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[女は崩れかける身体を支えるのも忘れ、呟く]
ナァニ…?
何かの…誰かの力が……閉じ込められたのォ…?
[近くて遠い薔薇の香りに、眩暈がする]
本当に紅い。ってのは……
[自分は昨日と今日とで一瞬とはいえ二度見た。
一度ともなればそれほど気にかけることもなかっただろうが二度もだ。
そして、もう一人、見た人間がいるとならば
聞いてみねば]
ヘルガさん…って、ちょっ
[こっそりと聞こうと思ったとき、ヘルガが自分たちの傍を移動しかけたところで足元が崩れたのに咄嗟にヘルガに反応して手を伸ばす]
[エーリッヒの言葉に、ふと腕の中の書物を見やれば、
あぁ、と小さく声を上げて]
や。それも考えたんだけど…俺の場合、基本知識から詰め込まないと
にーさんのレポート読んでも、多分半分以上理解出来ないだろーから。
[頑張って三冊読んだから、後でレポート見せて。とけらりと笑い。]
…っつーか、チラ見しただけで何の本って判るとか、さっすが。
・・・・こんばんは。
[入ってきた面々には会釈を返す。]
[女性の驚いたような声が掛かると、また其方を見た。]
あか・・・は、これは、
!
[どう言葉を返して良いか迷ったのか、足元を崩した女性への反応が遅れた。]
―――…、…?
[ふいに、違和感を感じて。
視線を周囲へと向けつつ。なんだ、と口唇が無意識に動く。
違和感の理由すら判らないまま、僅か眉を顰めれば
目の前のヘルガの身体が傾くのに、微かに反応が遅れ]
…っ、…!
[危ない、と上げようとした声は
ユリアンの腕へ収まった身体を見て、小さな息と共に消え]
[遅れてホール内へと入り一礼すれば、
丁度、職人の青年へと倒れ込む薔薇の艶女の姿。
一瞬、冷徹な観察の眼差しを向けたものの、
すぐに、焦りを滲ませた表情へと移り変わる]
どうなさいましたか?
[早足に、そちらへと向かおうと]
……頑張りは認めるが……その手間を省くための、レポートだったんだけどな?
基礎知識から抑えないと、レポートとしては役に立たないし。
[アーベルの笑う様子に笑みを返し]
まあ、仕事に絡むやつは、見慣れてるし使い慣れてるから。
[さらり、と言った直後に、ヘルガがユリアンの腕の中へと倒れ込む様子が目に入り]
……大丈夫ですか?
[唐突な事に戸惑いつつ、問いを投げ]
[入ってきた面々には目を向けず、こんばんは。と雑な挨拶をしつつ。
腕の中のヘルガを見る。
最初は酒にでも酔ったのかと思ったが、そういうわけでもなさそう。
人の温かみと、力仕事などをしている自分のように柔らかい体を腕で支えながらも……なぜかそれが脆く感じて……
神妙な顔つきのまま無言で近くの椅子を引き寄せてヘルガを座らせ]
大丈夫か
[と、相変わらず無愛想な声で、そうでもなさそうだがと思いつつもとりあえず聞いてみた。]
[受け止められて、初めて倒れた事に気付いたように女は瞬く。
紅い唇が動き、何かを言おうとして…けれど音にはならず消える]
………っ、あ…ありがとゥ…?
ァァン…いやだわァ、眩暈なんてェ…飲みすぎたのかしらァ…。
[ゆるゆると首を振って、少し凭れつつも身を起こして苦笑する。
それから、驚かせたらしい人々に曖昧な笑みで謝罪の意を示した]
[挨拶をすると、席へと着こうと思ったのだが…
イレーネの目が赤い?
ヘルガさんが倒れた?
…どうも、何かがあった様子で、目を瞬かせつつ…様子を見ていた]
[ホールへとやってくるとそこにはすでに数人の姿
チラリとその場に居たヘルガを見遣るが、すぐに視線を外すと]
では、ただいま夕食の方運ばせていただきます
お客様方には窮屈な思いをさせております分、こちらとしましても誠意を尽くし用意をさせていただきました
どうぞ、お寛ぎくださいませ
[そう言って深々と一礼。間もなく、食事会の時にも劣らない料理と酒が次々と運ばれてくるだろう]
[椅子へと座らされた客人を認めると一度厨房に赴き、
彼女の好むミルクティーを用意して、再びホールへと戻る]
アルコールの過剰摂取は危険です故、お気をつけて。
[紅茶を注ぎながら、いつものように微笑みかけた]
……それとも、別の要因でしょうか?
