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―朝/宿屋/ユリアン個室前―
[結局、ゲルダを食堂に誘うことが叶ったのは、ライヒアルトが自衛団員を連れ戻った後になったか。]
ん。着替えるのは、もう少し落ちついてからでも佳いかも?
今、一人にさせる方が……―――
[妻の提案に、少し考える素振りを見せながらも、結局はライヒアルトの後を追う形で食堂へと。
むろん、途中でゲルダがそれでも着替えるを欲するならば、止めることはしないのだけれど。
けほっけほっと、歩きながら何度か咳が口から洩れた。]
むぅ、これでも考えはあるほうだぞ。
[その言葉にそう返しながら、こつんと握りこぶしをアーベルの胸にあてて笑いかけてから]
一日にか……
[あれからたった日数を考える]
3人か……
ああ、後は人狼のこととか詳しいみたいだから聞きたかったけど、忙しいならいい。
[ユリアンのところにと言われれば行って来いとジェスチャーで]
私は食堂いってくる。
[そう伝えて、アーベルとはそこで別れることになるだろうか]
[別れ際振り返りアーベル]
アーベルもあんまり一人で無理すんじゃねぇぞ?
大事なことなんも、いつも私には言ってくれないからな。
[そう彼を案じる言葉を]
[ユリアンの件は、1つ2人を危険に晒す理由が減ったのだと安堵の息を吐き]
――……私が占い師を騙った理由を忘れちゃった?
[向けられる疑問には、唯それだけを紡ぐ。
黒と云われたなら白を示す。
そうすることで、リヒトを生かす道を作りたいと。
けほっけほっ――と、咳が紅の世界にも乗る。
生かす為に、命を差し出すつもりであるとは、まだ告げぬまま。
妻と子の為にも、リヒトに生きて欲しいと願い、本当にもう、短い生ならそこに賭けたいと。]
─回想・昨夜─
[自衛団詰め所でカルメンに引き合わされ、彼女も人であったと知った。
青褪め打ちひしがれる自分に、蒼鷹はただ寄り添って温もりをくれて。
けれど自衛団員たちは、人狼を見つけられぬことにあからさまな落胆と批判を向けてきた。
それに返す言葉もなく、ただ罵られるのを無表情に聞き。
けれど、ミハエルがカルメンを殺めたと聞けば驚きに目を瞠った。
その後、自衛団員に言われるままに宿へと帰り。
誰かにカルメンについて聞かれれば、人狼ではなかった、と言葉少なに答え、早々に部屋に戻った。]
ミハエル君、どうして…
[思い返すのは、カルメンと木陰で楽しげに話していた姿や、イレーネのおなかに触れ尊いものだと感じていた様。
決して、人を殺められるようには思えなかった。]
─宿屋・自室─
……そうか?
[笑みと共に返された言葉に、真顔で返しつつ]
そういう事。
……ま、中々当たりは引けなかったが、な。
[人数の部分には、頷いて返し]
ん、ま……そこらは、話せるようならな。
[そんな言葉を投げて。
食堂へ行く、というベッティとは別れ、部屋を出ると階段へと足を向けるが]
…………。
[別れ際に投げかけられた言葉。
ひとつ、ふたつと蒼を瞬き、そして]
……それこそ、お前に言われたくねぇよ。
[返したのは苦笑と、冗談めかした、言葉]
[占い師を語った理由、に関しては覚えていたが
占い師がどう出てくるか解らぬ不安もあり、二人の間に視線を彷徨わせて。
その最中、聞こえてくる咳に、また少し眉が寄る。]
…ヴァイス、大丈夫?
さっきから…ううん、昨日からよね
咳き込んでるの。
風邪……なの?
[不安そうに尋ねるのは、それだけでは無い何かを感じ取っているから。]
─朝/宿屋・食堂─
[ゲルダが着替えを望むなら先に部屋へと戻らせて。
その場合はイレーネに傍についていて貰うことになるだろうか]
[食堂へと降りて来たなら、ゲルダを座らせ休ませて。
自分はゼルギウスの傍へと歩み寄る]
さっきの話だが。
[紡ぐ声はゲルダには聞こえぬよう抑えたもの。
イレーネも共に居るなら、声は聞こえたことだろう]
───この怪我は、昨夜カルメンを手に掛けた時に付いたもの。
つまりは、そう言うことだ。
[直接的な言葉は使わず、怪我を持ち出して遠回しに伝える。
意図を飲み込めぬようなら、はっきりと告げるだろうが]
――…騙った理由、か。
[助ける為に“占い師”となった仲間。
占われただろうリヒトを庇うか
占い師や他の者を人狼と断じるか
二つが浮かんで、彼なら前者かという結論に至る]
咳、辛そうだな。
養生しなきゃ、いけねぇな。
―宿屋・食堂→厨房―
[アーベルと別れてから]
こんなときに言えるようなことじゃねぇよ。
[自分の胸の中にあるものを見透かしてのことか、それとも一人でということにか]
アーベルにはいつも甘えてるつもりだけどな……
[厨房に引っ込み、朝食の準備をと、食堂に人が着始めたのはそれからのことだろうか]
― 宿屋/ユリアンの部屋前 ―
[ミハエルとゼルギウスの話を聞きながら暫くはへたり込んだままで。イレーネからも出るように促され肩を置かれ、娘は漸く立ち上がる気になったのか其方へと貌を向けて。]
ン……ごめんなさい
気遣わなきゃいけないのはイレーネさんの方なのに
[ゆる、と頸を横にしながら詫びを入れて。ミハエルからも手を伸ばされたのなら、娘は二人の手を取って起き上がった。
二人の手はとても温かくて、ユリアンやブリジットの様な冷たさとは違うから。一層娘の胸を熱くさせた。]
…ミハエル君も、ありがとう、ね
皆、辛いのに、僕ばっかりこうで…
[泪を滲ませる目許は細められ弧を作り。此処から出るように二人に見守られてユリアンの部屋を後にするか。ゼルギウスや他の面々とも会えば、一度だけ礼をして。]
― →食堂 ―
[あの少年が今どうしているだろうと思いながらも様子を見に行く事もためらわれ。
ベッドの上で膝を抱え、隣に添う蒼鷹の温もりをただ感じていた。
そうしているうち、何時の間にか眠っていて。
そして、朝。
部屋の外の気配で目が覚めた。]
……これ、って…
…っ……!!!
