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[怪訝そうな声に、ぱちりと瞬いて、アーベルへと目を移した。]
……わたし、何か変な事言いました?
うーん、想い…… っていうのかな、
何か、込められたものが感じられて、それが優しくて。
でも、遠いようにも思えて、それが寂しくて。
……あたたかいけれど、寒い、感じ?
ううん、違うなあ。
[眉を寄せて、ブツブツと。]
[笑みのない表情で綴られる言葉、そこに込められるものは計り知れぬまま]
……ああ。
『俺は』、破れないから、な。
[呟きは、独り言めいて。
視線をこちらに向けての言葉には、がじ、と蒼の髪を掻く]
……想い、ねぇ……。
ねーさんは、今の曲弾く時、
『冬って、ほんとはあったかいんだよ』
って、必ず言ってたけどな。
[かんけーあるのかね、と、呟きつつ。
一つ、二つ、連ならない音を鍵盤から弾く]
ねーさん?
[端末を挟んだ両の手で、口許を抑えるようにしながら、反射的に問い返した。]
冬はあったかい…… ですか、
不思議な感じですね。
全てを包んでくれるような雪は、優しくて好きだけれど。
……曲だけじゃなくて、
アーベルさん自身の、もあるんじゃないかな。
[再びくしゃみ。]
……そうします、
というか、そうしようとしていたんでした。
[小さく頷いて、早速、瓦礫の合間を擦り抜けようとして、立ち止まり、振り返る。]
アーベルさんは?
ああ……俺を育ててくれたひとの、一人。
[問いには、さらりとそれだけを]
ま、意味はよくわかんないんだけどな。
いつもそう言ってたよ。
って……俺自身、の……。
[少女の言葉には、更なる疑問を感じるものの、余り引き止めるのも悪いか、と問いとしては投げず]
ああ、まだいくつかやる事があるんでね。
それが終わったら、戻るさ。
[だから気にすんな、と。軽い口調で告げる]
―回想・地下―
そちらこそ、何処かで倒れているとばかり思っていましたが?
…ご期待に沿えず残念ですが、“俺”はご覧の通りピンピンしてます。
[尤も、貴女の期待に沿えるつもりは微塵も有りませんが。
掬われる様に向けられる視線からは、翠を逸らしたまま]
――折角ですが遠慮しておきます。
貴女とご一緒の空間で、寛ぐつもりは有りませんから。
…で? わざわざ場所を指定して来る以上
何か御用がおありなんでしょう。
[勧めの言葉には、きっぱりと言い切って。
腕を組んだまま部屋の壁へと凭れ掛ると、ゆると視線を向ける。
用件など、ある程度検討がついている筈なのだが、そ知らぬ振り。]
ん――そうですか。
[視線を一度下げてから、戻す。
離れてしまえば、薄闇の下では、互いの表情は見え難い。]
わかりました。
それじゃ、気をつ――
[……戦わねばいけない相手なのに、心配をするだなんて、滑稽だ。そんな思考が過ぎり声は途絶えるも、]
気をつけて。
[平静を装って、紡いだ。
それきり振り返らず、片足が気になるか、やや危なっかしい動きで、*去って行った。*]
[去り際の言葉。それに思わず、くく、と笑う]
気をつけて、ね。
[そりゃむしろそっちがだろう、と。
呟く脳裏を過ぎったのは、先日の浴衣の時の事か。
少女の姿と気配、それが完全に消えたなら、蒼の瞳は再び鍵盤へと落ちる]
……ま。
一応、理由は聞いてんだけどな。
[言う必要もねぇし、と。
小さな呟きが、冷えた大気に溶ける]
生憎、早々、楽には死ねないらしい。
そして、組織の「仲間」が減るのを喜ばしく思うような性格はしていない。
[それは、「駒」とも言い換えられようが。
勧めを断られれば、残念、と口にはしたものの、最初からそれは予想していたようだった。]
……それが解らぬ程、愚鈍ではないと思ったが。
見込み違いか。
[僅かに首を傾げ、髪を揺らす。]
上からのお達しだよ。
……さて。
現状打破のために、真面目に動くとするかね。
[立てた左の手に、拳にした右手を打ち当てつつ言って、気持ちを切り替える。
鍵盤に元のように蓋をするとその場を離れ、違う廃ビルの中へと足を踏み入れた]
[きちんと扉から戻って自室に戻ったのは大分前だろうか、それとも少し前だろうか?
