
余裕は崩さず、話を促して。
告げられた言葉。切られたカード。
言葉が失せ。
その時の表情を押し隠すべく、額に手を当てて俯いた]
(……この……バカは)
[手の下で、歪んだ表情。
泣きたくなった。
彼も、占い師を名乗りながら強行には動かなかったゼルギウスも。
あまりにも、優しすぎるように思えて]
[けれど、その優しさに絆される事は選べなかった。
優しいと思うから。彼らもまた、大切に変わりはないから。
自分の中には、「大切」の優劣なんて、ない、けれど]
……くっ……ははっ……。
[だから、泣き声は笑い声にすり替えて]
お前……っていうか。お前らって、ホント。
甘いよなぁ……。
[「優しい」を「甘い」に置き換えて。
表情は、賭博師一匹狼としてのそれを被って。
顔を、上げた]
その条件で、俺が頷くと思う?
……わりぃが、本気出した勝負師に仕掛けるにゃ、カードがお粗末すぎるぜ。
大体、前提がおかしいだろ。
裏切りたくない奴らから一人選んで殺せとか。
それこそ裏切りにならね?
[言いながら、ポケットに手を入れて。
瑠璃のダイスを、握り締めた]
……それとな、ライ。
お前、一つ、勘違いしてる。
俺は、「裏切りたくない」とは言ったが、「失いたくない」とは、言ってねぇ。
……全て失くす覚悟を決めて、命から何から、全額賭けてんだ。
手にはいらねぇ覚悟なんざ、とっくにしてる。
……ライ。
お前が、本気で生き延びようとするなら。
……イレーネたちを死なせたくないってんなら。
他は全部、切り捨てる覚悟、決めな。
……俺を殺さないなら。
俺は、イレーネを殺す。
……それを躊躇うつもりは、ねぇよ。
[静かに言い放つ蒼の瞳に、揺らぎは、ない。
奥にある痛みは全て冷たいいろに隠されていた]
―厩舎―
[アーベルの声を聞いてもリヒトの表情は変わらない。
甘いなどと漆黒は思ってなどいなかったが
彼が断ることは何処かで分かっていた]
――…全てを全て裏切りたくねぇって?
懐が深いって言やいいのかねぇ。
嗚呼、俺は裏切れと言ってんだよ。
[分が悪い勝負だとは思っていた。
けれどカードがお粗末とは思わない。
彼なら自分の命よりも他の命を貴ぶと思ったから。
殺せないから選べと言った。
人間であり彼が選べる中に彼自身も入れていたのだから]
へぇ、失っても良いって訳か。
それなら、俺は獲物にベッティを選ぶぜ。
[クツ、と咽喉を鳴らす]
[その音は直ぐに消える事となる。
彼女の名を出されると敵わない。表情が消えた]
――……。
どいつもこいつも莫迦ばかりだ。
[止める為に命を投げ出そうとした霊能者が居た。
他の代わりに自分を殺せという占い師が居た]
莫迦、だな……。
[イレーネを殺すといったアーベル。
幼馴染である彼女を殺す事に彼が痛みを覚えないとは思えない。
深緑が哀しげに揺れた]
─厩舎─
……失うもなにもねぇさ。
あいつも、他の誰も。俺の所有物じゃねぇ。
[ライヒアルトの言う「失う」の意味が、所持的なものではないのは承知の上で、言葉を紡ぐ]
……は……バカは、お互い様じゃねぇの?
[揺れる深緑。
対する蒼は、揺らぎを押し止めて、静かなまま。
ここで退く事はできなかった。
一度勝負に出たからには、それを投げ出す事はできない]
切り捨てる覚悟、ないと思ってンのかよ。
イレーネの為になら他は切り捨てられるさ。
あいつの腹にはゼルギウスの忘れ形見が居るんだからな。
[アーベルと対峙した昨夜。
漆黒の獣には守るべき者が三人居た。
イレーネとゼルギウス、そしてその子供。
守る為に蒼を殺す事さえ躊躇わぬと思った。
けれど、ゼルギウスが欠けて、
アーベルへの執着を強めたのも事実]
――…なら、あいつを喰っても構わねぇんだな?
[深緑は静かな蒼から目を離せない]
……は、……なんで靡いて呉れないかねぇ。
覚悟あんなら、上等。
貫けよ。
……他の道、選ぶ気ねぇんだろ?
