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疾風王 ニーナが村を出て行きました。
嗚呼、そうにござりましたか。
……いえ、もう本当にお気になさらずに。
[仲睦まじき様子の二人を思い出し、ひいては"原因"にも意識がゆきかけて顔色が僅かに白くさせつ、ゆるゆると首を振る。
戻ってきたセレスの手を握れば、仄かに顔色は戻るのではあれど]
あ…、ありがとうござりまする。
お疲れなのでありましょうや。
[眠たげな少女を抱き上げる手の確かさに、ふと表情を緩めて。
女主人へと手土産を渡しに行くらしき焔竜に目礼して、セレスの手を引いて広間へと赴く]
[雷撃の王の言葉通り、既に茶会の準備は出来た様子で。
私はセレスのそっと手を離し、時の竜へ駆け寄る姿を見守る。
香りの強い料理の載るテーブル付近は避け、開かれたままの窓辺へと佇んだ]
随分と力強き気配をお持ちの方ばかり…王、とはこれほどの者…。
偶然の邂逅とは言え、セレスには良い経験やも知れませぬの。
[氷破や雷撃に引く様子もまた、己が属性の把握に繋がると。
危機を感じぬ限りは、ただ見守るに留めんと心を落ち着かせる。
本人の持つ力に加え時空竜が側にある今、危機など稀有であろう。
その、稀たる心の魔が本当に現れるや否やは、未だ知らぬ事]
[それから、氷破の王の挨拶を思い出して。白金の睫毛を伏せた]
いずれ…と申しましたが、お帰りになってしまわれたのですね。
申し訳ないことをしてしまいました…。
[知らずしゅんと気落ちすれば、ぺたんと獣耳も寝て。
出しっぱなしであった事に気付き、私は両の手で押さえ戻した。
時空の歪みの影響か、どこか時の流れは緩やかに。
時折、前後が入れ替わるよな曖昧さまでも孕んでいたやもしれず。
私は始まったばかりでも長いようでもある茶会を凌ぐべく、紅茶のカップを両の手でいただき、その香りに感覚の一つを*傾けた*]
[この館に来てからは驚きの連続。トラウマである陽精の父との邂逅。己が扱う属の長である疾風王の存在。その他、ラッセルが言っていた精霊の現王達の子細。自分がとんでもない場所に居ると言うことは把握した。とりあえず疾風王に対しては]
いつもお世話になってまっす。
[と言って頭を下げたのは言うまでもない。その後手合わせすることになったのだが、結果はまぁご想像の通り。ハインリヒの力がどの程度のものなのか、それを判じた子細を知るのは、今はどこかへと向かった疾風王のみ]
[その後、他の王達に対してもいつも通りの態度で居たのは、自由を司る風の気性を持ち合わせるが由縁か。ラッセル辺りに窘められそうなもの*だったが*]
―森―
[暫し樹の根元に居たかれは、届く足音に目を開けた。
その目は一度開くだけで焦点を結ばず、ただ紅色。
二度、三度と瞬いて、深い翠の色に変わる。]
どうかしたのかな。
探してみようか。
[土に触れ、そこから根を地下へと生やす。
ぴたりとくっついた手のひらは、誰からも見ることは出来ず、伝う根は伸びてゆく。その足音の方へと。
地面を隔てて届いた足の音、根の上を通る彼女を認識する。
どこにいるかを理解して、そっと根に語りかけた。]
少し離れて。繋がってはいるから。
[そうして手をあげたとき、ついていた左の手のひらに、何の変化も起きていなかった。
根のつながりを感じたまま、その足音の方向を把握して、苗床は歩を進めた。少々何か心配になるような感じを覚えたのだった。*]
―森のどこか―
うー。
[森の外に出よう、としなかったのは、自分なりに更なる混乱を避けようと思ったらしい。冷静に気配を探り受け止めれば、王の存在や兄のような存在や、その他大勢のことにも気付くことが出来たはずなのだけれど]
…疲れたの。
[比較的大きな樹の根元、ぺたんと座り込んだ。
涙目を擦りながら幹に寄りかかり、気がついた時には*ウトウトと*]
迷子か……な
[継いだ記憶にある姿だった。それしか浮かばなかった。
膝を折り、まずは地面に手をつける。どくりと地面、てのひらを伝って、腕へと根が入り込む。
脈を打つように膨れた腕を押さえて、手を離すと、そのままブリジットのそばへ。]
寝てる? 起きてる? 気配のある方に連れて行くよ?
[目の周りが赤い。泣いていたのだろう。]
……泣かせたって思わせるのもね。
[そういうのは御免被りたい。]
仕方ないから待とうか。
……そうだね。行ってきてくれるかい?
