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[誰か呼び止める者はいただろうか。何方にせよ、振り返りはしなかったが。
ピアノの音が聞こえて、暫し足を止める。楽しげなのに何処か冷たい音。
誰が弾いているかは分かったが、そちらへ向かおうとはしなかった。否、もしかしたら分かったからこそ、かも知れない。
代わりにその足は階上へと*向けられた。*]
……ありがと、ございます。
[ブリジットの着替えを引き受けてくれたナターリエに短く言ったのは、廊下に出されてから。
額に手を当てて髪をかき上げ、再び広間へ。
人の大分少なくなった広間。
道具を探してきて、黙々とあかい跡を片付ける]
……って……あ。
[床のあかを片付け──僅かな跡は、残ってしまったが──、ふと見やった窓際]
忘れてた。
[突然の騒動の中、その存在をすっかり忘れていたもの。
いつの間にか放り出していた皿は、ひっそりと無残な姿に]
……これも、片付けとかねーと。
[小さく呟きつつ、欠片を集め]
……いって……。
[ぼんやりとしていたのがまずかったのか、それとも、打ち捨てられた破片の逆襲か。
指先に滲む、赤。熱のような痛み]
ガキじゃねぇんだから……。
[呟きつつ、血の滲む部分を軽く舐めて、持っていたハンカチで縛りつける。
その後は何事もなく、片づけを終え、二階へと]
[当たり前なのかも知れない、けれど。
自身の紅では、渇きは癒える事もなく]
……融通きかねぇの……。
[愚痴のような、文句のようなコトバが。
ぽつり、と零れた]
[自室に戻る。
何となく眠る気にはなれずに、先日部屋に持ち込んだブランデーを数口飲んで、窓枠に腰掛ける。
森番を継いでからはアルコールで身体を強引に温める機会も多く、酒に慣れた体は容易く酔う事もできなかった。
そのまま、少しだけ歪な月を見上げつつ。
いつものように、*歌を紡いで*]
[ぼんやりと、広間の出来事を思い返す。
緋色の意識は、他者に比べれば多くの事を察知する事ができていたから]
……蒼と、朱。
[聖なる花を抱いた二人の少女。
全く違う表情を見せていた、二人]
……痛みは、逆らえば与えられる……か。
[それならば何故、と思う。
痛みの理由が、その本質が同じなのであれば。
与えられていたそれがどのようなものかは、自身も身を持って思い知っていて。
それを受けつつ、何故、抗うのかと。
蒼の風の内に生じる、微かな疑問]
……もし。
意味があるなら。
[それが知りたいと。
何故か、そんな気持ちになっていた。
機会は得られるだろうか。
獣の性、どれだけ抑えられるか自分でもわからない。
それでも。
知りたいと。
緋色の内で揺らぎながら。
蒼の風は*ぼんやりとしたまどろみへ*]
―二階・自室―
[トンッ。と壁に突き立つ音と共に目を覚ます
窓を開けて、突き立つ矢を取って、そこに括ってある紙を見る
特定の音と香りを使って動物を操る技術。それを持つものも、その香りの元を買ったものも近辺にはいない。と、人狼のことが少し書いてあったが、それは既に聞いた程度の情報であって…少し考えた後、紙に色々書いて、また矢に括りつけて、荷物からボウガンを出し、窓から森へ向けて放ち、窓を閉める]
人狼…なぁ
ま、今となっちゃ…信じるしかなさそうだよな…
[起こった出来事を軽く思い出し、そして二日前にギュンターと喋ったことまで思い出し呟き]
人狼は人に化けれる。んで、時、場所、システム、教会だとか因子だとかいっていた
過去にもあったとか聞くがその時はどうしたんだかな
[わからないことはまだ多いが、ここにいても仕方がない。やることもある。と、木箱を背負って部屋を後にした]
[よく覚えてはいないが、部屋には戻っていたらしい。
目が覚めても動く気にはなれず、ベッドの上に寝転がり、夢と現の狭間のような時間を過ごしていた]
[時間の経過は曖昧だった。
空は曇っているようで、薄暗い。
雪は、降っているのだろうか。
集会所内に以前のような活気はなく、奇妙に静まっていたのも、原因の一つだろう。
狼の襲撃だけでなく、殺人が(それも眼前で)起こったのだから、当たり前だが]
[次第に身体が冷えて来たのは、部屋の寒さと、食事を取っていないことによるものだろう。
仕方なく起き上がり、乱れた髪を手で梳いてバンダナを巻いた]
―二階―
[昨夜はマテウスに手伝いを要請されて、男は結局ノーラの遺体を運ぶことになった。既に安置されていたアマンダの隣に、無惨な姿の彼女を包んだ布を置いた時、アマンダの手に握られている手帳に気付いた]
[エーリッヒの手帳によく似たそれを、殆ど無意識に手に取ったのは彼女に布を被せている所だったマテウスには見えなかっただろう。開かれたページには真っ赤な血の染みと「人狼」に関する覚え書きらしきもの]
[隠すという明確な意図はなく、ただその内容を情報として得たいという職業病にも似た衝動に任せてそのままポケットに入れて持ち帰った]
[ひっそり静まっている集会所。
それもそうだろう。とは思う。普通に暮らしていたものにすぐに慣れろなど酷なものだが]
そういやエーリッヒはどうしたかね
[アマンダを射殺したことについて。というのもあるが、ノーラの遺体を連れ帰ったとき外に飛び出してきて悲しみに崩れ落ちていた
放っておくとそのままでいそうだったので、集会所に放り込んではおいたが
そうこうしている階段を降りて一階にたどり着く]
[服も直そうとして、指先が硬い感触にぶつかる。
目を落とすと、僅かに光沢を持った深い茶色が見えた]
[人狼がいると言われても、使う気はなかった][けれど]
…………。
[嫌だなあ。
その言葉は、出て来なかった]
[裾を直して、廊下に出る。
厚い雲がひかりを遮っているせいか、それとも、もうすでにそんな時間なのか、ぼんやりと霞がかって見えた]
「人狼」「能力者」…創られたモノ、か…
[書かれていたのは、イレーネの言葉と、エーリッヒの行動を裏付ける内容。有り得ないと思う心が揺らぐ]
全く、冗談じゃねえ。
こんなのあ俺の専門外だ。
[男は、ウィスキーを切らしてしまったことを心の底から後悔していた]
/*
低速でごそごそとしつつ。
襲撃、どうしますかね。
ここらで聖痕かな、と思いつつ。
ガード出される可能性もありますが、その時はその時、という事で。
どちらに行くか、考えありますかー。
*/
―二階・部屋―
[窓を開けた]
今日は静かですねえ…
いや、今日も、ですかねぇ。
[くすと小さく笑った]
…村も静かだ。
おびえているんでしょうね。
─二階・自室─
……荒れる……かな。
[相変わらず窓枠に腰掛けたまま、ぼんやりと空を見上げる。
ベッドに使われたような跡はなく。
もしかしたら、ずっと窓枠に座っていたのかも知れない]
本格的に、閉じ込められ?
[くく、と皮肉を交えた笑みが零れる。
案ずるように、カラスが一つ、羽ばたいた]
さて、一体どこまで皆知っているんでしょうねぇ
情報を持つ人たちもすべては知らないのでしょうけれど。
[エーリッヒの手帳]
[イレーネの言葉]
[リディの声]
…ああ、返しそびれてしまいましたね。
ノーラさんのハンカチ。
遺品になるんでしょうかね。
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