[語られる覚悟に、返す言葉は淡々として]
……止めた所で、止まる気もねぇんだろうに。
ただ、それをやるなら、俺の選択肢もひとつだけ、って事さ。
[確かめるよな言葉に、静かに返す。
蒼は、深緑を見つめたまま]
は……勝負に出た賭博師が、そんな簡単に引っ込めるわけ、ねぇだろ。
俺の掛け金は、命から何から、全てなんだから、な。
[さらり、と返す言葉は、外での暮らしを伝えるものでもあった]
あ、痛た…っ!
[全身を叩きつけて、痛む身体を引きずるように娘は立ち上がり。
駆け寄って呉れた人達を見詰め、ごめんねと伝えて。]
腰と、脚、打ったくらいかな…
是でも頑丈に出来てるから、うん…
[よろりと上体を起こし、心配して呉れる面々に謝って。]
(脚、少し捻った、かな)
[右脚を擦りながら、ゆるりと立ち上がる]
―宿屋・食堂―
[ミハエルにライヒアルトをと頼みながら、ゲルダからとめる言葉があるなら、その言葉を撤回するだろうか。
ただ、後でちゃんと治療を受けることを念押しながら]
ゲルルン、部屋までいくなら連れて行くぞ?
[そう幼馴染に気遣う言葉]
…ベッティ、ありがと
えっと、冷やすものがあったら持ってきて欲しいんだ
其れからでも部屋戻るか決めていい位だし
[この場にライヒアルトが居なければベッティにそう頼んで。
よろりと立ち上がり、一歩二歩歩み出して。]
貫けって簡単に言うが……
俺は得物を持ってねぇぞ?
[アーベルに軽く肩を竦める。
人間を殺す為に得物は必要ではないけれど。
気付かなければ良いと思いながら
彼ならばわかっているんだろうなとも思う]
お前さんが靡けば止まるかも知れねぇぜ。
なんて、な……。
イレーネを危険に晒すなんて、出来ねぇか。
ゼルギウスに怒られちまう。
何だってこんなに頑固なのかねぇ。
賭博師だった、なんて、知らなかったぞ。
ほんとに、薄情な奴め………。
[込み上げるこの苦い感情は何なのか。
初めて感じるモノだから漆黒にはそれが何か分からない]
─宿屋・食堂─
[途方に暮れていると、ベッティから背中をぽんと叩かれ。
ライヒアルトを探して来るよう言われる]
分かった、探して来る。
[ベッティに頷くと二階へと上がり、各部屋の扉を開けてライヒアルトの姿を探した。
そこで見つからなければ浴場や宿屋内で居そうなところを探してみるも、見つけることは出来ず。
少し息を切らして食堂へと戻って来た]
ダメだ、宿屋内には居ないようだ。
外に出たのかも知れない。
[食堂に居る者に報告して、ゲルダの傍へと寄る]
わかった、冷やすものだな。
あんまり無理すんなよその足で。
[ゲルダの言葉に頷いて、冷やした水を汲んだ桶とタオルを手にして、
それを用意して持ってくるのと、ミハエルが戻ってくるのは同じ頃か]
そっか、アーベルの姿も見えないし、また…男の会話中ってやつか…?
イレーネのことほっぽりだして…幼馴染なんだろうがよ…。
[そう口にしながら、水で冷やしたタオルをゲルダの足の、ひねったらしいところあたりへ]
……別に、得物なんて、いらないんじゃね?
[肩を竦めるライヒアルトに、けらりと笑う。
人狼にとって、最も慣れた得物がなんであるかは、知っている。
その後は文字通り、身体に刻み込まれているから]
……わかってんなら、こだわんなよ。
俺は、俺の道を行く。
お前は、お前の道を行く。
……その道がかち合うなら、ぶつかるだけさ。
[返す口調は淡々と。薄情、との評には肩を竦めて]
元々、戻ってくるつもりなんてなかったからな。
……十九の時に、これと同じ騒動に巻き込まれて。
そこで、一度死んだようなもんだから。
[人と獣の狭間のもの。
生来の異能と合わせて、それが大切なものたちに害を及ぼすなら、故郷を捨てると。
そんな決意は、誰も知らぬこと]
─宿屋 食堂─
[ミハエルが見つけきらなかった二人の場所を、
知ってはいるが口にはしなかった。取り込み中なのは知っていた為。
暫くの間様子を見ていたが、ゲルダへ手は足りているのを知ると。
少しほっとした表情を見せた。]
……私、詰め所の方へ行って来るわね。
……やっぱり、もう一度見ておきたいの。ゼルの顔を。
[そういい残し宿を出ようと。]
――…いいのか、そんな事言って。
人でなくなっちまうかもしれねぇぜ?
