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うん、イカれてる。
[ライヒアルトに頷いて手を離す。]
ゼルギウスは任せる。あたしは余力を残しておくから。
[変質していくアーベルから目を離さず、息を吸う。]
みんな、彼を説得して。あたしは彼の事、知らない。一番関わりが薄い。だから説得は任せる。
ダメだった時は、あたしが、"アーベル"を、殺す。
[初めてアーベルの名を呼んで、そう宣言した。どうしてもアーベルを殺したい人や、アーベルが殺されたい人がいるなら任せるけど。]
……ッ、――
[「負けないで。」ダーヴィッドに言った言葉を彼にかける事はなかったけれど、それでも祈ってはいたのだ。]
――アーベルッ!!
[あれは まるで華だ。]
…いけない、…
ベアトリーチェ…これを。
[傍の少女に腰に帯びた光沢を持つ楯を手渡そうと
そして女は赤を揺らしながら背筋を正し、腰に手を。]
[最後に確認出来たアーベルの首輪の数値は、45→51の上昇。数値の上がる速度は、すぐに目で追う事が出来なくなり、]
──アーベルッ!
[研究所に入ってからずっと支えていたアーベルの身体から、温もりが消えていく。震えた手が滑り、離れてしまう。踞る、青年の身体。彼の背中が裂け──。]
──アーベルッ!
[その瞬間、名前を呼ぶ以外に、何も出来ない。]
[アーベルの背、開く華。
天鵞絨を細めて、それを見つめ]
……いずれにしろ、唯々諾々と従うつもりはないからな。
暴走したプログラムであれば、それこそ、何をやらかすか、わからん。
[任せる、という言葉。
一つ、頷いた。
アーベルも止めなければならないが、『ゼルギウス』をこのまま稼動させておくのも危険なのは想定できる]
……無理、するなよ。
[離れた手。
一度、取り直して、引き寄せて。
唇に触れてから、再度、離した]
『───』
[髪の長い人のような姿]
[大きさは赤ん坊ほどの]
[髪に黒百合]
[背に白い羽]
[歳のころはちょうどブリジットと同じくらい]
[だが、歳の頃だけではない]
[大まかな顔立ちは転がる男だったものに似ていた]
[青灰簾石の───鉱石の眸]
―回想・ヘリの中―
[食料を探し当てて食べていると、ヘルムートの声が聞こえた。ゲルダが、そう聞いて、手の中の食料を大事そうに、包んで]
―同・研究所―
[>>75ノーラの声が、響く。間をおいて、>>#5鳴き声が耳に響いた]
何の、声? 馬みたい。
[振動だけで、少女にはその音がせずとも理解できた。
ノーラが前に立つのが判る。貴方達、と話しかける声に、誰かいるのだろうかと気配を探る]
誰?
誰か、いるの?
[判らなかった。何も、いない気がした。何かがノーラたちには見えてるのだろうと思っても、鳴き声のほかに音もなく、気配も感じられない。
ただ、ノーラの示す方へと、歩いていく。
階段を上る。杖は左手でついて、右手はノーラを支えるために。
名を呼ばれ、その後の言葉に微笑んで]
私も、自分の家族以外は良く知らないの。
でも、温かかった。パパも、ママも、弟も、大好きだった。
目が見えない私のために、色々してくれたの。ママも、パパも、厳しかったけど、でも、優しかった。
だからね。
この病気になって、ここに来ることが決まったとき、ほんとは嫌だったんだ。
だって、みんなと別れるのは、辛かったんだもの。
でも、ママも同じ病気だって知って、でもママはここには入れなくて、生き残る可能性があるのに、行かないのは、ただのわがままだと、思った。
ママの分まで、生きなくっちゃって。
家族って、知るものじゃなくって、なるものでもなくって、気づいたらきっと家族なのよ。
支え合って、大好きで。みんながみんなを思い合うなら、それはもう家族だわ。
[ナターリエの言葉に、びくりと肩を動かす。その後のアーベルの声。嗤う、声。
殺してみなよ、という声に振り向く]
やめて。
[言葉を続けようとして、ノーラの言葉に頷くだけに留める。同じことを、言おうと思ったから。
上へと急ぐ。
部屋らしきところに入ると、声が聞こえてきた。
そして、つげられる数字]
52、年……。
―回想・了―
[そのあまりの年月に、ノーラを握る手に、力が篭った。
告げられる真実、数値の上がって行くアーベルの体]
アーベルさん!?
[みしり、と音が響いた。そして、何かが転がる音]
何? アーベルさんは……どうなったの?。
[ノーラから楯を渡される。受け取って、両手でもった]
[ライヒアルトに引き寄せられ、触れた唇。
離れるのが怖くて追いかけかけてやめる。]
ライヒも、気をつけて。
[そうしているうちに首輪は千切れ、アーベルは倒れ、生まれ出る悪夢。]
おんなの、ひと
[不思議そうにつぶやく。]
[何が起きているのか、見えない。けれど]
……何か、いる。
アーベルさんみたいだけど、違う。
[そしてアーベルの気配はすでに感じられずに]
生きてて、ほしかったのに。
どうして。
[見えない。けれど感じる]
[離し難いに変わりはないけれど、今は。
気をつけて、という言葉に頷く。
音の方へと転じた視界が捉えたのは、石より生まれし幻想。
その様に、『プログラム』を名乗ったものの笑い声は、高く、響くか]
……どこで、笑ってんのか、が問題か……。
[低く呟く。
そこにいる銀はホログラフだろうから。
本体を探さなくては、と研究室を見回した]
『───お は よう』
[小さな姿は唇をゆっくりと動かす]
[直接脳裏に響く言葉]
[すう、と動く]
[僅かに残る蒼の航跡]
[かつてアーベルと呼ばれた石に]
[口づけて]
[航跡は残る]
[そこにいるそれぞれを見る]
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