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[もう一人は人形師。
ざわめきの中、他に意識を奪われていたこともあり、
会話の内容を聞き取ることはできなかった。
話題の主が近くにいたことの戸惑いに、
一端、足を留めた姿がどう映ったかはわからないが]
[しかし二人の近くへと寄り、一礼する。
なるべく普段通りと心がけた笑みを作った]
カヤちゃん、――に、ミューラさん。
……お取り込み中でした?
こんにちわ、エルザさん
先程は大きな声でびっくりしましたよ
[先程までカヤに話していた物騒な気配は一切匂わせず、笑顔でエルザに話しかける]
あら。聞こえちゃった?
やぁね、恥ずかしい。
[カヤの呟きに、眉を下げて苦笑する。
痛めていない方の手を、ぱたぱたと振った]
……昨日、平気だった?
ごめんなさいね。
私がもっと、きちんと注意していたらよかったのに。
[申し訳なさそうな表情。眼を伏せる]
─大通り・広場近く─
うぅん。
ゲルダが、ローザが連れてかれたのがはらたつって。
そーゆう話で、別に取り込んではいないぜ。
[エルザの顔を、覗くように帽子のつばから
片方の目だけで、そっと、見上げる。]
ミューラさんも?
あんなに大きな声出したの久しぶりだから、
喉を痛めてしまいそうだわ。
[喉元に手を当てる]
[先の問いに対するカヤの声には、そう、と頷いた。
彼女の瞳が覗いたと知れば微笑みを作ろうとしたものの、
暗い表情を消すのは少しばかり遅かった]
[エルザの問いに首を横に振りつつ]
いえ、ただ先程カヤちゃんと偶然会いまして少々愚痴を聞いて貰っていただけで、別段取り込みごとは無いですよ
[さらりと嘘を吐く。いや、あながち間違ってないのか]
わ、わ、謝らないで…!
オレ平気だし、その、
――ベッティ呼んだのオレだし。
[エルザの申し訳なさそうな表情に、弾かれたように顔を上げて。
振られてない方の手を、腕を取ろうと、手を伸ばした。
煤の匂いがふわりと漂う。]
─広場・露店側─
よ、と。
[あちらこちらを巡り、露店側の屋根から広場へと降り立つ。
やって来た広場には、言葉で言い表し難い空気が漂っているようにも思え]
……なんか、あった……のか?
[肩に止まった隼と、顔を見合わせながら、呟いて。
ぐるり、周囲を見回した]
頭の良し悪しじゃないでしょう。俺にも依頼の意味は分かりません。
ただ、俺が聞いた範囲で、カヤ君が誰かと一緒に家へと走っていったというのがあるんです。
ベッティをずっと家で待っていたはずのカヤ君がね。
[溜息交じりの答えはエルザにまで届いたのかどうか]
[呼び止められて振り返った間にエルザの姿は人波に紛れていた]
[もう一度溜息をついてレナーテに向き直る]
いや。俺も実の所そう詳しくは。
ベッティは、3年前に熱意に負けて旅についてくるのを認めただけなんです。過去のことはあまり話したがりませんでしたし。
共通の知り合いで一番先に浮かぶのは。
カヤ君ですよ。これまたね。
―広場―
[広場に着いたのは、青年よりも遅かったかも知れない]
さてと。
[取り敢えずは露店のある方向を目指し、歩いて行く。
――人の波に紛れながら、友人を見たのは一瞬だけのこと]
ミューラさんが愚痴を聞いて貰う側なんですか?
それはちょっと、意外な感じですね。
[軽い物言い。
奇妙だと指摘しているつもりは、当人にはなかった]
……ほんとうに、平気?
[じっと、カヤを見た。
少女を見つめる翠眼に映る少女自身の姿。
カヤにとっては、どう見えることか。
伸びて来る手を避けることはなかったけれど、]
――っ、
[声をあげず眉を顰める]
ほうほう。なるほど。
[ハンスから一連の答えを聞くと、うんうん頷いた。
そして、すぐに頭をひねると]
カヤ……カヤねえ。
どうも犯人像とはあんまり結びつかねえな。
[やはり信じられないようで]
変身する魔法とか、変身怪物とか、そういうの無かったっけ?
そういうのでなきゃ、アタイが見たカヤと、犯人が同じ存在に思えねえ。
……ああ。急いでんだよな。悪い、引き止めちゃってよ。
[苦笑しながら、最後にそう締めた]
……ん、と。
[今いる場所から、姉の姿は捉えられず。
それでも幾人か、見知った顔が見受けられて。
とりあえず、無駄なく事情を聞けそうな、と思うと、やはり限られるわけで。
歩みは自然、噴水の方へと向けられた]
[エルザの翠眼に映る自分の翠。
更にその中には翠眼が映りその中には更に。
その奥を覗くようにして、一瞬泣きそうな顔になる。
が、彼女の手に触れれば眉をひそめたのに
弾かれたように、手を離した。]
…――ぁ、
[眼を見開いて言葉を失った。]
[カヤの返答を聞き一瞬暗い表情を浮かべたエルザには苦笑いを浮かべ]
あー…………もしかして心配掛けちゃいましたか
うん、大丈夫です。愚痴も聞いてもらいましたし
[愚痴ってレベルじゃなかったが、それは置いといて
意外と言われて首を傾げると]
…………そうですかね
まあ、私も人の子ですから。愚痴を言いたくなる時もありますよ
─広場・噴水傍─
[粗方の情報を読み終わり、紙片は丸めて左手に持つ]
[大分短くなった、紫煙を立ち上らせる手巻きタバコ]
[調べるに足る紫煙は広まったことだろう]
[しばらくは通常の一服のように]
[紫煙を吐きながら隻眸を巡らす]
[声を響かせていた青年の姉は最初の場所には居らず]
[行商人と女剣士が話をしているのが見えた]
[別へ隻眸を向けて居たためか]
[友人の姿を人の波から見つけることは出来なかった]
[カヤがエルザの手を握ろうとした時、彼女が眉を顰めるのを敏感に見て取り]
……ああは言っても、やはり疑念の種は拭えず……てとこかな?
[心中でそう呟く]
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