ま、同じになりゃ……俺の手、拒めなくなるかね。
[深緑が金へと変わる。
殺して、喰らって、いつもはそれで終わりだから試した事など一度もないが。
その『感染』させる可能性を知らぬわけがない。
リヒトは純血の人狼なのだから]
道が違うというなら、同じにすりゃいいだけだったんだ。
は……、ほんと、莫迦だな。
[馬鹿げた考えだと思う。
幼馴染がそのようなこと望むわけがないのに]
――…災難だな。
こんなことに二度も巻き込まれるなんてよ。
[十九の時、その言葉にピクと片眉が跳ねるけれど
何がひっかかったのかはその時には分からない]
─宿屋 食堂→─
……大丈夫。
[向ける笑みは、小さい。
転ばないようにと言われれば、
よく夫と連れ立っては転びかけ、
毎回のように手を借りていた事を思い出した。
その手は、もうないから。]
転ばないように気をつけるわ。
いつもよりずっと。
[そうミハエルに告げて、宿を出た。]
[ベッティから貰った水とタオルで脚を冷やしつつ。
暫くそのまま休めば、それなりに動きもマシになるか。
唯、余り長い時間は走れそうにはないけれど。]
…そっか、御免ね
―――…でも二人とも何話ししてたんだろう
[昨夜から何処か様子が可笑しいのは解っていた。
募る焦りに、そわりと落ちつかなくなり。]
…二人とも、何か知らないかい?
[そう告げて。外に出るらしきイレーヌへと視線をよこし。
小さく行ってらっしゃいと告げて。]
……本当に、大丈夫なら、良いけど…
[人でなくなる、同じにする、という言葉。
思わず、苦笑が滲んだ。
自分の中には、既に人狼の因子がある。
再度、傷を受けたならどうなるかは──わからない、けれど]
……さぁて、どうだかねぇ?
俺が筋金入りに頑固なのは、お前が一番良く知ってると思ってたけどー?
[深緑が金色に変わるのを見ても、蒼は動じた様子を見せない。
代わりに、というわけではなかろうが、ただならぬものを感じた周囲の動物たちがざわめきたった]
……ほんっと、災難な上にいい迷惑だよ。
じいさまが、それを知ってて俺を隔離組に入れたかどうかまでは、わからんけどね。
[軽く、肩を竦める。瑠璃を握っていた右手がポケットに戻り、ダイスを放した]
[イレーネの言葉に、ゲルダとイレーネ二人を見比べながら]
一人じゃあぶねぇだろ?
あれなら一緒に行くぞ?
[ミハエルから共にとの言葉がなければそう自分が申し出た。
状況を考えるならば、あまり二人きりという状況はよろしくないのだろうが、イレーネから断わられると]
本当に…気をつけろよ?
[気遣う言葉を立ち去る背にかけた]
お前さんが頑固なのは知ってるさ。
お前さんが煙に巻くのが得意なのも
大事な事言わずはぐらかして……
いつも俺らを置いてくんだよな。
[泣きはしない。
けれどライヒアルトの表情が歪む]
アーベル
[幼馴染の名を紡ぐそのくちびるからは鋭い牙が覗く]
俺さ、家族が欲しかったんだよな。
[ぽつと零した言葉。
誰にも言わずにいたはずの本心。
距離を詰め誘うように誘われるように
アーベルへと手を伸ばした]
─詰め所→村の入り口付近─
[詰め所では、予想していた通り中へ通される事はなかった。
必要以上に食い下がらなかった為、手荒な真似はなかったが、
彼らが見る目は酷く冷たい。
身重だろうが、腹の子が人狼の可能性もあるのだからそれも当然かもしれない、とはぼんやりと思っていた。
そしてそれは事実なのだから。
けれど、本当の目的はここではないから、それでいい。
………会いたい気持ちは多分にあるが、それは堪えて。
詰め所を離れ、その先にある村の入り口、切り立った崖まで歩いた。
崖はだいぶ通れるよう作業が進んでいたが、吊橋はまだ半端なところで作業が止まっていた。
また一歩、そこへと近づく。
見極めようと目を凝らして。]
っ………。
[近づきすぎたか、作業をしていた者に見咎められれて追い払われた。]
私も、何の話かは教えてもらってないな。
あいついつも、なんも言ってくれないからよ…
そんで一人でふらっと、どっかにいなくなりやがるからな。
[ゲルダの疑問にはそう半ばあきらめたような様子で、きっと自分の入り込む余地は1ミリもないんだろうなと、そんなことを思っていたりした]
その足でゲルルン一人で、行くとか言わないよな?
