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─宴会会場付近─
[異変に気がついたのは、それから暫く後のこと。
空から降り注いでいた色が、不意に不自然なものへと変化する]
……ム、何事。
[視線は薔薇の色に覆われた天を、次いで先程まで見ていた宴会場を巡る。
戸惑い顔の妖精たちが一つ、また一つとその姿を消して行くのに、黒は細められた]
原因は……如何見てもあれか。
[再び顔を天へ向け。
たん、と枝を蹴って、空へ翔け上がる]
[男が姿を現したのは、離宮近くの森の中。さすがに息を切らしながら、ゼルギウスの声に頷く]
さす、がは妖精の女王、あなどるまじ、だ……
そう…だな。この力は一人で隠すには強すぎる。
[秘宝が自在に姿を変えるものであることは、手に取った時に判った。二つに分けるも容易いだろう]
水を通せば、其方の元へ届くか?
[すぐ近くに小川の流れが聞こえるのを確かめて確認する]
[側にいた榛名たちも席を外してしまい、ぽつんと一人になってしまって。
そろそろ帰ろうかな、と思ってはいたのだけれど誰にも言わずに帰るとやっぱり迷子になっちゃうのかな、とも思ったので誰かが戻ってくるのを待っていたら。]
わ……すごい。
お空が、きらきら。
[薔薇色の光が天を覆うのを見て、ウタゲのきらきらってこれのことだったんだ、と勘違いして。
一人でちょこんと座ったまま、お空を見上げて目を輝かせていた。
周りの妖精達が徐々に姿を消していっていることには気がつきもせず。]
─宴会会場─
[喉を潤し酒気を飛ばすと、お座りの状態でもう一度空を見上げる]
くぅん……?
[金の瞳を何度も瞬かせて。
何かを探すようにくんくんと鼻を動かした]
飲み物くれた人の匂いがしない〜…。
あれは女王様の匂いー…。
くぅ?
[酒気を飛ばしたとは言え、まだふわふわする感じは少し残っていて。
働かない頭で考えようとして、何も考えは纏まらなかった。
考えて分からないなら仕方がない、と考えるのを止めて先程まで皆が居た場所へと戻って行った]
[離宮から逃げた先は東の泉。
水から顔を出して光を確認していたところでマテウスの声が聞こえ]
ええ、そうですね。
今なら水ごしに受け取れます。
[その小川がこの泉から出ているものであれば確実に。
マテウスの近くに流れる川から、秘宝の破片を受け止めるように、水が受け皿を象るように持ち上がった]
[受け皿のように持ち上がった水に、僅か目を見張り]
器用なものだな。
[手の内で二つの輝きに別れた秘宝の欠片をその上に乗せる]
扱いは慎重にな。力の強い者なら、気配を察するかもしれん。
[言わずもがなの忠告も、思わず口にしていた]
水がなければ何もできませんけれど、ね。
[くす、と笑いながら答え。
二つに分かれてもなお強い力を感じさせる秘宝が受け皿に乗れば。
水を伝って手元へとやってくる。
その輝きに朱色の瞳をうっとりと細めて]
ああ、そうですね。
これほどの力です。
――気をつけることとしますよ。
[懐に大事にしまいながら、忠告には頷いておいた]
あ、エーリッヒちゃん。
[エーリの鳴き声に、ようやく空を見上げるのをやめて。
声のした方をみようとしたらゲルダにも気付いて嬉しそうな笑顔になった]
ゲルダお姉さんも、おかえりなさい。
…おに?
[ゲルダから言われたのがなんなのかわからず、きょとんとして同じように首をこて、とかしげて。
そうして見たゲルダの顔がなんだか赤くてぽや、としているのを見ると心配そうな表情にかわった。]
ゲルダお姉さん、お顔あかいよ?
お熱、あるの?
―宴会会場―
[響いた鳴声に、くるっと身体ごと振り向いた]
あー。エーリくん、みぃつけた!
ビーチェちゃん、つかまえよっ!
[とてとてっと走りより、タンッ!と地面を蹴って飛び上がる。
いつもよりずっと高い位置を目指すことになったので、横腹(?)の辺りを蹴ってもう一段ジャンプ。
無事に背中まで飛び乗ることはできたかどうか。失敗すればぺしゃっと地面に落ちるだろう]
―お花畑―
[それからふらふらっと足が向いたのは家に帰る方向。
眠くなってきたので寝ようと思い、まだ意識がしっかりした部分が間違った考え『家に戻ろう』という答えを導き出した結果だった]
ん〜〜……
[ふらふらっといくら行こうとしてもどうも戻れそうになく。
ここで寝るか、別のところへ行くかそんな二択を頭の中で考えていた]
お?
おお、お前か、久しぶりだな!
もう悪させずに頑張ってるか?
[いっそ爽やかとも言える笑みを浮かべ
片手でぶらさげた氷破をぐいと上に上げ
逆様の顔を覗きこみ、ぴしり もう片方の手で
暴れる手足をさばき 避ける。]
お前も来てたのかァ、
丁度いいや、さっきの光が広がる奴、見たか?
なんか知ってる?
[彼女の罵声もなんのその
軽い声で 言葉を続けた男の肩
熱感じぬ小さな炎は ゆらり 揺れる儘]
[小川に秘宝の欠片を託してしまうと、男は精魂尽きた様子で、その場にごろりと寝そべった。その手に残った秘宝の半分は、溶けるように輝くと、長い髪の美しい少女の姿を写した薔薇色のカメオとなって、男の剣の束に収まる]
……姫…
[意識を手放す寸前に、男が呟いた言葉は、ゼルギウスにも届いただろう]
―宴会会場―
ふえー?
ねつはあるよー。なかったらうごけないよー。
[どんな体勢からか、心配そうなビーチェにへらへらっと笑いながらゆらゆらと手を振った]
─宴会会場・上空─
[天へと翔ける傍ら、刀鞘に手を掛ける。
すらりと抜かれるのは銀に輝く日本刀――の模造品。
竹光とも呼ばれるそれを、結界に向けて逆袈裟に振るい]
ぐ、
[ばし、と強い力で弾かれ、刀は手から離れた。
痺れる腕を庇うように、もう一方の腕で支える]
無理か。
……しかしこの色と気配、先程のものに似ているな。
[顎に手を当て、思案の素振り。
一先ず宴会会場へ落ちて行った竹光を追い、地上へ舞い戻る]
[小さく聞こえたマテウスの声に、小さく瞬く。
それが理由かな、と考えるけれど口に出して問うことはせず。
己の手に渡った秘宝は、ゆるりと姿を変えて。
懐の中でまるでユベールが作った道具のように、小さな杖へと変じていた]
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