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[ロミの言葉に、大げさに落胆してみせた]
そか。残念。
ま。でも頑張ってみるよ。
私も、この手でこの子を抱きしめたいから。
[ただでさえ危険なお産と言われているのに、かかりつけの医者も、設備も何も無い中で産む行為が、どれだけ難しいことか。
どちらも死んでしまう最悪のケースだって十分に考えられることだった。
それでも、痛みも不安も全て飲み込み、まるで容易い出来事だというように、ブリジットは笑い続けた]
あぁ、うん、そっか。
そうだよねぇ…見つけなきゃだよねぇ…。
[ロミの言葉に、うーんと唸って]
あの、さ。ロミちゃん。
俺がその違うかどうか…って、分かったりするの?
ほら、誰彼構わずそういうこと教えてたら、ロミちゃんが危なくなるじゃん?
相手にバレない方法なら良いけどさ。
バレかねないなら、もうばらしちゃった俺やブリジットさんが良いかなって。
ん?
見ちゃダメだよ。
[横にあった布をばさりと広げる]
ありがとう。
見た目以上に力あるよね、ユーリ。
…あのさ。
[桶を運んでくれたことに感謝して。
少し躊躇いながら、続ける]
エーリッヒさんが起きれば、聞けるかもしれないけど。
『神の威光に逆らいし闇の住人、
我らが威信に掛けて打ち滅ぼさん』
覚えておいて。そういう言葉もあるのだということを。
[まだ倒れたままだというエーリッヒの側にゆっくり近づく]
オレが見たときの様子じゃ、頭とか打ってる感じじゃなかったんだが…
他に何か原因があるのかね。
オレが運んでもいいが、もし動かしちゃ拙い状態だと困るしな…
[見つめているのは彼の肩]
……、大分綺麗になりましたね。
ありがとうございます。
フォーサイスさん、ローザさん。
[暗い話題を振り切ろうとするように、ローザに笑みかける]
そういえば、ローザさんって、旅の方……なんですか?
なんか、全然知らないままになっちゃって。
見つかる前に、壊すしかないだろ。
[それはもう決まったことのように]
[何よりも、自衛団長の血肉の匂いに、自身が飢えていると気付いたから]
んー、どうだろう。
表から見ては壊れて無いと思うんだけど。
これも洗って、乾いたら吹いてみよう?
[光に当てて固まった部分を取り除き、釦を外した]
[きょとん、とする様子に、返ってこっちが困ったとか何とか。
取りあえず、くるり、回れ右。動きはちょっと、かくかくしてたかも知れないが]
……んな事、わーってるよ。
[見るな、という言葉に大げさにため息をつき]
ま、細工ってのは見た目以上に腕力とか体力使うからな。
基礎は鍛えろ、って、のがお師さんの方針……って。
[告げられた言葉。
蒼が一つ、瞬く]
それ……もしかしなくても、教会関係の、言葉……か?
[声が僅かに、険しさを帯びる。
口調は、問いというよりは、何故か、確かめるような響きを帯びて]
…へ?無理って?
[すごく、ものすごく間の抜けた声を上げた]
は!?
い、いやいやいや、いくらなんでも、それはまずくないデスカ!?
流石の俺も、出産に立ち会った経験はありませんよっ?
[ひたすら慌てた揚句、ブリジットの顔を、眉をしかめながらみつめる]
フォーサイスさんも、同じ事を気にされてました。
[ハインリヒの台詞に、眉をハの字にして]
……うーん。
ダーヴさんなら、何か、わかるかな。
[ブリジットの時の事を思い出しながら、名前を呟く。
釣られるように、視線を落とした]
ダーヴィッドさん。
[ダーヴィッドがロミに向けて言った言葉に口を挟む]
あなたは、ロミちゃんを絶対に信じられると思ってそれを聴いているの?
違うなら、聴かないほうがいいと思う。
私から聴いておいてなんだけど……多分、それに頼りすぎちゃ駄目なんだと思う。
これは、人の和を簡単に瓦解させる代物。例えそれが嘘でも本当でも。
正直、私もこの言葉を聴いてからは、ダーヴィッドさんを絶対に信用できるかって言われたら、答えられない。
つまりは、そういうことになるんだと思うよ。
だいじょ、ぶ、だと、いいなぁ。
オカリナ、これしか、ない。
[洗って乾いたら、と聞けばこくりと頷く。
ボタンが外れると喜色を宿して]
ありがと、クーリェ。
[礼を言ってからごそごそとワンピースを脱ぎ始めた]
場が壊れないなら、もっと壊すしかない。
壊されないためには、先に壊すしかない。
[何を以って、壊れたとするのか。
そして、「壊れる」という言葉の持つ意味合い。
まるで気にも留めていない言いよう]
そういうこと、 ね。
そう、なの?
目を覚ましてくれると良いんだけどね…
揺らさないように運べるなら、ベッドまで運んだほうがい…?