[ひらりと手を振ると、爪に薄く張り付いていた花びらが飛んでゆく。
ひらひらひらり。
*屋敷に向かって、誰かをここへ呼ぶために。*]
[幾ばくか経った頃には、手の中の白い茶器は空になっていた。
なれど、食欲は元より、お代わりをいただく気力もなくて。
窓の外に広がる霧を、私はぼうと眺めていた]
………? あれ、は…
[乳白色の中をひらひらと泳ぐよな、何か。
まるで蝶のよに見えるそれに私は一つ瞬いて、茶器を窓辺に置き。
開け放したままの窓から、そうと指先を差し伸べた]
ごめんね。クインジーは、顔が怖いの。
[クインジーの後ろ>>318から私は言った。(謝罪するところが違うような気がしないでもない)]
ニーナもセシリアも、もっとゆっくりしていけばいいのに。
コーネは”お茶会”では酒が飲めないと思ったのかな?
ソフィーはきっと忙しいのかな?
ナサニエルはきっと手紙なんて見てないのかな?
シャーロットもたまには遊びにくればいいのに。
ユージーンはどうしているのだろう。
[それから、指折り数えながら現精霊王の名前をあげていった。そうこうしているうちに、お茶のしたくも出来て、皆は茶の席についてしまったらしい。
私は慌てて彼らの後を追った。*]
[眠るブリジットのいる樹の隣、まだ小さな樹の根元に座る。
彼女が目を覚ましたら、ちゃんと気付くことはできるだろう。
目を閉じると、次の視界は暗闇に。
紅色の目をして、彼はそっと地面に芽吹いた種を植えた。
ここもまた行動範囲にするために。
――あとで主には、断りを入れなければなるまいが。*]
15人目、生命の魔 リディ がやってきました。
時刻は少し遡る。
「何よそれぇ!てゆーか何かヒドくない?あり得ないし!」
精霊界、翠樹王の居住地、緑の森に甲高い声が響き渡った。木々から小鳥が一斉に飛び立つ。
奇声の主、リディは両手で確りと一枚の紙を握り締めていた。その紙にはこんな事が書かれていた。
『私はお茶会に御呼ばれしたので出かけてきます。
クインジーも多分出かけます。
予定は分からないけど暫く遊んでくるつもりなので
いいこにしててください。
じゃないときっとセシリアが手紙を寄越しますのでそれでもいいです。ご飯は多分ライデンがなんとかしてくれます。
追伸:セトと仲良く』
[外へ、外へ。
そう誘うよな動きに、振り向いて広間へ戸惑いの視線を投げる。
なれば花びらは私の視界を遮るよに、否、こちらを向いてと。
ひらひらはらり。
飽くことなく飛び続ける姿に、心動かされずにいらぬは我が性]
………。
[ただ躊躇うは"心配を掛けてはいけない"という不文律な約束]
《…少し、外へ出て参ります。遠くには行きませぬ》
[細い手首に宿る白金の環に、伸ばしていた指先を添える。
菫青石の天蓋を撫でて投げたコエは、時の竜へ届いたであろうか]
「何で自分だけ遊びに行くわけ!つーか文面が意味不明だし!
ていうかふーふ水入らずのつもりなわけ?うざっ!」
要するに、遊びに行くのに自分が連れて行ってもらえなかったのが酷く不満なようだった。
それからも暫くリディの両親、つまりクインジーとウェンディに対する罵声は続いた。最後はビリビリと手紙の破れる音が響いて、森は少し静かになった。**
生命の魔 リディが村を出て行きました。
15人目、風人 ユリアン がやってきました。
――シュリセルの街――
[ユリアンは夜の道を風をまとい、のんびり歩く]
やっぱり、ハーヴェイさんいないと大変。
こんな日に限ってお客さん多いんだもん。
まあ、それよりも大変だったのは――
本当に誰に似たんだろうね…あの子たち。
[想い出して溜息]
[双子を宥めるのに精力の大半を使い切ってしまった。
やれ、パフェのイチゴが小さいだの、
やっぱり二人の後を追ってお茶会行きたいだの。
やっとのことで寝かせつけて、そして家に帰る途中]
でもアマンダさんにパフェ褒められちゃった。
よし、頑張るぞ。明日も来てくれるといいな。
[なかなか褒めない、目下ほぼ片思い状態の彼の人の讃辞に
疲れた中でもやる気が出てきて、気合いを込めていると]
[突如、空気が変わる。異質な空間
あまりの変化に反射的にユリアンは目を閉じた]
今のは何……ってなんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!
ここは何処なんだ!!
[夜道を歩いていた筈なのに、
いつの間にか目の前には森が広がっていて]
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