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[右手で矢を払おうと振るった竹刀は、しかしフユに弾かれ両者の矢を持つ手はそのまま交錯]
[月明かりの下もつれ合う2人の乙女]
[彼女の心臓にはフユの手にした矢が深々と突き刺さる]
…、うん。
[何に対してか、短く同意の言葉を零して。]
俺は殺してない、って言っても、証拠ないし。
それをセンパイが信じるか信じないかは、俺が決めることじゃないけど。
…リュウは、センパイが護ってあげて下さいよ。
ひとりぼっちにならないように。
[何か、数日前にも言ったな。と。ぼんやり考えて苦笑する。
もう一歩、相手から距離をあけて。
背後で、力のぶつかる気配と感覚を薄ら感じながら、
聳え立つ校舎を見上げる様に、ゆるりと視線を*向けた*]
が……はっ
[口から血が溢れた。
脱力したかのようにゆらりとウミに覆い被さる。
突き立てた矢を胸元に遺したまま、
ウミの両肩に手をかけ、体重をかけて床に押し倒す。]
[大きな力を放った反動か、動きは鈍く。
放たれた刃が、右肩を捉えた]
……くっ!
[舞う紅が、白い胴着を染めて。
それでも、風の一閃の制御は怠らぬようにと、意識を凝らす。
鋭い刃は、一度は避けられるものの、床、壁、天井と跳ねるように動き、再び標的へと向かう。
丁度、左の肩口から深く、斬り下ろすような形になるだろうか]
[しかし、彼女の突き立てようとした矢は、肋骨に阻まれ、また限界を超えた左手の握力ではそれを突き折ることは適わなかった
フユに押し倒され、後ろに倒れ伏せる]
……ああ、悔しいな
結局、先輩も取り戻せず、私の決意も果たせず、か
かはっ
[心臓への一撃は間違いなく致命傷。口から喀血し、左手が地に落ちる]
つかむための、どりょく?
[一撃目は避けた。
けれど鋭い刃は再び翻り襲い掛かってきて。
左肩に熱を感じた、と思った時には全身が衝撃に跳ねていた。
熱い塊が身体の奥からせり上がって来る]
だって、ほしいから。
てをのばして。
ちかづきたいって。
[無意識の涙が流れる]
それが、ほしい、のに…
[刃を手放したその手を目の前の影に伸ばしながら]
て、とどか、ない……
[ウミの上へ馬乗りになる形で、床に膝をつく。]
榎本芙由は居ない。
私のココで死んだ。
[そう言って、突き立てられた矢を指差した。
額同士が触れ合うほど身を屈めた。
流血が、ウミの上へ滴る。]
―――…わかってる。
[視線を合わさずに小さく返す一言、
その言い方だけは、拗ねた子供のようで。
またひとつ、距離が開く。
顔が歪められた。
つられるようにして、校舎の方角を見る。
仔犬がひゃん、と鳴いて、僅か爪を立てた。
昨日切った指に、じんとした痛みを感じる。
強い風が、*吹き過ぎていった*]
憧れだったの。
でもずっと諦めてたの。
近くに寄れれば。
寂しくないかと思ったの。
[そう呟くのは葉子]
ちかづきたかったの。
ちからがほしかったの。
さびしいおもいをしてるから。
いっしょになればさびしくないとおもったの。
[そう呟くのは小さき憑魔]
願いは、おなじだとおもったの……
[重なり、交じり合う声]
[抉れた肉の奥に覗く胸骨を
傷口に手を捩じ込んで掴む。
肉と共に骨を引き剥がし、心臓を掴み取る。
太く、弾力のある何本もの血管を引き千切り、心臓を引き摺り出した。]
……願いは、同じ……か。
そうだとしても。
それを叶えるために、生命を奪ったことを、許せないものもいる。
[小さく呟いて、ゆっくりと歩み寄る]
……浄めさせてもらうよ……。
君の願いがどうであれ、君の存在が招くことは、俺には容認できない、から。
[その言葉には、迷いらしきものはなく。
ただ、なすべき事をなさんとする意思、のみ]
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