[ハインリヒの視線に首を傾げ。無意識に自分の肩を押さえたものの、すぐに手を下ろして。
ゲルダの言葉には、出来る限りの笑みを作って。]
ゲルダさんがお礼言うことじゃないよ。
でもどーいたしまして。
え?あぁ、あたし?
先週から劇場で興行してるでしょ?
あそこの楽団で世話になってるの。
[ユリアンが回れ右したのを確かめて、桶へと近づく]
…そうだよ。
教会で教えられる口伝。
[険しさを帯びた確認に、平板な声で答える。
ぱしゃりと音を立てて布をお湯に浸ける]
団長さんは、だから僕らを集めたんじゃないかな。
見極め、見定めて滅ぼさせるために。
[ぎゅう、と布を絞った。
カルメンの近くへと戻り、一つは手渡し、もう一つで拭き残した部分を顔から順に拭おうとする]
で、ゼルはうちの楽団にいつの間にか居て、いつの間にか居なくなってたのよねー?
[そう言うと、若干意地悪そうな笑みを浮かべてゼルを見上げ。暗い雰囲気を飛ばそうと、無理をしているのはバレていただろうか。]
そうです。
赤ちゃんだって、ママがいたほうがいいですよ。
[ブリジットを、というよりはそのお腹を見ながら、ロミルダは言った。
笑いながらのブリジットの言葉に、下がっていた眉がやっと元に戻る]
ふぇ。
ダーヴさんですか?
[ぱちりとまたたいて、ダーヴィッドを見上げた]
できる、ですよ。
でも、1日に1人で、時間がかかるです。
[言葉を1つ1つ思い出すようにしながら、ロミルダは言う]
うん。まずい。ものすごくまずい。
でも、この子がこの場所で産まれるというのならば、私はそれに従うしかないんだよ。
あー、でも、誰かに手伝ってもらわないと厳しいのかなあ。
こんなときに、誰か親友とか、幼馴染とか、旦那とかそばにいてくれたら、全幅の信用を預けられたのにね。
[言いながら、悲しげな顔で苦笑する]
誰を、どこまで信用したらいいんだろう。
私は、私の命以上とも言えるこの子を預けなければいけないのに、こんな事件があったから、完全に信用するってのが出来るかどうか分かんない。
……本当、こんなときに、ね。
[段々と、その表情は崩れていく。普段はあまり見せない素のブリジットの姿が垣間見えた]
[返る肯定。右の拳が、握り締められる。
ほんの一瞬、過ぎった記憶を、そこに押し込もうとするかのように]
……滅ぼさせるために、集めて。
んで、自分が……って事かよ。
何やってんだか、じい様……。
[呆れたように呟いて、それから]
なんで、そんな事知ってるのか、とか。
なんか、聞いても面白くなさそうだから、それは聞かないけど。
……なんで、俺にそんな事、話すわけ?
確かにダーヴィッド辺りなら何かわかるかもな。
[ふ、と視線を上げてローザを見る。肩に当てていた手には気付かずに]
ベッドで寝かせるのが一番いいんだよな。
揺らさないように気をつけて運べば、大丈夫だろうかね…
[手渡された布でまずは手をごしごしと拭く。
どれだけ取れているかまでは分からないが、濡らした布であるため先程よりは良く取れることだろう。
その際手元を見ることは勿論無く。
真っ直ぐ前を向いたまま、クロエに顔を拭いてもらった]
かみ、のー、いこー、に、さからいし、やみ、の、じゅうにんー。
われらが、いしん、に、かけてー、うち、ほろぼさんー。
[先程クロエが紡いだ言葉を意味も分からぬまま口にする。
顔を拭われながらだったために、ところどころくぐもった声になっていたことだろう]
うん、あとで、ふいてみる。
[オカリナについては、顔を拭いているにも関わらずこくりと頷いた]
分かる人に診て頂いたほうが、いいかな……、と。
[ローザに悩みながら答え、辺りを見回す。
一巡したところで、首を捻った]
劇場……
ああ、なんだか、噂になっていましたね。
毎年来るんだ、って聞きました。
そこの踊り子さんってことですか、なるほどなるほど。
[ゼルギウスへと向けられた台詞には意外そうにして]
ええ? ……楽団に?
なんだか意外……、かもしれません。
あれですか。
釣竿遠投とか、やられてたんですか。
[それでは楽団というより、サーカス団か何かなわけだが。]
……私、ちょっと、探して来ますね。
[ハインリヒから同意らしきものが得られると、立ち上がる。
昨晩、彼がエーリッヒに悪印象を抱いていなかったことから、任せられると思ったか]
先生のこと、お願いします。
[同胞から同意を得られると、目を見ながら立ち上がり]
そうなるかな。
……邪魔なものから?
それとも。
[美味しそうなものから?
そう言わなかったのは、それは、「壊す」ではないから。
奥底では――望んでいるに、違いないけれど。]
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