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―Kirschburm2F・西の部屋―
んー、あれ?
[目を開けば既に薄暗くなっていて]
……寝坊しちゃった。
[正確には二度寝である。しかも寝すぎ]
うーん、もう一度。
[朝と同じように窓を開ける。
今度は普通に鎖をつけたまま手を伸ばした]
…どうも。
[愛しい子を褒められれば、嬉しい。
だから、そっけないながらも珍しく答えを返したのかもしれない]
そう、行くよ? 戻るって、言ったし。
[ない胸を張って、文句を言わせないとばかりに言い切る。
結び直された布は、再び千花が大切に銜えようとして、首を傾げる]
「…ジ?」
[その視線の先には、イレーネの姿。
心配されていたのだろうか。]
……良くわかんない。
[雑多な気配に惑わされて、個々を正確に判じられなかった]
これを緩めればもっとわかりそうだけど。
でもあまり外さない方がいい気がする。
[左手の鎖細工がシャラリと音を立てた]
……まあいいや。
とりあえず何かしよう。
[悩んでも埒は明きそうになく。
窓を閉めて階下に降りることにした]
[後ろからやってきたティルと目があい、なんとなく会釈をした時に千花がこちらに気がついた事にも気がついた。
なんとはなしに、ゆっくりとそちらへと近づき]
…こんにちは。
[花を額から飛びたたせたのは、命の竜に頭を下げた後だっただろう。
かの女が近付くのにつられたのか、はたまた花の動きを追うたのか。]
こんにちは。
それともこんばんは?
[ひらひら、三ツ花の蝶が踊る]
―西通りのはずれ―
[まだ足を踏み入れたことの無い場所へと向かっていた。]
「坊ちゃん、そこの坊ちゃん。アンタも桜を見に行くのかい?
この街の名物なんだ、ゆっくり見て行ってくれや」
[すれ違う、中年の男たちは口々にそんな事を言っていた。
それを聞いたミハエルは、きびすを返してもと来た道を戻りはじめた。]
[ふと花が目の前に現れて、慌ててあたりを見渡す。
こちらを見つめている女性と少年]
ああ、イレーネさん。頭痛は大丈夫だった?
ティルも散歩中か?
[気がつかないうちに安堵のため息]
[花はひらり、竜の手を避ける。
ひらひらり。
高く舞い、再びその手のそばに。
伸ばされて触れられるのは、花は好まなかったのだろうか。
ふわ、と指先に着地する]
ん? どうしたの、千花…
[手の布を銜えようとしない千花に、その視線の先へと振り返る。
視界に入る、薄紅色の蝶。否、それは花びら]
わあ…。きれいだね、おいで。
[差し伸べた手の平に降りる花びらの蝶。
伝わる翠樹の力に、アマンダは優しく目を細めた]
この蝶々はティルのか?
このあたりでは見たことない種類だな。
[そっと蝶に手を伸ばす。
アマンダの側にいるからそれ以上近づかないけど]
―Kirschbaum:2F―
[逗留している部屋のなか]
[きぃ、とか、ぴん、とかそんな不思議なおとが時折扉を越えた廊下にも届くか]
……よし。
[楽器の弦を丹念に確認する。
弦だけを]
[窓の外は夕焼けに染まる*]
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