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…アーベル、さん。
[首を傾げるカラスと一緒になって首を傾げていれば。
サクリという足音はごく近くで響いた]
え、だって。
ノーラさんがそう呼んでいたから。
[呆れられれば困ったようにそう答えて]
何、してたんだろうね。
[どこか儚い笑みを浮かべて]
何、すればいいんだろうね…。
[ユリアンの答えを聞いて、くすりと笑った]
それじゃあ、ご馳走になりませんかね。
ところでめちゃくちゃですか。そうでもないと思うんですけど?
…前も言ったと思いますケド。
兄さんの覚醒は、遅かれ早かれ近いうちに出てましたからネ?
[もっと十分な守りであれば。][この赤い世界に彼が顔を出す事すら無かっただろう。]
ここで一気に目ぇ覚めるのと、兄さんの親父さんの傍で自然に目覚めるのと。
どっちが良かったデスかぃ?
[苛立つ風を、抱いた幼子へ向けたのと同じような声色で宥める。]
[小さな意識はヴィントの笑んだ気配には尾をぱたりと振り。]
[苛立つ気配には首を傾げただろうか。]
[グリズの言葉の意味は分からないので、きょとんとしたままで。]
[名を呼ぶ少女に、や、と言いつつ手を振って。
ノーラが、と聞けはそうなんだ、とぽつり。
蒼の瞳には感情の色彩はなく]
こいつの名前は、ザフィーア。
[名を教えたなら、カラスはばさり、と一つ羽ばたいて]
……何を、か。
何を、どうすれば。
答えは、単純なんだろうけどね。
……でも。
ん、頂きます。
せっかくですから。
[その言葉は、クレメンスではなくハインリヒに答えたもので]
取り返しの付かないことは間違えてはいけなくて、
それと関係ないなら間違えてもいい、っていうように聞こえましたけど。
ああ、いけないとも言っていないか。
ただ、なんとなく、楽しそうにも聞こえますね。
[クレメンスには、素っ気なく返した]
いただきます。
いやぁ。いいにおいですから、お腹がすいてしまいました。
[ハインリヒにそう言葉を投げる]
あ、ここのユリアン君の分もよろしくお願いします。
運ぶの、手伝いましょうか?
[色々無残なことになるかもしれないが]
[ユリアンの方を見れば、自然とクレメンスの姿を見つけ。][彼にもぺこりと会釈を返す。]
今日はハインリヒさんが、だそうです。
[クレメンスの問いにはそう答えて。]
[顔を上げないユリアンには、少しだけ首を傾げた。]
……そうだとしてもっ……。
[コエは、苛立ちを強める。
目覚めも、記憶の解放も。
望んでなどいなかったから、尚更に。
それでも、養父の側で、と問われれば、返す言葉はなく。
伝わるのは、微かな揺らぎか]
そうですかね?
[一度、ユリアンに振り返って]
人生、何度も間違えを選んで生きてゆくものですよ
ユリアン君はまだ若いんですから。
少しうらやましくなりますね
[喉の奥で笑った]
[それが本心か否かは伝わらず]
ハインリヒさんは料理上手ですねえ
[といいながら、彼の方へと近づく]
[が、ブリジットに目を向けて、立ち止まる]
大丈夫ですか? ブリジット君。
[答えの代わりに、付き合っていられない、と言うように、息を吐き出した。
本当は、その話題を続けたくなかっただけ、だけれど。
右手を腰から離して、腰の辺りに触れる]
おっけえ、おっけえ。
ま、味は保証すっから。
[軽い口調で言って、三人分のリゾットを器に取り分け。白ワインも一緒にトレイに乗せて広間のテーブルに運ぶ]
神父さんは、動かなくていい。
[クレメンスの申し出は、もちろん、きっちり、きっぱり、お断りした]
ザフィーア。
[カラスが羽ばたくのに小さく頷く。
憶えておくねというように]
そう、本当は。
もう答えは出ているの。
[スカートのポケットを上から撫でる]
でも……
[光の境界線にいる相手をじっと見つめて]
……苦しい、よね。
[イレーネの言葉に、カラスはこくり、と頷いて。
差し伸べられた相棒の腕へと戻っていく]
答えは出てる……というか。
仕掛け人は、最初から一つしか用意してない。
[そういう事だよな、と。
小さく呟いて]
苦しい……か。
従えば、ラクになれるのに、何で、苦しいって、思うの?
[見つめる瞳を見つめ返しつつ、静かに、問う。
蒼の瞳の底は、光の狭間である事を差し引いても、見通せそうにはなく]
[苛立つ声は、軽く右から左へと流す。][伊達によく吼える猩の傍には居ない。]
[養父をと言えば揺らぐ風を見て。]
まぁ旦那がちーっと、いらん事したかもしれませんケド。
結局、ヴィントの兄さんが『人狼』である以上、どれ選んだ所で苦しぃのは同じ、なんでスよ。
…何で人狼なんでショね。俺等。
まぁ、ブリス嬢ちゃんはどうしようもないっつーか。
嬢ちゃんが狼な理由は分かっちゃいるんですケドね。
[最後はぽつりと。][苛立つヴィントの声を聞き、「ヴィントいぢめちゃダメー!」ともがく幼子をはいはいあやしながら呟いて。]
[そしてそっと音がしたほうを見遣ると、アーベルの後姿と、その先にイレーネが見えた
それだけといえばそれだけなので、特に気にせずに、裏口から広間に入るとそこに居る面々に]
よう、おはよう。何かいい香りがしているな
[そういって、暖炉に比較的近いところに座る]
[ブリジットが崩れても動けないくらい、...は疲労していた。
いや疲労していないほうがおかしいかもしれない。
普段は机にしがみついて書類処理しかしていない自分が、ここ3日で何度も雪の中を駆けずり回り、人の死を間近に見てしまっている。これでどうにかしない方がおかしい。
だから、アーベルがブリジットを横たえている間に、ふらりと...はノーラとアマンダの遺体がある集会所の外へと足を向けた。
冷たい雪だらけの地面の一角が掘り起こされ、簡易的な墓を形成しているその場所で、...はただじっと眠っている2人を見つめていた]
あ…えっと、はい。
[昨日飛び出した時と、倒れた時に、クレメンスはその場に居たのだろうか。]
[殆ど覚えて居なかったが。]
大丈夫、です。
あ、あの昨日、もし御迷惑かけたならすみませんでした。
[そういえば着替えを手伝ってくれた人も覚えていない。]
[どれかに該当していた場合の事もあり、彼にも、小さく謝罪を。]
……俺が、『人狼』である以上……は。
[それは、それ自体は。
『理解』は、している。
勿論というか、容認とは別問題なのだけれど]
なんで……って。
そんなの、俺が聞きたい……。
父さんは、確かに、狼だったから。
俺が、それを引き継いでも、不思議はないのかも……知れない、けど。
[自身の母──つまりは祖母の願いのためにと、この地を訪れた父。
父の血脈がどうなっているのかなどは、知り及ぶ所ではないけれど。
父に人狼の血が流れ、自分がそれを引き継いでいる事。
それは、昨夜解かれた記憶の中に、刻まれていた]
俺は食い物は大事にしたい主義なんだ。
[男は、ニヤリと神父に笑いかけて、入ってきたマテウスに手を振る]
よう、今日はリゾットにしてみた。遠慮なく食えよ。あんたは一番肉体労働してるからなあ。
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