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[問いの答えを遮るように響く、悲鳴]
……何事っ!?
[表情を険しくするのと、肩のラウルが飛び立つのとはどちらが早いか。
サエーナ鳥が尾羽を揺らしつつ、飛んだ先は]
俺と逢い引きをしようと考える奴などいやしないが
[面白そうに狐は言って、]
ロザリンド、お前ならしてくれるのかな?
[からかいを帯びた言葉。
それから二人の少女の*会話を聞いた*]
……素早い。
[こちらが動くより先に飛んでいく相棒を止めるでなく。
零れたのは、こんな呟き]
というか……アンタはこんなとこで何をしてんのさ……。
[続く言葉は、呆れを帯びて]
あ、スティーヴさん!
[大きな翼を見つけ、立ち上がって嬉しそうに手を振った。
疾風と同じように尻尾があるならぶんぶん振っているかもしれない。]
や、さっき終わったトコで。
待って無いですよ。
[細い目を糸のようにして、笑った。]
[ 若干歯切れの悪い言葉に首を捻る。]
そう。私が出不精故、お顔を拝見したことがないようですね。
失礼致しましたわ。
[ そう言って自分の非礼を詫びる。]
何処かに行かれるところでしたでしょうか?
お引止めして申し訳ありませんでした。
…お名前だけ伺っても?
[ そう言って相手を首を傾けて見つめる。]
[喚き声に反応したのは、眼前の護衛達ではなく…]
お?…なあんだ、アンタか。
何しにって、……逢引?まあ、失敗したんけど。
[低く響くそれに拘らず、ぬけぬけと声を返し立ち上がる。
さらにその向こうからラウルが来るのを見れば、反射的に頭を守った]
住み始めて一年にも満たない上に、
私自身、村に出向く事も少ないから仕方がない。
[片腕を曲げ、己の肘を押さえる]
特別、急ぐ用事ではないから、平気。
外で夜を明かしてしまったのは問題だけれど、
初めての事ではないのだから、
フィオーラも気に留めていないと思う。
[斜めになる相手の顔を見返しながら答え]
……名は、エリカ。
−岩場−
[翼を仕舞い、大股で歩み寄る。
手を振る度に尻尾の様に揺れる髪に、口の端を微かに上げた。]
……そうか。では仕上がりを見させてもらおう。
[糸のように細められた目を見、それが先程まで見ていた方向へ視線を投げる。]
………待たせた訳でないなら、何か見えたか?
[出されたままの薄金の翼。何もない殺風景な岩場。
青年へ視線を向けぬままに問う。]
[頭を庇う様子に、ラウル、攻撃目標変更。
庇う手自体をつついてみたり]
……逢引ってアンタ……。
[何を逆鱗に触れるような事を、と。
言葉は途切れ、代わりにでたのはふかいため息]
(やれやれ。
この無節操ささえなきゃ、悪いヤツでもないのに……)
[そんな考えは声にも、勿論表情にも乗せはしないのだが。
その一点、それが腹に据えかねるのは事実であるのだし]
んや、何にも。
昨日の――「虚」とかって…目に見えるモノなんですかね?
[少しだけ声が低くなる。
スティーヴにつられるよに、目線は岩場を滑った。]
[草の匂いを満喫し、翼で体をくるんだまま起き上がる]
どこにいこっかなーいこっかなーあはは
昨日は森だったからー……あっち〜♪
[と、堕天尸のことを聞く前と変わらずに
川から外れ、草むらの正面の高台を目指す]
[ 笑うケイジには同じ様に笑って返す。]
あら、ケイジ様は男前だと思いますけど。
私で良ければいつでもお相手は致しますわ。
相変らず冗談が上手ですわね。
[ そう笑いかけた後、また少女へと目を戻す。]
フィオーラ…というと機織の。
成程、彼女のところで居候ですか。
エリカ殿ですね、私はロザリンド。
ロザリーで構いませんわ。
[ そう言ったところで首を正面へ。]
ところで女の子が外で夜を明かすのは関心致しませんね。
それは、アヤメ殿も心配なさると思いますわ。
[ そう言って相手に笑いかける。]
ははッ、これだからオッサンは。分かってないなぁ。
離されるからこそ、惹かれ、引かれるもんなんだよ。
[鋭さを増した視線を、飄々とした態で受け流し、]
資格、ね。恋に資格が必要かはともかく…。
さて、アンタこそ、それを判断する資格を持っているのかい?
……フィオーラは有名なのだろうか。
機織は村に複数いるものでもないから、
当然と言えば当然とも考えられるか。
[口許に指を添え、ぽつり。
傾いて、戻った顔を、視線を動かさずに見る]
春先はあたたかいから、まだ、大丈夫。
それに森には、様々なものが棲んでいるから。
[頭を守るための手を狙われては、もうどうしようもなく。
さて、どうしたものかと、せめて懸命に手で払う。
それでも、ラウルの羽根を傷付け無い様に注意を払わなくてはならないものだから、やはり儘ならないもので]
あーや……アヤメさーん、溜息よりも先に、ラウルを何とかしてくれると助かるんだけど?
いや、バカは映ったりしないから、この儘でもラウルは安全だけど、俺が非常に痛いデース。
[内心に気付く筈も無く、暢気に悲鳴を上げている]
くすくす……。
[ 仄か、聞こえた呟きに返事しようとしたのか。]
人なのかもしれませんわね…。
それとも―――――…。
[ そこまで呟いて言葉を止める。]
「虚」は私の感情の後押ししたに過ぎないのか。
[ そう言った言葉尻は少し濁っていた。]
巫女が貴様に惹かれるなど、有り得ん。
[声は激してはいない。ただ氷の冷たさを持って]
巫女を護るのが私の役目だ。
[資格を持つのかという問いには、そう返す]
再び同じ真似をしたら、堕天尸の疑い有りと見て結界樹に押し込めてくれるから、そのつもりでいろ。
……………虚。
[返された少し低い声に、一度口を噤む。
目だけを動かし青年の横顔を見た。その心は見えない。]
………虚の領域は、負の思念や瘴気が渦巻くと言う。
人の心が見えない様に、思念である虚も見えはしないだろう。
だが、漠然と感じる事は可能なのかもしれん。……俺が見た限りでは見つける事は出来なかったがな。
[重い息を吐き、目だけでなく体ごと青年を向く。]
まずは探してみなければ、見えるか否かもわからん。
お前も機があれば、試してみるといい。だが、深入りはするな。
― 空中→自宅 ―
……変な……人たち
僕なんかに……話しかけて
ラスさんに、リディアさん、ロザリンさん、カレンさん、カルロスさん……
[リディアの家を出、自宅に向かって飛びながら、昨日会った人たちをひとりずつ思い出すように名を口にする。昨日のこと……巫女の警告、島の住人たちの姿と、交わした会話。何人もの人と話をしたのは始めてだった。
ずっと気分が優れないのは昨日の料理のせいか、人に酔ったためか。ふらつく軌跡を残しながら、やがて今は主を失くしたあばら家の前へと降り立つと、*翼をたたむ*]
……アタシに言ってもそれは詮無い。
アタシがけしかけた訳じゃないし、ラウルが自分でやってんだから、手の出しようがないじゃないか。
[止めれば止まるとは思うもののそれをしないのは。
ただでさえ気を張っている聖殿で、騒ぎを起こした事への軽い意趣返しも含むのかも知れず]
……兄さんもさ。
気持ちがわからない、とは言わないけれど、緊張しすぎだよ。
そんなんじゃ、兄さんが『虚』を呼び込んじまう。
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