[探しにとのゲルダの言葉にはそう釘をさすように]
[置いて行く、という言葉。
ほんの僅か、蒼が翳った。
幼い頃に、一族の異能を教えられて。
その時から、周囲との距離を一定にしていたのは、事実]
……お前、このタイミングで、そーゆー事、言うのかよ……っ!
[歪む表情と覗く牙に、蒼鷹が警戒の声を上げるが。
告げられた言葉に、一瞬、動きが鈍る。
右手は懐に潜ませたままの銀へと伸びる、けれど。
それよりは、距離を詰められる方が僅かに、早い]
―宿までの道―
……飛べるかどうか。
……どうだろう。
[大人しく宿へと戻る最中に、ぽつと呟いた。
人の足では先ず無理だが、
獣の足でなら―――それでもわからない程度の距離が空いている。
確実を考えるなら、もう少し待つべきだが、急ぐのなら
……だが失敗した時の対価は命だ。
それも二人分の。
眉根が寄った。]
…早くは走れないかもしれないけど
でも、転んでも構わない―――…後悔するよりは、ずっといい
[ミハエルとベッティにそう告げて。
ミハエルから身体を支えられ、其れに甘んじる形となるか。]
…有難う、僕は本当に幸せ者だね
なんだかいつの間にか僕ばかり心配されてる
[手を取り、ぎゅうと握り占め。
温かさに涙ぐみそうになるが、ゆるゆる頸を振って。]
…皆で探しに行こうか
三人で探せばきっと早いよ
[ベッティにくぎを刺されるとそう応え。]
――…ずっと、欲しかったんだ。
[アーベルの首筋へと顔を寄せ牙を剥く。
銀が抜かれるのとどちらが早いか。
それは人狼ではなく吸血鬼のように――
殺す為ではなく『感染』を促す為の行為。
殺す程の力は込めない。
家族を知らぬ純血の獣は
ずっと、何処かで家族というものに憧れていた]
―宿屋 厩舎―
[宿へと戻ると、入り口の方へはむかわずに、
真っ直ぐ厩舎のほうへと向かった。
そこにいることは教えられていたので。
獣の匂いが濃くなる中で、知った匂いがふたつ。
ゆっくりと、近づいていく。
下手に同胞の気を逸らせないために注意を払いながら。]
[皆でとのゲルダの誘い、自分は少し迷っていた。
誘われずとも、おそらくはライヒアルトと一緒にいるであろうアーベルをすぐに探しには行きたかったのだが……]
そっちは、二人で行ってきてくれよ。
アーベルが話さないってことは、私に知らせたくないことだったんだろうからよ。
[自分を抑えるように、銀の食器の前まで歩いていって]
なんてか、アーベルに……迷惑はかけたくないんだ。
[そう二人に笑いかけて]
ああ、二人とも銀のものもってるか?
なければどれか好きなのもっていっていいぞ。
ないよりは、ましだろ?
[そう皿とナイフとフォークの銀の食器セットを見せながら]
あるならこんなものいらねぇだろうけどよ。
[伸ばした手はゲルダの手を握り。
紡がれる言葉ににこりと笑んだ]
僕は前にゲルダ達に心配して貰って、助けて貰ったから。
今度は僕が助ける番だよ。
[ベッティの釘刺しに返す言葉を聞けば、笑んだままベッティへと視線を向ける。
一緒に行こう、と言うように]
いいわけは……ねぇよ……。
[ゲルダの言葉に、返すのはそう、小さなつぶやくような言葉]
簡単にあきらめられるなら、なんも悩みもいらねぇしな。
乙女の悩みはいつだって優先事項だからな、
それでも、アーベルの気持ちもなにも、無視していいわけじゃねぇだろ。
[辛うじて、右手は銀を掴む、けれど。
振るうに躊躇いが先行したのは、告げられた言葉のため]
この……バカ、はっ……。
[家族を知らぬ幼馴染。
両親を失い、その孤独の一端には触れた、けれど。
自分にはまだ、伯父と従妹がいたから、完全にそれを理解する事はできずにいて]
……っ!
[迷いは牙を避ける暇を逃し、牙が首筋を捉える。
覚えのある熱に、顔が歪んだ]
……っき、しょ!
[それでも、このまま止まる事はできない、と。
強引に引き剥がそうとしながら、抜いた銀でライヒアルトの左の肩に切りつけた]
―――…僕は武器なんていらないよ
…必要なのは其れじゃないと思うから
でも、アーベルに何かあったら、
其れで納得出来るのかい?
乙女の悩みはそれよりも大事なもの?
