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「この森に逃げこんだ筈だ!探せ!」
ごめんなさいごめんなさい。
いいのよ、こんな人里近くで貴女を産み、注意もしなかったお母さんも悪いの。
隠れていて、人がいなくなったら逃げるの。
はい、おかあさん。ごめんなさい。
パキリとすぐ近くで木を踏む音。
驚いて振り向いた母の目に浮かぶ驚愕。あたしもつられて息を呑む。
「貴方は…」
目が覚めた。
頬が寒いと思い、手をやると濡れていた。
また、泣いていたのだろう。あの夢を見て。
----------過去の、私と母。
ゆっくりと体を起こし、ベッドと小さな洋服タンスしかない屋根裏部屋から出て、階下へ降りる。
小さな居間で、白くたくさんのヒゲを蓄えた爺が具の少ないスープとパンを食べていた。
階段から私が降りてきたのを見て、にこりと笑って手をあげた。
「おはようイレーネ、目覚めはどうだい」
私は無表情に答える。
「……おはようございます。あまり良くなかったです。」
爺は相変わらず微笑みを絶やさず、私に笑いかける。
私は何も返せず、そのまま鍋のスープをすくってパンをとって向かいに座り、無言で食べ始める。
その時、扉をノックする音が聞こえた。
「爺さん、墓参りに来たんだ。ランプ貸してくれよ。」
私は無言で片手を出して爺が立つのを制し、自らが立ち上がると居間を抜け、小さな部屋から通じる扉へと寄っていった。
扉をあけると、花束を持った男が立っていた。
私は横の棚からランプをひとつとり、油がたっぷり入っていることを確かめると火打ち石で火をつけて男に渡す。
男は変わりにチャリンと銀貨を私の手に置き、「ありがとう」と言ってそのまま墓場へと向かっていった。
私は男の背中を少しだけ見送ると、扉を閉めて再び奥の狭い食卓へと向かった。
食事が終わると、私は棚においてあるランプに全て油を入れ、キレイに磨く。
そしていつものように、大きな瓶を背負って町への細い道を歩き始めた。
─Kirschbaum・3階客室─
[寝台の上で身じろぐ。
あちこち巻かれた包帯の隙間からちらほらと見える真紅の鱗。]
…ぃってぇ……
[うっすらと瞼を開ける、爬虫類じみた縦長の瞳孔のブルーアイ。
緩慢に身を起こし、タオルを濡らして寝汗を拭き清めて、包帯を巻きなおす。
再生速度がいつもより遅めなのが多少気になった。]
食事が終わると、私は棚においてあるランプに全て油を入れ、キレイに磨く。
そしていつものように、大きな瓶を背負って町への細い道を歩き始めた。
[大きな瓶から町中の街頭の油を足していく。やけに街中に警備員や人が多いように感じる。
町の玄関である門の街頭に油を足していると、下っ端警備員に呼び止められた。
なにやら最近物騒な噂があったり、人の出入りが激しい為門を訪れた人には記帳を願っているとか。]
…私、も?3日に一度は来るのに。
[そこをなんとか、俺も上に言われてて厳しい立場なんだよ、とかなんとか言う警備員に、ため息ひとつついて]
…分かった。
■名前:イレーネ(Irene)
■職業:ランプ屋
■年齢:22歳
――――
■属性:生命
■種族:竜族
3年程前、墓場の隅に座り込んでいるのをランプ屋の爺が見つけて拾ったらしい。
墓場の横で墓参りの人や墓守へランプを貸したり売ったりしつつ、町中の街頭や店へ油を入れに行く仕事をしている。
拾われるまでは500年程、ずっと地上で彷徨っていた。
その正体ははぐれ竜族の娘。
父は現在の生命王もしくはその弟である為、生命の力が宿っている。
が、母を生命王に殺された(と思っている)為、力を使う事を嫌っている。
それでも生と死のからみあう墓場などに惹かれている事に彼女は気がついていない。
[彼女の書き込んだ帳面に目を落とし、「苗字も頼むよ」という警備員に顔を上げて]
…私が、知りたいくらい。
[少し怒ったような彼女の表情に、警備員は何か感じ取ったのか、それ以上は言わなかった。]
[鏡を見て幾度か瞬き、完全に人の姿になったことを確認。
頬に貼られたガーゼを剥がすと、一筋刻まれた傷は、既にかさぶたになっていた。
革鎧は身に着けずに、チュニックとズボンだけを。]
腹減った…。
[飯食わせてもらおう、と階下へ降りていく。]
[ほぼ油を入れ終えたかな、というトコロで、いつもの店の前。Kirschbaum。
扉をそっと開けると、いつもの、暗めの隅の席に座る。いつもの匂い。
…が、今日は少し違うようだった。人の賑わいが、多い。
その上、何か、いつもと違う感じを受けた。が、嫌悪感はない、むしろ心地よい。]
[ちょうど、てんこ盛りのミートソースパスタにトンカツまでおまけで乗せてもらって、
フォークで絡めとり、口に運ぼうとしたところでひとりの客の姿に目が行く。]
…ん?
