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いやまて、落ち着け、落ち着こう、話せばわかるっ!
[話してわからないからの現状なのだ、と突っ込まれそうな言葉が口をつく。
何れにせよ、腕力では圧倒的に負けているから、抵抗の余地はなく]
あー、あー、今日はあれだけど、多分こっち待機に変わりないからっ!
部屋はとっといてね!
[それでも、宿の主人に向けてこれだけは告げる。
非常事態に対応するには、村外れに近い自宅は不向きだったから。
そうやって帰り着いた自宅で、震動により加速した惨状に思いっきり遠い目をしつつ。
地学と医学、それから本草学に関する書物は出しやすい所に! と頑張って主張しながら、片付けのお時間へ突入した。**]
―深夜―
[教会近くの林の中。まばらな木々の間から零れてくる月の光が心地よい。
こんな気分になったのは何年振りだろう。
錯覚かもしれないが、長い間抑えつけていた衝動があと糸一本で弾けるところまで張りつめているような気がしてならない。
そのくせ頭の芯は妙に冷えている。]
人狼の感覚ってこんなものだったっけ。
[今の状態なら、目の前に生きている人間が現れれば誰であろうと…。
不穏な思考を進めている最中、微かな音を耳が捉えた。]
[音の聞こえた方向へ無言で足を進める。
…見えた。]
行商人かな。
[背負った大きなザックと見覚えのない後ろ姿からそう判断する。
急ぎの用でもあって、坑道を抜けたいのかもしれない。]
商売人魂? 頑張るね。
まあ、事情はどうでもいいんだけど。
[人気はない。誰に見られる心配もない場所。
目を閉じ、衝動を抑えるのをやめる。瞬時に銀の毛皮をもつ獣の姿へと変じ、村に響き渡るような声― 同類にしか聞こえないものだが ―で吼えると哀れな犠牲者へと襲いかかった。]
― 翌朝 / 坑道内 ―
……そうか。
起きてしまったか。
[坑道内を巡回した団員が見つけたのは、全身を牙で引き裂かれ、頭を踏み抜かれて絶命している旅人の骸だった。
駆けつけた団長は、周囲に残された明らかに人のものではない足跡を睨みつけながら新しく指示を出した]
昨日話した11名を宿に集めるように。
起きた以上は最低限の犠牲で収めねばならん。
どこまで出来るかは分からんがな。
[元結社員といえども取り仕切る位置に立ったことはなかった。
探す力が弱まった後に印を得て。長く噂からも離れていたのに]
いや。好悪を口にしてる場合ではない。
手をこまねいていては村ごと全滅しかねん。
[それでも。知り合いを疑うことに不安を抱く団員達に首を振った。
集めた者達以外も協力するよう手分けて説き伏せ回り。
11人を集めた宿へと向かった]
― 翌朝 / 宿屋 ―
[まず宿屋の主人を厨房へと下がらせ。
人数が集まるまでは呼んだ理由は説明せず。
揃ったのを確認してからゆっくりと口を開いた]
集まってもらったのは他でもない。
この村に未曾有の危機が迫っているからだ。
[じっと11人の顔を見回してから言葉を続ける]
人狼という存在のことは子供達でも聞いたことがあろう。
御伽噺の存在……ではないのだ。あれは。
牙と爪を持ち、人を食らう存在。
それは現実に存在する。
同時にそれを滅するため動く者達も存在する。
証を見せよう。
[ゆっくりと手袋を外して右手の甲を示した。
そこには銀で刻み込まれた印があった。知る人は知る結社の印。