[磨き抜かれた銀の食器セット。鈍い光を見詰めながら、
幼馴染の彼女にそう伝えて。]
…ん、早く行こう、ミハエル君!
[二人で手をつないで、外へと駆けて行く。
早く走れはしなかったけれど、其れでも転ばぬように二本足で立って。]
― →外へ ―
…何処、だろう
ミハエル君、宿の外回りは探したのかい?
[どこから手をつけていいものか解らず。
手をつなぎ傍らの少年へと問いかける。]
[アーベルに何かあったら、その言葉に心は揺らぎ]
よくねぇし、納得もできねぇさ。
[自分にとっての一番はアーベルだから、悩みの先はほかならぬアーベルのことだから]
好きだから、大事だから、何より一番に思うから、悩むんだよ。
[今すぐ彼の元に、かなうならばずっと傍に、
けれどもアーベルのことを尊重するならば、彼のことを思うからこそその考えを覆し自分を押し付けることもできず]
はじめからすんなり決められるなら、こんなところに、今いねぇしな……
[自然と涙がこぼれて、出て行くゲルダを見送るように言葉は届いたかどうか]
―宿屋 厩舎―
……アル、ライ。
[物陰で音を聞いていれば、二人がもみ合っているのは解っていた。
危険も知っていた為、飛び込んで止めるという事はできなかったが。
そこにふいに―――顔を出して、名前を呼んだ。
幼い時から、変わらない呼び名を。
それでも止まらないだろう事はわかっている。
それでも。
同胞には、傍にいることを伝えてはいたが―――。]
[手を離さぬよう、それでいてゲルダを支えるようにしながら]
外回りは見てないや。
…そうか、宿には厩舎とかもあったっけ。
[思い出したように施設の名を紡ぎ。
行ってみる?と言うようにゲルダを見上げた]
[アーベルの首筋に牙が埋まる。
傷口からは滴る赤が舌先に甘さを伝えた。
躊躇いの理由をリヒトは理解していない。
躊躇わせる為に紡いだ言葉ではなかった。
彼になら言っても良いかと思っただけ――]
――…っく、ぁ。
[元々力は込めていなかった。
だからアーベルの抵抗に金目の男の身体は退き
肩へと振りかざされた銀が青年の服を切り裂く。
白い肌が覗き薄く一筋の赤が滲んだ]
――…アーベル!
[人の姿の儘、名を、呼んだ。
怒りよりも哀しみが、強い]
[本心では連れて行って欲しかったのかもしれない。
そんなことを口にすることはないが、最後にかけられた言葉にただただ悩んで自分は]
大切にか……
[悩んだ末に]
あいつら、二人だと、心配だからな、だから行くんだぞ。
[そう誰もいない食堂で言い訳をしながら、自分も送れて食堂をでていくだろうか]
[手に伝わったのは、浅い手応え。
距離が開いたのを覚ると、その場にがくり、と膝をつく。
引き剥がす際の勢いのためか、僅かにずれた襟元から、左肩の爪痕が覗いた]
……ちょ、これ……きっつ……!
[身体が熱い。
今新たに得た因子と、ずっと抱えてきた因子。
反応して、活性化するそれらを押さえ込もうとする、呪いの血。
身体の内に巡る力の強さは、思っていたよりも、強くて。
器が耐えられる可能性の低さが、やけにはっきりとわかった]
……ん、の……。
バカ、ども、がっ……。
[今にも崩れそうになる、けれど。
耳に届いた、名を呼ぶ二つの声に。
息を切らしながら、蒼を向けた。
蒼に宿るのは、少しだけ寂しげな。けれど、毅然とした、いろ]
――…イレーネ
[肩を押さえ名を呼ぶもう一人の幼馴染に目を遣る。
銀が触れた箇所が熱を帯びていた。
痛みに柳眉を寄せる]
失態、だな。
お前さんにゃ一番見られたくない、有様だ。
[自信家で、何処か飄々としていて
頼りになる同族の者であろうとしていたのに。
けれどこれは自らの望みと甘さが招いた事だと理解もしていた]
― 厩舎 ―
[導かれるままに辿りつく場所。
二人は確かに其処に居た。
幼馴染二人、銀を持つものと――牙を剥くもの。
互いを奪い合わんとする男達の姿。]
二人ともっ!!!なに、をっ、してるんだい…!
やめなよ…!!!
