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[順番はようやく子供の所に。
子供は雪玉を渡されて、
ちょっと悩むように渡してくれた人を見上げる。
実行委員の人がにこにこ笑っている。
子供はこくりとうなずいた。]
「ヴィント、ミハエルと喧嘩でもしたの?」
[勢い込んだネズミの声は、少女の心にも届いて、思わず不思議そうに問い返す]
……届かなかったです。
[投げるのに失敗したらしい。
子供は、じぃっと実行委員の人を見上げた。
クッキーを貰って、両手はいっぱい。]
……エーリッヒさん、どうぞです。
[てててと近づいた子供は、
なんとか片手に荷物をまとめて、
もう片手で飴の袋を開ける。]
[聞こえてきた声に、ネズミは大きな瞳をきょと、とさせ]
『だいいちいんしょうれつあく。ってヤツー』
[不機嫌な響きを帯びた声で、ぽつりと返した]
この前の……
[傍に来た少女を見て、彼が呟く]
[ちなみに、きゅぅと鳴いた鼠から視線を其方に向けた母は、青髪の男と赤髪の少女を見て、あら、と小さく声を上げたのだが、彼の方はそんな事には気付いていない]
……ああ、そうだ。
[何と言葉を返したものか、少々、居心地悪そうに。
そんな様子を察したのか、はたまた、お邪魔だと感じたのか。
母は、ミリィにこんばんはと挨拶をして、息子がお世話にだとかなんだとか、儀礼的な台詞を述べると、二人と一匹に礼をして、彼を促してその場を立ち去ろうと]
? ……はい、解りました。
[母に倣って形式的に軽く頭を下げ]
[フィリーネは何やら、にこにこと微笑んで、楽しそうな様子だ]
[どこか視線が彷徨ってるように見えるミリィの様子に、きょとん、としつつ首を傾げ]
ん……?
どーかしたか?
[問いかける様子は、どこまでも、素]
ありゃりゃ残念〜。
今当ててればあのクマちゃんもらえたのになぁ。
[しゃがみこんでリーチェをなでなで。]
ん?飴?ありがとな〜♪
[ひとつもらって口の中で転がし、またおしごとに。]
いえ、お世話だなんて、そんな…あの、お買い物はもう…
[少女は優し気に微笑みかけてくれた婦人に、もう行っちゃうんですか、と言いたげな視線を向けてみるが、彼女はにこにこと笑うばかりで]
………
[ちらと、店の主に視線を向けると、明らかに不審そうな顔をされている]
あの、あの、私………石細工を買いに……
[ようやく少女の口から出た声は、虫の音より小さい…かもしれない]
先程、済ませたところだ。では。
[機微に気付かぬ彼と、悪戯っぽい微笑を浮かべた彼の母親は、そう言うと、工房の前を後にする。
頑張ってね、と小さく彼女の呟いた声は、風に乗って消えた]
[妙に落ち着かない様子に(その理由とか全く考えていない訳だが)、大丈夫なのか、とさすがにちょっと心配になった所に聞こえてきた声に、一つ瞬いて]
そっか、ありがとなっ。
一応、種類はそれなりにあるけど……どんなのがいいんだ?
[それから、本当に嬉しそうににぱ、と笑って見せる。
……肩の相棒が呆れたようにへしょり、としているのは言うべくもなく]
[そのまま帰るのかと思いきや、母はまだうろつき足りないらしく。
体調の心配はあったが、楽しそうだからと、敢えて止めはせずに、人通りの多い道を歩く。不思議と人にぶつからないのは、避け方が上手いからだろうか]
[次に聞こえて来たのは、子供達のわあきゃあと騒ぐ声。
どうやら、何かのゲームイベントの真っ最中らしい。
祭り実行委員着用の、派手な法被が見え隠れしている]
Ca, c'est ma vie
Chante et rit
Toi aussi
[柔らかく年齢を積み重ねた女性の声が唄をつむぐ。
その女性の膝で唄を聞くのは青い髪の少年。]
[広くはないけど、暖炉では薪が燃える温かい小さな家の一室。
祖母の聞かせてくれた、御伽噺と唄は、
祖母の生まれ故郷の村で彼女が出会ったある事件と
その時あった―妖精―が唄っていた唄……]
―青年 アーベルの自宅―
[青年はゆっくりと寝台から身を起こす。]
…………
[何年ぶりだろう、祖母の夢を見たのは。]
[青年は朝の掃除での異常な疲労から
祭り見物にでも使えとばかりの空いた時間を
自宅に戻って少し横になっていた。]
[その横になった時に、どうやらうとうとしていたようで。]
…………懐かしいな…
[エーリッヒが昨日よこした、
コンデルスミルク漬けソーセージとドーナッツの生地
…が入った紙袋からソーセージを取りだし水洗い。
軽く茹でなおして温める。
それから、戸棚に置きっぱなしで堅くなったプリッツェルを
深めの皿に開けたコンデルスミルクに浸し食事にする。]
[…考え事をしながら食べ尽くす。]
……ごちそうさま。
[空になった皿を見ながら、
どうして今さらあんな懐かしい夢を見たのだろう?]
[それに朝起こったことは一体なんだったのだろう?]
[しばらく考えこんでみたが答えは見つからず、
自宅で悶々としててもしょうがなさそうだ…
と、溜息と共に結論づける。]
[横になったことと食事で体力を取り戻した青年は
着古したコーとを羽織ると、賑やかな広場へ。]
[――その頃、別荘では。]
…え?
ほんとうに…準備しなくていいのですか…?
[空も茜と藍に染まり、そろそろ夕餉を支度をと厨房へ戻ってきた彼女を出迎えたのは、今日は主親子の夕食は要らないという先輩の言葉で。
目を丸くする彼女に、イザベラは片目を瞑って内緒ね、とお母上様が最初から”そのつもり”で息子である少年を散歩へ連れ出したのだと種明かしして。
更に、「私は毎年来ているから」と、初めて村に来た彼女にも祭りに行ってきたらと勧めてきて、困惑。
――結局、妖精ゆえの(?)好奇心が勝って。
よろしくお願いします、と頭を下げて、祭りの会場へと足を向けた。]
[道を教えて貰いながらも、行く先々の出店に気を取られ、持ち前の方向音痴も発揮して、見事に無関係の道を行く。
ふと思い出したように通りすがりの人に道を聞けば逆方向を示され。
何かもう諦めた]
此処らは何が……ん?
[開き直って通りの周辺で楽しもうと見回した目に、見覚えのある姿が映る。確かノーラと名乗った女性だったか]
[少し考えた後、人を避けつつ歩み寄って、驚かせないようにそっと彼女の肩を叩いた]
……って、おーい?
[突然固まられてはさすがに驚く訳で]
ほんとに……大丈夫かよ、お前?
調子悪いんなら、少し座って、休んだ方がいいんじゃね?
[やや心配そうに問いかけつつ。ごく何気なく、大きな瞳を覗き込むように見つめ]
[結局、いまいち優れなかった体調も、祭りの喧騒の中に飲まれる頃には特に気にならない程度になっていて]
[やはり疲れの所為だったのかとぼんやり思いながら、片手には先程買った大判焼きの紙袋を抱えて]
……?
――あら、こんばんは。
[肩の感触に振り返って、赤髪の騎士の姿を目にし。微笑んで挨拶を返す]
『ねー……だいじょぶ?』
[ネズミがそーっと、少女に問う]
……ていうか、お前、真面目に誰と話してんだと……。
[それを捉えての問いかけは、見事なまでにスルーされた訳だが]
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