形は知らずとも確かに光を宿すそれが人の印であることは知れるだろう。
人狼と呼ばれる存在が銀に弱いことは伝承にも詳しい]
封鎖された内で犠牲が出た以上、猶予はない。
この中に混ざり隠れているだろうことも疑いようがない。
[元より、事故がなくても真偽を確かめなければいけないかとは思っていたが]
人狼は強大だ。けれど座して滅ぶつもりはない。
納得いかずとも。慣例に従い一人ずつその可能性を削ってゆく。
[何故この11人に絞ったかは説明されなかった。
説明で説得できるものではないなら、沈黙を通すのが彼のやり方だった]
日に一度この場に集まるように。
そして誰を処断するか。それを決めて実行してもらう。
できないというのなら。
団員によって力ずくでもやらせてもらう。
[決して退こうとしない表情でそう続けた]
他は普段と変わらず過ごしてくれて構わん。
[そこまで話すと宿屋から去ろうとした]
文句だけを聞くつもりはないが。
相談があるというなら詰所の部屋まで来るがいい。
他の者の前では言えぬこともあろう。
[最後はそう結んで。
詰所へと戻っていった**]
─ →自宅 ─
[家は落盤の揺れの影響をあまり受けておらず、棚から本が数冊落ちた程度の被害で済んだ。
それらを片付けてペンと羊皮紙を用意すると、頭に浮かんでいるデザインを描き出して行く。
描いて、描いて、描きまくって。
机の上や床にデザイン画が散乱しても尚描き続けて。
訪問者が居たとしても気付かぬまま、僕はペンを走らせていた]
─ 翌朝/自宅 ─
[翌朝、僕は扉をノックする音で起こされた。
目覚めはダイニングの机の上。
周囲には沢山の羊皮紙が散乱している。
どうやらデザイン画を描きながら眠ってしまったようだった]
……だれ……。
[ノック音に応じるように声を出したけれど、寝起きのせいで掠れたものとなる。
訪問者は聞こえなかったのだろう、更に強く扉を叩いて僕の名を呼び始めた]
…聞こえてる、ってば…。
[欠伸を噛み殺しながら言って、ぼさぼさになった髪を掻き揚げて軋み始めた扉を開く。
その先には自衛団員の一人が立っていた]
僕に何か用…?
[問えば、宿屋へ集まれと告げられる。
理由を聞いても、視線を逸らすだけで教えてはくれなかった]
…行けば、説明してくれるの?
[更なる問いには、おそらく、との言葉。
関わりたくなさそうな、何かを恐れるような、そんな気配を自衛団員から感じ取った]
……そう。分かった。
[ここで行かない選択をしても無理矢理連れて行かれそうだったから、要請には諾の意を示して。
身支度を整えてから行くと答えて、扉を閉めた]
…何かあったのかな────。
[自衛団に呼び出されることなどそうそう無い。
僕に関わる何かがあったかと考えるも、予想は全くつかなかった]
─ 翌朝/宿屋 ─
[呼び出された宿屋へ向かうと、他にも何人か呼び出されていることを知る。
その人数を見て、何故宿屋に呼び出されたのかを何となく察した。
自衛団の詰所に集めるには聊か人数が多い]
…共通点、は、無さそう…?
[集められた面々を見て、これと言った共通項が見当たらず、軽く首を傾いだ。
村の人間だけでなく、外から来た者まで居る。
ますます、呼ばれた理由が分からなくなった]
[集められた者達に挨拶をし、説明が為されるのを待って。
全員が揃ったところで口を開いた自衛団長の言葉に、虚ろな瞳を一つ、瞬かせた]
人、狼…?
