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[投げられた低い囁きに、返したのはごくごく小さな頷き。
去って行く背に、またねー、と声をかけて]
……はい、はい。
[笑っていない笑顔での促しに、零れたのは大袈裟なため息。
引きずられなかったのは、幸か不幸か。
数年前なら、それこそ耳を引っ張って引きずられていた所だろうが]
んじゃ、俺、行くわ。
またなっ。
[場に残る者に軽く言いながら手を振り、隼を肩へと呼んで歩き出す。
ふわ、と誘うように掠める風。
それと共に駆け出したくなるのは、*何とか押さえて*]
[練習所に辿り着くまで、一度も背後を振り返ることはなかった。
戻って早々鉢合わせたのは、先にアーベルの不在を報せた楽団員。まだ新米の彼はエリザベートを見るなり明らかに困惑の表情を浮かべたが、当人はなんてことのない顔で]
迷惑かけて、ごめんなさい。
アーベルと同じパートの方でしたよね。
よろしくお願いします。
この子、ときどきひとり走っちゃう癖があるから、釣られないように気をつけて。
[丁寧に一礼すると、後から来たアーベルの背を押す。姉と言うよりは母の態。終わりは演奏に関してらしかった。
呆気に取られた様子の新人に微笑を返し、エリザベートは自分の持ち場へ戻っていく]
[他のメンバがそれを見て、同情したか面白がったかは、彼女は見ていない。
ただ確かなのは、彼が伝えに行く前からこうなるであろうことは、周知の事実だったこと]
[それから恙無く練習は進み、振られる指揮棒に合わせて音色が織り重ねられる。
エリザベートの生み出す音も、先の荒々しさはない。
二色の鍵盤の上を、滑らかに指が踊った。
一切の雑音が失せ、旋律のみが意識を満たす感覚――]
[しかし飛び込むように入って来た一人の楽団員により、演奏は中断された。
一気に集まる視線。
静寂の中、注目の人物の口が開かれる。
「予定していた人形遣いが、参加不可能になった」
そう告げられた報に、生まれるざわめき。
祭りまで日がないのに、と皆が顔を見合わせた]
[人々の思いを知ってか知らずか、時は変わらず移ろい、*陽は落ちてゆく*]
─広場隅・ベンチ─
[観察を続けていると青年の姉がこちらを向く>>265]
[僅かに視線を逸らす仕草にくつ、と小さく笑いを漏らしながら]
[首だけの会釈を相手に返した]
ふん、あいつとも知り合いか。
過去に何かあったかね。
[行商人の視線を追ってこちらを見た様子にそう当たりをつける]
[予測するのはやはり色恋沙汰なわけだが]
事件の前に面白そうなもんが見れっかねぇ?
[紫煙と共に吐き出される呟きは]
[至極楽しそうな笑みを浮かべて漏らされた]
[ぽかーんと見てると、ハンスから声を掛けられる]
え? ああ、別に私のことはクウキだと思って続けてくださっていいんで。お気遣いなく
……あ、ハンスさんですか。私はゲルダ、この子はアーニャって言います
見ての通りの旅の人形師で……ああ、ハンスさんも行商なさってるんですか
どうぞ、よろしくお願いします(ぺこり×2
[続いてエルザからも声を掛けられ]
あ、どうも(ぺこり×2
あー、私のことはお気遣いなくー
「オキヅカイナクー」
[そう言って愛想笑いを浮かべる
まあ目の前の状況を気にするなというのは無理な話な訳で]
― 大通り ―
えー、これって高くない?もう6つもらうから、もうちょっと安くしてよー。おっちゃんとアタシの仲じゃなーい。ね、お願いっ。ねっ?
[果物が山と積まれたお店の前で、両手を合わせ片目を瞑って懇願している]
やった!おっちゃん、ありがとねー
[値切り交渉がまとまり、1ダース半の林檎を籠に詰めてもらう。その一つを齧りながら、懐かしい孤児院へと続く道を*歩いていく*]
[広場から騒動の元(?)が離れて行くのを見送って居ると、
わっと、別の露店から声が上がる。
それを耳に入れると真っ黒煤塗れ少女は、たっと足を踏み出した。]
ゲルダ、アーニャ、またなッ!
