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[ふるり、と首を振る。
痛みを、ぼんやりとした感覚を、何とか振り落とせないものかと。
しかし、それは叶わなくて]
……そういえば……あの、傷の感じって。
[それからふと、ある事に思い至る。
視線が向くのは、何故か疼く左の肩]
……これと……この傷と……同じような……感じ?
[小さく呟くも、答えは出ず。
やがて、苛む痛みと、昼間走り回った疲れが出てか、*眠りの淵へと引きこまれて*]
《キィィィイ…ッ!》
〔ガバ!と半身を起こす。いつもと違う手触り。景色。…周囲を見回すと、ノブやエリカなど見知った顔が〕
あー、俺あのまま宿で寝ちまったのか…。
おい、フランとシャロンはどうした?
〔宿の主人へ問いかけると、昨日の顛末を教えてくれた。それと、手渡される温かい珈琲。そっと、匂いを嗅ぐ〕
…あれ…。何か夢見てたんだよな。どんなだったかなー。
〔呟くランディの前に、部屋の鍵が置かれる〕
ん?俺もここに泊まれって事?すぐ近くに家があるのに…。
〔ここまで言いかけ、赤く染まった部屋の事を思い出した〕
ん…。まぁ、仕方ねぇ…か。
じゃ、有り難く使わせてもらう。流石にベッドで寝ないと、腰にくるわ。
〔トントンと握り拳で腰を叩きつつ、部屋へ向かった〕
ふぅ…さてと、そろそろ例のが届く頃だなぁ。
あ、マスターご馳走さまだよぉ〜?
お代はここに置いとくねん。
明日はもうちょっとハチミツ足してくれると嬉しいかも?
[キィキィと音をたてて車椅子は部屋へと消えていく]
[目を覚ましふと顔をあげる]
[目の前の女性の顔に昨日の記憶がふとよみがえる]
この人も……私と同じなのね……。
大切な人が壊れた姿……兄さん………。
[喉の渇きを覚えてマスターにお水を、と]
兄さん……。
[部屋の中、窓を叩く一羽の鳩。その脚に緑色の筒]
やぁ、やっと来たみたいだねー。
ほらほら、ご褒美の乾燥トウモロコシだよー。
[手の平に乗せたトウモロコシをついばせながら、脚についた筒を片手で器用に外し開ける。中から出てきたのは一枚の羊皮紙とペンダント]
ふむふむ…御守り…ね。
なぁーるほどぉ。『エレナの聖釘』ってところかなぁ?
[ペンダントの飾りは小さな小さな銀色の釘]
まったくねぇ…準備周到というか、なんというか。
一度で良いから君のご主人さまにちゃんと会ってみたいもんだね?
[鳩の胸元を指でコチョコチョとくすぐりながら、緑の筒にいつもの返事を入れる『thx』その3文字だけが書かれた手紙]
[受け取った水を飲み干すも、小首をかしげ]
……もっと………もっと頂戴?
[ちりんと鈴が鳴り、視線は小袋に]
[何か忘れている]
[―――何?]
兄さんは、潤してくれたのに?
クローディアさんだって。
[ぽつりぼやく]
[覚束無い足元はふらふらと]
ねぇ……頂戴?
[ちりん ちりんと]
[個室の廊下]
[人気があるのは一室だけ―――]
[その部屋の扉をトントン、と小さくノックする]
ノブさん?います?
[少し甘みを帯びた声で]
わたしはいつだってひとりぼっち。
にいさんだってわたしがきらいだったのよ。
わたしがじんろうだったから。
みんなとちがういろだから。
ああ、あとでかかなきゃ……クローディアさん。
きれいだったなあ。
にいさんのとなり。うれしいでしょう?
[血色のクロッキーブックを思い出して、笑う]
[突然のノックの音にややいぶかしげな顔をしつつ]
あー、どぞぉ?開いてるよん?
甘えた声でどうしたのかなぁー。
[ゆるい口調と裏腹にペンダントをゆっくりと手の中に隠す]
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