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―稲田家―
はい、瑞穂さんにも後で。
[百華に階下を示されて頷く]
うん、桜花じゃないみたいだよ。
そっか、千恵ちゃんより小さいんだ。
小袖の童女。確かに桜花だね。…ああ、鈴の音。
[先に千恵の返事に相槌を打って]
見届けてどうするのかまでは知りません。
『司』は、『憑魔』を喰らって清めるもの。
色々と知っていた人から、さっき話を聞きました。
……あ。
[百華に淡々と答えながら。最後に軽く口元を押さえた]
んなへまはしねーよ。
成熟したところで、かぁ。
恐怖や絶望で彩って、ってか?
[聲に愉しさが乗る。
けれど直ぐにそれは低いものへと変わり]
……なぁ、まもる司って、もしかしなくても厄介じゃね?
[千恵ちゃんが少しずつ話すのを、うんうんと頷きながら聞く]
ああ、やっぱりあの子が『桜花』なのね。
何か歌って、そのあと桜の中に消えちゃったの。
なんだっけ……きみゃくがどうのって。
[そして、肩をすくめる雪夜君にすまなそうな顔を向け、
ゆっくりと話しかける]
……そうよね。 ごめんなさい、ね。
綾野さんって、さっき千恵ちゃんがいってたあやねぇの事かしら。
[考えていると頭がぐるぐるしてくる。
ご馳走様をすると、皆が食べ終わった様なら食器を片付けていく。
動いていれば、頭がすっきりする気がした]
[伽矢の質問にはっきりと頷く]
うん、私は『司』わかるの。覚えてるわけでも知らされたわけでもないけどわかるの。
静音さん言ってた身体能力があがったりするって。
息切れしなかったのもそういうことなんだと思う。
ひょーま?つかさ?
[雪夜の声も聞こえた。
初めて聞く言葉に目を瞬かせる。]
うんと………ひょーまとつかさが、おうちに帰れなくしてるの?
[雪夜から聞いた限りでは、どっちも悪いもののように思えた。
どんな悪いものなんだろうと、ぷぅとした顔になる。
黒江が言った、『つかさは、ひょーまをくらってきよめる』という意味はいまいちぴんときていない。
うさぎは、じっと窓の方をみていた。]
……行ったか。
[遠ざかる足音と声。
再び路上へと出る]
会話してたな。
ってことは、人だったのか……?
[振り返るが、確認しに戻ろうとはしなかった。
やはり判断の余裕はなかったが、片方に苦手意識があるという意味で正解だったかも知れない]
……っつっても、家帰れねーんだっけ。
どーするか。
[思案しつつ、足は中央広場へと向いていた]
むー。
うちは戸締りなんてしないから、分かんないよ。
[開けっ放しでも取られるようなものはなんにも無かったりするという意味がでかいが、神社に盗みに入るという不届き物が少ないという理由もあった。
まあ、精々盗まれて困るのは下着くらいだろうか]
ふぃ〜。やっと落ち着ける場所に着いた〜。
[独り言のように零しながら、一直線に寝床のある場所へと歩いていき、それに包まるようにして、即座に神楽は寝付いた。
疲れがひどかったのは分かるが、正直、女性としても、司としても無用心すぎると*言わざるを得ない*]
そう、なのか。
でも何で、オレにそれを言うんだ?
あのおばさんも言ってただろ、迂闊に話すのは良くないって。
[巫女が紅を纏う女性に注意されていたこと。
それを繰り返しながら幼馴染に訊ねる]
─自宅─
そこは、威張るところかっ!
