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[ありがとう、ともう一度礼を言ってから、また部屋の中を見回し。手鏡の話を聞くと、「そうね」と相槌を打って引き出しを探してみる]
うーん……無いわねぇ。
鏡、手鏡がありそうな部屋って、どう言う部屋かしら?
客室にはまず無さそうなんだけれど…。
[先程見た倉庫。あそこを全て探したわけでは無いため、可能性としては残っているのであるが。あれを見つけた後では戻る気は無く。話題に出すことも無かった]
何かもう、鏡じゃなくて姿が映る何かを探した方が早いかもしれないわね。
陶器のお皿じゃなく、銀のお皿が無いか探してみるとか。
[舌打ちが聞こえました。
続いて、気にするなという言葉。
それでもわたしは、赤が見えたほうに灯持つ手を伸ばします。]
いけません。
ちゃんと、治療しないと。
何なら…
[『わたしが』と、言葉は続きませんでした。
伸ばす手もぴたりと止まりました。
眼も見えないのに、どうしてわたしはそんなことを言おうとしたのでしょうか。]
それは散々言われてるんだが、こっちもこっちで、色々とあるんで、ね。
[理由は定かではない、けれど。
この紅を消してはならない、という思いは強く根付いていたから、伸ばされた手を押し留めようとするものの]
……何なら……?
[不意に途切れた言葉と止まった手に、上がったのは訝るような声だった]
鏡のありそうな場所。
どうなのでしょうか。私はそもあまり見たことが…。
[途切れる言葉。過去の記憶に繋がるかとも思われたそれは瞬く間に霧の中へと消えてゆく]
…鏡を一番使いそうな場所、ですよね。
位の高い方が身支度をするような場所とか。
[一瞬の間を置いて、しかし霧を追うことは諦めた。
小さく常盤の房が揺れる。
首を傾げ、代わりに浮かんできたことを口にした]
ああ、その方が早そうです。
でもここにあるのはナイフやフォーク程度ですね。
台所などを探せばあるいは見つかるでしょうか?
光合成は植物だ
[ケネスと同じことを言い、男はラッセルが出てゆくのを見送る]
[目に残るは、白でなく、緋]
[その視線に周りは気付いたかもしれないが、男はそれについて口をきかなかった]
位の高い人って……この城だと誰だろう?
と言うか、部屋がどの辺りにあるだろう、が正しいかしら。
更に上の階があったりするのかしら。
[天井を眺め見るような仕草をし、また視線を落とす。そこまでして鏡に拘るかと言えばそうではないため、ネリーの台所の言葉に頷きを返す]
代用出来るものを探すなら、範囲も広がるわよね。
ありそうな場所も予測が立てられるし。
行ってみない?
[男が目の内に残された緋について考えていると、キッチンにキャロルがやってくる]
[言葉を聞き、視線は室内の人物を一周した]
誰かを探しているのか?
…い、え。
すみません。
[言葉は歯切れ悪く、出しかけた手をゆっくりと引き戻しました。
視線も、赤い色から外れます。]
わたしが治療しなければと、そう思ったものですから。
別に、謝らんでもいいが。
[歯切れ悪い言葉と共に引かれる手。
それに安堵めいたものを感じつつ、紅を覆うように腕を組み合わせる]
治療って。
……こう言うと何だが、できるのか?
[形の捉えられぬ視界。
それでどうやって治療をすると言うのか。
その疑問は、ごく自然に浮かんでいた]
ラッセル殿を。
貴方と同じあかの髪を持つ方を。
[碧眼は声をかけてきた男へと向く]
[目立つ傷跡よりも、眼差しはその髪を見つめていた]
これを返そうと思いまして。
何処にいらっしゃるかご存知ではありませんこと?
今までここにいたぜ
料理が出来る人を探しに行くと言っていたが、どこにいるかは知らん
出て行ったばかりというのは確かだが
――あぁ、絵を描いてたやつか
番人の方にはお会いできましたが。
主なる方にはお会いできておりませんね。
上の階にお部屋ですか。
露台への途中にはそれらしき場所は見当たりませんでした。
…イザベラ様などはご存知だったりするでしょうか。
[見取り図を書いていた女性のことを思い出しながら答えて]
はい、同じ探すのにも揃っている場所の方が確実ですね。
参りましょう。
[戸棚を閉じてコクリと頷いた。
扉へと戻ろうとしたところで一度足を止め。すぐに何事もなかったかのように、音を立てず歩き始める]
…分かりません。
[ゆっくりとかぶりを振って、顔を上げました。
本当は目を見たかったのですけれど、それは見えませんから、代わりに髪の茶色を見ていました。]
でも、もしかしたら。
昔は眼が見えていて、そんな仕事をしていたのかも知れません。
そもそも番人以外にこの城に住む人が居るのかさえ怪しくない?
