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─ 宿屋 ─
……ったく。
御伽噺は、御伽噺のままでいいだろうが。
[団長が立ち去った後、はあ、と大きく息を吐く。
団長の言わんとするところ、理知の面では受け入れられていたが。
感情の方は、さっぱり追いついていない──追いつかせたくない。
むしろ、追いつける道理がなかった]
……っても、あれは。本気の目……だったよな。
[ぽつり、と呟いた所に声を掛けられ。
ミリィの問い>>307に、もう一度、息を吐いた]
知っている限り、ね。
……ま、見たとおり、っていうのが一番早い気もするが。
少なくとも、こんなタチの悪い冗談で人担ぐとか、そういう事は全くしない。
自分の仕事に真っ正直……ある意味、職人気質って言えるかもな。
[傾いだエーリッヒの影が視界の片隅で揺れる]
――…エリィ、
[案じるように名を紡ぐが
彼の近くに居るノーラが声を掛けるを知り
駆け寄ることはせぬままに]
結社である団長さんは
御伽噺と同じ手段を選ぶのね。
力ある存在の事を言ってた。
御伽噺と一緒なら、
見定める力をもつ者のことかしら。
[くちびる動かさぬまま語られる聲]
[ウェンデルの言葉には、こんなときなのに口元に笑みを浮かべたまま]
たしかに、そうともいえるわ。
[フード越しに視線を返しながら]
でも私にとっては、やっぱりいい機会かしら?
でも、別に命を軽んじているわけでもないわ。
あの団長さんが言った通りの存在よ。
人狼を見つけ、滅ぼすための知識と手段を伝えているって聞いたことがあるわ。風の噂のようなものでしかなかったけれど。
[不機嫌の残るウェンの声に、記憶を辿って答える]
さあ? わざわざ疑っている者を集めてこんな話をする人が何を考えてるのかなんて、知らないわ。
命知らずな人なのかしらね。
[夫は宿を出て行ったが、追う事はしない。
後で会いに行きたくはあったが、
会えば夫の覚悟の邪魔になるだろうと思うと躊躇いもあった。]
…アーベルくん、お茶、ありがとうね。
[何も食べるつもりも飲むつもりもなかったのに、喉がやたらと乾いてしまって。アーベルに礼を言うと、花開いた花茶を両手で受け取り喉を湿らせた。
茶器に口をつけたまま。
至って冷静な者、動揺隠しきれぬ者の姿を眺めながら。
視線は自然と、水にたゆう鮮やかな花に落ちてゆく**]
何故、同じにしようとするのかしらね。
私達は無差別に滅ぼそうとなんてしていないのに。
[カルメンの聲にも、同じように唇一つ動かさず囁いた]
占い師、霊能者。それらを守る狩人、守護者。
御伽噺で力ある存在と呼ばれているのは、確かそういう人間達だったわよね。
[けれど現実に対峙したことはない。遠い存在だと思っていた]
……。
……。
[団長さんがいなくなった後も、僕は色々と考えました。
考え過ぎて、周りが見えない程に考え込んで、その果てに]
……いただきます。
[とりあえずは先程言いそびれた言葉を口にし、手を合わせます。
僕にとってさしあたっての最優先事項は、頭を使ったせいで増した気がする空腹を満たすことでした**]
そうなの。
私の飲み差しで良かったら、飲まれませんか。
[口から離して胸元で握った両手は小さく震えていた。
椅子に座った人が顔をあげ、流れた髪が右の瞳を覆い隠そうとするのを、少しボーッとした表情で見ていたが、テーブルに置かれていた紅茶のカップを、青年の前に動かしてみた]
無理はなさらないでね。
こんな話。冷静に聞けという方が無理だわ。
何故……?
聲が聞こえないから、かしら。
御伽噺の人狼像が、団長さんの中の人狼なのかも。
生きるのに必要な分だけ、なのにね。
[ノーラに同意の聲を返し]
力ある存在は、うん、そんな名だった気がする。
この中に、その三つの存在も紛れているってこと?