[声には含みがあったけれども]
[ヘルガに感謝の眼差しを送られながらも...は相変わらずな表情で、飲みすぎたなど嘘だなと思いつつも]
ほんっと。足元もおぼつかなくなるぐらい飲むのはやめてくださいよ。
[と、周りに聞こえるようにいいつつ、ヘルガの耳元へ口をよせ、ヘルガにしか聞こえぬ声量で]
そんなんじゃないでしょ。本当に大丈夫なんですか?
[なんて、酔ったなんて欠片も信用していない口調で聞く。]
…まぁ、小説しか読まない俺には貴重な経験デシタ。
丸一日費やしたお陰で、肩凝りと、極基本的な知識は手に入れたし。
[エーリッヒの言葉に、苦笑混じりの溜息を吐きつつ。
…つまり丸一日掛けて、基本的な部分しか判っていないことになるが]
折角だから、また読ませてー。
俺の努力がいかに無駄だったかを実感したいから。
[と、続く言葉に、腕の中に納まる数冊を再び見やる。
これを使い慣れてるのか、と感心するやらゲンナリするやら。
謎な表情を浮べ]
…エェン、大丈夫…ですわァ…。
少し…疲れているのかも知れませんわネェ?
[ユリアンへとそう答えて、新たにホールに遣ってきていた人々に気付いて艶やかな笑みを浮かべ…ようとして曖昧な笑みになってしまう。
イレーネの瞳についての追求は既に女の意識にはなく、自分の内を探るように柳眉が寄せられた]
…
[事態は収まったのだろうか?
良く分からない少女に、ユーディットの声。
なんとなく、釈然としないながらも席へと着き…料理を見ればすぐ忘れることだろう]
……はぁ
ま、無理せずに
[ヘルガの返答にあまり納得もしていないが、これ以上追求するものでもないだろうと、引き下がる。
そしてこんな状態ではイレーネのことを今聞くわけにもいかないな。と考え直し、イレーネを見遣る。
...は気づいてないだろうがイレーネを見る表情はいつもよりは若干険しい顔つきだったろう。
当人に聞いてみるべきか…どうか……そんなことをひっそりと考えこむ]
[酔った……と言われれば、確かにそうとも見えるのだが。
意識の奥深くで、何かがざわつくのが感じられれば、何故かそれだけとは思えず。
ともあれ、今は周囲とのやり取りを見守るに止めて]
貴重な体験……ねぇ。
それが日常の俺には、そう言われてもピンとはこないんだけど、な。
[ため息をつくアーベルにさらりとこう言って]
ん、後で取りに来るといい。
いつ、どうなるかわからん以上、予備知識はあるに越した事はないからな。
[続く言葉には、やや、真面目な面持ちで頷く。
本を見ながらの複雑な表情の意味には思い至らなかったらしい]
エェン…昨夜は飲みすぎましたものネェ。
気をつけますわァ。
[女は紅茶の香りに瞳を和ませつつ、素直な謝罪を口にする。
しかし執事の含みに気付けば、矜持が勝るのか瞳は冷える]
…サァァ?
あえて言えばァ、心労かしらネェ?
[慣れぬ土地での生活のせいとでも言うように、顎を上げて返す]
貴重も貴重。
小説読むよりスッゴイ疲れるし、所々意味がわかんないし。
[それは唯の学力不足だとも思えるけども。
エーリッヒの口からさらりと告げられる言葉に、むぅと唸りつつ]
んじゃ、後でお邪魔するー。
本当、事態を把握するだけで手一杯じゃ話になんないしさ。
[続く言葉に小さく頷けば、よろしく、とひらり手を振って。
執事の告げる、意味深な言葉に僅か首を傾げ。]
―――別の、よういん?
[つられる様に女性へと視線を向けるも、心労だと答えるばかりで。
しかし、何か違和感を感じれば僅か眉を顰める]
[イレーネを見遣る、その視界の端にて、並ばれる
……食事?
俺さっき軽食食べたばっかじゃん。とか一瞬冷や汗をかく。
微妙に平和な思考をもてるだけの余裕はあるらしい。
といっても...のこと、一人前は普通に食べれるだろうけど]
……ああ、なるほど。そういうことか
[ヘルガの様子に“限界”の意味を悟り、うっすらと笑みを浮かべる]
ということは、赤い花の咲くところに歌姫が
ああ、待っていてください歌姫。もうすぐ、ほの暗い檻の中から救い出して差し上げます
[そう心の中で呟き、陶酔]
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