居るなら、姿を現していてもおかしくないはずだわ。
…ああ、イザベラの見取り図は見せてもらったけど、それらしいのは見当たらなかったのよね。
イザベラが気付いたなら書き込んであってもおかしくないのだけれど。
[小首を傾げながら足は部屋の外へと向かう]
でもこれだけ探しても無いと言うことは、鏡は無いのかもしれないわね…。
銀食器、あれば良いのだけれど。
[コツコツと、靴が廊下を叩く。その音が一つであることに気付き、一度振り向いた。後にはネリーがついて来ている。小首を傾げ、ふと視線は床へと向く。それにより、ネリーの足音がしない理由にようやく気付いた]
靴、無いんだっけか。
歩きにくくない?
擦れ違いましたか。
[小さく呟いて、顔の横に垂れる金色を指で引いた]
此処には、料理人が居るのですか?
それとも何方かに頼まれるおつもりだったのでしょうか。
[番人が言うには昨日のあの時が全員だと。
それゆえに、後者はやや確信めいて]
はい。
うつくしいものが見られるかと、貸していただきました。
ここに来る前の事、か。
それじゃあ、確かめようもないな。
[仮定から語られる言葉に、ため息と共に呟いた]
……とにかく、俺は俺で何とかするし、多分、今までもそうしてきた。
だから、これは気にしなくてもいい。
…そうです、ね。
[溜息が聞こえたので、わたしは俯いてしまいました。
どうやったのか、赤い色は今は見えません。]
…はい。
すみません、余計なことを。
[相変わらず臭いは微かに感じ取れますし、きっと治ったわけではないのでしょうが。
どうしたって、今のわたしに何ができるとも思いませんから。]
急ぐことはありませんが。
よろしくおねがいいたします。クインジー殿。
[僅かに豊かな金色を揺らし、女は頭を垂れる]
[緋の耳飾りもまた、微かに揺れた]
[男の背に軽くかかる暗いあかの色を、女は姿が見えなくなるまで見つめていた]
そうですね。
広間にはあれだけの方々が集まられたのに。
見取り図にもなかったのでしたら。
そうした部屋を見つけるのは手間が掛かりそうですね。
やはり別のものを探した方が早そうです。
[振り返られて、きょとんと首を傾げ返す]
あ。…はい。
けれど他にどうすれば良いか思いつきませんで。
歩きやすくはありませんが、大丈夫です。
[一番の理由は隠したいものがあるから。
普通の靴では踝上の赤黒い痕までは覆われないだろう。
困ったように、足元を見ながら答えた]
だから、別に謝らんでもいい、と。
他にも口喧しく言うのはいるし、別に俺は気にはせんから。
[俯く様子に、口調は自然、宥めるようなものになる]
……さて、ここで突っ立っていてもなんだし、探し物を続けるとするか。
休んでるのかなぁ。
[覗いた広間は閑散としていて、
周囲に視線を巡らせながら廊下を歩みゆく。
硬い靴音と少女らの声を拾い、足が其方に向いた。
立ち止まった二人の姿が、闇の中に浮かび上がる]
シャロに、リィ?
だよね。
これで代用品まで無いとなると、いよいよ諦めなきゃならないけど…。
[拘るつもりは無いけれど、やはり無いと不便であり。あれば良いと言う淡い期待を抱きながらキッチンへと向かう]
靴を、と言ってもここには無いだろうし。
その状態でも仕方無いかしら。
素足で歩くよりはマシよね。
……素足で歩いてる子も居たっけか。
[赤髪の少年を思い出す。彼は確か何も履かずに行動していたのではないか。そんな考えを巡らせていたせいか、ネリーが布で足を巻いている理由までは考えることは無く。気付くことも無かった]
[移動し始めたところで闇から声がかかる]
その声は…ラッセル?
[近付けば、先程思い出していた赤髪の少年の姿]
[宥めるような声に、ただ一度、頷きました。]
…良ければ、お手伝いしましょうか。
灯も持っていますし。
[探し物との言葉に、もう一度顔を上げます。
本当は灯だけ貸してもいいのでしょうけれど、そうなるとわたしが困ります。
ただ先程のこともあり、強引についていくつもりはありませんでした。]
[手伝う、という申し出に蒼氷を一つ瞬く]
……いや、大丈夫だ。
大した探し物じゃないし、すぐに見つかるだろ。
[間を置いて返した辞退の言葉は、口調は軽い]
それに、ついでにあちこち眺めてみるつもりなんでな。
俺は、気まぐれに歩き回るから、つき合わせるのは悪い。
あってた、あってた。
[呼びかけは、声の質と揺れる長い髪から察しての事。
ずり落ちかけたブランケットを引き上げる]
うん、オレだよ。
シャロって、料理出来るんだよね。
ナットに食事作ろうと思ったのだけれど、
オレじゃ作れないから。
誰か出来ないかなって、探してたんだ。
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