それなら、かなり、厄介ね。
……本気で、しかも、曲げる気なし、だろ。
でなきゃ……。
[ミリィの言葉>>316に、がじ、と頭を掻きながら返した言葉は途中で途切れた。
本気で、曲げる気がない。
でなければ、自身の妻をここに呼ぶなど、できないだろう、と。
口はしなかったが、一瞬ヨハナへと移ろった視線から、その意は読み取れるか。
ミリィがロミを手招くのを見ると、とりあえず自分もやや冷めた紅茶を飲み干して立ち上がり、カウンターに代金を置く]
……俺、一度、家に戻るわ。
……俺には理解出来ないね。
選べだなんて頭がおかしいんじゃないか。
[食べ終わった後、心底嫌悪したというような声と表情で
そんなことを呟いた**]
よく言われるわ。
[ウェンデルの言葉にかすかに口元に笑みを浮かべ]
後、食事が済んだらギュンターさんのところに、お願いしてもいいかしら?
[ころりと話題を変えて昨日の約束の話を持ち出す]
[女性の飲み差し>>319だったために少し悩んだものの]
ああ……すみません、頂きます。
[周囲にまで気が回っていなかったため、新しく用意をしてもらうという意識は働かなくて。
勧められるままに紅茶を一口貰うことにした。
口に含むと香りが鼻孔にまで広がり、気を落ち着かせてくれる。
飲み下すことで喉も潤いを得ることが出来た]
ご心配掛けてすみません。
ええと……。
[そこでようやく相手の顔を見て、知らぬ相手であることに気付いた。
名前が分からないために少し言い淀む]
ありがとうございます。
流石に、こんな話は寝耳に水でした…。
[ひとまずお礼を言ってから、齎された現状に大きく息を吐いた]
あの爺、襲うか。
いなくなりゃ、こんな事も現実に移されないんじゃねえの
[視線はちらと、彼の妻たる人を見る。
しかし出た言葉は、そんなものだった]
厄介者も殺さなきゃ、俺らが生きらんないならそうするしかねーな。
くそったれ
[男が出て行った扉を睨む視線**]
ん?
ああ、はい。良いっす。
[お願い、と言われて頷き。
それから室内のヨハナへと視線は流れる]
ギュンターへの話、奥さんも通したほうがもっと良かったりします?
[だとすればと、彼女の紹介をしっかりとする所存**]
……そこは、否定しない。
[曲がらない信念は迷惑、というミリィの言葉>>325に苦笑が滲む。
集められたものの態度は各人各様だが、パニックにならなかっただけでも良かった、というべきか]
ま、大丈夫だとは思うが、冷静にな。
……何なら、これ持っとけ。
気が鎮まる助けくらいにはなる。
[軽く言いつつ、紐で編んだ袋の中から昨日『お呪い』に使った花形の細工を取り出して投げ渡し]
じゃ、俺はちょっと、頭冷やしてくる。
[宿に残る人たちに手をひら、と振ると、足早に外へ出た]
─ 広場 ─
[宿から出ると歩みを進め、一先ずたどり着いたのは広場。
翠は一度、出入り口の方を見て。
それから、自衛団の詰め所の方へとゆるり、移ろう]
……聞いてみるべきか、否か。
[ぽつり、と零れるのは小さな呟き]
もし……『わかった上で』の事なら……いや。
[上げかけた仮定はすぐに打ち消した。
ふるり、と首を横に振る。
まとまらない思考を一度、振り落としたくて]
[何となくもやりとしたものを残しつつ、もう一度、詰め所の方を見るが。
結局、足はそちらには向かなかった。
ため息をついた後、一先ず向かうのは自宅の方]
……知られていようと、いまいと。
偽りでないのであれば。
俺が選べるのは……。
[あらゆる意味で、一つだけだと。
小さな呟きは、今は心の内に。**]
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