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ハ…
[沈黙が降りて、更に問おうと名を呼びかけ。
落ちた言葉が耳に届いて、ロミルダは息を呑んだ。
手に力がこもって、黒い鳥がくしゃりと潰れる]
…そう、ですか。
[一歩後退る]
――…うん。
美味しかったよ。
まあ、当たりだとは思わなかったけれど。
[今にして思えば、エーリッヒが倒れていた時――妙な素振りをしていた。
けれど、そんなのは後付けだ。
深い意味なんて、あの時は、特になかった。
誰だって同じ。
そう、思っていたから]
へぇ…
[空気を吐き出すような小さい声
短刀と極細の針に静かに荷袋から出した薬液を塗りつける]
…ぁあ…だから
[探すものという言葉。ロミルダは自分を人狼でないと尋ねていたことを思いかえす」
[止まったところで、何か言えるわけでもなく。
ふる、と頭を振った後、向かう先は当初の目的地──ではなく、自分の個室。
抱えていたものは、適当な場所に置いて。
荷物袋の奥に押し込んできた小箱を引っ張り出した]
―回想―
お話、ですか?
わかったです。
[ゲルダの言葉にはあっさりとうなずいて見せた。
悪戯っぽい笑みにきょとんとして、釣られるように見せた笑顔は、やっぱり困ったようなものになっていた]
お願い、ですか?
[首を傾げたけれど、その場では問うことはしなかった]
そういえば、預かったまま返せなくなったな。
この子。
双花のローザちゃんなら、ブリジットさんも安心だっただろうにね。
[腕の中には、奇跡の結晶。
その名前を未だに呼ばぬのは、男自身の気後れか]
ま、後でユーリが布持ってくるから、それまでは待って手よ。
…にしても、遅いな。
[ちょいと脅かしすぎたかと一人ごちて、部屋を出て。
今度こそ、階段へと]
[振り向いたカルメンにはその表情は見えない。
笑う…哂うその顔は]
そう…オレ、だ。
まさか本当に「見つける」とは、ね。
[隠すことなどする気はないのか、あっさりとそれを認める]
で…どうする?
オレを殺すか?それとも…
[言葉を切って哂う]
[今は、その力を完全に使うことは出来ない。
だけどここにいるのは子供と目の見えぬ女が一人]
[ゆらり、と]
[下がろうとするロミルダに一歩、近寄って]
[小さな筒状のものをとりだして、口につけ、息を吹き。空気の通りを確認する]
(どうすっかなぁ…今か…後か…身体能力わからないしなぁ)
[いっそ誰かに犠牲になってもらうか…なんて平然とした思考が浮かぶ自分に少々呆れて、軽く髪をかきあげる]
…じんろー、なら。
ころす。
[はきとした言葉。
それがカルメンのやるべきこと]
[けれど、その手段が今はあるとは思えない。
それでも、引くことは出来なかった]
ころされて、なんか、やらない。
[言いつつも、男の動きは見えない]
[持ち込んできた箱を開ける。
中に入っているのは、装飾の施された、短刀が一振り。
母曰く、父が『自分に』と置いていったものだという。
父への反発もあり、ずっと、棚の中に置き去りにしていたそれ。
それを持ってきたのは、予兆だったのか、それとも]
……別に、頼るつもりじゃないけど。
必要になるかも知んないから……持ってく。
[言い訳めいた呟きが零れる。
鸚鵡が聞いていたなら、呆れたように羽ばたいたところだろう]
[当の鸚鵡は、場で交わされる言葉に、落ち着きなくくるる、と小さく鳴いているのだが]
…っ、
[階上にいるゼルギウスに、ロミルダは気がつかない。
いつもと違う風に聞こえる声に、身を竦めて]
人狼、なら、…やっつけない、と。
[呟いてはみたけれど、手にあるのは萎びた烏だけ。
辺りに視線を彷徨わせながら、更に一歩、下がって]
(んー…でもさっくり殺りにいっちまうか。どうせ死ぬか生きるかの二択なら生きるに賭けるしかないっしょ)
[そこまで思って、身を潜めるのをやめようとしたところで、子連れの男と目が合う]
…よぅ。まだ二階にいたんだな
ところで、ダーヴィッドさん。
自分より明らかに強いやつに挑もうとするとき。
人…女性が犠牲になることでできる隙を狙うのと。背後から襲うのと。どちらがいいと思うかな?
[唐突にそんな言葉を紡ぎながら、細い筒状物体に、針を装填する]
やっつける?
どうやって?
お前に何が出来る?
[くっ、と、喉の奥で嘲笑うように]
ここでお前とカルメンをやれば、オレが何かを知ってるやつはいなくなる…
あぁ、そこの鸚鵡も、か。
そいつは賢いからな。
[ロミルダに向けた顔は、いつものそれとは既に違うもの]
[変化こそしてはいないが、どこか獣じみた]
[弱いものを弄るのを愉しむような]
[向かった部屋には、人の姿はなく。
ほっとしたような、違うような、不可解な気分に囚われる。
ともあれ、亡骸に毛布をかけ、周囲の真紅を布で取れるだけ取り。
川の神への祈りの言葉を紡いでから、部屋を出る]
……そいや、なんかさっき妙な感じだったけど。
何か、あった……の、かな。
[掠れた声で呟き、階段の方へと足を向ける。
痛みは、多少薄れて。
代わりに、何か、急かされるような。
そんな心地がしていた]
そりゃ、全室まわってたからね。
後はロミちゃん見つけて伝えるだけなんだけど。
って、わけでロミちゃん見なかった?
[階下の様子には未だ気付かず、問いかける声は軽い。
足は止まることなく、階段へとかかって。
けれど、唐突な問いかけに、階下の様子を先に眺めようと]
…おまえね。
今、さらっと酷い選択肢上げたよな。
[呆れに似た声は、けれど、すぐに答えを選ぶことはしない]
ああ、ロミちゃん?下にいるよ
今から人狼ことハインリヒさんに食われそうになるんじゃね?
[軽い口調とあわせるように軽い口調でいって]
ひどいかぁ…やっぱそう思うのが普通だよなぁ…
ま、ちなみに俺の答えは………殺れればどっちでもいいかな
[回答を出さないダーヴィッドにあっさりそんなことをいって、筒状のものを口にして、階段より姿を出し、息を鋭く吐き。毒を塗った針を階下に見えるハインリヒの背中に向けて放つ]
…でも、
[見たことの無い表情を見せるハインリヒを、ロミルダは困ったような、怯えたような、感情の入り混じる顔で見上げて]
でも、人狼だから、
…やらなきゃ、だめです。
[カルメンの言葉に後押しされるように、くるりと背を向けて、駆け出した。
逃げ出したようにも見えるかも知れないその足は、台所へ向かおうと]
……なに、してんの?
[階段付近の、二人の様子に、首を傾げる。
ゼルギウスの選択肢は、ぎりぎりで聞こえなかったが、多分、幸い。色んな意味で]
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