[あらん限りの声で叫ぶ。
其の刹那、イレーネの姿が見えたかどうか。]
[ミハエルが先ほど探した中で言われていない場所といえばこの近くでは厩舎が思い立ち]
行って見るか。
[最後のゲルダの言葉が自分に突き刺さるような感覚を感じながら、
そこにつくのは皆に遅れてのことになるだろうか]
――…莫迦はお前もだ。
どうせ狙うならもっと楽なとこにしろよ。
[殺されて遣る心算なんて無かったけれど。
アーベルを誘ったその時から、
危ない橋を渡っている事は理解していて。
頑固な奴だから言ってもダメなんだろうと思っていたけど
一縷の望みを捨てられずにいたのも確かで]
―――ライ!
[名を呼び顔を出した刹那、片方は切りつけられ片方の牙は外れた。
その光景を見て、切りつけられた片方に、先ず真っ先に名を呼んで駆け寄った。]
………銀の……!
[刻まれた傷は極浅い。
なのに酷く熱いのは、そういう事に他ならない。
それでも極少量―――
見られたくないと言われれば、緩く首を振る。]
失態だなんて………
大丈夫、これくらいなら――
[そう名を呼ぶ同胞につげ、何とか進行を抑えようとその傷の上に手を当てた。
コエが聞こえて、そちらを見上げれば、寂しい、だけど強い青色を見た。
その色に、こちらは悲しげな目を向けて。]
[父と呼べと言った人間が居た。
修道院の院長はみんな家族なのだと言った。
信じようと思っていたけれど
容疑者になったその時に其れは裏切られる事となった。
人間と家族になどなれない。
ならば可能性のある者は同族しかあるまい。
イレーネの子が産まれれば――
アーベルが同じになれば――
そう考えてライヒアルトはずっと無茶をしてきた]
─厩舎─
[ゲルダと共に辿り着いた先には先客、詰所へと向かったはずのイレーネの姿と]
ライヒアルト──!
[紡いだのは信じたいと思っていた者の名。
対峙するアーベル共々、赤が散っているのが見えた]
[止めろと叫ぶゲルダ。
その一方でミハエルは二人を注意深く見た]
(ゼルギウスはライヒアルトを人だと言った。
でもこの様子は……───)
[銀を持つアーベルと、何も持たぬライヒアルト。
アーベルの受けた傷を見れば、一目瞭然だったか]
―厩舎―
[そこに近づけばゲルダの切羽詰まったような声がこちらにも聞こえてきて、
急いで、その場にたどり着けば]
な…アーベルっ!
[何より一番に目についたのはアーベルの怪我で、
考えるより先にアーベルのもとに駆け出していたかもしれない]
なにしてるんだよ、こんなところで、二人だけでよっ!
[そう言いながら、その場にたどり着くのと誰かに制止されるのはどちらが早かったか]
――…喰えば、治る、かな。
[その言葉はイレーネへと向けて。
他の人の気配を感じては居たが――
金色は蒼へとむけたまま]
はっ……、失態は一度きりに決まってンだろ。
[何を紡ごうと何をしようと靡かぬアーベルに
リヒトは漆黒の獣へと姿を変え飛び掛かる。
――狙うは咽喉笛。
常に一撃でしとめる狩りの名手は傷を負いながら
その脚に、牙に、爪に、渾身の力を籠めた]
だからって…幼馴染同士が傷つけあうなんて――
そんなの、無いよ…!
[ベッティも遅れて駆けつけてくるだろうか。
制止の声も、もう届くか如何か解らない。]
僕は――――…誰が誰でも
たとえ大事な人たちが人狼でも
――――…構わなかったのに!
[駆け寄ろうとするけれど、距離を遠く感じていて。
誰が狼でも構わなかった。仮令誰かが誰かを殺めても。
それでも―――…全部両手から零れるよりは、ずっと良い。]
ゲルダ! ベッティ!
行っちゃダメだ!!
[今まさにぶつかり合おうとする蒼と黒に駆け寄ろうとする二人を止めようと声を張り上げる。
ゲルダに関しては手を離さぬようにして、向かうのを押さえたことだろう。
叶うなら、空いている手をベッティへと伸ばして腕を掴もうと]
[アーベルの言葉に足は止まり、涙をこぼしながら]
アーベルがいなくなったら…いやだからに…決まってるだろうが…っ!
[返す言葉は泣き声で叫ぶように]
ライヒアルトっ!アーベルの幼馴染なんだろっ!
アーベルまで、連れていかないでくれよっ!
