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[突っ込んできたブリジットを抱きとめる…などという格好良いことが出来る筈も無く。
衝撃に倒れずにどうにか耐えることが出来ただけで]
…ど、どーしたー…?
[様子がおかしいことには気付いたが、上手い言葉が見付からずに遠慮がちに声をかけることしか出来ない]
[なにがあったのかと、外からとびこんだ少女をみて思う。]
[厳しい顔で、外でなにがあったのか、調べようとそちらに向かう]
[エーリッヒの呼びかけに応えた訳ではないのだろうけれど、頭を左右に振る]
怖い、怖い、怖い…
[ユリアンのがっしりした体が抱きとめた体は冷たかった]
[何時の間にか笑みの形も消え、同じ呟きが何度も繰り返されるようになった]
怖い…怖い……怖い…
[それも次第に収まってきた]
―厨房―
[きょとん、とした表情。それから、眉を顰め]
……あの、声………は、ブリジット……?
[昼に聞いたギュンターの話が、思い起こされはしたが]
怖い……。
大丈夫。大丈夫だから。
[呟くような声は、どこへ向かう呼びかけとも定かではないけれど]
……大丈夫だから、怖がらなくても。
[ひやりとした感覚を布越しに感じれば、驚かせないようにそっと肩に触れる]
…とりあえず、あったかくしよう?
な?
[胸元にある顔を覗き込もうとして]
…エーリッヒ?
[間近に居る彼が頭を振る様子に不思議そうに声をかける]
[ユリアンが覗き込むと、何時ものように何処を見ているのか定かではない眸がユリアンに向けられた。ユリアンの服を握って離さない]
え……?
[ユリアンの呼びかけに、軽くまばたいて]
あ……どうか、したか?
[逆に問い返す、その表情にはどこか呆けたようなものが]
[彼はドキドキする心臓を押さえるように、胸に手を当て、一人一人の顔を見つめる]
誰も、怪我とか、してない、よね?
[微かに声が震えている]
えーっと…
[服から離れない手。
こういう時はどうしたらいいんだろう。
人との係わり合いなど皆無に近い自分にはその解決法など見付け出せずに]
……暖炉の方、行かない?
[結局似たような台詞を繰り返しただけ]
[呆けたようなエーリッヒの声にブリジットから一旦視線を移して]
どうかしたって…お前こそどうしたんだよ?
どっか具合でも悪いのか?
[外に出ると、自衛団員がいた。]
何かあったんですか?
おびえていましたけれど
[しかし自衛団員の人もよくわからないようで]
…そうですか
[結局、何があって彼女があんなにおびえたのか、わからなかった]
―二階・自室―
[彼女は窓から外を見ている。長い長い時間]
[思い返すのは親しげに話す彼ら]
…幼馴染みとかって、あんな感じなのかしらね。
[ぽつり、呟く。それがどういうものなのかを、彼女は知らない]
[彼女は子供の頃から歌が上手かった。そして少しばかり見た目が良かった。
そんな彼女を両親が旅芸人に売ったのは遠い昔の事]
[そこから先は旅の暮らし。次から次へと移り住んで、親しい者も持てずに…いつしか]
[身に付いたのは仮面の微笑。旅の途中で受けた数々の仕打ちと、どうせ離れるのだからと言う諦めが生んだ偽りの感情]
[『歌姫』などと呼ばれていても、それは所詮追従で]
[…誰も、彼女自身を見ていない]
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