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あ…
[茎を持った手を離され、それが刺さったままの体を「く」の字に折る。
それは、彼女にとって生まれてこの方一度も経験したことの無い力。痛み。
やめて。
苦しい。
痛い。
助けて。
……誰にすがればいい?わからない、わからない------
体を丸くした背中から、チリチリと火の粉のようなモノが噴き出す。
周りの空気が歪み、背中を中心に円を描き-----爆ぜた。]
あ あ あ あ … ッ !!!!
[---周りを閃光が包んだ。]
[影輝王を振り返る氷精の様子に、微かに笑むものの。
続いた疑問の言葉に、その笑みはすっと消える]
そう、書を封じし地『封護結界の迷宮』。
二人を取り込んだのは、書を取り戻そうとする、結界の力の暴走だろう。
恐らく、彼らがいるのは……迷宮の只中だ。
[自衛団長までいるとは、さすがに思ってはいないようだが]
[腕に伝わる肉の感触。
苗床の口に笑みが浮かぶ。
それは魔界のものと言うに相応しい――
まがまがしくもみえたろうか。]
かの子の苦しみの少しでも、君は味わえば良いのだよ。
生命の力の竜族。
[一刻後。]
……ぁー…なんも見えない、か。
なーんか隠されてる気がするんだけどなぁ。
気のせい、なんかなぁ……?
[ぽり、と頭を掻いて、そのままごろりと寝転がる。]
[気がつけば、いつしか眠りに落ちていた。]
ベアトリーチェが倒れたの?
[その言葉にはびっくりして]
大丈夫なのかな?
あの子は不思議な力を持っているのだもの。
よくはわからないんだけれど。
[その関係が負担が大きかったのだろうかと、心配そうな顔になる]
ああ、それじゃ知らないのね。
昨日消えちゃったのはエーリヒさんだけじゃないの。
おじさま……ハインリヒさんも、なの。
私たちの目の前で、大きな力に取り込まれて。
ええと。
私だと全部は説明しきれないな。
オトフリートさんたちの方がずっと詳しいはずなの。
今ならKirschbaumにいるかな……
一緒にいかない?
[説明しようとして、まだ混乱している部分があることに気が付き。
そう誘った]
[光がやんだ後、そこにいたのはお世辞にも美しいとはいえない真っ黒の「バケモノ」だった。
シルエットとしては、「恐竜」に似ているだろうか。大きさは、小さめの象程だ。
太くとても短い蛇のような体の中心あたりから降りる太い後ろ足、肩らしきところから生えている為前足であろうと思われる、羽根。そこに羽毛のようなものも全く見当たらず、ただの皮の延長のようで。
鈍重そうな太い体に鱗は無く、ゴムのような分厚い皮膚が全てを覆っていた。
体の先に顎は無く、ただ筒状の口に細かい歯が内円に並ぶのみ。目はどこにあるのだろうか、見当たらない。
そしてその腹には、さきほどの茎がぶっすりと刺さったままであった。]
「 !!!!」
[首を回し、声とはいえない、「音」の咆哮。
空気が、震える。]
[噴出す生命の力、そして竜の力。
それは、結果以内にいる「力あるもの」全てに気づかれるであろう。
だが彼女は止められなかったし、止め方もわからなかった。
攻撃をしたいワケではない、殺したいワケではない。
ただ、どうしていいか分からず---------]
「 !!!!!」
[もういちど、声とはいえない「音」の咆哮を放った。]
っ――
[見覚えのない姿。ああ、竜族だ。
かの女か。
閃光のあとに思うはそのことなれど、
手を離した茎はその腹に。
咆哮に痛みが走る。]
――っ
[左の手は庇うように小瓶を掴み。]
[びくり、と身を強張らせて、北東の方角をみる。
悲鳴が聞こえたような気がして。
同時に膨れ上がる大きな力。
人の可聴域ではない、空気を伝わる振動のような咆哮。]
…イレーネ……?
いたい。たすけて。いやだ。
[わずか、小さな声が響き。
それでもこの結界の中でその姿をとどめることが出来るワケもなく。
もうひと声あげてから ソレは ずし、と音を立てて墓の上へと倒れた。
石墓が、粉々に砕けてソレを受け止めた。
暫くして、その黒いモノの姿は薄くなり、そこには倒れる血まみれ銀髪の女性だけが*残っていた。*]
[苦しみに呼応するかのように、森の中で封印が崩れそうになる。
どれを取れば良いのかわからなくなったとき
ちいさな声を聞いた。
それは――
その竜は、落ちて。
荒い息を、落ち着ける。]
迷宮、か。
書の暴走について、略奪者は知っていたのか、この事態は計算外なのか。厄介だな。
ところでオトフリート
お前は書を持つ者を探知する事が出来るのか?
もし、その者を見付けたらお前は…―――
[咆哮が届いた]
−→探偵事務所−
[アマンダが向かったのは、ハインリヒの事務所だった。
主の居ないその部屋は、助手であるユリアンの為にか鍵はかかっておらず、容易く入る事が出来た]
…何かある? 千花
「アンッ」
[鼻先を紙に埋めて探していた千花は、短く否定の鳴き声を返す。
人のしての文字も、おかしな気配も見つけることが出来ぬまま、アマンダは主のいない事務所で、困ったように腕を組んだ]
[ばさり、と。
大きく羽ばたく相棒の羽音。
同時に感じ取る、咆哮。それは]
……これはっ……同族の……イレーネかっ!
[がたり、と椅子を倒し、らしくない焦りを帯びて立ち上がる]
一体何が……ティル、かっ!?
まったく、そろいもそろって!
[苛立たしげに吐き捨てつつ、右手の腕輪から鎖を解き放ち、右腕に巻きつける]
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