[懇願するような声はそこに届いたかどうか、駆け出す姿が見えた気がした]
[ミハエルに名を呼ばれている事も理解していた。
見られていたとしても止められない。
本当は彼には知られたくなかったけれど
そんな事を思っても――もう遅いのだから]
[姿を変えた漆黒を、止める事など出来はせずに。
ただ祈るように『狩り』を見ていた。
最中に割ってはいるようなゲルダ
気をそがれるアーベル
それらが全て光を生かしてくれれば
そんな望みは儚いのかもしれないが――]
……はっ……ラストカード、切ったか……。
[漆黒の獣に転じた姿>>169に、にぃ、と笑う。
飛び込んでくるならば、上等、という所。
大きく避ける余力はないから、せめて一撃で喉を食い破られるのは避けなくては、と。
敢えて、体勢を崩して受け止める事で、直撃だけはそらそうと試みた。
それでも、鋭い牙が首筋を深く抉るのは、止められはしないだろうけど]
……こんな物言い、柄じゃねぇが。
俺と、一緒に、地獄に行こうぜ、ライ……!
[上から圧し掛かられる状態で。
紅に濡れながら、それでも、笑って。
銀の刃を躊躇いなく、繰り出す。
命の鼓動を感じる辺りへと]
[ゲルダの声が聞こえた。
その言葉に漆黒の獣は心の内でわらう。
止めようとしながら
何かをするでない人間の娘。
構わないといいながら
手を差し伸べず
誰かを助ける為に身を呈する事のない娘。
人間の女は言葉だけだと何処かで思っていた]
御願いだよ、ミハエル君っ…!
あっちに行かせて欲しいのだよ…っ!!
[手を掴まれて、でも振りほどけなくて。
こんな光景見たくは無かったのに。
叫びは、もう届かないのか。]
ダメだよ!
二人はもう…もう止まらない!!
[お互い殺すを覚悟した態。
彼らを見てそれは理解した。
だからこそ、ゲルダの手を握る力は緩めない]
それに、今行ったら、ゲルダが巻き込まれてしまう!
[一度とまった足、獣の踏み込みと比べ速く辿りつく道理もなく、
ミハエルの手に一度軽く捕まれ、その勢いがそがれることもあればなおのことであり]
やだよ……あーべる……
[伸ばす手はなんの力も持たず、自分にはその場をどうにかする力もなにも持ち合わせていなかった。
悔しさや、悲しさや自分の中に流れる感情から、こぼれる涙は止まらず声も力ないものになっていた]
[「いなくなったら…いやだから」。
聞こえた声に、微か、笑みが掠める]
……ばぁか……。
[離れようとしたのは、わざとで。
裏通りで生きようと思ったのは、距離をあけるためで。
けれど、想いは言葉にしないで。
ただ、呆れたように零すだけ]
もう、何も手放したくないのだよ
君と僕が仮令相入れない種でも
僕は―――このまま後悔なんてしたくないんだ!
[間に入れたかどうかは解らない。
ベッティがアーベルに駆け寄るならば、
娘は兄の様に想っていた黒の―――獣に手を伸ばす。
触れることは叶うか否か。
その刹那、するりとミハエルの手を抜けて――]
[ベッティを捕まえて、あちらもこちらも、とするには身体が小さすぎた。
別へ意識を逸らした刹那、ゲルダを捕まえていた手から感触がするりと抜けて行き]
ゲルダ!?
[離れた先に手を伸ばすが、再度掴むまでには至らない]
――…賽を投げただけだろ。
[クツ、と咽喉がなる。
人の言葉を操る漆黒の獣は蒼を見据える。
間近へと迫る蒼。
アーベルの体勢が崩れる事で銀持つ肩を抑えようとした
前脚の位置が僅かにずれてしまう]
お前と俺じゃ、道が違う。
お前は俺を選ばなかった。
[人狼と人間が同じ場所へ行くとは思わなかった。
人間の群れで暮らしながら人間になれぬ獣は
首筋へと牙を立てる。
アーベルの狙いは見えていた。
人と獣の性質を併せ持つ漆黒は
其処に胸骨がある事を知っていた、けど。
――銀は確かに漆黒の獣を抉る]
本当に―――…僕は、君の事
お兄さんのように…想ってたのだよ…ライヒ君
…おいて行かないでよ
[声も、手も、届いたとしても、遅いのかもしれないけれど。
それでも手を伸ばすことは、声を発することはやめない。
叶うなら、漆黒の獣に縋り付いて―――]
……にたよーな、もんだ。
[賽を投げた、という言葉に、笑う]
……どーだか、わかんねぇ、ぜ?
