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[移動するに雷光へと変じようとしたけれど
走る氷竜を見て、同じように走る事にした。
先を走る疾風の竜の後ろから、西殿が見えてくれば目を細めてくいと眼鏡を上げた。]
…これは。
一体誰が、何の為に。
[嫌な予感はしたんですよね…と、溜息をついた後。
きりと背筋を伸ばして睨むように西殿を見る。]
封印を受けていては、仕方無いことであろうよ。
[ 機鋼竜の叫び。何を言われたかは想像に容易い。影竜王は影竜王で、封印の内の場を均すこと、何より、彼女のほうが重要であろう。
……とは言え、とは言え。
思考をしても、それは仕方はあるまいか。]
試練と思うしかあるまい、機竜の仔。
あなたも、とは、思いませんでした。
[実際に口に出されては、その呼び名を止めようとするけれど。
この声では、その言葉はこぼれなかった。
ただ少し、王から届いた言葉に震えた感情が残っていただけ。]
意外です。
[額に当てられていた手が落ちる]
…ノーラ殿にもか。
この様子では皆にも届いて居るじゃろう、この異変は。
何をする暇も無く閉ざされたのじゃろう。
何が原因かまでは、はきとせぬが。
[大きく息が吐かれた。何か起きねば良いが、と話をしていたが、まさか本当に起きてしまうとは。今後如何にすべきかと頭を抱えそうになる]
…む、他も集まり始めたかの。
[風の如く駆けて来るティルの姿、宙より舞い降りしダーヴィッド。異変は須らく皆に届いているらしい]
―西殿―
流石に集まってるよなぁ…。
なぁ、何があったんだ?結界張られたって…。
[言いながら、自身も前へと進み出て、結界のそれに近づき様子を伺う。
流石に触れることはしないが。]
…マジみたいね。
あーあ。えー…誰か、これ解けそうな奴いる?
あ、ちなみに俺は全然全く無理だから。
[威張った。]
ええ、願いがあります。
だからこそ――…禁断の術をもって十五竜王を封じたのだから。
[西殿を見上げ佇む青年の言葉は、いっそ穏やかに心話に響く]
願いを叶える力が欲しいなら、貴方もその手を伸ばすといい。
[愛憎の感情は強い心の動きの一つ。それを感じながら囁く青年の声は生命竜の心の天秤を揺らすだろうか]
あぁ、ティル殿。
落ち着いて下さい?
[傍らの疾風竜に、柔らかめの声をかける。
かけつつも、自身の手の先からはパリ、と雷の音が小さくなった。]
[結界の傍に寄ると、頭の中に直接響く声が聞こえてきて]
……中も中で、ごたついているようですね。
[氷竜王の言葉に、ほうとため息ひとつ零した。
ごそごそと袖の辺りを探り、水晶で出来た虫眼鏡を取り出す]
意外ってどーいうこっちゃ。
おじさんにもあれが欲しいこれが欲しいくらいはあんのよ?
[けらりと笑うように。
が、普段の快活さからはだいぶ、かけ離れていた。]
[西殿、そこを閉ざす結界の前へ立ち、
揺らぐ紫煙は異国の花の香。
たなびく煙に乗るように、幾つも浮かぶ小さな焔。]
…二つ。それに沿うもの一つ…
それと…
[幾つもの焔がさまざまに色を変え、揺らぎ舞う。]
…ぁー…これ以上は追えねぇ!
[焔は不意に掻き消える。]
王――
そのような報告はどうでも良いです。
[最初は困ったような調子だったのに、王が続けた言葉はとんでもないものだった。
あまりほしがっていないような(少なくとも月闇王にはそう見えたらしい)虚竜王に花束を押し付けただの、
影輝と生命の竜王をからかったら怒られただの、
そんな情報はほしくない。]
あんまり納得したくないです。
[影輝竜の言葉に溜め息をついて一度、空を仰ぐ。舞い降りてきた火炎竜、集まってきた他の随行者達を見やって、また溜め息]
…っ、ととさま、…!