今度アーニャの芸見せてくれよ!
[別から上がった声は、どうやら服のポッケに忍ばせた筒の店の主人。
気づかれたからかそうでないかは判らなかったけれど、
何かあっては拙いな、と、人ごみの中へと元気に走りこんだ。]
―回想―
旅の人形師ゲルダとアーニャ。
ああ、話を聞いたことはありましたね。ひとり旅の一座。
[もう一つの名前を思い出す]
[納得したように頷いた]
[その技を見る機会はこれまでなかったけれど]
俺も旅回りですよ。そう大きくもない規模の商いですが。
祭りの間は向こうで露店を出していますから、何かあればどうぞ。
[エルザやカヤが親しげに話すのを見て]
[イキシアにも長いのだなと思う]
―広場・露店側―
[一番をというエルザには肩越しに頷き]
[複雑そうな表情までは見えず]
[ヴィリーの近くは当然避けて通ろうとした]
[露店の集まるほうに戻れば上がる怒声]
喧嘩か?
[自分の借りている場所とも近い]
[揉め事の気配に眉を寄せる]
[騒ぎが落ち着くまで少し遠巻きに*見守った*]
―広場から少し離れた細い路地―
[怒声が聞こえたものの、どうやら犯人の特定は出来ていない模様。
自分を探す声追う声が聞こえなかったので、
少女は満足げに手の中の筒を一度空へと放り投げ、キャッチした。
真っ黒な手で握った為外は汚れた万華鏡。
それでも内側は何時覗いても綺羅綺羅と綺麗だったから、
にこにこと笑みを浮かべてゆっくりと歩く。]
あ、いけね。
爺っちゃん今日帰り遅いって言ってたな。
何か買って帰らないと。
[花祭りで賑わう人達の対応に追われ、自警団は忙しいらしい。
少女は今晩の食べ物を準備すべく、市場の方へと*足を向けた*]
[口に楊枝を咥えながら、レナーテが大股で町を闊歩している]
う〜い。食った食った。
あの兄さんの言ってたとおり、メシはうまいし、メシは多いし、メシは安いし、最高だったな。
[メシの感想だけか]
にしても、あの親父はほんっとうに神出鬼没だな。
いつの間に、先回りしていたんだか。
[あれから、その宿屋へと向かうと、どうやら父親がちゃんと二人分の宿を手配していたようで、名前を言うだけで、すんなりと入ることが出来た。
変人であり、得体の知れない人物でもあるのが、彼女の父親という存在だ]
ま。いいか。
手続きしなくて楽できた程度の問題だ。
[言いながら、肩に手を当て、腕をぐるぐると回し、首をこきこきと鳴らした]
ふう。
久しぶりに鎧脱ぐと楽でいい。
さすがにあんなのを四六時中つけてると、肩がこってしょうがねえからな。
[現在は鎧を自分の部屋に脱ぎ捨てて、風の吹くまま気の向くままに気楽に街中をぶらぶらと散策中]
―広場・露店―
何事ですか。
[露店から上がった騒ぎに、彼がそう言って首を突込んだのは少し前のこと。
盗難という言葉と、盗まれた品の情報を得、少し考えた後で、代金を支払うことにより取り敢えずその場を収めた]
─練習所─
[戻って来た練習所で最初に会ったのは、飛び出す時に「後はよろしく」と言い置いてきた同じパートの仲間。
ぽかんとした彼と、姉の様子をしばし無言で見守り]
……ふぉーるーかーぁー。
教えるに事欠いて、誰に教えてんだよ、おまっ!
[姉が行ってしまうと、八つ当たり気味に彼の首を抱え込んで軽く絞める。
自業自得とか、いつまでも子供なんだから、とか。
定例と化した突っ込みや野次にるっせぇな! と返した所にやって来たのは]
あ……楽団長。
[にこやかな笑みに、引きつりながら仲間を解放し。
とつとつと投げられる小言の後、居残り練習を言いつけられたのは、いつもの事。
……ついでに、本来ならば参加予定のなかった『本番』への強制参加も付け加えられた]
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