なにせ俺、人狼のなりかけだったりするし、さ。
[銀の先、手応えを感じつつ、にぃ、と笑う。
周囲の音は少しずつ遠のくけれど。
羽ばたきの音は、確りと聞こえたから]
あー……ごめんな、キーファー。
[小さな声で、蒼鷹の名を紡いだ]
[幼馴染に覆い被さる漆黒の獣にあたたかな感触が触れる。
同胞ではない事を理解していた。
触れる温度も匂いも違う――これはゲルダのもの]
――…莫迦だな。
保護者代わりなら出来るかもしれねぇが
俺は家族なんて知らねぇから
兄なんかにゃなれねぇよ。
[微かにゲルダの血の匂いがしただろうか]
年頃の娘が生傷作ってンじゃねぇよ、ばぁか。
[事が済んだらミハエルに本を贈る気だったけれど
今となってはそれも難しい。
いつか約束した発明家の伝記。
荷の中には様々な薬と一緒に其れがあった]
[自分の身がその場につくのは、漆黒と銀がお互いの身に達してからのことだろうか]
あーべる……
[あと少し手を伸ばせば届くかもしれない距離、足元がおぼつかない、
声は震えてうまく出せない、涙で自分の顔はひどいものだったかもしれない。
わずかににじむ視界に命の源たる、紅だけがやけにはっきりと見えたようなそんな気がする。
伸ばす手はその手を握ることができただろうか]
[獣に銀が刺さる様を見ても何も言わない。
泣き叫ぶ事をしないのは、昨日でそれが枯れてしまったからか。
それとも、自分以上に彼らを嘆く人がそこに居たからか。
それ以上に、覚悟はあったからか―――――
ただ涙だけはとめどなく、静かに溢れて頬に落ちた。
そっと、黒い獣に近づいて。]
ライ………。
[その隣に膝を付いた。
ゲルダが縋っているのが解っていたから、
遠慮がちに、その毛の触れられるところに屈みながらそっと頬を寄せた。]
――……。
[蒼を持つ幼馴染の言葉に金色が揺れる。
期待させながらいつも置いていくから
もう期待しないと決めていたのに。
同族の因子を持ちながらならぬ彼が
愛しくも恨めしくある]
莫迦、だよな。
[もう誰に言うべき言葉なのかも分かりはしない]
[微かに聞こえた、名を呼ぶ声。
誰のかはわかるから──は、と息を吐く]
……なに、らしくねぇ声、出してんだ、ばかやろ。
[投げ出す形の左の手に、微かに触れる感触。
握る力はないから代わりに]
……ごめん、な。
[小さな声で、こう、紡いだ]
[重なる蒼と黒。
それに赤が加わるのは程なくしてだった。
人からも獣からも、同じく赤が零れ落ちている]
──ラィ…………。
[再度名を紡ごうとして、声が掠れた。
本を通じて交流を深めた相手。
獣と転じたその姿に恐怖が無いわけではなかったが、慄く程では無く。
眉尻を下げてその姿を見詰めた]
僕だって…家族の事は良く解らないよ
それでもさ―――…嬉しかったんだよ
怪我の手当して呉れたり、クッキー呉れたり
……お墓に、花を手向けて呉れたり
見守ってくれるのが、嬉しかったの
[ふるふると頸を振って。ぽろぽろと涙が漆黒の獣の毛並みを濡らす。
流れる血は、彼から熱を奪うのだろうか。]
必要なら……私、食べられてもよかったの
誰かを奪う分、生きていて欲しかったから
[演技が、はがれる。
仮令、彼の手が大事な人達を殺めていたとしても。
それでも、傍らの青年に言の葉を綴り続けて。]
いらない……そんな言葉……
[返される言葉、握る手にむこうからの力は返ってこない。
彼の身からこぼれおちる紅と共に命が零れ落ちていくのを、ただ自分は見ることしかできず]
ずっと……ずっと……好きだったんだよ……
ただ、私は……アーベルと……一緒に………
[ぎゅっとただその手を握れば、命をつなぎとめられないかと、
祈りを込めて握る手に額をこすりつけて]
ごめん……ごめん……わがままで……
[銀の毒が漆黒の獣を侵してゆく。
熱くて苦しくて仕方がないけれど
其れは一つも表に出さない]
――…は。
[結局、アーベルの心臓を喰らう事も叶わない。
ぽた、ぽた、と人と同じ赤い血が胸から滴る。
幼馴染の上からは動こうとはしなかった。
――…誰かに奪われるのも、厭だったから]
…………。
[紡がれる告白に、返す言葉はない。
それは、だいぶ前に捨てたつもりのものだから。
だから、ただ、静かに、聞いて]
……謝ることか、それ。
っとに……もう。
[掠れた声で紡げるのは、やはり。
呆れたような口調の一言だけだった]
でも……らしいっちゃ、らしい、か、ね……?
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