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……倒れたぁ?
[榛名の言葉に、利吉が驚いたような声を上げた]
体には自信があるほうなんだがな。なんでまた、そんなことになったのだろう……。
[今の利吉には、さっぱりと理由が分からないし、どうして倒れたのかを思い出すことも出来ない]
まあいい。
そうなったというのならば、そうなんだろう。
[あっさりと肯定する]
んで?
涼があそこで寝ていることは、俺が倒れたことと関係してるのかな?
[旅籠の親父が死んだことはとりあえず話題には出さなかった]
―回想―
お願い…。
[頭を撫でられても、小さく首を振るだけで顔を上げることは出来ず。ただ小さく呟いて外に出てゆく気配を感じて]
分からないの。でも…。
[榛名や蓮実の言葉にも、顔を伏せたまま小さく返すのみだった]
[雨の降りしきる外を歩きながら]
はぁ、思わず力をつけてくるのを忘れきちゃったよ…
[その呟きには陶酔と、悲しみが入り混じっていたであろうか。
忘れた理由は…いずれにかは知れず]
涼ちゃんが人でいたいのなら、そうするといいと思うよ。
[その意識はやさしく、深く心に染み入るような意識で、
それはあたかもゆっくりとしみこみ蝕んでいく毒のようでもあったであろうか]
どんな形でも仲間であることに代わりはないからね。
血を見たくないのなら、全部ボクたちに任せてくれてもいいしね。
涼ちゃんが無理にその手を血で染めることはない。
[くすりと笑みを一つ]
望まない限りはね。
[故意なのか偶然なのかは分からなかったが。
板に貼り付けられた様は無残、としか言い様がなく。]
…やってくれるわね。
[溜息のように吐き出し。
運ぶという裕樹には頷き、傘は一旦たたんで下半身の方を抱きかかえた。傷痕には持っていたハンカチをかけ結び、一応隠すようにする。]
の方がいいわね。…急ぎましょう。
[そう言って先ほどの家へと戻る。]
[暫くして利吉の声が聞こえれば小さく身じろいだ。
顔はまだ上げきれず、それでも指の間から何となく様子を窺って]
……。
[ああ、気が付いたんだ、と少しだけ不安の入り混じった安堵と共に。聞くとも無く榛名との会話を聞いていた]
[自室に入り、荷を解いて、着替える。とはいってもこれといって変わり映えしない服装であるが仕方ない。見目などにとことん興味がないのだ。格好良さ担当などできるはずもない。
その荷の中にいれた古いノートを見れば嘆息する。今の状況を思えばひどくちっぽけなものだ。そしてみなに心配や迷惑をかけたことだろうし…涼と晴美を二人にしたことも後悔がある]
さすがに…参りますよね…
[目を閉ざし、弱音を吐く。次に目を開けたときには元に戻らなくては。と決めて、しばらく。目を開き、部屋を出て階下へと降りていった]
詳しい、話は、知らないけど、倒れた、利吉さんを、蓮実君が、運んできたのは、確か。
その辺り、は、蓮実君に、聞いた方が、良い、かも。
[驚く様子にそう付け加えて]
涼ちゃん、が寝てる、のは…。
[少し考え込んで]
…関係、は、してる、のかな。
凄く、心配、してた、みたいだし。
[嘘ではないが、それだけではない。言うべきかどうか。悩んでから]
…もう、一つ。
晴美君、が…こ、ろ、され、た、って…。
[その事実だけを利吉に伝えた]
[榛名の言葉に]
まあ、そだな。
そこらへんは詳しい人に聞くよ。
とりあえず、大雑把には分かった。
[涼が心配していたの言葉には苦笑を漏らす]
……全く。俺が心配されてたのか。
保護者失格、だな。
[そして、最後の言葉には表情を無くした]
―――次代党首様が?
……聞いていいものなら、誰が、どこで、なんで、どうやって殺されたのかを、聞いてもいいか?
[何故だろう。少しだけ首筋が寒い]
こんにちは。まだ皆さん戻ってきていませんか
[皆が集う場所にいきながら、扉のほうを見やり。また一度その場にいる面々に顔を向ければ]
琉璃さんは?