[自衛団長が御伽噺ではないと主張するそれ。
示される証。
齎された言葉は点のようなものだったけれど、言わんとすることは何となく、察せた]
……つまり、僕達は容疑者、なんだね。
[自衛団長が敢えて晦ましたような言葉を、はっきりと紡ぐ。
瞳は虚ろのまま、表情もいつもと大して変わらなかった]
…団長さんの言う理屈も、分かる、けれど。
[呟いて、集められた人達を見回す。
真っ先に目に付くのは幼馴染。
人を助く彼女が人狼とは思いにくい。
その他の人達も、人狼である可能性があるなんてことは俄かには信じられなくて。
僕はへにょりと眉尻を下げた]
[一人ずつ可能性を削る。
それが何を意味するかは容易に理解出来る。
かつて死をこんなにも身近に感じたことはあっただろうか]
[けれど]
[今の僕は死に対する恐怖も、どこか遠くにあるもののように*感じていた*]
[>>134坑道付近にいた坑夫達をアーベル一人に任せて、その場を離れてしまったから。
彼らは本当に大丈夫だったかと気にはなっていたけれどあの場には戻りたくなくて、内心どうしようと思っていた。
やることがなくなったからこちらに来たと聞けば、そうか、と頷いた後。]
…任せてしまって、すまなかったな。
ありがとう。
[あの場で側にいた幼馴染が自分の異変に気付かなかった訳がない。
全てを彼に丸投げしてしまった謝罪と、気遣ってくれたことに礼を言って。
イレーネに気付いた幼馴染が彼女に話しかけるのを見ると、商談だろうと思い幼馴染から離れた。]
さっきの…そういえば、石は無事かな。
[>>151フォルカーとオトフリートの会話に、自分の工房部屋を思い浮かべた。
作成するのは大体小物が多いから多少は落ちても大丈夫だとは思うが、未加工の石は大きな塊のままで置いてあるものがほとんどで。
さっきの揺れで倒れたりしていれば、砕けてしまっているかもしれず。
砕け方によっては使い物にならないだろうな、と内心で嘆息した。
けれどその思考は、聞こえてきた>>153嬉しそうな声に一旦かき消され。]
あぁ、いつものか。
良かったな、アーベル。
[にこりともしない顔と淡々とした口調でそう言った。
喜んでいる幼馴染を見ているだけでこちらも嬉しいのだが。
余程見慣れていなければ、本心から言っているとは解らないだろう。
>>161商談の最中でもしっかりと抱えているのも、表情には出ないながら微笑ましく思って見ていた。]
ん?…あぁ、いや。
フォルカーが謝ることはないぞ。
悪いことをしたわけではないのだから。
[>>166フォルカーから頭を下げられると、頭を振って気にするなと言うように彼の頭を撫でた。
運ばれてきたお茶を受け取り、ありがとうと礼を言って口をつける。
幼馴染の持っている本に出てくる少女の衣装にはレースやフリルがやけに多くて。
彫刻にするには非常に繊細さが求められるデザインを勉強しているのだろうと思っていた。
多分幼馴染以外で自分の思考を読める者がいたら即否定が入ったろうが、残念ながらそんな人はいなかっただろう。
だから、自分の仕事に興味があるらしいフォルカーにも良い勉強になるかもしれないと。
>>167幼馴染が彼に今イレーネから受け取った本を勧めるのには、口をはさむことはしなかった。
>>178曖昧な笑顔を浮かべて離れるフォルカーには、きょと、と首を傾げたが。
>>185宿に入ってきた人物が学者の名を呼んだのでそちらを見て。]
…ライヒアルト?どうかした、
[どうかしたのか。と問おうとして。
修道士が逃げかけた学者の襟首をがっしり掴むのを見て呆気に取られた。
>>187落ち着けとか訴えたものの学者の言い分は聞き入れてもらえなかったらしく、そのまま連れられていく彼にお疲れ様、と手を振って見送った後。]
…私達も、そろそろ戻るか?
[自分もだが、幼馴染も工房を確認しておかないとまずいだろうと思い。
声をかけ、同意があれば共に。無ければ一人で先に宿を後にして。
自分の工房べやをのぞくと、案の定倒れて砕けたり割れたりしている石を使えるものだけ選別したり。
幼馴染も戻ってきているなら、彼の工房の片付けも手伝えるなら手伝って。
他にも、落としたままの薬缶から零れた水を拭いたり。
そんなことをして、一日が終わった。]
─ 翌朝 ─
[後片付けで疲れて、服のまま眠っていたのだが。
どんどんと玄関の扉を叩く音に目が覚めて。]
……どうした?
[応対に出ると、微妙な表情を浮かべている自衛団員から宿屋に行って欲しいと言われ。
こちらも微かに微妙な表情を浮かべて首を傾げた。]
それは構わない、が。
何で行かなければいけないのか、理由は聞かせてもらえないのか?
[そう聞くと、団長から説明があるはずだと言われ。
それ以上は聞かせてもらえぬ様子に、それ以上問うことは諦めた。
一旦身支度を整えてから、宿に向かい。
集められた顔を知るのと、告げられた話を聞くのは、もう少しあとのこと。**]
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