ベッドに大の字になって暫くうとうとしていたようで、薄く目を開くと天井が見えた。
ゆっくりと体を起こす。]
…ふあぁ。
[大きく欠伸をすると、冷蔵庫から果物を取り出してかぶりついた。]
…そういえば、砂漠って見てないなぁ。
ね、見に行きましょーか。
[虚空を見つめて、呟く。
しゃくしゃくと、口に入れた洋梨が音を立てた。]
[部屋に戻りタイツを脱いで、傷口を洗う。
水音を聞きながら、ぼんやりと呟く。]
……真実に、約束、か。
[霞がかる思考。
違和感はあるのだけれど――何が、かまではわからぬままに。
手当てを済ませて、眠りについた。
それは、ブリジットにとっては、深く、深く。]
−過去→現在へ−
[畳んだハンカチを手に部屋を出る。
向かう先は、このハンカチの持ち主の部屋]
[階段を挟んですぐの場所にある部屋──Kの部屋の扉をノックする]
ブリジット様、いらっしゃいますか?
[相手が休んでいるとは知らない。
コンコン、と言う音と共に声をかけた]
ん――
[額に当てていた手をずらして、ゆっくりと目を開く。
着替えるのも億劫で、セーターとタイツを脱いだだけの格好だった。直す、という考えには至らなかったらしく、緩慢に身を起こす。]
はい……?
[寝ぼけ眼。警戒心はゼロに近い。
薄く扉を開いて、しぱしぱとまばたいた。]
…あれ、意外ですね。
俺は組織の人間が減ろうと、知ったこっちゃ無いんですが。
[義父さんの障害が減るなら、むしろ歓迎です。
けらりと笑いを零しながら、飄々と言ってのける。
続く言葉に一度翠を瞬いて、僅かに眉を寄せた]
貴女に如何見込まれていたのか知る心算もないですが。
…厭味も通じないんですか?
[解ってますよ、と聊か大げさに溜息を零して。
ゆるりと、半ば睨みつける様に相手へ視線を向ける。]
――与えられた命はきっちりこなしますよ。
本当なら、貴女と協力だなんて死んでも御免です…と言いたい所ですが。
…何か、聞かされてますか。
[少しだけ開いた扉。
そこからブリジットを覗き込むような形で]
あ…もしかしてお休み中でしたか…?
も、申し訳ありません、起こしてしまったよう……でっ!
[寝ぼけたような印象を受けると勢い良く頭を下げ……ようとして良い音が鳴った。
扉からブリジットが見えるような位置に移動していたために壁際に居たわけで。
そのまま頭を壁にぶつけた]
相変わらずだな。
エーリッヒ=ハイゼンベルク。
[眼を細めた。
椅子の前に回り、腰を下ろして足を組む。]
厭味か。それは互いだろう?
第一、いちいち通じてやっていては面倒だろうに。
[さらりと返した。頬杖を突いて、視線を受ける。
相変わらず、その顔に、感情らしきものは浮かんでいない。相手の事をどう捉えているのかは、不明瞭だ。]
単純な命令だけだ。
「『遊戯』を盛り上げよ」。
それから――連絡は、互いに取る事。
[ある意味では、後者は苦行にだろう。]
[思い出して、探して、逢えて。
とてもうれしくて、うれしくて、うれしくて…離れたくなくて。
もう一度実感したくて、ぎゅっと。]
[うれしいがみちると、忍び込むのはふあん。]
…………。
[思い出したこと、探したこと、逢えたことに夢中で、
すっかり置いてけぼりになっていた、朝聞いた言葉を思い出す。]
[難しい言葉、遠まわしな話しぶり。]
[招待…してもらった記憶はないの、気がついたら”ここ”にいたから。]
[権利、遊戯…参加。存在、発揮、機会。]
…………。
[思い出す言葉の意味を判ろうと、
少女は難しい顔で考え込む。]
[……理解したのは、自分が定められしことから言うと、
ユリアンを勝ち残らせないといけないのだと言うこと。]
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