[慌しく水を散らしつつ、旅籠へと走る。
何事もなかったか、孝博は無事に帰りついたか。
考えていたのは、そんな事。
やがて見えてきた旅籠は、出る前と変わった様子もなく。
……勿論、それだけが安心する要素ではないのだが]
……ん。ちょいと、鈍ってる、かな?
[旅籠にたどり着き、扉を開けようとして右手に軽い痺れのようなものを感じ。
こんな時に、と微かに苛立たしく思いながら、中へ入った]
[詳細を訊ねられ、あからさまに身を強張らせる]
わ、たし、は、くわし、い、こと、は、しら──。
[未だに言うべきかを悩み、知らない、と言おうとして、言葉に詰まり、びくりと再び身体を強張らせた。玲の、呟きが耳に届いてしまったがために]
[意識が例の話に集中していたところに、蓮実の声が聞こえハッと意識を周囲に散じる]
琉璃、は、服を、取りに行く、って。
[一人で旅籠を出たことを蓮実に告げた]
[先程の家の前に辿り着き、足で戸口を開ける]
…許せないな。
[今まで、危なげない足取りで辿り着き、上半身を下ろす。
呟きを、もう一度繰り返す]
許せない。
[厳しい言葉とは裏腹に、毛布をかけようとする所作は優しい。
黙祷を捧げた後、立ち上がる。
何を告げるでもなく、自然な所作で出てきた玄関へと向かった]
[動揺のあまり、蓮実や史人が来たのには気づかなかった。
ただ、額を押さえたまま、ふらと体が揺れ、勢いよくイスへと体重を預ける]
……。
[重いため息]
…そう。
本人が言っていたの。
[ゆるりと顔を上げる。白く表情の薄い顔を利吉に向けて]
怖くて、どうしていいかわからなかったから、って。
[目覚めた利吉。だがそれは今、涼と晴美のことについて聞いているようで
困ったようにこめかみをかき]
なっ。一人でって……どうして私の昔なじみには無茶が好きな人が多いのでしょうかね…
[言いながらも、今入ってきたばかりの史人も見る]
琉璃兄、一人…?
[蓮実と榛名の会話に軽く眉を寄せた。
思考判断力が落ちている。それは自分でも分かっていた]
…兄さん。
[扉の音に視線だけを向ける。表情は…変わらなかった。
どこか心ここに在らずで]
……っと。
[中に入り、ぐるりと見回す。
共に出た者は戻ったのか、と問うより早く、目に入ったのは椅子へと崩れ落ちる利吉の姿。
その姿に、聞いたのか、と思いつつ]
……別に、俺は無茶好きじゃないが。
[こちらを見た蓮実の言葉に、ぼそり、と返す]
……玲?
[こちらを振り返った玲、その失せた表情。
名を呼ぶ声には、戸惑いが織り込まれ]
……どうしたんだ?
[そちらへと向かいつつ、そう、と問いかける]
[家に向かう途中よく見知った顔を見つける。雨で視界はぼやけているが辛うじてその顔を判別することはできた。]
裕樹、小百合どうしたのこんなところで?
[自分も同じことを問われても仕方のないような状況ではあるが、
そちらによっていくと、板壁にはじめなにかが見えてそちらをよく見ればそれは人の姿…よく見知った……しかしだいぶ変わり果てた聡の姿が]
さ…聡っ!?
[思わず声が上ずり警戒の色を二人に見せる、
いつでも逃げ出せるように間合いをそれ以上は近づかず]
[事実を知った利吉にはかける言葉が見つからず。思わず視線を逸らしてしまう。
そのやり取りの合間に史人が戻ってきて、その無事な姿に安堵。続く蓮実の言葉にはやや同意するように頷いて]
私も、着いて行こうと、思ったんだけど、ダメ、って。
…私が、行っても、足手まとい、だもんね。
[今の村の惨状を目の前にして、歩き回る自信は無い。それは理解しているために止められると大人しく引き下がったのだ]
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