[慌てた様な声と共に、仔が寝台から転がり落ちる。
引き摺られる様にして床へと滑り落ちる毛布が、幼子の心中を物語るか。
…四方や私が幼子に振り落とされなどしないが、余程慌てているらしい。
何時もなれば幼いながらも見え隠れする私への気遣いがまるで無い。
否、心中は察するに容易い。我が心とて正直穏やかでは居れぬ。
ぺたと乾いた床を素足が叩く音。そこで漸く私は仔の足に召物が無いと気付いた。
嗚呼、履物すら意識する余裕すら無かったか。
仔が踏んだ跡を辿るように、翠樹の気がその場に草花を咲かし、枯れる。
小さな足跡は、ぱたぱたと西へ。]
―…→西殿―
落ち着けって、落ち着けって……。
[ミリィの言葉に、ふるふるふるふるしつつ、どうにかこう返す]
っとにもう……何なんだよ、これっ!
[苛立ちは結局押さえ切れなかったか。
そこにある結界に向けて、足が出た]
[再び目を開けた時には震えは止まっていた。
戸惑いは未だ消えないが、同時に揺ぎ無い意思も生まれている]
見苦しい姿をお見せしました。
もう大丈夫です。ご一緒致します。
[精神竜の目をじっと見てそう告げた]
後で竜王方にお詫びしなければ……
「何故?」
あなたのせいです。
[疲れたように壁に手をついていたが、しっかりと立ち。]
お戯れになるのも、程々になさってください。
[エルザの謝罪に緩く首を振り、青年は再び西殿を見上げる。天は不吉な現状の象徴のように暗雲渦巻き、本来の竜都の属性均衡が揺らぎを感じさせた。
『混沌』を司る彼には忌むべきものでないけれど、それでも口元の笑みは鳴りを潜めていた]
風が乱れている。
これが竜王を封じた影響なら他にも――…?
[問いは微かに零れ消えていく]
意外で
[だが、こえの調子に気付いたのか。
それとも本当に月闇王に疲れているだけなのか。
言葉は止まり。]
……どうかした
いえ、なんでもありません。
恐らくは。
随行の者達が無事であるのは、
幸とすべきなのか、それとも?
[ 疑問を含んだ言葉は、ザムエルのみに向けたものではない。
答えを出せるものは、現状では居るまい。]
竜王が太刀打ち出来なかった封だ、
今すぐにどうこうも出来なかろうよ。
我は我の為すべきことをするか。
[ 集う者らに視線を注げど、出でる結論はそんなものだ。]
[背後から聞こえてきた命竜の呟きには]
"封印"に関してなら、氷破である私が……と、言いたいところなのですが。
まだ、なんとも。式が複雑というか、安定しない、奇妙な、と言いますか。
[未だに虫眼鏡で、結界と睨めっこしている]
"破壊"を司る焔のに、任せるのも手かもしれません。
[といった所で、風竜の蹴りが弾かれたのが目に入った]
したかろうがしたくなかろうが、
起こった事は仕方あるまい。
[ 淡々と告げ、駈けゆく機鋼の竜を見送ると、彼らの行く先とは逆に外へと赴いた。宮殿の内なれば、庭が適当か。]
おーぉ。怖い怖い…。
何だってする、そんな意気込みだな。
実際、大それた事やってのけたわけだけどさ。
[アベールの声に、表面上は平然と。だが内は未だ揺らされ続ける。
被りなおした仮面は、被っただけで彼の顔にはまだなっていない。
精神の、には己が心の動きなど、重々知られているのだろうが。]
…願い、ね。
[望みは在る。だが定まってはいない。
干渉が不完全だったのか。
それとも何か他の影響か。
暫し、考え込むように沈黙する。]
それだけ言えれば十分ですよ。
行きましょう。
[前代未聞の出来事を目にしたまだ若き竜として、旧友の養い娘は十分しっかりしている。青年は口元に微かに笑みを浮かべ氷破竜の消えた方へとエルザを促した]
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