[銀の髪の女の姿が何処となく気になって、暫くそのまま。]
[アマンダは石の粉に抱かれ眠っていた玉を取り出す。
柔らかな布で拭くと、水中花が現れる。注文通りの品の出来に満足]
どうかな、千花。
「チッ」
ありがとう。きっと、彼女も満足する。さ、彼に渡しに行こう。
[新たな玉を最も映える色の布に包み、アマンダが以前に作った大粒の玉を連ねた紐を首にかける。
散歩ついでに商売するつもりだ。
千花に手を伸ばし定位置についたのを確かめ、工房を後にした。]
[熱いコーヒーを口に運び、あつ、と呟いて少しの間諦める。
桜の花びらが窓の外をひらりと舞い、そちらに目をやろうとしてふと、視線を感じて顔を上げる。
何か……違和感?親近感?それとも…?]
……?
[目線の先にいる、パスタのフォークを持ったままこちらに視線を送る男を、不躾にも凝視する。]
[暖かな陽の光を浴びつつ北通りを歩く。
広場を抜け、左に曲がる。
東の居住区に入ると千花が鼻先を上に向けて、小さく鳴いた]
「アン」
気になるの、千花?
後で見に行こうか。
[アマンダは足を速めることなく、ある家へと消える]
[暫くじーっと見つめ合ってしまったかもしれない。
コレは恋…?
んなわきゃないない。
纏う気配がなんとなく…とは思いつつも、流石にこんな短期間に二人も同族と遭うわけが…。
気のせいだろうと思うことにして、小さく会釈するとパスタを口へ運ぶ。]
[しばらくして出てきた手には包みはなく、懐には銀貨]
気に入ってもらえたね。よかった、よかった。
美味しいの買いに行こう。
でも、その前に約束。
[アマンダはゆっくりと住宅の裏を抜けて、森を目指す]
[視力が良くないので、眉間に皺を寄せつつ凝視していたが、相手が会釈したのでたどたどしく会釈を返す。
その後も、パスタを食べる様をじっと見つめていたが、何か掴めそうで掴めない。]
…どこかの、お客…?
[何か奥底では違う、と囁いていたが、 初めての感覚を掴めず。
目を逸らそうとコーヒーを持ち上げたが、やはり目線が自然とそちらへと行ってしまう。]
[相当の量があったパスタをペロリと平らげ、別皿のサラダも残さず完食。
デザートにと、チョコパフェ。
…女子供ならパフェだけで満腹になれそうな量ではある。]
−北西部・森−
[千花は森に入るなり肩から滑空し、近くの木にしがみ付く。
登って、滑空、着木。登って、滑空、着木。
アマンダはゆっくりと後を追う。
千花が停まった視線の先には、金の光。それから]
…おや。
[それだけ言って、地面に手を触れる。
緩やかに盛り上がった土が跡を隠す。残るのは氷破の爪の先だけ]
…分からない。
きっと、前に会ったお客。
[...は呟き、カタリと席を立った。カウンターにチャリンと銀貨を置き、厨房の脇にある油瓶に油をうつす。
だいぶ軽くなった瓶をまた背負い、ダーヴィットの横をすれ違う時にくらりとめまいを感じたが踏みとどまって扉をくぐった。]
…それか、記憶にない、人なのかもしれない。
爺さまに会う前の、忘れてしまった部分の。
[呟き、店の看板を一度見上げてから町の雑踏の中へと*消えていった*]
[出ていく女の姿を見て、瞬く。
一瞬、その瞳は爬虫類のようなものに。
気がつけば、パフェも底のフレークを残すのみ。
店主に声を掛けられて、我に帰る。]
あー、これっすか?
まぁ、いつもの事さね。大したことないっすよ。
[頬の傷を撫でながら苦笑い。
試作品だから喰っておけと、どでかいプリンを目の前に置かれて小さく歓声。
特性がバレてて気を使われているなんて気づかないまま、黄色い山をスプーンで切り崩す。]
−Kirchbaum・一階−
[いつの間にそこに居たのか、パフェを平らげてゆく様子をじっと見つめるベアトリーチェの姿がありました。実は銀髪の女のひとと入れ違いに来たのですが、気附いた人はほぼ居なかった事でしょう。
今度はつるつるの綺麗な山が崩されてゆくのに、きらきらとした緑の眼が注がれます。]
[どうやら眠っているらしいミハエルから、少し離れて腰を下ろす。
千花は楽しそうに森を飛び回る]
美味しいもの、食べる前の運動。悪くないね。
[日差しは暖かく、森は静か。
そのまま仰向けに寝転んで、大地のぬくもりに*目を細めた*]
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