[戸締りしていない、という言葉にやっぱり突っ込み入れて。
直後、真っ直ぐ寝室へと歩いていく様子に、さすがに戸惑った]
て、おい、おま……。
[止める間もなく、ベッドは占領されて。
感じたのは、頭痛]
……お前。これ、俺じゃなかったら、どーなってたか、知らんぞ……。
[無用心ここに極まれり、とでも言えばいいのか。
正直、女としてそれはどうなのか、とか、突っ込みたい事は山ほどあるのだが]
……まあ。いいか。
[結局、追求は投げた。突っ込み疲れた、とも言う]
すみません。一つ忘れていたことがあるのを思い出しました。
氷雨さんもお詳しいようですし、これで失礼させてください。
隠れ鬼は得意でしたし、おまじないもあるからきっと大丈夫。
気をつけて戻りますから。
[ごめんね、と千恵の手に軽く触れて立ち上がる。
後半は百華に言うと、雪夜と両方に小さく頭を下げた]
ふぅん、ならいいんだがな。
精々、俺に迷惑をかけないようにな。
ああ、掻い摘めばそんなとこだ。
[楽しそうなコエには楽しげに返す。
だが、続いての言葉には、こちらもコエを落とし]
……ああ、やっかいだな。
ともあれ、みんなを守るなんて崇高な奴じゃないのは幸いなのかどうなのか。
伽矢くんのこと信じているから。
[笑いかける]
私は千恵ちゃんと伽矢くんを守りたい。
そのために、『憑魔』を浄化しないといけない。
でも、私に何かがあったときは伽矢くん、千恵ちゃんのこと守ってあげて。
……で、だ、な。
[寝室から、リビングへ戻り。ぐるり、室内を見回す]
……史さんは史さんで。
なに、遊んで行きやがった……。
[微妙に色々と変わっている配置に、ため息をつく。
一通り、復元が済むと、また、窓辺に寄って煙草に火を点けた]
『司』と『憑魔』……か。
……龍先輩。
あんたの『力』をあの場で継がなかったこと。
……少しだけ、後悔してるよ、俺……。
[小さな呟きは、立ち上る紫煙と共に、*大気に溶けて消えてゆく*]
きみゃく…?
[百華の言葉に首を傾げる。
どこかで聞いたことがあるような気がしたが、思い出せない。
綾野があやねえちゃと同じかどうかは、わかんないと首を振る。綾野の名前は覚えていなかった。
黒江が突然、戻るというのでちょっと心配そうに見て。]
くろえねえちゃ、きをつけてね。
[そう言ってうさぎの耳も揺れる。]
ちえ、お見送りするー。
[ひょこひょこ、入り口の方までついていった。]
[笑みかけられながら信じてると言われ、何となく下を向いた。
ハンチング帽でまた表情が隠れる]
……勿論、千恵をそいつらの手に渡すつもりは無い。
オレの大事な繋がり、渡すもんか。
[下を向いたために口元がマフラーに隠れ、くぐもったような声になる。
それでも、声が揺らぐのは隠せなかったか]
不意に、響く、鈴の音。
最初に現れた時よりも、高い枝。
天により近い、枝の上。
桜の小袖の童女は、同じ色の瞳を天へと向ける。
[千恵ちゃんが言う、
『ひょーまとつかさがおうちにかえれなくしてる』というのは、
素直に考えたせいか妙にすっきりとしていて、
私は姪に少し笑顔を見せた]
うん、確かね、きみゃく……って。
おばちゃんも何の事かさっぱりわかんないよ。
って黒江さん!
[口を抑えたかと思うと、黒江さんは突然席を立った]
おまじないもあるからって……
[所詮おまじないでしょう、と。 私はそう思っている。
彼女についていくべきか、子供達のそばにいるべきか。
私は少し*躊躇った*]
「くれないちりて。
いのちははじける。
うつわはいずこへ?
たましいはそらへ。
こころはいずこへ?
おもいはどこかへ。
ひびく、ひびく、ちからのたまゆら。
ちからあるこら。
いずこをめざす?」
そっちこそ足引っ張んなよ。
[ふん、と鼻で笑う]
崇高じゃねぇが、オレにとっちゃ厄介なことこの上ねぇ。
オレの一番大事な餌を護るとか言いやがった。
オレの事も護りたいとか抜かしてやがるけどな。
[目の前で明かしてはいけない相手に正体を明かす幼馴染。
ハンチング帽で隠した瞳は蔑みを浮かべ、マフラーで隠した口元には薄笑いが浮かんでいた]
[千恵のことを語る伽矢の態度、
二人は特別だからそう思っても少し心にちくりと痛い。]
伽矢くん、私……、
これから、いっぱい危ない目に会うと思う。
もしかしたら…、
[その先の言葉に少し詰まって、うつむく伽矢の傍に寄っていく]
伽矢くん、私がいなくなったら、伽矢くんは悲しんでくれる…?
―中央広場―
[静まり返った広場の中央、静かに聳える満開の桜]
……やっぱ、夢じゃなかったんだ。
[入口で暫し立ち尽くした。
そろりと辺りを見渡してから、大樹の下へ歩いて行く]
あの人もいねーな。
[赤い服の女が既に死したものとは知らず。
花降らす桜の枝を見上げた]
ありがとう。
鍵をお願いできるかな。
[瑞穂が施錠していたのは見ていたから、千恵に頼んで。
雪夜の言葉にまっすぐそちらを見た]
…はい。
[唇の端が少し上がる。
普段を知る人には珍しく、他者からも笑みのように見える形で]
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