[昨日の朝と同じ目覚め方に、嫌な予感は募り。
着替えもせぬまま、外へ飛び出した。
ゲルダ達が丁度食堂へと向かったところだったろうか、誰にも会うことはなく。
もう何度嗅いだかしれない鉄錆の臭いの濃くなる方へと蒼鷹と共に向かった。]
[背の向こうで聞こえる咳の音。
昨日ミハエルから聞くまで知らなかった其れは
隠しきれぬのか既に何度か耳にしている。
青年は厨房で紅茶を淹れる。
食事を取る余裕もないかもしれない。
それなら少しでも栄養を取れるように、と、
ロイヤルミルクティーを用意した。
ミハエル、イレーネ、ゲルダ、と其々の前にカップを置き]
ゼルギウス、残さず飲めよ。
[ぽつ、と呟いてゼルギウスの前に置いたのは一見他と同じ。
けれど飲めば甘味を強く感じるかもしれない。
咳止めと鎮痛に効果があると言われる甘草を混ぜていた]
─ →宿屋・二階─
[階段に近づくと、二階からの騒がしさが届く。
それに、微かに眉を寄せながら、階段を駆け上がり]
……え?
[今、訪れようとした部屋に出入りする自衛団員の姿に、目を瞠る]
なに……が?[零れ落ちたのは、疑問の声。
とりあえず、団員を捕まえて、状況を問い。
ユリアンの死を知らされると──ぎ、と、唇を噛んだ]
……馬鹿野郎。
ジョーカーが、取られてどうすんだよ……。
[ユリアン自身のカードについて、はっきりと確かめたわけではない。
けれど、推測は出来ていたから、小さく呟いて]
……は。
こいつは本気で、全力勝負、か?
[呟く刹那、掠めたのは、一匹狼としての、笑み]
………あ…っ… !?
[丁度自衛団員がユリアンを運ぶところに出くわして。
シーツに覆われたせいで誰の骸かは解らぬものの、伝わるものは変わらなくて。
その場にへたりとしゃがみ込んだ。]
……どう、して……っ
[また、命が奪われた。
それはそのまま、自分の無力を責めるものになって。
傍らの蒼鷹の鳴く声も、耳には入らぬまま。]
─宿屋・二階廊下─
[思考を巡らせている所に届いた、声。
視線を向ければ、座り込むクロエが見えて]
……大丈夫か?
[行かねばならぬ所はある、けれど。
こちらも放っては置けないから。
近づいて、そう、と声をかけた]
―宿屋・厨房→食堂―
[ライヒアルトが姿を見せれば紅茶をと、そこは任せて自分は朝食の準備を一人していた。
彼が用意を終えて出て行くのを見送り]
今日は皆起きるの早いのな。
[他にも複数、食堂の方に会話の様子を感じる。
人数を確認して出した方がいいかと、自分が食堂に顔を出すのはライヒアルトからやや遅れてのこと]
朝食は食べるやついるか?
[ユリアンが殺された話を聞くのはそこでになるだろうか?]
― 宿屋/食堂 ―
[二人に椅子へ座る様に促されて。イレーネから夜着の儘だと指摘されると白の寝巻は所々紅く染まっていて。]
あ………そっか、さっきので…
[ユリアンの血が付いたのだと知ると、はっと貌を上げ。]
…えっと、僕、後で着替えてこようと想うのだよ
イレーネさん達、何度も言っちゃうけど…有難う、ね
[ライヒアルトからミルクティーを貰うと、有難うと礼を述べて。先日はスープしか口にして無かったからじわりと温かさが身体になじむ。]
あったかい…
ライヒ君…ミルクティー美味しいのだよ、有難うね
これ飲んだら一度お部屋に行くね
[寝巻についた血を隠すように服の生地を手で覆いつつ。
ミハエル達が話し込む様子は、視線だけを向けていた。
話す内容までは聞き取れずにいたが、内容は推して知るべしか。]
[自衛団員達はこちらに見向きもせぬまま遺体を運んでいった。
蒼鷹は心配そうにその身を摺り寄せてくるだろうか。
その身体を、震える手でそっと抱き寄せると目を伏せた。
そこに聞こえた声に、ぎこちなく顔を上げて。]
ベル、兄。
…だい、じょうぶ。
もうちょっと、ここに居たい、けど。
[震える声で、小さく頷いた。]
―食堂―
[ベッティの言葉に軽く瞬きして]
――…朝食はもうちっと後の方が良いかもしれんな。
ユリアンが襲われて――…
その現場を見てきたとこだから。
今頃、自衛団がユリアンを運んでるところだろ。
[彼女に向ける声は他の者を気遣って控えめなものだった]
私は大丈夫だから、ベル兄は皆のとこ、行って。
キーファーちゃんも居るし、少し、休みたいだけだから。
[本当はアーベルに聞きたいことがある。
けれど、それを問いかけてもしも彼に辛い思いをさせてしまったら。
自分の問いのせいで彼の身に危険が及んだら。
幼馴染を悲しませることになる選択は、取れるわけがなかった。
だから、ぎこちなく微笑んでアーベルを見送ろうと。]
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